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小児に対するネグレクトと虐待の概要

執筆者:

Alicia R. Pekarsky

, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital

最終査読/改訂年月 2018年 2月
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小児に対するネグレクトとは、小児の成長に欠かせないものを与えないことです。小児虐待とは、小児に危害を加えることです。

  • 小児に対するネグレクトや虐待のリスクを上昇させる要因として、貧困、薬物やアルコールの乱用、精神障害、片親による育児などがあります。

  • ネグレクトや虐待の被害を受けた小児は、疲れていたり、空腹であったり、不潔であったり、身体的な外傷、情緒面の問題、精神的な問題などを抱えている場合がありますが、まったく正常にみえる場合もあります。

  • 虐待が疑われるのは、偶発的なものとは思えないような傷がみられる場合や、傷の様子が養育者の説明と食い違う場合、けがをする可能性があるようなことをできるほどには成長していない場合(乳児がストーブに火をつけるなど)、偶発的とは思えないような新旧の傷が同時にみられる場合などです。

  • それ以上の被害から小児を保護する必要があり、その方法としては、児童保護局や警察の介入、入院、親と小児に対するカウンセリング、安全で適切なケアを行えるように家族を支援するなどがあります。

ネグレクトは、小児の身体面、医療面、教育面、情緒面で必要不可欠なものを与えないことです。

虐待には、身体的虐待性的虐待情緒的虐待があります。医療現場における小児虐待も関連する可能性があります。

小児に対するネグレクトと虐待が同時に行われることが多く、親密なパートナーへの虐待のような別の家庭内暴力に伴って行われることもよくあります。ネグレクトや虐待はその行為による直接の危害に加え、精神障害や物質乱用といった長期的な弊害のリスクを高めます。小児虐待は、肥満や心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの成人期の問題にも関連します。

2015年には、米国児童保護局(Child Protective Services)に720万人の小児が関与する440万件の小児虐待の疑いが報告されました。この報告のうち、約210万件が詳しく調査され、約68万3千件の小児虐待またはネグレクトが特定されました。男女で発生率に違いはありません。乳幼児では虐待のリスクが高くなります。

2015年に米国で確認された事例のうち、ネグレクトは75.3%(医療ネグレクトを含む)に、身体的虐待は17.2%に、性的虐待は8.4%に、情緒的またはその他の虐待は6.9%にみられました。多くの被害児が、複数の種類の虐待を受けていました。

2015年には米国で約1670人の小児がネグレクトや虐待により死亡し、そのうち約4分の3が3歳未満でした。70%以上がネグレクトによるものであり、身体的虐待のみか、または他の虐待を伴う身体的虐待によるものは44%でした。加害者の75%以上で両親の関与(両親のみの場合も他者が関連している場合もある)がみられました。死亡の約25%が母親のみからの虐待によるものでした。

小児に対するネグレクトと虐待の危険因子

ネグレクトや虐待は、個人的、家族的、社会的な要因が複雑に組み合わさって起こります。親がネグレクトや虐待を行う可能性を高める要因は、片親である、貧困状態にある、薬物やアルコールの乱用の問題を抱えている、精神的な問題(パーソナリティ障害、自尊心が低いことなど)があることです。また、親が子どもの頃に身体的虐待や性的虐待を受けたことがある場合、自分の子どもを虐待する可能性がより高くなります。貧困家庭の子どもでは、貧困でない家庭に比べてネグレクトが12倍も多くみられます。

初めての子育てや、両親が青年期であること、また5歳未満の子どもが数人いるような家庭でも、虐待のリスクが高くなります。妊娠中に出生前ケアを受けていないか、喫煙や薬物乱用がみられる、またはドメスティックバイオレンスの被害を受けていた女性も、子どもを虐待するリスクがあります。

ときに情緒的な強い絆が親子間に形成されないことがあります。 このような絆の欠如は、乳児期早期に親から分離された未熟児病気の乳児、または生物学的血縁関係のない小児(例、継子)でより高頻度に生じ、虐待リスクが高くなります。

身体的虐待、情緒的虐待、およびネグレクトは、貧困や社会経済的地位の低さに関連しますが、性的虐待を含めたすべての種類の虐待は、社会経済集団のあらゆる層で発生します。

ネグレクトと虐待の種類

小児に対するネグレクトや虐待には、いくつかの種類があります。これらがしばしば同時に起こります。

ネグレクト

ネグレクトとは、子どもの身体的、情緒的、教育的、医学的な基本的ニーズを満たそうとしないことをいいます。その人が虐待を行っていることを知っていながら、親や養育者がその人に子どもを預ける場合、または幼児を付き添いなしで1人にしておく場合などがあります。ネグレクトには様々な種類があります。

身体的ネグレクトでは、親や養育者は、十分な食事、衣類、居住環境、監督、潜在的危害からの保護を与えません。

情緒的ネグレクトでは、親や養育者は、愛情やその他の情緒的な支援を与えません。子どもは無視されたり、拒絶されたり、他の子どもや大人との交流を妨げられたりします。

医療ネグレクトでは、親や養育者は、けがや身体的または精神的な病気に必要な治療などの十分なケアを子どもに受けさせません。子どもが病気になったときに医療機関の受診を遅らせ、より重い病気にかかるリスクを高め、死亡に至らしめることさえあります。

教育的ネグレクトでは、親や養育者は、子どもを学校に入学させなかったり、公立学校や私立学校などの通常の学校へきちんと出席させなかったり、在宅教育を受けさせなかったりします。

ネグレクトは、多くの場合、親や養育者が、育児の中で小児にわざと危害を加えようとして起こしたものではないという点で虐待とは異なります。

ネグレクトは通常、不十分な育児技能、ストレス対処技能の不足、支援が得られない家庭環境、ストレスの多い生活環境など、複数の要因が組み合わさって生じます。ネグレクトは経済的ストレスと環境ストレスのある貧困家庭で発生することが多く、特に、親に精神障害(典型的にはうつ病双極性障害統合失調症)、薬物またはアルコールの乱用、または知的障害などがみられる場合に、その傾向が強まります。片親家庭の小児では、収入が低く、利用可能な資産が少ないことにより、ネグレクトのリスクが生じます。

身体的虐待

厳しすぎる体罰を加えるなど、小児を身体的に虐げたり、危害を加えたりすることが、身体的虐待に当たります。具体的な形態として、揺する、落とす、打つ、噛む、熱傷(やけど)を負わせる(例、熱湯をかける、タバコを押しつ付ける)などがあります。小児は、年齢にかかわらず、身体的虐待を受ける可能性がありますが、特に、乳幼児が被害を受けやすい傾向にあります。乳幼児は自分で話すことができないため、虐待が繰り返されるリスクが特に高くなります。また、この頃は通常、簡単に養育者をイライラさせて衝動をコントロールできなくさせるようなことが小児にみられる時期です。イライラさせられることの例として、かんしゃくトイレトレーニング一定しない睡眠パターン仙痛などがあります。

乳児にみられる重篤な頭部外傷で、最も一般的な原因は、身体的虐待です。身体的虐待による腹部のけがは、乳児より幼児でよくみられます。身体的虐待(故意の殺人を含む)は、小児の死亡原因の上位10に含まれています。一般に、小児が身体的虐待を受けるリスクは、小学校低学年で低くなります。

貧困層の若い片親のもとに生まれた小児は、身体的虐待を受けるリスクが最も高くなります。家族がストレスを抱えていると、身体的虐待の原因となります。このようなストレスは、失業、頻繁な転居、友人や家族からの社会的孤立、家庭内暴力の存在などによるものです。扱いにくい小児(神経過敏、要求が多い、活発すぎる)、または特別な配慮が必要な小児(発達障害や身体障害などがある)は、身体的虐待を受ける可能性が高いと考えられます。

別のストレスがある中で困難な事態が発生したことがきっかけとなって、身体的虐待が引き起こされることがよくあります。そういった困難な事態には、失業、家族の死、しつけの問題などがあります。親が薬物使用者や飲酒者の場合、子どもに対して衝動的で自制できない行動をとることがあります。親に精神的な問題がある小児も、虐待を受けるリスクが高くなります。

子どもの頃にネグレクトや虐待を受けたことがある親は情緒的に成熟していないことや、自尊心が低いことがあります。虐待を行う親たちは、子どもを無制限かつ無条件の愛情をくれる源とみなし、自分がかつて受けられなかった支援を子どもに期待することがあります。その結果として、親は、子どもが自分に与えることができるものに対して非現実的な期待を抱き、いらだちやすくなって衝動を抑えられなくなり、自身が一度も受けたことがないものを子どもに与えることができない可能性があります。

性的虐待

成人やかなり年長の青年が、自分の性的満足を満たすために小児に対して行う行為は、すべて性的虐待とみなされます( 小児性愛)。これには以下のようなものが含まれます。

  • 小児の腟、肛門、口に挿入行為を行う

  • 挿入は行わないが性的な意図で小児の体に触る(性的いたずら)

  • 小児に虐待加害者の性器やわいせつ物を見せる

  • 他の小児との性行為に強制的に参加させる

  • ポルノ作品に小児をキャスティングする

小児同士の性的な遊びは、性的虐待に含まれません。このような性的な遊びは、年齢が近い小児同士が、強要や強制ではなく、お互いの陰部を見たり触ったりすることです。小児との特定の状況を、性的虐待とみなすべきか否か明らかにしようとする場合、小児の年齢、力、体格や人気度などを考慮に入れることが重要です。性的な遊びと性的虐待を区別する定まったガイドラインはないものの、例えば、たとえ両者が合意していたとしても、12歳の小児と8歳の小児との性交は不適切です。年長の小児と年少の小児との年齢差が大きいほど、両者の間の情緒面と知的面の成熟度や社会的地位の差は大きくなります。そうした差がある程度大きくなると、差が非常に大きいことから、年少者が年長者との行為に正当に「合意した」とはいえなくなります。

18歳までに性的虐待の被害を受ける小児の割合は、女子で約12~25%、男子で約8~10%です。性的虐待の加害者のほとんどは小児が知っている人で、よくあるのは継父、叔父、母親の男友達などです。女性の加害者はそれほど多くはありません。

ある種の状況は、性的虐待のリスクを高めます。例えば、小児の養育者が複数いる場合や、小児の養育者に複数のセックスパートナーがいる場合は、リスクが高くなります。また、社会的に孤立していること、自尊心が低いこと、同様に性的虐待を受けていた家族がいること、暴力団と親交があることもリスクを高めます。

情緒的虐待

小児を心理的に虐待するようなことを言ったり、そのように振る舞うことが、情緒的虐待です。情緒的虐待によって、自分は役に立たない、自分には欠点がある、自分は愛されていない、自分は必要とされていない、自分は危険にさらされている、他の人の要求を満たしたときのみ自分の価値があるという感情が、小児に芽生えます。

情緒的虐待には次のようなものがあります。

  • 怒鳴ったり叫んだりして叱りつける

  • 小児の能力や小児が成し遂げたことをけなす

  • 罪を犯したり、アルコールや薬物を乱用したりするなどの逸脱行動や犯罪行動をそそのかす

  • 小児をいじめたり、脅迫したり、おびえさせたりする

このような情緒的虐待は長期間にわたって行われる傾向があります。

医療現場における小児虐待

このタイプの小児虐待(以前は代理ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれ、現在は、他者に負わせる作為症と呼ばれている)は、あまり多くありませんが、養育者が健康な小児を病気であると意図的に医師に思わせるものです。典型的には、例えば、養育者は小児が吐いている、腹痛を訴えているなどと言って、小児の症状について虚偽の情報を与えます。しかし、養育者は、例えば小児に薬を投与するなど、症状を引き起こすようなことを行う場合もあります。養育者は、ときには臨床検査に供されるサンプルに血液や他の物質を加えることにより、あたかも小児が病気であるように見せかけることもあります。

文化的要因

文化が違えば、小児をしつける方法も違います。痛みを与える身体的な罰はどのようなものでも体罰といいますが、中には体罰を用いる文化もあります。むちで打つ、火や熱湯で熱傷(やけど)を負わせるなど、重い体罰は身体的虐待です。しかし、たたくなどの比較的程度の軽い体罰の場合、社会的に許容される行動と虐待との境界は文化によって違います。一部の専門家は、怒りにかられて行った体罰、小児を傷つけるために行った体罰、または目に見えるけがを負うことになった体罰は、どのような文化であっても許されないとしています。

医療行為も文化的背景によって様々です。特定の文化的慣習(例、女性性器切除)は、虐待となるほど過激です。しかし、特定の民間療法(例、コイニング、カッピング)では、皮下出血や軽微な熱傷がしばしば生じ、あたかも重い体罰の結果のように見えますが、そうではありません。

特定の宗教的および文化的集団のメンバーは、生命を脅かす病気(例、糖尿病性ケトアシドーシス髄膜炎)にかかっている小児に治療を受けさせないことがあり、その結果、小児が死亡する場合があります。そのような行動は、親または養育者の信条にかかわらず、一般的にはネグレクトとみなされます。小児が病気や不健康な状態の場合に医療を拒否することについては、さらに調査が必要なことが多く、ときには法的介入も必要です。さらに米国では、特定の人々および文化的集団が、安全性に関する懸念または宗教的理由から、小児のワクチン接種を拒否することが増えています。このワクチン接種拒否が、真の医療ネグレクトと法的にみなされるか否かは定まっていません。

症状

ネグレクトや虐待によって現れる症状は、ネグレクトや虐待の種類や期間、小児一人ひとり、および特定の状況に一部依存して異なります。症状には、明らかな身体的外傷に加えて、情緒障害や精神障害もみられます。このような問題は、ネグレクトや虐待を受けた直後に現れる場合や、しばらく経ってから現れる場合があり、長引く場合もあります。

ときに、虐待を受けている小児に注意欠如・多動症(ADHD)の症状が出ているようにみえることがあり、このような場合には、誤って 注意欠如・多動症と診断されます。

身体的ネグレクト

身体的ネグレクトを受けた小児は、低栄養状態に見えたり、疲れていたり、不潔だったり、適切な服装をしていない場合や発育不良の場合があります。また、学校を休みがちになることもあります。極端な例では、小児が一人きり、または兄弟姉妹だけで暮らしていて、成人が監督していないことが発覚する場合もあります。監督されていない小児は、病気になったりけがを負ったりすることがあります。身体的ネグレクトを受けた小児は、身体的発達や情緒的発達が遅れることがあります。なかには、飢えや野ざらしにされることによって死亡する小児もいます。

身体的虐待

身体的虐待の徴候としては、あざ、熱傷(やけど)、みみず腫れ、咬まれた跡、すり傷などがよくみられます。これらの傷跡は、小児を虐待するのに使われたベルト、電気コード、延長コードなどの形をしていることがよくあります。小児の皮膚には、たたくまたはつかんで揺することによる、手形や指先の円形の跡がみられることがあります。また、タバコや熱湯による熱傷が、腕や脚、体の他の部分にみられることもあります。猿ぐつわをはめられた小児では、口角部に皮膚の肥厚や瘢痕(はんこん)がみられることがあります。髪を引っ張られた小児では、髪の一部が抜けているか、頭皮が腫れていることがあります。口の中、眼、脳、その他の内臓に重い損傷があっても、外見からは分からないことがあります。しかし、身体的虐待の徴候は、多くの場合はっきりしません。例えば、小さいあざや赤紫色の点々が顔、首、またはその両方に現れることがあります。骨折など、すでに治り始めた古い傷の跡が認められることもあります。虐待によるけがで外見が損なわれることもあります。

幼児が故意に熱湯(熱い風呂など)に入れられると、熱湯による熱傷を負います。このような熱傷が殿部にみられる場合があり、ドーナツのような形になることがあります。熱湯に浸からなかった皮膚や、浴槽の冷たい底に押し付けられた皮膚には熱傷は認められません。熱いお湯が飛び散って、殿部以外のあちこちに小さい熱傷ができていることもあります。

現在、虐待による頭部外傷(AHT)と呼ばれているものにより、乳児の脳に損傷が生じていることがあります。AHTは、小児の頭を乱暴に揺すったり、固い物体に打ちつけたりすることによって生じます。AHTは、揺さぶりだけではない行為が関与している可能性があるため、「揺さぶられっ子症候群」という言葉から変更されたものです。AHTがみられる乳児は、ぐずったり嘔吐したりすることもあれば、外傷の目に見える徴候がないにもかかわらず深く眠っているように見えることもあります。このような睡眠は脳が損傷を受けて腫れているためで、これは脳と頭蓋骨の間の出血(硬膜下出血)により生じている可能性があります。また、眼球の奥にある網膜に出血(網膜出血)がみられることもあります。さらに、肋骨やその他の骨が折れていることもあります。

長い間虐待を受けていた小児は、怖がりで神経過敏にみえることがよくあります。また、睡眠を十分にとれないこともよくあります。さらに、抑うつ状態になり、不安を感じ、心的外傷後ストレスの症状がみられる場合もあります。このような小児は、暴力行為や自殺行動を起こしやすい傾向にあります。

性的虐待

行動の変化は、性的虐待を受けた小児によくみられる徴候です。このような変化は、突然みられる場合や極端に変化する場合があります。小児が攻撃的になったり、内気になったり、恐怖症や睡眠障害が発生することもあります。性的虐待を受けた小児は、過度に自分に触る、または適切でない方法で他人に触れるなど、性行動を示すことがあります。親や他の家族から性的虐待を受けた小児は、矛盾した感情を覚えることがあります。この場合、加害者に対して感情的には親しさを感じる一方で、裏切られた思いを抱きます。

性的虐待により身体的外傷がみられることもあります。例えば、性器、肛門、口などの周囲に、あざや裂傷、出血などが認められる場合があります。性器や直腸に受けた傷のために、最初は、歩いたり座ったりすることが難しくなることもあります。女児では腟分泌物、性器出血や性器のかゆみがみられることがあります。淋菌感染症クラミジア感染症ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症などの性感染症や他の感染症がみられる場合もあります。妊娠することもあります。

情緒的虐待とネグレクト

一般に、情緒的虐待を受けた小児には、精神的に不安定で、他者との関係に不安を抱く傾向がみられます。その原因は、自分の要求を一貫して満たしてもらったり、期待通りに受け入れてもらったりした経験がないためです。他の所見は、小児が情緒的虐待を受けた特定の方法によって異なります。小児の自尊心が低下することがあります。小児を怖がらせたり脅したりすると、ビクビクして内気になることがあります。この場合、臆病で、疑い深く、優柔不断で、成人を喜ばせようと必死になることもあります。また、見知らぬ人に近づくなどの不適切な行動をすることもあります。他人との関わりを許されなかった小児は、社会環境の中では落ち着きがなくなり、通常の人間関係を築きにくくなることがあります。犯罪を犯したり、アルコールや薬物を乱用したりすることがあります。より年長の小児では、きちんと学校へ行かなくなったり、行っても成績がよくなかったり、先生や友人と関係を築きにくくなったりします。

情緒的ネグレクトを受けた乳児は、発育不良に陥ることが多く、感情が欠落しているように見えたり、周囲に関心がないように見えたりすることがあります。情緒的ネグレクトを受けた小児の行動は、知的障害や身体的な病気と間違われることもあります。情緒的ネグレクトを受けた小児では、社会的技能(他者とうまく付き合う能力)の欠如や、発話や言語能力の発達の遅れがみられることがあります。

知っていますか?

  • 性的虐待を受けた被害者のほとんどが、加害者を知っています。

診断

  • 医師の診察

  • 傷の写真

  • 身体的虐待では、ときに臨床検査や画像検査(X線検査やCT検査)

  • 性的虐待では、感染症の検査、ときに体液、体毛や他の証拠となる物質のサンプル採取

ネグレクトや虐待に気づくのは難しい場合が多く、小児が重度の低栄養状態に見えたり、明らかな傷があったり、ネグレクトや虐待の現場を他の人が目撃するといったことがない限り、なかなか発見されません。長年にわたって気づかれずにいることもあります。ネグレクトや虐待が気づかれない理由は、数多く存在します。例えば、虐待を受けている小児が、それを普通のことだと思って話そうとしない場合があります。また、身体的虐待や性的虐待を受けた小児が虐待のことについて進んで話をしたがらないことも多く、その理由は恥ずかしさや仕返しをおそれてのことですが、虐待を受けるのが当然だと思っている場合さえあります。身体的虐待を受けた小児が十分に話すことができる年齢の場合は、直接尋ねられれば、たいてい加害者を特定し自分の身に起こったことを説明します。しかし、性的虐待を受けた小児では、秘密にすると加害者に誓っている場合や、心の傷があまりに深いために虐待の事実を話すことができない場合や、具体的に質問されても虐待を否定する場合さえあります。

医師がネグレクトや何らかの虐待ではないかと疑った場合は、他の虐待の徴候がないか調べます。また、小児の身体面、環境面、情緒面、社会面で必要なことが満たされているかについても詳しく調べます。医師は、小児と養育者との相互関係をできる限り観察するようにします。病歴の記録として、聴取内容の正確な引用を書きとめ、あらゆる傷の写真を撮ります。

ネグレクトおよび情緒的虐待

ネグレクトを受けている小児は、医療従事者が、けがや病気、問題行動など、直接関係のない問題を調べているときに特定されることがあります。小児の身体面や精神面での成長が通常より遅いことや、予防接種や健診をほとんど受けていないことに医師が気づくことがあります。しばしば教師やソーシャルワーカーがネグレクトの第一発見者となります。小児が学校の無断欠席を繰り返すことで、教師が気づく場合もあります。

情緒的虐待は、通常、学校の成績がよくない、問題行動があるといった別の問題を調べているときに発見されます。情緒的虐待を受けた小児では、身体的虐待や性的虐待の徴候がないかも調べます。

身体的虐待

まだ伝い歩き(家具につかまって歩く)ができない乳児に、あざやひどい傷、首や顔に大したことがないように見えるけががみられる場合に、身体的虐待が疑われることがあります。乳児が普段よりも眠りがちであったり、嗜眠状態の場合は、脳損傷がないか調べます。幼児や年長の小児では、脚の後ろ側や殿部など、普通みられないような場所にあざがみられる場合に虐待が疑われることがあります。小児が歩き始めようとしているときにあざができることはよくありますが、そのようなあざは、一般的に膝、すね、あご、額など、体の前側の骨が突き出た部分にできます。

親が小児の健康状態についてほとんど知らなかったり、小児の明らかなけがについて無関心であったり、大げさに心配するといった様子がみられる場合も、虐待が疑われることがあります。自分の子どもを虐待している親は、何が原因で小児がけがをしたのかを医師や友人に話すことを嫌がることがあります。親の説明が小児のけがの発生時期やけがの状態と一致しない場合や、話すたびに説明が変わる場合もあります。虐待を行う親は、子どものけがの治療をすぐには求めないことがあります。

医師が身体的虐待を疑う場合、通常は小児の傷の写真を撮ります。脳の画像検査(CT検査MRI検査)を行うことがあります。また、X線検査を行って、過去に受けた傷の痕跡がないか調べることもあります。小児が3歳未満の場合は、全身の骨のX線検査を行って骨折がないか調べることもよくあります。

性的虐待

性的虐待の診断は、多くの場合、被害を受けた小児の話や虐待行為の目撃者の話に基づいて下されます。しかし、性的虐待については話したがらない小児が多いため、小児の行動が異常になったことだけを根拠に、性的虐待が疑われることがあります。幼児が性感染症にかかっている場合、医師は性的虐待を疑うべきです。

小児が性的虐待を受けてから医療機関に来るまでに96時間が経過していなければ、医師は小児の診察を行い、体液や皮膚表面のサンプルをぬぐって採取するなどして、性的接触があった可能性を示す法的証拠を集めます。この証拠の収集は多くの場合、いわゆるレイプキットと呼ばれるものを用いて行われます。目に見える傷があればすべて写真撮影を行います。一部の地域では、小児の性的虐待について評価を行うための特別な訓練を受けた医療従事者が、このような診察を行います。一般的には性感染症の検査も行い、適切な場合は妊娠検査も行います。

予防

小児虐待とネグレクトを防ぐ最良の方法は、始まる前に阻止することです。親を支援し良好な養育技能を指導するプログラムが、非常に重要かつ必要です。親は、積極的なコミュニケーション、適切なしつけ、子どもの身体的な要求や情緒的な要求にこたえる方法を学ぶことができます。小児虐待とネグレクトを防止するプログラムは、親子関係を改善し、親に社会的支援を行う助けにもなります。

親を支援するこのようなプログラムは、家庭、学校、診療所や精神科クリニック、地域の保健所やセンターで催されます。プログラムは個別のこともあればグループで行われることもあります。

治療

  • けがの治療

  • ときに家庭からの退避など、小児の安全を確保する対策

すべての身体的な外傷や病気に対して治療が行われます。けがや重度の低栄養、その他の病気の治療のために、入院が必要な小児もいます。手術を必要とする重度のけがもあります。虐待による頭部外傷の可能性がある乳児は、通常、入院させます。ときには、安全な場所が確保できるまで、さらなる虐待から保護するために、健康な小児を入院させることもあります。身体的虐待(特に頭部外傷)は、発達に対して長期にわたり影響を及ぼします。頭部外傷がある小児は、言語療法や作業療法などの早期介入が必要である場合があるため、すべて医師の診察を受ける必要があります。

性的虐待を受けた小児では、場合によってはHIV感染症を含めて、性感染症を予防する薬が投与されることもあります。虐待を受けていると疑われる小児には、直ちに支援を行う必要があります。性的虐待を受けていた場合、初めは影響がないように見える小児でも、よく長期的な問題が発生するため、精神科医の診察を受けさせます。長期にわたって心理カウンセリングが必要になることもよくあります。性的虐待以外の虐待を受けた小児に行動障害や情緒障害がみられる場合、医師は小児にカウンセリングを受けさせます。

被害児の当面の安全確保

医師や他の医療従事者は、小児に対するネグレクトや虐待が疑われるケースでは、速やかに地域の児童保護局(Child Protective Services)に届け出ることが法的に義務づけられています。医療従事者は、法に従って報告が行われること、それをもとに当局から連絡を受けて面接を受ける場合があること、また、自宅への訪問調査の可能性が高いことを親に伝えるべきです(しかしこれは義務づけられてはいません)。状況によっては、地元の警察当局に連絡する場合もあります。即時報告の義務は、18歳未満の小児のケアに関わる職業につくすべての人にも課せられています。この中には、教師、保育者、里親、警察官、司法関係者なども含まれています。これ以外の人でも、法律で義務づけられてはいませんが、ネグレクトや虐待に気づいたり、それを疑ったりした場合には、通報するように奨励されています。正当な理由に基づいて誠意ある虐待報告を行う者は誰でも、その行為のために逮捕されたり訴えられたりすることはありません。虐待を通報したり支援を得るには、全米小児虐待ホットライン(National Child Abuse Hotline)1-800-4-A-CHILD(1-800-422-4453、米国のみ)に連絡します。

報告を受けた小児虐待のケースは、まず詳しい調査が必要か否か調べられます。報告されたケースで詳しい調査が必要なものについては、地元の児童保護局の担当者による調査が行われ、担当者は虐待などの事実があるかどうかを判断して、様々な勧告を行います。児童保護局の担当者による勧告には、様々な社会的サービス(小児と家族が対象)の適用、保護を目的とした一時的入院措置、一時的な親族の家への引き取り、一時的なフォスターケア(里親制度)の適用などがあります。小児にすぐ必要な医療措置、けがの重症度、ネグレクトや虐待の再発の可能性などに基づいて、児童保護局の担当者がやるべきことを判断する際には、医師とソーシャルワーカーが手助けをします。

フォローアップケア

医師、その他の医療従事者、ソーシャルワーカーなどからなるチームが、ネグレクトや虐待の原因やその影響への対処を試みます。このチームは、法的システムと連携して小児のケアを調整します。このチームはまた、被害を受けた小児にとって何が必要かということについて家族が理解するのを手助けし、地元の様々なサービスを受けられるよう支援します。例えば、親が医療費を支払う余裕がない小児には、国の医療費援助を受ける資格が与えられます。他の団体や国の制度により、食事や保護施設が提供されることもあります。親が物質乱用や精神面の問題を抱えている場合は、適切な治療プログラムを受けるよう指導されることもあります。地域によっては、子育てのためのプログラムや支援グループを利用できるところもあります。ソーシャルワーカーや被害者擁護団体などから定期的または継続した連絡を受けることが家族にとって必要な場合もあります。

家庭からの退避

児童保護局の最終目標は、小児を安全で健全な家庭環境に戻すことです。虐待の性質やその他の要因に応じて、小児を家族とともに帰宅させる場合や、家庭から引き離して、小児をさらなる虐待から守ることのできる親戚の家や里親のもとで養育させる場合があります。このような措置は一時的であることが多く、例えば、親が住む家や仕事を見つけるまでの間や、ソーシャルワーカーによる定期的な家庭訪問が可能になるまでの間に適用されます。残念ながら、ネグレクトや虐待の再発はよくみられます。ネグレクトや虐待が激しいケースでは、長期の退避を考慮することや親権が永久に剥奪されることがあります。このような場合は、小児の養子縁組が決まるか、成人するまでの間はフォスターケア(里親)による養育を続けます。

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