横紋筋肉腫は体のどこにでもできますが、頭頸部、性器、尿路、腕や脚に多く発生します。
症状は横紋筋肉腫ができた部位によって異なります。
診断の際には画像検査と生検が行われます。
治療としては、手術や化学療法のほか、ときには放射線療法が行われます。
(小児がんの概要 小児がんの概要 小児におけるがんはまれです。米国では、出生後から14歳までの小児における毎年の症例数は1万3500例未満、死亡は約1500例です。それに対して、成人における毎年の症例数は140万例、死亡は575,000例です。しかしながら、がんは小児の死因としてはけがに次いで第2位です。小児がんの約33%が... さらに読む も参照のこと。)
横紋筋肉腫は小児がんの3~4%を占めます。この種のがんと診断される小児の3分の2が7歳未満です。横紋筋肉腫は女児に比べて男児にわずかに多くみられ、黒人よりも白人に多く発生します。その主な理由は、黒人の女児にはあまりみられないためです。
横紋筋肉腫は、正常ならば筋肉細胞になる細胞から発生します。横紋筋肉腫の原因は不明です。
横紋筋肉腫は体のどこにでもできますが、次に挙げる部位に多く発生します。
頭頸部(全体の約35%):学齢期の小児に最も多くみられる。
性器や尿路:通常、膀胱、前立腺、腟にみられる(全体の約25%)。典型的には乳幼児に発生する。
腕や脚(全体の約20%):青年に最も多くみられる。
体幹やその他の部位(全体の約20%)
横紋筋肉腫は体の他の部位に転移します。しかし、たいていの場合、がんが転移する前に診断されます。がんが転移した後に診断されるのは、全患児の約15~25%です。それらの小児において、がんが最もよくみられる部位は肺です。そのほかにがんが転移する可能性がある部位は、骨、骨髄、リンパ節です。
症状
大半の患児では、横紋筋肉腫の最初の徴候は、硬いしこりや、以下のような、がんに侵された臓器に関連する問題です。
眼:涙が溢れる、眼の痛み、眼球の突出
鼻とのど:鼻づまり、声の変化、粘液や膿を含んだ鼻水
性器または尿路:腹痛、腹部に触れるしこり、排尿が困難、血尿
腕や脚:腕や脚の硬いしこり
腕や脚のがんは転移することが多く、特に肺、骨髄、リンパ節に転移します。通常、こうした転移によって症状が起こることはありません。
診断
CTまたはMRI検査
腫瘍の生検または切除
しこりが検出された場合は、 CT検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む または MRI検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査は、強力な磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強力な磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置内で生じるよう... さらに読む
が行われます。しこりからサンプルを採取して顕微鏡で調べることで(生検)、横紋筋肉腫の診断が確定します。しこり全体を摘出することもあります。
転移しているかどうかを調べるために、胸部CT検査、骨シンチグラフィー(骨の 核医学検査 核医学検査 核医学検査では、放射性核種を用いて画像を描出します。放射性核種とは放射線を出す元素のことで、エネルギーを放射線の形で放出することで、安定した状態になろうとする原子です。放射性核種の多くは高いエネルギーをガンマ線(人の手によらない、自然環境で発生するX線)または粒子( 陽電子放出断層撮影で使用される陽電子など)の形で放出します。( 放射線障害も参照。) 放射性核種は、甲状腺などの特定の臓器の病気を治療するのにも使用されます。... さらに読む )、および PET-CT PET-CT検査 PET(陽電子放出断層撮影)検査は 核医学検査の一種です。放射性核種とは放射線を出す元素のことで、エネルギーを放射線の形で放出することで、安定した状態になろうとする原子です。放射性核種の多くは高いエネルギーの光子をガンマ線の形で放出しますが、PET検査では陽電子と呼ばれる粒子を放出する放射性核種を使用します。 PET検査では、体内で使用(代謝)されるグルコース(ブドウ糖)や酸素などの物質を... さらに読む (陽電子放出断層撮影-CT)検査という別の核医学検査が行われ、さらに、両方の寛骨(骨盤の骨)から 骨髄のサンプルが採取されて 骨髄検査 赤血球、ほとんどの 白血球、 血小板は、骨髄という骨の中にある脂肪に富んだ柔らかい組織でつくられます。場合によっては、血球が異常となった原因や、特定の種類の血球が少なすぎたり、多すぎたりする原因を特定するために、骨髄サンプルを調べなければならないことがあります。骨髄サンプルを採取するには、次の2つの方法を用いることができます。 骨髄穿刺(こつずいせんし):骨髄に針を刺して骨髄液と細胞を吸引することによって、骨髄液と細胞を採取する方法... さらに読む 検査されます。
予後(経過の見通し)
予後は、以下のいくつかの要因に基づきます。
がんの部位
切除可能ながんの量
転移の有無
小児の年齢
顕微鏡で調べたときの、がん細胞やがん組織の見た目
1歳未満または10歳以上の場合、予後(経過の見通し)が不良です。
上の要因の組合せに応じて、小児が低リスク、中リスク、高リスクに分類されます。低リスクとみなされる場合は90%以上の小児が生存しますが、高リスクとみなされる場合に生存できる小児は50%未満です。
治療
手術と化学療法
場合により放射線療法
(がん治療の原則 がん治療の原則 がんの治療は、医療の中でもとりわけ複雑なものの1つです。治療には、様々な医師(かかりつけ医、婦人科医やその他の専門医、腫瘍内科医、放射線腫瘍医、外科医、病理医など)とその他の様々な医療従事者(看護師、放射線技師、理学療法士、ソーシャルワーカー、薬剤師など)が1つのチームとなって取り組みます。 治療計画では、がんの種類、位置、 病期、遺伝学的特徴などのほか、治療を受ける人に特有の特徴を考慮に入れます。... さらに読む も参照のこと。)
治療では、 手術 がんの手術 手術は、がんに対して昔から用いられてきた治療法です。大半のがんでは、リンパ節や遠く離れた部位に転移する前に除去するには、手術が最も効果的です。手術のみを行う場合もあれば、 放射線療法や 化学療法などの治療法と併用する場合もあります( がん治療の原則も参照)。医師は以下の他の治療を行うことがあります。 手術前に腫瘍を小さくする治療(術前補助療法) 手術後にできるだけ多くのがん細胞が除去されるようにする治療(術後補助療法)... さらに読む 、 化学療法 化学療法 化学療法では、薬を使ってがん細胞を破壊します。正常な細胞は傷つけずに、がん細胞だけを破壊する薬が理想的ですが、大半の薬はそれほど選択的ではありません。その代わりに、一般的には細胞の増殖能力に影響を与える薬を用いることで、正常な細胞よりがん細胞に多くの損傷を与えるよう設計された薬が使用されます。無秩序で急速な増殖ががん細胞の特徴です。しかし正常な細胞も増殖する必要があり、なかには非常に速く増殖するもの(骨髄の細胞や口または腸の粘膜の細胞な... さらに読む 、ときには 放射線療法 がんに対する放射線療法 放射線は、コバルトなどの放射性物質や、粒子加速器(リニアック)などの特殊な装置から発生する強いエネルギーの一種です。 放射線は、急速に分裂している細胞や DNAの修復に困難がある細胞を優先的に破壊します。がん細胞は正常な細胞より頻繁に分裂し、多くの場合、放射線によって受けた損傷を修復することができません。そのため、がん細胞はほとんどの正常な細胞よりも放射線で破壊されやすい細胞です。ただし、放射線による破壊されやすさはがん細胞によって異な... さらに読む が行われます。手術時には、可能であればがん全体を切除します。
すべての患児が化学療法で治療されます。最もよく使用される薬は、ビンクリスチン、アクチノマイシンD、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イホスファミド、エトポシドです。ほかにはノギテカンやイリノテカンという薬が使用されることもあります。
手術後もがんがいくらか残っている場合や、がんが中リスクまたは高リスクである場合には、一般的に放射線療法が行われます。