上衣腫の原因は不明です。
主な症状は、嘔吐、ぼんやりする、平衡障害です。
診断は画像検査と生検によって下されます。
予後(経過の見通し)は、小児の年齢と、がんがどの程度除去できたかによります。
治療法には、手術、化学療法、放射線療法があります。
上衣腫は 小児の脳腫瘍 小児の脳腫瘍の概要 脳腫瘍( 成人の脳腫瘍も参照)は、15歳未満の 小児のがんの中で(白血病の次に)多くみられるがんであり、がんによる死亡の2番目に多い原因です。 小児で最も多くみられる脳腫瘍は 星細胞腫です。次いで多いのが 髄芽腫と 上衣腫です。 脳腫瘍により、頭痛、吐き気、嘔吐、視覚障害、ぼんやりする、協調運動障害、平衡障害などの様々な症状が生じます。 診断は通常、MRI(磁気共鳴画像)検査と生検の結果に基づいて下されます。... さらに読む の中で発生率が3番目に高く、全体の10%を占めます。上衣腫と診断される小児の大多数が8歳未満です。約3分の1が3歳未満の小児に発生しています。
大半の上衣腫は、頭蓋骨底部の脳の後部(後頭蓋窩と呼ばれる)、またはその近くに発生します。この領域には(協調運動や平衡感覚を制御する)小脳や、(呼吸などの生命維持に必要な体の機能を制御する)脳幹が含まれています。上衣腫は脳幹に広がる傾向があります。上衣腫が脊髄に発生する場合もあります。
症状
多くの場合、頭蓋内圧の上昇から上衣腫の最初の症状が生じます。最初の症状は、頭痛、嘔吐、ぼんやりするなどです。乳児では月齢相応の発達段階に到達しない場合があります。乳児が怒りっぽくなったり、食欲がなくなったりすることもあります。気分や性格が変わることもあれば、集中力が低下することもあります。小児の平衡感覚や協調運動、歩行に障害がみられるようになります。なかには、けいれん発作を起こす小児もいます。
上衣腫が脊髄に生じると、背部痛が起こる場合があり、尿失禁や便失禁がみられる場合もあります。
診断
MRI(磁気共鳴画像)検査と生検
上衣腫の診断は MRI検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査は、強力な磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強力な磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置内で生じるよう... さらに読む の結果に基づいて下されます。腫瘍がみつかった場合は、サンプルが採取され、調べるために検査室に送られます(生検)。
予後(経過の見通し)
患児がどれだけよくなるかは、年齢と切除できた腫瘍の量によって異なります。
生き延びた小児には、脳、脊髄、神経に問題が起きるリスクがあります。
治療
手術、放射線療法、化学療法
(がん治療の原則 がん治療の原則 がんの治療は、医療の中でもとりわけ複雑なものの1つです。治療には、様々な医師(かかりつけ医、婦人科医やその他の専門医、腫瘍内科医、放射線腫瘍医、外科医、病理医など)とその他の様々な医療従事者(看護師、放射線技師、理学療法士、ソーシャルワーカー、薬剤師など)が1つのチームとなって取り組みます。 治療計画では、がんの種類、位置、 病期、遺伝学的特徴などのほか、治療を受ける人に特有の特徴を考慮に入れます。... さらに読む も参照のこと。)
初めの治療では、できるだけ安全に、できるだけ多くの腫瘍が 手術で切除 がんの手術 手術は、がんに対して昔から用いられてきた治療法です。大半のがんでは、リンパ節や遠く離れた部位に転移する前に除去するには、手術が最も効果的です。手術のみを行う場合もあれば、 放射線療法や 化学療法などの治療法と併用する場合もあります( がん治療の原則も参照)。医師は以下の他の治療を行うことがあります。 手術前に腫瘍を小さくする治療(術前補助療法) 手術後にできるだけ多くのがん細胞が除去されるようにする治療(術後補助療法)... さらに読む されます。