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脳性麻痺

執筆者:

Margaret C. McBride

, MD, Northeast Ohio Medical University;


M. Cristina Victorio

, MD, Northeast Ohio Medical University

最終査読/改訂年月 2018年 11月
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脳性麻痺とは、運動困難と筋肉のこわばり(けい縮)を特徴とする症候群です。原因は、出生前の脳の発育過程で生じた脳の奇形か、出生前、分娩中、または出生直後に起きた脳損傷です。

  • 脳性麻痺の原因としては、酸素欠乏や感染によって生じる脳の損傷や、脳の奇形などがあります。

  • 症状の程度は様々で、ぎこちなさがかろうじて分かる程度のこともあれば、脚や腕の動きがかなり制限されている、あるいは麻痺と関節のこわばりが強く四肢をまったく動かせないこともあります。

  • 脳性麻痺の小児には、知的障害、行動障害、視覚障害、難聴、けいれん性疾患などがみられることもあります。

  • この病気は、歩行などの運動能力の発達が遅れている小児や、筋肉のこわばりや筋力低下がある小児で疑われます。

  • 脳性麻痺の小児のほとんどは、死亡することなく成人になります。

  • 脳性麻痺に対する根治的な治療法はありませんが、小児の可能性を最大限に生かすために、理学療法、作業療法、言語療法のほか、ときに薬剤や手術が有効な場合があります。

脳性麻痺は、乳児1000人のうち1~2人に起こります。しかし、未熟児ではその割合が100人のうち15人に上昇します。極低出生体重児では特に多くみられます。

脳性麻痺は1つの病気ではなく、脳の奇形や筋肉の動き支配する脳の一部(運動野)の損傷によって生じる一群の症状を表す用語です。脳性麻痺の小児では、ときに脳の他の部分にも損傷がみられることがあります。脳性麻痺の原因となる脳損傷は、胎生期、分娩中、出生後、または小児期の初期などに発生します。小児が成長し成熟するにつれて症状が変化することはありますが、脳にいったん生じた損傷が悪化することはありません。2歳以降に受けた脳損傷により筋肉がうまく機能しなくなった場合は、脳性麻痺とはみなされません。

知っていますか?

  • 脳性麻痺とは、1つの病気ではなく、様々な原因で生じる互いに関連する一群の症状を指す用語です。

原因

脳性麻痺の原因には様々な種類の脳の奇形や脳損傷があり、ときに複数の原因が関与していることもあります。15~20%の症例では、出生の直前、出生時、または出生後間もない時期に生じる問題が原因となります。具体的な問題としては、分娩中の酸素欠乏、感染症、脳損傷などがあります。風疹トキソプラズマ症ジカウイルス感染症サイトメガロウイルス感染症などの妊娠中の感染症も、脳性麻痺の原因になることがあります。ときに、遺伝子異常により脳性麻痺の原因となる脳の奇形が生じることもあります。

未熟児は脳性麻痺を特に起こしやすく、その理由の1つとして、未熟児では脳の一部の領域の血管が細く出血しやすいためだと考えられています。ビリルビンの血中濃度が高いと、核黄疸と呼ばれる脳障害が起きることがあり、それにより脳性麻痺を起こす場合もあります。

生後2年間は、髄膜炎(脳を覆う組織の炎症)や敗血症(血流の重度の感染症)、外傷、重度の脱水といった重い病気によって脳に損傷が生じ、その結果として脳性麻痺が発生する可能性があります。

知っていますか?

  • 2歳以降に受けた脳損傷のために筋肉がうまく機能しなくなった場合は、脳性麻痺とはみなされません。

症状

脳性麻痺の症状には幅があり、ぎこちなさが認められる程度のものから、重度のけい縮によって腕や脚がねじれて、装具、松葉づえ、車いすなどの補助具が必要になるものまで様々です。運動野以外の脳の部位も損傷を受けている場合があるため、脳性麻痺の小児の多くに、知的障害、行動障害、視覚障害、難聴、けいれん性疾患などの別の障害がみられます。

脳性麻痺は、主に次の4つの型があります。

  • けい直型

  • アテトーゼ型

  • 運動失調型

  • 混合型

いずれの型でも、患児の話していることが理解しにくい場合がありますが、これは話すために使う筋肉の制御が困難になっているためです。

けい直型脳性麻痺

けい直型は脳性麻痺の小児の70%超を占め、筋肉がこわばり(けい直)、筋力が低下します。筋肉のこわばりは体の様々な部位に生じます。

  • 両腕と両脚(四肢麻痺)

  • 両腕よりも両脚(両麻痺)

  • ときに片側の腕と脚のみ(片麻痺)

  • まれに両脚と下半身のみ(対麻痺)

症状のある腕や脚は発育が悪く、こわばって筋力が低下します。片脚がもう一方の脚にぶつかるように交差して歩くハサミ足歩行の小児や、つま先立って歩く小児もいます。

視線が交差している、視線が内側に寄っている、視線がさまようなどの斜視や、その他の視覚障害が現れることもあります。

最も重い障害は、けい性四肢麻痺です。けい性四肢麻痺の小児では、けいれん発作や嚥下困難に加えて、知的障害(重い場合もある)がよくみられます。嚥下困難のある小児は、口や胃からの分泌物でむせたり、それを飲み込んでしまったり(誤嚥)します。誤嚥により肺に炎症が生じると、呼吸が困難になります。誤嚥を繰り返し起こすと、肺に回復不能な損傷を生じます。

けい性片麻痺、両麻痺、または対麻痺の小児の多くは、知能は正常で、けいれん発作を起こす頻度も下がります。

アテトーゼ型脳性麻痺

アテトーゼとは、体をよじらせる不随意の運動です。アテトーゼ型は脳性麻痺の小児の約20%にみられ、腕、脚、体幹の筋肉が不随意的にゆっくりと動きます。よじれるように動く場合や突然動く場合、断続的に動く場合などがあります。この動きは強い感情が起こると激しくなり、睡眠中には生じません。

一般に知能は正常で、けいれん発作を起こすことはまれです。

言葉をはっきり発音することが困難な例がよくみられ、しばしば深刻な場合があります。原因が核黄疸である場合、難聴や視線を上に向けることが難しいといった症状がよくみられます。

運動失調型脳性麻痺

運動失調とは、体の各部の動き(特に歩行時)を制御して調整するのが困難になった状態です。 運動失調型は脳性麻痺の小児の5%未満にみられ、体の動きがうまく協調せず、筋力が低下しています。物に手を伸ばしたときにふるえるような動き(ある種の振戦)がみられます。患児は素早く動いたり、細かい動きを要することをしたりすることが困難で、両脚を広げた不安定な歩き方をします。

混合型脳性麻痺

混合型は、上に述べた病型のうち2つが複合したもので、ほとんどがけい直型とアテトーゼ型の混合型です。この混合型は、脳性麻痺の小児の多くにみられます。混合型の小児では、重い知的障害がみられることがあります。

診断

  • 脳の画像検査

  • 血液検査のほか、ときに神経と筋肉の機能を調べる血液検査

生後まもない間は、脳性麻痺の診断は困難です。乳児が成長するにつれて、歩くことその他の運動能力の発達(運動発達)の遅れ、けい縮、協調運動障害などが目立つようになります。

脳性麻痺が疑われる場合は、脳の画像検査(典型的にはMRI検査)を行います。通常、症状の原因になる異常があれば、この検査で検出できます。

医師はまた、妊娠中や分娩中に起きた問題や小児の発達の進み具合について質問します。このような情報は原因の特定に役立つ可能性があります。

脳性麻痺を特定できる臨床検査はありませんが、原因を特定するとともに、ほかの病気がないかを調べるために、血液検査を行うことがあります。

それでも原因がはっきりしない場合や、筋肉の症状が悪化しているように見える場合、脳性麻痺の典型的な症状とは異なるように見える場合は、神経と筋肉の電気生理学的検査(それぞれ神経伝導検査筋電図検査)や遺伝子検査が行われます。

2歳になるまでは、脳性麻痺の型が特定できないこともよくあります。

予後(経過の見通し)

予後は、一般に脳性麻痺の型とその重症度によって決まります。脳性麻痺の小児のほとんどは、死亡することなく成人になります。最も重い脳性麻痺の(ひとりで身の回りのことができないまたは口から食事ができない)小児だけは、余命がかなり短くなります。

適切な治療と訓練を行えば、多くの患児、特にけい性対麻痺または片麻痺の患児は、ほぼ普通の生活を送ることができます。

治療

  • 理学療法、作業療法、言語療法

  • 矯正装置

  • ボツリヌス毒素やけい縮を軽減するその他の薬剤

  • ときに手術

脳性麻痺を治すことはできず、障害は一生続きます。しかし、小児の活動範囲を広げ、自立性を高めるためにできることは数多くあります。目標は、できる限り自立した生活を送れるようになることです。

理学療法作業療法、装具などによって、筋肉の制御や歩行が改善される可能性があり、特にリハビリテーションを可能な限り早期に開始すると効果が上がります。 言語療法を行うことで、はっきりと話せるようになることがあり、嚥下障害にも効果があります。

すべての四肢に麻痺があるわけでない場合は、非麻痺側上肢抑制療法(constraint-induced movement therapy)が役立つ可能性があります。この方法は、特定の活動をする場合を除き起きている間は麻痺のない肢を拘束し、麻痺のある肢だけで作業するよう強いるものです。これを行うことで、脳内に神経信号の伝わる新しい経路ができ、麻痺した肢をうまく使えるようになります。

作業療法士の支援を受けて、筋肉の症状を補いつつ日常生活の行為(入浴、食事、着衣など)をひとりで行えるようになる小児もいます。あるいは、日常生活の行為をひとりで行うのに役立つ器具の使い方を習うこともできます。

特定の薬剤も有用です。ボツリヌス毒素を筋肉に注射すると、関節上で筋肉が不均一に収縮することが少なくなり、恒久的に短縮する拘縮という状態が起きにくくなります。ボツリヌス毒素は、ボツリヌス症を引き起こす細菌の毒素ですが、注射した筋肉を麻痺させることで効果を発揮します。(ボトックス®という商品名で販売されているしわの治療薬と同じものです。)症状のある筋肉を刺激している神経に別の薬を注射することもあります。その薬は神経をわずかに傷つけることで、関節での筋肉の緊張を弱めます。

けい縮を軽減するために使用されるその他の薬としては、バクロフェン、ベンゾジアゼピン系(ジアゼパムなど)、チザニジンのほか、ときにダントロレンなどがあり、いずれも内服で使用されます。けい縮が強い小児では、脊髄周囲にバクロフェンを持続注入する埋め込みポンプによって効果が得られる場合があります。

動きを制限しているこわばった筋肉の腱を切断したり、伸ばしたりする手術を行うこともあります。また、関節にかかる力のバランスをとるために腱を関節の別の部分につなげることもあります。脊髄につながる特定の神経根を切断する脊髄後根切断術により、けい縮が抑えられることがあります。この手術は一部の小児、特に未熟児で生まれ、けい縮が主に脚に限られ、知能が正常な小児に有効です。

脳性麻痺の小児でも、重い知的障害がなければ、多くは正常な発育を遂げて普通の学校に通うことができます。それ以外の小児では、広範囲の理学療法と特殊教育を受ける必要があり、日常生活の行為が大幅に制限されるため、生涯を通じて何らかのケアや介助が必要になります。しかし、重い障害を負った小児でも、教育や訓練により効果が得られる可能性があり、それによって自立心や自尊心が高まり、家族や介護者の負担が大幅に減少します。

小児の状態と今後の可能性についての理解を助け、何か問題が起こった際の支援のために、親に対する情報提供やカウンセリングが利用できます。脳性麻痺の小児の可能性を最大限に生かすためには、愛情に満ちた親のケアと併せて、地域医療機関、全米脳性麻痺協会(United Cerebral Palsy)などの支援団体、社会復帰リハビリテーション組織といった公的機関や民間組織による支援が役立ちます。

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