(先天性の尿細管疾患に関する序も参照のこと。)
ハートナップ病では、腸と腎臓でのアミノ酸の輸送に異常がみられます。ハートナップ病は、この病気を引き起こす異常遺伝子を両親からそれぞれ1つずつ受け継ぐことで発生します。この遺伝子は本来、腸における特定のアミノ酸の吸収と腎臓におけるその再吸収を制御しています。そのためハートナップ病の人では、腸からのアミノ酸の吸収と腎臓での尿細管からの再吸収が正常に機能しません。
それにより、トリプトファンなどのアミノ酸が尿中に過剰に排泄され、そのため体内では、タンパク質の構成成分であるアミノ酸が不足します。 血液中のトリプトファンがあまりに少なくなると、体内でのビタミンB群(ナイアシン)の生産量も不足するようになり、特に多くのビタミンが必要となるストレスを受けたときなどに顕著な影響が生じます。
症状
腸と腎臓は、アミノ酸の輸送に問題がある以外は正常に機能しており、この病気の影響は主に脳と皮膚で現れます。ハートナップ病自体は出生時から存在していますが、その症状は乳児期から小児期にみられるようになり、ときには成人期の早期になって始まる場合もあります。日光、発熱、薬物、心身のストレスなどが症状の誘因となります。
発作の発生前には、ほぼ必ず栄養不良の期間がみられます。 ほとんどの症状は散発的で、ナイアシンの欠乏によるものです。症状は食事が原因のナイアシン欠乏症(ペラグラ)で生じるものと似ていて、特に日光が当たった部位の皮膚に生じる発疹が特徴的です。さらに知的障害、低身長、頭痛、不安定な歩行、卒倒や失神などもよくみられます。精神的な問題(不安、急激な気分の変化、妄想、幻覚など)も起こります。