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デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィー

(Duchenne型筋ジストロフィー、Becker型筋ジストロフィー)

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2017年 8月
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筋ジストロフィーとは、正常な筋肉の構造と機能のために必要な遺伝子の1つ以上に異常があるために、様々な重症度の筋力低下を引き起こす遺伝性筋疾患の総称です。デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィーは、体幹に最も近い筋肉に筋力低下を引き起こします。

  • これらの筋ジストロフィーは、筋肉の機能に関与している遺伝子の異常によって発生し、小児期や青年期に筋力低下を引き起こします。男児に発生する場合がほとんどです。

  • どちらの筋ジストロフィーも、筋力低下を特徴とします。

  • 診断は、血液および筋肉組織サンプルの検査結果に基づいて下されます。

  • 治療としては、理学療法のほか、ときに両病型の筋ジストロフィーに対して手術を行ったり、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対してプレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)やデフラザコート(deflazacort)を使用したりします。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、2番目に多くみられる(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーが最も多い)最も重症の病型の筋ジストロフィーです。症状は幼児期に始まります。ベッカー型筋ジストロフィーはデュシェンヌ型筋ジストロフィーと密接に関連していますが、発症時期が青年期とより遅く、引き起こされる症状もより軽いものです。これらの筋ジストロフィーは、男児に発生する場合がほとんどです。デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィーを併せると、1000人に5人の割合で発生します。そのほとんどがデュシェンヌ型筋ジストロフィーです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーを引き起こす遺伝子の異常は、ベッカー型筋ジストロフィーを引き起こす異常とは異なりますが、どちらも同じ遺伝子が関係しています。これらの形質を発現する遺伝子は劣性遺伝し、X染色体上に保有されます。そのため、女性の場合は異常遺伝子を保有することはあるものの、片方のX染色体の遺伝子に異常があっても、もう一方にある遺伝子が正常であれば、異常が補われるため、発症することはありません。 しかし、男性にはX染色体が1本しかないため、異常遺伝子を親から受け継ぐと発症します({blank} 遺伝形式 : X連鎖遺伝)。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの男児では、筋肉細胞の構造を維持するために重要なジストロフィンという筋肉タンパク質がほぼまったくありません。ベッカー型筋ジストロフィーの男児では、ジストロフィンは作られますが、そのタンパク質の構造が変化しているため、本来の機能を果たすことができないか、ジストロフィンの量が不十分です。

症状

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィーによる主な症状は筋力低下で、心筋や呼吸のための筋肉の筋力低下が含まれます。男児だけに症状が現れます。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、2~3歳で発症します。最初の症状は、発達の遅れ(特に歩き始めるのが遅れる)のほか、歩く、走る、飛び上がる、階段を昇るといった動作の困難です。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの男児は転倒することが多く、しばしば腕や脚に骨折を負います。 患者はよたよたと歩き、つま先で歩くことがよくあり、床から立ち上がるのが困難です。

通常は、その後に肩の筋力低下がみられ、着実に悪化していきます。筋力低下に伴って筋肉が大きくなりますが、異常な筋肉組織は筋力が強くありません。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの男児では、心筋も徐々に大きくなり筋力が低下し、心拍に問題が起こります。心臓の合併症は、14歳までのデュシェンヌ型筋ジストロフィーの男児で約3分の1に発生し、18歳以上の患者では全員に発生します。しかし、患者は運動することができないため、心筋の筋力が低下しても、病気が進行するまで症状は起こりません。この病気をもつ男児の約3分の1では、主に言語能力に影響を及ぼす、進行しない軽度の知的障害がみられます。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの男児は、通常は腕や脚の筋肉が関節の周囲で拘縮するため、肘や膝を十分に伸ばせなくなります。最終的には脊椎が異常に曲がります(脊柱側弯症)。脂肪などの組織が、特定の大きくなった筋肉群に置き換わり、これは特にふくらはぎの筋肉でみられます。この病気のほとんどの男児は、12歳までに車いすの使用が必要になります。 呼吸筋の筋力低下が進むと、肺炎などの病気にかかりやすくなり、ほとんどの患者が20歳までに死亡します。

ベッカー型筋ジストロフィー

ベッカー型筋ジストロフィーの男児では、筋力低下がデュシェンヌ型ほど重度ではなく、最初に症状が現れる時期も、約12歳と少し遅くなります。患者は通常、少なくとも15歳までは歩くことができ、多くの患者は成人期になっても歩き続けられます。筋力低下のパターンはデュシェンヌ型筋ジストロフィーのものに類似しています。ただし、青年期に車いすが必要になる患者はごくわずかです。ほとんどの患者が30代または40代まで生存します。

診断

  • 血液検査

  • 筋生検

医師は特徴的な症状(例えば男児の幼児で筋力低下やその進行がみられる)に基づいて筋ジストロフィーを疑い、特に男児に筋ジストロフィーの家族がいるか原因不明の筋力低下がみられる場合に疑われます。クレアチンキナーゼという酵素の濃度を測定する血液検査が行われます。筋ジストロフィーでは、クレアチンキナーゼが筋細胞から漏れ出ることで、血中濃度が異常に高くなります。ただし、他の筋肉の病気でも血液中のクレアチンキナーゼの濃度が高くなることがあるため、この酵素の濃度が高くても筋ジストロフィーであるとは限りません。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断は、血液検査でジストロフィンというタンパク質を作る遺伝子の欠失または異常が示され、筋肉組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べる筋生検で筋肉中のジストロフィンの量が極端に少ないことが明らかになった場合に下されます。顕微鏡検査で筋肉を観察すると、壊死組織や異常に大きな筋線維が認められます。

同様に、ベッカー型筋ジストロフィーの診断は、血液検査でジストロフィンを作る遺伝子に異常があるか量が非常に少ないことが示されれば下されます。筋生検では、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合ほどではありませんが、筋肉のジストロフィンが少ないことが示されます。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの小児は、心臓の異常を検出するために心電図検査心エコー検査を受けます。これらの検査は、男児に診断が下された時点か、6歳までに行われます。

デュシェンヌ型またはベッカー型筋ジストロフィーの患者の家族が、異常な遺伝子を検出するために血液のDNA検査を受けることがあります。胎児に対する出生前検査を行えば、その子が罹患する可能性が高いかどうかの判断に役立ちます。

治療

  • 理学療法と足関節または下肢装具

  • ときにアンジオテンシン変換酵素阻害薬とベータ遮断薬

  • ときに手術

  • デュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)またはデフラザコート(deflazacort)

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィーは、どちらも根治することはできません。筋肉が関節の周囲で永続的に拘縮するのを予防するために、理学療法や穏やかな運動、ときには足関節装具の夜間の装用が役立つことがあります。歩いたり立ち続けたりする能力を維持するために、下肢装具が一時的に役立つことがあります。硬くなり痛みを伴う筋肉を緩めたり、脊柱側弯症を元に戻したりするために手術が必要になることもあります。患者の男児はあまり活動的ではないため、必要なカロリーは少なくなります。そのため、食べ過ぎないように注意すべきです。

呼吸に問題がある場合は、呼吸を助ける特殊なマスクを着用することがあります。そのマスクでは呼吸の補助が不十分な場合は、首の前側を小さく切開して(気管切開という処置)、合成樹脂製のチューブを気管に直接通すこともあります。チューブは人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)に取り付けます。気管切開によって、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者が20代まで生存できることがあります。心臓に異常がある小児には、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やベータ遮断薬といった薬が投与されることがあります。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの5歳以上の患者で顕著な筋力低下がみられる場合には、コルチコステロイドの一種であるプレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)か、デフラザコート(deflazacort)が投与されることがあります。プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)やデフラザコート(deflazacort)は経口で毎日投与されます。これらの薬を長期間使用すると、筋力が改善する、患者が歩ける期間が数年延長する、心臓や肺の機能が維持される、生存期間が5~15年延長するなど、多くの効果があります。しかし、これらの薬を長期間使用すると、体重の増加、顔面の痛み、脊椎や骨の問題のリスク上昇など、多くの副作用が生じます({blank} コルチコステロイドの使用法と副作用)。プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)やデフラザコート(deflazacort)は、ベッカー型筋ジストロフィーに対する治療としては、十分に研究されていません。

筋肉がジストロフィンを作れるようにすることで、筋力低下を改善しようとする遺伝子治療が研究されていますが、まだ利用できません。家族は、子どもが筋ジストロフィーの遺伝子を引き継ぐリスクを評価するために、遺伝カンセリングを検討するべきです。

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