この病気は、成長過程の股関節の脆弱化が原因である可能性があります。
典型的な症状として、股関節のこわばりや軽度の痛みなどがあります。
診断はX線検査のほか、ときにその他の画像検査に基づいて下されます。
病気を治すためには通常、手術が必要です。
(小児における骨の病気の概要 小児における骨の病気の概要 骨の病気は、けが、感染症、がんが原因で起こったり、遺伝によって生じたり、小児の成長の一環として起こったりすることがあり、また原因が不明の場合もあります。 骨の病気には、痛みが起こり、歩くのが難しくなるものもありますが、何の症状も起こらないものもあります。 徹底的な病歴聴取、注意深い観察と診察、および適宜用いるX線検査またはMRI検査に基づ... さらに読む も参照のこと。)
大腿骨とは太ももの骨のことです。大腿骨の上端の部分(球が受け皿に収まる構造になっている股関節の球)を大腿骨頭といいます。大腿骨頭が、大腿骨の 成長板 小児における骨の病気の概要 骨の病気は、けが、感染症、がんが原因で起こったり、遺伝によって生じたり、小児の成長の一環として起こったりすることがあり、また原因が不明の場合もあります。 骨の病気には、痛みが起こり、歩くのが難しくなるものもありますが、何の症状も起こらないものもあります。 徹底的な病歴聴取、注意深い観察と診察、および適宜用いるX線検査またはMRI検査に基づ... さらに読む の部分でずれることがあります。成長板は骨の端部に近い軟骨の柔らかい部分で、小児の骨はここから成長します。
大腿骨頭すべり症は通常、青年期早期に発生し、特に男児によくみられます。 肥満 青年における肥満 肥満の定義は、BMI(ボディマスインデックス)が各年齢と性別の95パーセンタイル以上であることとされています。 遺伝やある種の病気によっても肥満は起こりますが、青年の肥満のほとんどは、運動不足や活動レベルで必要とされるよりも多くのカロリーを摂取することが原因です。 肥満の診断は、BMIが各年齢および性別の95パーセンタイル以上であることに基づいて下されます。 肥満の治療では、栄養のある食事をとり、運動を増やすことが役に立ちますが、減量薬... さらに読む が主要な危険因子です。この病気は、片側の股関節に発生した小児の多くで、最終的に両方の股関節に発生します。
大腿骨頭すべり症
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大腿骨頭すべり症の原因
大腿骨頭すべり症の原因は分かっていません。しかし、原因である可能性が高いのは、成長板の脆弱化です。
成長板は、外傷や股関節の変形、肥満による合併症、炎症、または思春期頃に正常に起こる血液中のホルモン濃度の変化(甲状腺ホルモンが低いなど)(女児の思春期 女児の思春期 思春期とは、一連の身体的な変化が起きて成人の身体的特徴と生殖機能が備わっていく期間のことです。それらの身体的な変化は、下垂体から分泌される黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの血中濃度によって調節されます。この2つのホルモンの血中濃度は、出生直後は高くなっていますが、生後2~3カ月で低下していき、思春期まで低い水準で維持されます。 思春期の始めには、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの血中濃度が上昇し、それが刺激となって性ホルモンが分泌さ... さらに読む および 男児の思春期 男児の思春期 思春期とは、生殖能力が十分に備わり、成人としての性の特徴が現れてくる段階のことです。男児では、通常10~14歳で思春期を迎えます。ただし、9歳頃から始まることや、16歳頃まで続くことも珍しくありません。 思春期は早ければ9歳頃から始まり、16歳頃まで続くことがあります。 思春期には、精巣のテストステロン生産が増えます。 テストステロンは、生殖器を成熟させたり、筋肉や骨を成長させたり、ひげや陰毛が生えるようにしたり、声を低くしたりします。... さらに読む を参照)によって弱くなります。分離が生じることによって、大腿骨頭では、やがて血液の供給がなくなり、壊死(えし)してつぶれます。
大腿骨頭すべり症の症状
最初に現れる大腿骨頭すべり症の症状は、股関節のこわばりや軽度の痛みである場合があります。しかしこの痛みは、膝や太ももから来ているように感じられることがあります。痛みは安静にすると軽くなり、歩いたり股関節を動かしたりすると悪化します。やがて脚を引きずるようになり、続いて股関節から太ももの内側を伝って膝へと広がる痛みが現れます。発症した側の脚は通常、外向きにねじれます。
大腿骨頭すべり症の診断
X線検査
ときにMRI検査や超音波検査
X線検査 単純X線検査 X線は高エネルギーの放射線で、程度の差こそあれ、ほとんどの物質を通過します。医療では、極めて低線量のX線を用いて画像を撮影し、病気の診断に役立てる一方、高線量のX線を用いてがんを治療します(放射線療法)。 X線は単純X線検査のように単独で使用することもありますが、 CT検査などの他の手法と組み合わせて使用することもあります。( 画像検査の概要と バックグラウンド放射線も参照のこと。)... さらに読む で両方の股関節を撮影します。患部の股関節のX線検査では、大腿骨頭が大腿骨の残りの部分からずれたり、分離したりしているのが示されます。
超音波検査 超音波検査 超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を用いて内臓などの組織の画像を描出する検査です。プローブと呼ばれる装置で電流を音波に変換し、この音波を体の組織に向けて発信すると、音波は体内の構造で跳ね返ってプローブに戻ります。これは再度、電気信号に変換されます。コンピュータが、この電気信号のパターンをさらに画像に変換してモニター上に表示するとともに、コンピュータ上のデジタル画像として記録します。X線は使用しないため、超音波検査で放射線にさらされ... さらに読む と MRI検査 MRI検査 MRI検査は、強い磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強い磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置の中で発生するような強い磁場の中に... さらに読む も有用で、特にX線検査では正常であった場合に役立ちます。時間が経つと大腿骨頭すべり症の治療はより困難になり効果も小さくなるため、早期診断が重要です。
大腿骨頭すべり症の治療
手術
通常、分離した大腿骨頭の縁をそろえ金属製のネジで止めるために手術が必要です。