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母乳哺育

執筆者:

Deborah M. Consolini

, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2017年 4月
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新生児にとって母乳は理想的な栄養源です。 乳児は母乳または乳児用人工乳で哺育しますが、少なくとも生後6カ月までの間は母乳だけで授乳を行い、生後6カ月から1年の間に適切な固形食を開始するよう勧められています。1歳を過ぎた後、乳児と母親が望む限り母乳哺育を続けることができます。しかし、1歳以降も母乳を与える場合は、固形食や他の飲みもので足りない分を補うものとすべきです。

母乳の授乳はいつでも可能というわけではなく(母親が授乳期間中にある種の薬を服用している場合など)、乳児用人工乳でも多くの乳児が健康に育っています。

母乳哺育の利点

母乳哺育は、母親にも子にも利点があります。母乳には以下の特徴があります。

  • 乳児に必要な栄養を最も消化しやすく吸収しやすい形で与えることができる

  • 乳児を感染症から守る抗体白血球を含んでいる

最初に産生される乳汁は薄黄色の液体で初乳といいます。初乳のカロリーは特に高く、タンパク質、白血球、抗体も特に豊富に含まれています。

また初乳後に産生される母乳は、便のpHを調整し、腸内細菌のバランスを適切な状態に保つため、乳児を細菌性の下痢から守ります。こうした母乳の防御的な特性により、母乳で育っている乳児は、人工乳で育っている乳児よりも感染症にかかりにくい傾向があります。母乳哺育は、アレルギー、糖尿病肥満クローン病などのある種の慢性疾患の発症を予防すると考えられています。ほとんどの市販の人工乳は、母乳により近くなるよう、ある種の脂肪酸(アラキドン酸[ARA]およびドコサヘキサエン酸[DHA])が添加されており、人工乳で育っている乳児でおそらく理想的な神経発達が促されます。

母乳哺育は、母親にも以下のような利点があります。

  • 人工栄養で育てる場合に比べ、子どもとのきずなを強く感じることができる

  • 出産後の回復が早くなる

  • 長期的な健康上の利点がもたらされる

母乳哺育の長期的な健康上の利点には、肥満、骨粗しょう症卵巣がん、そして一部の乳がんのリスクの低下があります。米国では母親の約60%が母乳を与えており、この比率は着実に高まっています。

母親が健康的で偏らない食事を摂取している場合、ほぼ予定日通りに生まれ母乳を飲んでいる乳児には、ビタミンDとフッ化物以外のビタミンやミネラルの補充は必要ではありません。母乳のみを飲んでいる乳児には、生後2カ月以降にビタミンD欠乏症のリスクがあり、未熟児、皮膚の色が濃い乳児、日光をあまり浴びない(北方気候の場所に住む乳児など)乳児では特にその傾向が強くなります。このような乳児には、ビタミンDの補充を生後2カ月に開始します。生後6カ月を過ぎたら、十分なフッ化物を(添加でも天然でも)含まない水を使用する家庭の乳児には、フッ化物液剤(fluoride drops)を与える必要があります。親は、水のフッ化物含量の情報を居住地の歯科医や保健局から得ることができます。

生後6カ月未満の乳児には真水を追加で与えるべきではありません。真水は不要であり、真水を与えると乳児の血液中の塩分濃度が低くなりすぎることがあります( この病気は低ナトリウム血症と呼ばれます)。

母乳の与え方

母乳による授乳を始めるときは、母親は快適でくつろげる姿勢をとり、座るかほぼ横になった姿勢をとります。片方の乳房からもう片方の乳房へ楽に移行できるようにし、左右の乳房それぞれから母乳を与えます。乳児は母親と対面するように抱きます。母親は、親指と人差し指を乳房の先端に、残りの指を乳房の下部にあてて支え、乳児の下唇の中心に乳首をこすりつけ、乳児が口を開け(吸啜反射)乳首をくわえるように刺激します。母親は乳首と乳輪を乳児の口に入れますが、そのとき乳首が中央にくるように気をつけると乳首が痛むのを防げます。乳児を乳房から離すときは、母親は乳児の口に自分の指を入れて、乳児のあごをそっと押し下げ、吸いつきを外します。乳首が痛む場合は、乳首をくわえさせる位置に問題があり、これは予防する方が治癒させるよりも簡単です。

授乳時の赤ちゃんの抱き方

母親は楽でくつろげる姿勢をとります。このとき母親は座ってもよいし、ほぼ横になってもよいでしょう。何通りか異なった姿勢で乳児を抱いてみます。すると自分と乳児にとって最も合った姿勢が分かります。姿勢を何度か変えてみるのもよいでしょう。

一般的な姿勢としては、母親と対面し、おなかとおなかを合わせるように乳児を膝に抱きます。乳児が左の乳房を吸っている間、母親は左手で乳児の首と頭を支えます。乳房を乳児のところにもっていくのではなく、乳児を乳房の位置までもってきます。母親と乳児を支えるものも重要です。母親の背中や腕の下にまくらを置いてもよいでしょう。足台やコーヒーテーブルに足をのせておくと、母親が乳児の上に前かがみにならなくて済みます。母親が前かがみになると、母親の背中を痛めたり、乳首を痛める原因になります。まくらや折りたたんだ毛布を乳児の下に置いても支えになります。

授乳時の赤ちゃんの抱き方

最初乳児は、それぞれの乳房から数分間ずつ母乳を飲みます。この結果、母親に催乳反射とよばれる反射が生じ、母乳の産生を刺激します。母乳の産生は吸わせている時間が十分かどうかにかかっているため、母乳産生を完全に確立するためには、授乳時間をしっかりとる必要があります。最初の数週間は、授乳のたびに両方の乳房から飲ませるようにすべきです。しかし、先に吸わせた乳房で授乳しているうちに眠ってしまう乳児もいます。乳児にげっぷをさせもう片方の乳房へ移動させると眠るのを防ぐ助けになります。次回の授乳では前回の授乳で最後に吸わせた方の乳房から先に吸わせるようにします。

第1子の場合、十分な量の母乳が出るようになるまで普通は72~96時間かかります。第2子以降は、もっと短い時間で済みます。刺激を与えて母乳の出を良くするためには、最初の数日間は授乳間隔は6時間以内にすべきです。授乳は時間通りというよりは、乳児が欲しがったときに行うべきです。同様に毎回の授乳の長さも、乳児の要求を満たすように合わせてあげましょう。乳児の授乳は24時間に8~12回とされていますが、この目安もかなり個人差があります。

仕事をもつ母親は家にいる間は母乳を与え、仕事に出ている間は哺乳びんに搾った母乳を入れて与える場合もあります。搾った母乳は、2日以内に使う予定の場合はすぐに冷蔵し、それより後に使う予定の場合はすぐに冷凍します。4日以内に使わなかった冷蔵母乳は、細菌で汚染されているリスクが高いため、捨てましょう。冷凍母乳はお湯で解凍します。電子レンジで母乳を温めてはいけません。

乳児にみられる母乳哺育の合併症

母乳哺育による主な合併症は以下のものです。

  • 授乳不足

乳児がどのくらいの量の母乳を飲んでいるか母親には正確には分からないため、出産後3~5日たったら乳児を連れて医師を受診する必要があります。そこで医師は、授乳がうまくいっているかどうかを確かめ、乳児の体重を測り、育児についてのどんな質問にも答えてくれます。乳児が24時間以内に退院した場合や、授乳がうまくいっていない場合、あるいは両親が何か気になることがあると思っている場合は、もう少し早く受診した方がよいでしょう。

医師は、母乳がきちんと出ているかどうかを授乳回数、尿と便によるおむつ替えの回数、体重の増加から判断します。親は乳児が十分な量を飲めているか、おむつの数を数えて大まかに知ることができます。生後5日までに、尿によるおむつの濡れが1日6回未満、もしくは排便が1日4回未満、またはその両方がみられる場合、十分な量が飲めていません。おなかをすかせていて1~2時間毎に授乳しているにもかかわらず、月齢や体格に比べて体重が増えていない乳児は、十分な量の母乳を飲んでいないと考えられます。十分な量の母乳を飲めていない乳児は、脱水になり、高ビリルビン血症を起こすおそれがあります。体格の小さい乳児、未熟児、母親の体調が悪い乳児、難産や手術が必要な分娩であった乳児には、授乳不足のリスクがあります。

母親にみられる母乳哺育の合併症

産褥期の概要も参照のこと。)

母親の一般的な合併症には、乳房緊満、乳首の痛み、乳管の詰まり、乳腺炎、不安などがあります。

乳房緊満は、乳房に母乳がたまりすぎて痛みを伴う状態のことです。母乳が出始めて(授乳)すぐの時期に乳房緊満が起こります。症状を和らげる方法については 乳房緊満に記載しています。

乳首の痛みに対しては、授乳中の乳児の位置をチェックします。乳児が唇を巻きこんだ状態で乳首を吸うと、乳首がヒリヒリします。乳首の痛みを和らげる方法については 母乳哺育を参照してください。

乳管の詰まりは、定期的に乳房から乳汁が出しきれなかった場合に起こります。乳管が詰まると、授乳中の女性の乳房にさわると少し痛いしこりができます。母乳を与え続けることが詰まりを取る最良の方法です。詰まりのある側で授乳させると痛みを感じますが、乳房を出しきるには頻回に母乳を与えることが必要です。母乳を与える前に詰まりのある側に温湿布を当てたり、温マッサージを行ったりすれば助けになるでしょう。乳房に対する乳児の位置によって乳房からの出がよい領域が変わってくるため、母親は授乳する姿勢を変えてもよいでしょう。ワイヤーが下についている、または締めつけるようなストラップがある通常のブラジャーは乳管を圧迫するため、適切な授乳用ブラジャーが役に立ちます。

乳腺炎は、母乳を与えている女性に起こりうる乳房の感染症で、乳房の張りや乳管の詰まりがある場合に特に起こりやすくなります。ひび割れや傷ができた乳首から細菌が乳房に入り、感染を引き起こします。感染した領域はさわると痛み、熱をもって赤くなり、全身症状として発熱、悪寒、インフルエンザの様な痛みが現れることがあります。症状が重い、または12~24時間以内に治らない場合は、母乳を飲んでいる乳児にとって安全な抗菌薬を母親に投与します。痛みが強い場合は、痛みを和らげるためアセトアミノフェンを服用することもあります。治療中も母乳を与え続けることが必要です。

不安、フラストレーション、および不適格感は、母乳哺育の経験不足、乳児を胸に抱き母乳を吸わせることの難しさ、疲労、母乳を十分に与えているかを判断することの難しさ、ならびに分娩後の生理的変化などによって生じます。これらの要因や感情が、母親が母乳哺育をやめる最もよくみられる理由です。母親は小児科医や母乳育児の専門家を受診し、自身の感情について相談することにより、早い時期に母乳哺育を止めてしまうことを防げる可能性があります。

授乳期間中の薬剤の服用

母乳育児中の母親はできることなら薬の服用を避けるべきです。薬物療法が必要な場合は、特定の薬は避け、安全とされているものだけ使用すべきです( 授乳期間中の薬の使用)。

離乳

母乳を与えるのをいつやめるか(離乳)は、母親と乳児の両方の必要性と要望に基づいて決めます。母乳だけで育てる時期は少なくとも生後6カ月間とし、生後12カ月まで母乳に固形食を併用し、母乳哺育は母親と乳児が望む限り長い間続けるのが、最も理想的だとされています。離乳は、突然授乳をやめるよりも、数週間から数カ月かけてゆっくり行う方が、乳児にとっても母親にとっても楽です。

離乳の最初の段階では、まず1日の授乳のうち1~3回を、哺乳びんまたはコップに水か薄めた果物のジュース(生後6カ月未満の乳児には水や果物のジュースは使用しないこと)、搾った母乳、乳児用人工乳、あるいは(生後12カ月を過ぎたら)全乳を入れて飲ませる練習に切り替えます。コップから飲めるようになることは、発達上の非常に重要な段階の1つですので、生後10カ月までには、コップを使うことに慣れさせましょう。離乳の過程で哺乳びんの代わりに乳児用の蓋付きコップを使った乳児の場合は、哺乳びんからコップへ移行するプロセスを経ずに済みます。

特に食事時間にあたる回は、固形食を与えるようにしていくべきです。母親は母乳を徐々にその他のものに代えていきますが、多くの乳児は生後18~24カ月までは1日に1~2回は母乳を飲み続けます。なかには、もっと長い期間母乳を飲む子もいます。母乳を飲む期間が長く続く場合も、同時に固形食を食べさせ、コップから飲めるようにしなくてはなりません。

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