分かっている原因には、神経系の病気や感染症などがあります。
養育者の話、身体診察、特定の臨床検査の結果に基づいて診断を下します。
予後は、乳幼児突発性危急事態の原因によって異なります。
原因が特定できれば、それに対する治療を行います。
乳幼児突発性危急事態(ALTE)とは、1つの病気ではなく、乳幼児に突然発生する一群の症状を指す用語です。 ALTEは乳児突然死症候群 乳児突然死症候群(SIDS) 乳児突然死症候群(SIDS)とは、1歳以下の健康に見えていた乳児が通常は睡眠中に予期せず突然死亡することです。 SIDSの原因は不明です。 あお向けに寝かせる、枕を使わない、ベビーベッドにサイドパッドとおもちゃを置かない、小児を暖めすぎない、受動喫煙をさせないなどの対策は、小児をSIDSから守るのに役立ちます。 SIDSで子どもを亡くした親は、カウンセリングや支援団体の援助を求めるとよいでしょう。... さらに読む (SIDS)と関わりがあるように思えるかもしれませんが、これら2つの病態の間に明らかな関係は認められていません。
ALTEを指す用語は最近変更され、「brief, resolved, unexplained event(BRUE)」という新しい用語を使う医師もいます。
原因
ALTEの最も一般的な原因には以下のものがあります。
消化器疾患:胃食道逆流症 小児の胃食道逆流 胃食道逆流とは、食べものと胃酸が胃から食道に、ときには口の中にまで戻ってくることです。 逆流の原因として考えられるのは、授乳中の乳児の姿勢、授乳量が多すぎた場合、カフェイン、ニコチン、タバコの煙にさらされた場合、食物不耐症や食物アレルギー、消化管の異常などがあります。 乳児では、嘔吐、過度の吐き出し、摂食障害や呼吸障害がみられたり、不機嫌なように見えることもあります。 胃食道逆流症の診断に際して行われる検査は、バリウム検査、食道pHモニ... さらに読む 、嚥下困難 嚥下困難 飲み込みに障害が生じること(嚥下[えんげ]困難)があります。嚥下困難では、食べものや飲みものがのど(咽頭)から胃へと正常に移動しません。のどと胃をつなぐ管(食道)の途中で食べものや飲みものが動かなくなったように感じます。嚥下困難をのどのしこり(球感覚)と混同してはならず、球感覚ではのどにしこりがある感じがしますが、飲み込みに支障はありません。 嚥下困難によって、口腔分泌物や飲食物を肺に吸い込む誤嚥(ごえん)が生じる可能性があります。誤嚥... さらに読む
神経系疾患:けいれん発作 小児のけいれん発作 けいれん発作とは、脳の電気的活動が周期的に乱れることで、一時的にいくらかの脳機能障害が起きる現象です。 年長の乳児や幼児にけいれん発作が起きた場合には、全身または体の一部がふるえるなどの典型的な症状が多くの場合みられますが、新生児の場合は、舌なめずりをする、口をもぐもぐさせる、周期的に体がだらんとなるなどの変化しかみられない場合があります。 この病気の診断には脳波検査が用いられ、さらに原因を特定するために血液検査、尿検査、脳の画像検査の... さらに読む または脳腫瘍 小児の脳腫瘍の概要 小児で最も多くみられる脳腫瘍は星細胞腫です。次いで多いのが髄芽腫と上衣腫です。 脳腫瘍により、頭痛、吐き気、嘔吐、視覚障害、ぼんやりする、協調運動障害、平衡障害などの様々な症状が生じます。 診断は通常、MRI(磁気共鳴画像)検査と生検の結果に基づいて下されます。 治療としては、手術、放射線療法、化学療法、またはこれらが組み合わせて行われます。 脳腫瘍(脳腫瘍も参照)は、15歳未満の小児がんの中で(白血病の次に)多くみられるがんであり、が... さらに読む 、息こらえ 息止め発作 息止め発作とは、恐怖や動揺を引き起こす出来事やとても痛い思いをした直後に、小児の呼吸が止まり、短時間意識を失うことです。 息止め発作のきっかけは、通常、全身の痛みや感情的な動揺を伴う出来事です。 典型的な症状としては、蒼白、呼吸停止、意識喪失、けいれんなどがあります。 症状の性質は劇的なものですが、息止め発作は危険なものではありません。 かんしゃくは、しばしば息止め発作の一部で、その予防には小児の気をそらしたり、発作を引き起こすことが分... さらに読む 、水頭症 水頭症 水頭症とは、脳内の正常な空間(脳室)や、脳を覆う組織の内側の層および中間の層の間(くも膜下腔)に液体が過剰にたまった状態です。過剰に貯まった液体によって、通常は頭囲の拡大と発達異常が生じます。 脳内の正常な空間(脳室)にある液体が排出されないと水頭症が起こります。 この液体の蓄積には、先天異常、脳内出血、脳腫瘍などの多くの原因があります。 典型的な症状としては、頭の異常な拡大や発達異常などがあります。... さらに読む
呼吸障害:RSウイルス RSウイルス(RSV)感染症とヒトメタニューモウイルス感染症 RSウイルスおよびヒトメタニューモウイルスの感染は、上気道感染症と、ときに下気道感染症を引き起こします。 RSウイルスは、乳幼児における呼吸器感染症の非常に一般的な原因です。 ヒトメタニューモウイルスはRSウイルスと似ていますが、別のウイルスです。 典型的な症状としては、鼻水、発熱、せき、喘鳴などがあり、重症になると呼吸窮迫もみられます。 診断は、症状と、これらのウイルス感染症が発生しやすい時期であるかどうかに基づいて下されます。 さらに読む 感染症、インフルエンザ インフルエンザ (流感) インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる肺と気道のウイルス感染症です。感染すると、発熱、鼻水、のどの痛み、せき、頭痛、筋肉痛、全身のだるさ(けん怠感)が生じます。 ウイルスは、感染者のせきやくしゃみで飛散した飛沫を吸い込んだり、感染者の鼻の分泌物に直接触れたりすることで感染します。 まず悪寒が生じ、続いて発熱、筋肉痛、頭痛、のどの痛み、せき、鼻水、全身のだるさが生じます。... さらに読む 、百日ぜき 百日ぜき 百日ぜきは、百日ぜき菌 Bordetella pertussisという感染力の強いグラム陰性細菌によって引き起こされる感染症で、せき込みが起こり、通常はそれに続いて、息を深く吸い込む際に長く高い音(笛声)が出るという一連のせきの発作がみられます。 百日ぜきは通常、小児と青年にみられます。 軽いかぜのような症状に続いて、激しいせきの発作が起こり、徐々に回復します。 特徴的な響きのせきと、鼻とのどの粘液の検査結果に基づいて診断します。... さらに読む
ALTEのあまり一般的でない原因には以下のものがあります。
心疾患
代謝性疾患
気道の狭窄または完全閉塞(閉塞性無呼吸)
その他の病気(薬に関連する病気、小児虐待 小児に対するネグレクトと虐待の概要 小児に対するネグレクトとは、小児の成長に欠かせないものを与えないことです。小児虐待とは、小児に危害を加えることです。 小児に対するネグレクトや虐待のリスクを上昇させる要因として、貧困、薬物やアルコールの乱用、精神障害、片親による育児などがあります。 ネグレクトや虐待の被害を受けた小児は、疲れていたり、空腹であったり、不潔であったり、身体的... さらに読む
、アナフィラキシー反応 アナフィラキシー反応 アナフィラキシー反応は急に発症して広い範囲にわたり、生命を脅かすほど重症化することがあるアレルギー反応です。 アナフィラキシー反応の初期症状には不安感が多く、次いでチクチクした感じと、めまいが起こります。 症状がみるみる悪化して、全身にかゆみやじんま疹、腫れが出たり、喘鳴や呼吸困難が起きたり、失神したりします。これ以外のアレルギー症状が出ることもあります。 これらの症状は生命を脅かす状態まで急速に悪化する可能性があります。... さらに読む など)
約50%の症例では、原因を特定できません。
症状
ALTEは、乳児の呼吸が突然予期しない変化を起こし、親や養育者に危急を告げる事態を特徴とします。そのような事態には以下のものがあります。
20秒以上呼吸が止まる
体の色の変化(通常は青または蒼白になりますが赤くなることもあります)
筋緊張の変化(通常はだらんとなります)
窒息または空嘔吐
診断
医師による評価
評価の結果に応じて、他の検査
ALTEが起こった場合、医師は以下のような重要な質問をします。
養育者はどのような事態を目撃しましたか(呼吸、体の色、筋緊張、眼の変化のほか、乳幼児から発生した音、エピソードの持続時間、ALTEの前に起こった症状の説明を含めて)。
その際、養育者はどんな対処をしましたか(やさしく刺激した、口対口(マウスツーマウス)人工呼吸をした、または心肺蘇生をしたなど)。
母親が妊娠中に薬剤を使用していましたか。現在、家族に薬を使用している、喫煙している、飲酒している人はいますか。
子どもは妊娠何週(受精から出産まで子宮内で経過した期間)で生まれましたか。出生時に何か合併症がありましたか。出生後に無呼吸で入院したことがありますか。
哺乳中に空嘔吐をしたり、せきをしたり、吐いたりしますか。体重の増加に問題はありましたか。
すべての面において年齢相応の発達を示していましたか。
以前にALTEになったことがありますか、または最近けがをしましたか。
家族にALTEを起こした人や乳幼児期に亡くなった人はいますか。
医師は身体診察をして、明らかな異常、特に筋緊張の亢進(体がこわばっている)や筋緊張の低下(だらんとしている)といった神経系の異常、および感染症やけが、虐待が疑われる徴候についてチェックします。
これらの診察所見に基づいて、臨床検査(血液[肝機能を含む]、便、尿、髄液の検査)、画像検査(胸部X線、頭部CTなど)、心電図検査や、これらの組合せを行います。 けいれん発作の可能性をチェックするため、その他の検査(脳波検査 脳波検査 病歴聴取と神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 神経系の病気(神経疾患)の診断に一般的に用いられる画像検査としては、以下のものがあります。 CT(コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 血管造影検査 さらに読む など)が行われる場合もあります。
予後(経過の見通し)
予後はALTEの原因により異なります。例えば原因が重篤な神経疾患である場合には、死亡や障害のリスクが高くなります。ALTEそのものには、小児の発達に対する長期的影響はないと考えられています。ALTEのSIDSとの関係は不明ですが、ALTEが2回以上みられた小児ではSIDSのリスクが高くなります。
治療
原因の治療
ときに在宅モニタリング装置
原因が特定されれば、それに対する治療を行います。心肺蘇生を必要とする乳児、診察または最初の臨床検査で何らかの異常が特定された乳児、または懸念すべきALTEの症状がある乳児は、入院させ、モニタリングとさらなる評価を行います。
親や養育者は、乳児への心肺蘇生の方法と安全な養育法一般(あお向けに寝かせる、タバコの煙を避けるなど)について訓練を受ける必要があります。ある一定の期間、家庭での無呼吸モニタリング装置の使用を勧める場合もあります。その際、単に警報を鳴らすだけのモニターよりも、乳児の呼吸パターンと心拍数を記録するモニターの方が推奨されます。記録機能の付いたモニタリング装置は、医師が実際に起こった事象と警報の誤作動とを区別する上で役立ちます。
さらなる情報
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