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新生児の分娩損傷

執筆者:

Robert L. Stavis

, PhD, MD,

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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新生児の一般的な問題の概要も参照のこと。)

分娩損傷とは、分娩の過程で通常は産道を通る際に物理的な圧力が生じる結果として新生児が受ける損傷のことです。

  • 多くの新生児が出生の際に軽いけがをします。

  • まれに、神経が損傷したり骨が折れたりします。

  • ほとんどのけがは、治療をしなくても治ります。

極めて大きな胎児は難産になる場合があり、生まれてくる子どもに損傷のリスクを伴います。胎児が5000グラム(母親が糖尿病の場合は4500グラム)を超えると推定される場合には、帝王切開が推奨されます。生まれる前に子宮内で胎児の向きが正常でなかった場合にも損傷が起きる可能性が高くなります({blank} 胎向と胎位)。

分娩損傷の最も多くは、陣痛および分娩の際に生じる自然な力によるものです。帝王切開のリスクが高かった過去においては、胎児の娩出が難しい場合、鉗子(手術器具で縁が丸く、胎児の頭に沿うように作られている)を用いて胎児を引き出していました。しかし、産道の高い位置から鉗子を用いて胎児を引き出す際に、分娩損傷が起こるリスクが高かったのです。現在では、鉗子は分娩の最終段階でのみ使用され、損傷を引き起こすことはまれです。全般的に分娩損傷の発生率は、超音波検査による出生前の評価が改善し、分娩時の鉗子の使用が限られ、分娩損傷のリスクが高いと予想される場合には帝王切開がしばしば行われることから、過去数十年と比較してかなり低くなっています。

胎向と胎位

妊娠の末期に胎児は分娩に備えて体の向きを変えます。正常な状態では、胎向は後ろ向き(母体の背中を向いた状態)で、顔と体が左右どちらかにやや傾き、首を前に曲げ、胎位は頭位(頭を下にした状態)になります。

胎向が前向きの場合や胎位が顔位、額位、骨盤位、肩甲位の場合は異常です。異常な胎向や胎位は分娩損傷につながる可能性があります。

胎向と胎位
胎向と胎位

知っていますか?

  • 重篤な分娩損傷は、数十年前と比べると現在では非常にまれにしかみられません。

頭部と脳の損傷

頭部の損傷は出生に関連する最も多い損傷です。

頭部の変形は、損傷ではありません。頭部変形とは、分娩中に胎児の頭部が受ける圧力から生じる正常な頭部の変形のことです。ほとんどの出産で、胎児は頭を先にして産道に入ります。胎児の頭蓋骨の位置は本来の位置に固定されていないため、産道から押し出される際に頭部が長く伸び、胎児が産道を通りやすくなります。頭部変形が脳に影響を及ぼすことはなく、問題が生じることや、治療が必要になることもありません。頭部は数日間のうちに徐々に丸くなっていきます。

頭皮の腫れやあざのように見える皮下出血はよくみられますが、特に問題視する必要はなく、通常は数日のうちに消えます。

頭皮擦過傷は経腟分娩中に器具(頭皮に装着したモニターのリード線、鉗子または吸引器など)が使用された際に生じる可能性があります。

頭蓋骨の外側で出血すると、頭蓋骨を覆う厚い線維性の膜(骨膜)の上または下に血がたまることがあります。

頭血腫は骨膜の下に血がたまったものです。頭血腫は柔らかく出生後に大きくなることがあります。頭血腫は数週間から数カ月で自然に消失し、何らかの治療が必要になることはほとんどありません。ただし、頭血腫が赤くなったり、液体が出てきたりする場合には、小児科医の評価を受けるべきです。

帽状腱膜下出血は頭蓋骨を覆う骨膜の上、頭皮のすぐ下で生じる出血です。頭血腫の場合とは異なり、この部分では血液が一部分にとどまらず、広がります。多量の失血とショックを引き起こし、輸血が必要になることさえあります。帽状腱膜下出血は鉗子または吸引器の使用によって生じる場合や、血液凝固の問題から生じる場合があります。

分娩の前や分娩の過程で、頭蓋骨の骨の1つが骨折することがあります。頭蓋骨の骨折部分がへこんでいる(陥没骨折)場合を除けば、一般に治療をしなくてもすぐに治ります。

知っていますか?

  • ほとんどの分娩損傷は、陣痛および分娩の際に生じる自然な力が原因です。

脳内および脳周囲の出血

脳内および脳周囲の出血(頭蓋内出血)は血管が破れることにより生じ、その原因には以下のものがあります。

  • 分娩損傷

  • 脳への血液または酸素の供給を減少させる新生児の重篤な病気

  • 血液凝固の問題

頭蓋内出血は、正常な分娩後、ほかに異常がみられない新生児に生じることがあります。このような例における出血の原因は不明です。

頭蓋内出血は、非常に早く生まれた未熟児ではるかに多くみられます。出血性疾患(血友病など)の新生児においても、脳内で出血を起こすリスクが高くなります。

出血を起こした多くの新生児には症状が現れませんが、活動性が低下したり(ぐったりした状態[嗜眠])、乳を飲まなくなったり、けいれんを起こしたりする場合もあります。

出血は脳内および脳周囲のいくつかの部位で起こります。

  • くも膜下出血は、脳を覆う2枚の膜のうち内側の膜の下で出血が起こります。これは新生児の頭蓋内出血のうち最も多く、通常は正期産の新生児に起こります。くも膜下出血を起こした新生児では、生後2~3日に無呼吸(呼吸が止まる時間)、けいれん発作、または嗜眠がみられることもありますが、通常はいずれ回復します。

  • 硬膜下出血は脳を覆っている外側の膜と内側の膜の間で起こる出血です。分娩技術が向上しているため、現在は非常にまれです。硬膜下出血は脳の表面を圧迫します。硬膜下出血を起こした新生児では、けいれん発作などの異常がみられる場合があります。

  • 硬膜外血腫は、脳を覆う髄膜の一番外側にある層(硬膜)と頭蓋骨との間に生じる出血です。硬膜外血腫の原因は頭蓋骨骨折である場合があります。血腫によって脳の圧力が上昇した場合、頭蓋骨の間の柔らかい部分が(泉門)が膨隆することがあります。硬膜外血腫がある新生児では無呼吸やけいれん発作がみられることがあります。

  • 脳室内出血は、正常な体液で満たされている脳の中の空間(脳室)に出血します。

  • 脳の実質内出血は脳の組織そのものの中で起こります。脳室内出血と脳の実質内出血はたいていの場合、非常に早く生まれた未熟児で起こり、ほとんどは分娩時の損傷ではなく、脳の発達が不十分なために起こります。これらの出血のほとんどは症状を引き起こしませんが、大出血の場合には無呼吸がみられることや、皮膚が青みがかった灰色に変色すること、あるいは新生児の体全体が突然、正常に機能しなくなることもあります。大出血を起こしている新生児の予後は不良ですが、軽度の出血であれば通常は生存し、回復します。

脳の周囲への出血

出血は脳内および脳周囲のいくつかの部位で起こります。

脳の周囲への出血

出血を起こした新生児は、モニタリング、支持療法(保温など)、静脈内輸液のほか、体の機能を維持するためのその他の治療を受けるために新生児集中治療室(NICU)に収容されることがあります。

神経損傷

神経損傷は分娩前および分娩中に生じる可能性があります。通常このような損傷が起こると、損傷を受けた神経が制御する筋肉の筋力が低下します。神経損傷には以下のものがあります。

  • 顔面神経:顔の表情がゆがむ

  • 腕神経叢:腕または手の筋力低下

  • 横隔神経:呼吸困難

  • 脊髄(まれ):麻痺

顔面神経の損傷は、新生児が泣いたときに顔面の表情がゆがむ(左右非対称になっている)場合に明らかです。この損傷は、以下によって神経にかかった圧力が原因です。

  • 出生前に子宮内で胎児がとっていた姿勢

  • 分娩中に神経が母体の骨盤に押し付けられた

  • 分娩を補助するために鉗子が使用された

顔面神経損傷は特に治療する必要はなく、筋力低下は通常、生後2~3カ月までに正常に戻ります。ただし、ときに顔面神経損傷の原因が損傷を受けたことではなく、先天性の病気である場合があり、損傷が回復しません。

腕神経叢は首と肩の間にある大きな神経の一群で、左右の腕につながっています。難産の場合、胎児の腕の片方または両方が引っ張られて腕神経叢の神経が損傷し({blank} 神経叢疾患)、腕と手の一部または全体の筋力低下や麻痺を引き起こすことがあります。肩と肘の筋力低下はErb麻痺と呼ばれ、手と手首の筋力低下はKlumpke麻痺と呼ばれます。腕神経叢損傷の症例の約半数は典型的に大きな胎児の難産に関連したもので、残りの約半数は正常な分娩で生まれた新生児に生じます。帝王切開で生まれた新生児では腕神経叢損傷はあまりみられません。神経が治るまでは、新生児の肩を大きく動かさないようにします。軽度の損傷の多くは数日で回復します。異常が重度である場合や、1~2週間以上続く場合には、理学療法または作業療法を受けて腕を適切な位置に直したり、やさしく動かしたりすることが勧められます。1~2カ月で改善がみられなければ、小児専門病院で小児神経科医または整形外科医により、手術が有益かどうかの評価を受けることが典型的に勧められます。

横隔膜(胸部と腹部の臓器を隔てている筋肉の壁で、呼吸を補助する)につながる神経である横隔神経が損傷を受けることがあり、損傷を受けた側の横隔膜が麻痺します。この場合、新生児は呼吸困難になり、呼吸の補助を必要とすることがあります。横隔神経の損傷は、通常は数週間のうちに完全に治ります。

分娩時に引き伸ばされたことで脊髄に損傷が起きることがありますが、極めてまれです。脊髄が損傷を受けると、損傷した部位より下が麻痺します。脊髄損傷は治癒しないことが少なくありません。首の高い位置での脊髄損傷は、新生児の正しい呼吸を妨げるため、致死的です。

腕の撓骨神経、腰の坐骨神経、脚の閉鎖神経などの神経も、分娩の際に損傷を受けることがあります。

骨の損傷

分娩が正常であっても、分娩前や分娩中に骨折することがあります。

  • 鎖骨の骨折が比較的多く、新生児の1~2%にみられます。ときに、骨折部周辺に組織のかたまりが形成される生後数日まで鎖骨の骨折に気づかないことがあります。鎖骨の骨折が新生児に苦痛を与えることはないと考えられ、治療の必要もありません。数週間で完全に治癒します。

  • また、上腕骨や大腿骨を骨折することもあります。通常は動きを制限するために、ゆるく副子をあてます。これらの骨折は最初の数日間、動かすと痛む場合があります。骨頭(骨の成長が起こる部分)が侵されていなければ、通常は問題なく治癒します。

  • 骨が極めてもろくなる特定の遺伝性疾患の新生児では、複数の骨が折れることがあります。

皮膚と軟部組織の損傷

新生児の皮膚に出生後軽い損傷がみられることがあり、特に子宮収縮時に圧迫された部位や分娩の際に産道から最初に出てくる部位にみられます。分娩に必要となった鉗子などの器具により皮膚が損傷することがあります。顔から先に産まれた児(顔位)は眼の周りや顔に、骨盤位(逆子)の場合は性器に、腫れと皮下出血がみられることがあります(胎位の異常を参照)。このような皮下出血の治療は不要です。

分娩中の器具の使用および新生児が受けるストレス(窒息などによる)により、皮下脂肪が損傷することがあります(新生児の皮下脂肪壊死)。皮下脂肪壊死では、赤く、硬く盛り上がった部分が体幹、腕、太もも、殿部にみられます。このタイプの損傷は通常、数週間から数カ月で自然に治ります。

周産期仮死

周産期仮死は、分娩前、分娩中、または分娩直後における胎児組織への血流の減少、または胎児の血液中の酸素の減少です。一般的な原因としては以下のものがあります。

  • 常位胎盤早期剥離(分娩前に胎盤が子宮から剥がれてしまうこと)

  • 臍帯の血流の閉塞

  • 胎児の発達異常(遺伝子異常がある場合など)

  • 胎児の重度の感染

  • 出生前に母親が特定の薬剤を使用

  • 重度の母体出血

  • 重度の母体疾患

ときに、胎児仮死の正確な原因が特定できないことがあります。

原因にかかわらず、仮死した新生児は出生時に蒼白でぐったりしています。呼吸は弱いかまったくしておらず、心拍が非常に遅くなっています。このような新生児は出生後に蘇生する必要があります。蘇生では、蘇生バッグを用いて肺に空気を送ったり、呼吸用のチューブを新生児の喉に挿管したりします。仮死が急速な失血によって起きた場合には、新生児はショック状態である可能性があります。このような新生児には直ちに静脈から水分補給を行い、ときに輸血を行います。

仮死状態の新生児には、以下のような1つまたは複数の器官系に損傷が生じている徴候がみられることがあります。

  • 心臓:血色が悪い、低血圧

  • 肺:呼吸困難および酸素レベルの低下

  • 脳:嗜眠、けいれん発作、あるいは昏睡に至ることもある

  • 腎臓:尿量の低下

  • 肝臓:乳の消化が困難

  • 造血系:血小板数の減少および出血

新生児は、心臓が機能するよう助ける薬剤や呼吸を補助する人工呼吸器を必要とする場合があります。蘇生された新生児では、72時間の間、体温を正常の37℃より低くすることが有益になる場合があります。造血系の問題を管理するために血球と血漿の輸血が必要になる場合があります。周産期仮死により損傷を受けた器官のほとんどは1週間以内に回復しますが、脳の損傷は持続する可能性もあります。

脳が受けた損傷がごくわずかであった生存児は、完全に正常な場合もあります。脳の損傷が中等度から重度であった生存児では、軽い学習障害から発達の遅れや脳性麻痺に至るまで、損傷の徴候が生涯にわたってみられる可能性があります。重度の仮死状態に陥ると、生存できない乳児もいます。

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