典型的な症状としては、骨がもろく骨折しやすいなどがあります。
診断は、X線検査の結果に基づいて下されます。
乳児期に発生するタイプは致死的です。
特定の薬や注射が骨を強くするのを助けます。
骨形成不全症は、骨の成長を妨げる様々な病気の中で最もよく知られている病気です。この病気は骨異形成症とも呼ばれています。骨形成不全症では、骨の構成成分であるコラーゲンの合成が阻害されます。そのため、骨が弱くなって、折れやすくなります(骨折)。骨形成不全症には主に4つのタイプがあります。
(遺伝性結合組織疾患の概要 小児における結合組織疾患の概要 結合組織は頑丈で、その多くは線維性であり、互いに結合して体の構造を支えるとともに、弾力性をもたらしています。 筋肉、 骨、軟骨、 靱帯、 腱は、ほとんどが結合組織からできています。ほかには皮膚や内臓などにも結合組織があります。結合組織の特徴や含まれる細胞の種類は、体のどこに位置する組織かによって異なります。結合組織は、重さや張力に耐えられ... さらに読む も参照のこと。)
症状
骨形成不全症は、軽い場合から重い場合まであります。骨形成不全症の患者の大半は、骨がもろく、約50~65%に難聴が認められます。白眼(強膜 眼の構造と機能 眼の構造と機能はとても複雑です。眼は、入ってくる光の量を調節し、見るものの距離に応じて焦点を合わせ、その画像情報を瞬時に脳に伝えるという働きを絶えず行っています。 眼球は、眼窩(がんか)という骨で囲まれた空間に収まっています。眼窩の中には、筋肉、神経、血管、そして涙を分泌し排出する器官もあります。眼窩はいくつかの骨が組み合わされて形作られ... さらに読む )が青くなる患者もいます。異常に薄い強膜ごしに、その下にある静脈が見えるため、青い色になります。強膜が正常より薄いのは、コラーゲンが正常に合成されていないためです。骨形成不全症のタイプによって、歯の変色と形成不全(象牙質形成不全症といいます)がみられる小児もいます。小児の骨形成不全症では、心臓や肺の病気が発生することもあります。
I型の骨形成不全症は最も軽いタイプです。青色強膜と、ゆるい関節による筋肉痛、関節痛しか症状がないことがあります。I型の小児は、小児期に骨折リスクが高くなります。
II型の骨形成不全症は、最も重いタイプで、死に至ります。II型骨形成不全症の新生児は、多くの骨が折れた状態で生まれてくるのが一般的です。頭蓋骨が非常に柔らかいため、出産時に頭に加わる圧力から脳を守れないおそれがあります。II型の新生児では、腕と脚が短く青色強膜がみられます。このタイプの骨形成不全症は、生まれる前に死亡するか、生後数日ないし数週間以内に死亡する可能性があります。
III型の骨形成不全症は、最も重いタイプですが死亡には至りません。III型の小児は、非常に低身長で、脊椎が弯曲し、頻繁に骨折します。III型骨形成不全症では、非常に軽いけがで骨折することがよくあり、通常は小児が歩き始めたときに骨折が起こります。また、III型の小児は、頭蓋骨の発育が過剰で顔の骨の発育が不良なため、頭蓋骨が大きく、顔が三角形です。胸郭の変形がよくみられます。強膜の色は様々です。
IV型の骨形成不全症は、中等症のタイプです。IV型の小児では、思春期前の小児期に骨折しやすい状態がみられます。強膜は典型的には白色です。患者の小児は低身長です。IV型の小児では治療が有益なことがあります。
診断
出生前超音波検査
医師による評価
ときとして細胞の分析や遺伝子検査
最も重く、致死的な骨形成不全症は、出生前に妊婦の 超音波検査 超音波検査 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む で発見されることがあります。
出生後の骨形成不全症の診断は、症状と身体診察の結果に基づいて下されます。
診断がはっきりしない場合は、結合組織細胞の一種である線維芽細胞の分析を行う顕微鏡検査のための皮膚サンプルの採取(生検)や、特定の遺伝子を分析するための血液サンプルの採取を行うことがあります。
治療
成長ホルモン
ビスホスホネート系薬剤
I型とIV型の骨形成不全症の小児では、成長ホルモンの注射が助けになることがあります。
ビスホスホネート系薬剤という薬は、骨を強化し、痛みを和らげ、骨折の頻度を減らすのに役立ちます。ビスホスホネート系薬剤を静脈内投与(パミドロン酸)または経口投与(アレンドロン酸)します。
骨折の治療は、この病気の患者ではない小児の骨折に対する治療と同様です。しかし、折れた骨が変形したり、成長しなくなったりすることがあります。そのため、骨折の多い小児では、体の成長が永久的に阻害されるようになり、体の変形がよくみられます。骨の中に入れる金属棒(髄内釘)による固定が必要になる場合もあります。 理学療法 理学療法 (PT) 理学療法は、 リハビリテーションの中心となるもので、運動療法と整体を行います。関節や筋肉の機能を改善し、患者がより容易に立ち、バランスをとり、歩き、階段を昇れるようにします。理学療法では以下のような訓練が行われます。 関節可動域訓練 筋肉強化運動 協調・バランス運動訓練 歩行訓練 さらに読む や 作業療法 作業療法 (OT) 作業療法は、 リハビリテーションの中心となるもので、基本的なセルフケア活動、有用な動作や作業、余暇活動を行う能力を高めることを目標としています。こうした活動には、基本的な日常活動(食べる、服を着る、入浴する、身だしなみを整える、トイレに行く、移乗する[いすからトイレやベッドに移る]など)や、より複雑な日常活動(食事の準備をする、電話やコンピュータを使う、お金や日々の投薬スケジュールを管理する、買い物をする、運転するなど)が含まれます。... さらに読む が、骨折予防や身体機能の改善に役立ちます。軽いけがでも避ける対策を講じることが骨折予防の助けになります。
一部の難聴の小児には、 人工内耳 人工内耳 難聴の原因の多くは治癒しません。その場合、治療としては可能な限り聴力を補助します。中等度から高度の難聴の場合には、大半の人が補聴器を使用します。高度から重度の難聴の場合は人工内耳が非常に役立ちます。 補聴器による音の増幅は、伝音難聴と感音難聴のどちらにも有用です。ただし残念ながら、補聴器は正常な聴力を回復するわけではありません。それでも補聴器があればコミュニケーション能力が大きく改善し、音が聞こえる喜びを得ることができます。... さらに読む (音波を電気信号に変換し、内耳に埋め込まれた電極に送信する装置)が役立つ可能性があります。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
Osteogenesis Imperfecta (OI) Foundation(骨形成不全症基金):骨形成不全症に関する支援、教育、研究情報を提供する組織