尿の逆流

正常な状態の人間には尿管が2本あります。一方の尿管は左の腎臓と膀胱をつなぎ、もう一方の尿管は右の腎臓と膀胱をつないでいます。膀胱の先天異常や尿管の先天異常の多くが、尿管と膀胱のつながる接合部に起こります。正常であれば、この接合部では、尿は腎臓から膀胱に向かう一方向にしか流れないようになっています。接合部に異常があると、尿が膀胱から逆流して尿管やときには腎臓へと流れ込む場合があります。さらに、尿の流れを妨げる他の異常によって、膀胱内の圧力が高まり尿が逆流することがあります。逆流は、左右片側に生じる場合もあれば、両側に生じる場合もあります。

尿の逆流そのものは症状を引き起こしませんが、小児が尿路感染症を発症すると症状がみられることがあります。その場合、発熱、腹痛、背部痛、排尿回数の正常時からの増加、排尿時の灼熱感などがみられます。

• 排尿時膀胱尿道造影検査または膀胱シンチグラフィー

乳児や幼児に発熱が起きるほど重症の尿路感染症が起きている場合には、尿の逆流が疑われます。一部の小児は、尿の逆流と診断された兄弟姉妹がいることを理由に受診に至る場合があり、また尿の逆流がみられる小児の兄弟姉妹は、この病気を発症するリスクが高いです。どちらの場合も、医師は通常、尿路の超音波検査を行って異常がないか調べます。

超音波検査の結果が異常な場合や、尿路感染症が続く場合は、排尿時膀胱尿道造影検査と呼ばれるより複雑な検査を行うことがあります。排尿時膀胱尿道造影検査では、尿道から膀胱までカテーテルを挿入し、そのカテーテルを通して造影剤（X線画像に写る液体）を注入してから、排尿前と排尿後にそれぞれX線撮影を行います。

膀胱シンチグラフィーは排尿時膀胱尿道造影検査と似ていますが、膀胱に放射性物質を注入して核医学検査用の装置で画像を撮影するという点で異なります。この検査では、小児の卵巣や精巣が浴びる放射線の量が排尿時膀胱尿道造影検査よりも少なくて済みますが、尿の逆流は、膀胱シンチグラフィーまたは排尿時膀胱尿道造影でのみ診断することができます。

尿路感染症などの感染症を検出するために尿検査も行います。

• ときに抗菌薬の予防投与

• ときに手術

尿の逆流の治療法は、具体的な先天異常のほか、合併症の重症度によっても変わります。

症状がほとんどなく、合併症もみられない小児では、その多くで成長とともに逆流がみられなくなることから、通常は治療は必要ありません。

重度の逆流、発熱を伴う頻繁な尿路感染症、またはこの両方がみられる小児には、ときに感染予防のために抗菌薬を連日使用することがあります。重度の逆流がみられる小児には、問題を是正して正しい尿の排出を確立するための手術も必要になることがあります。