亜急性硬化性全脳炎(SSPE)

執筆者:Brenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2021年 7月
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亜急性硬化性全脳炎とは、進行性で通常は死に至る脳の病気で、麻疹(はしか)のまれな合併症として麻疹から数カ月または数年後に発生し、精神遅滞、筋肉の収縮、けいれんを引き起こします。

  • 亜急性硬化性全脳炎の原因は、麻疹ウイルスです。

  • 最初の症状として通常、学校の成績の低下、もの忘れ、かんしゃく、注意散漫、不眠、幻覚がみられます。

  • 診断は症状に基づいて下されます。

  • 通常は死に至ります。

  • 亜急性硬化性全脳炎に対しては治療法がありません。

亜急性硬化性全脳炎は、麻疹ウイルスが長期間脳に感染することで起こります。麻疹に感染している間に、麻疹ウイルスが脳に侵入することがあります。麻疹ウイルスは、直ちに脳の感染症(脳炎)の症状を引き起こすこともあれば、問題を引き起こさずに長期間、脳の中にとどまることもあります。

亜急性硬化性全脳炎は、麻疹ウイルスが再び活性化することで発生します。米国では過去に、麻疹にかかったことがある人の100万人に約7~300人、麻疹ワクチンの接種を受けた人の100万人に約1人の割合で亜急性硬化性全脳炎が起こっていましたが、その原因は分かっていません。しかしながら、予防接種を受けた後に亜急性硬化性全脳炎を発症した人は、予防接種を受ける前に、おそらく軽症で診断されていなかった麻疹にかかっており、ワクチンが亜急性硬化性全脳炎を引き起こしたのではないだろうと考えられています。

米国および西欧では、麻疹の予防接種が行き渡っているため、亜急性硬化性全脳炎もまれです。しかし、最近の麻疹の流行を分析した研究によると、亜急性硬化性全脳炎の発生率は以前考えられていたよりも高い可能性があるとされています。

女性よりも男性によくみられます。亜急性硬化性全脳炎の発生リスクは、2歳未満で麻疹にかかった人で最も高くなります。亜急性硬化性全脳炎は通常、小児または若年成人(通常は20歳未満)に発生します。

亜急性硬化性全脳炎の症状

亜急性硬化性全脳炎の最初の症状は、学校の成績の低下、もの忘れ、かんしゃく、注意散漫、不眠、幻覚などです。腕、頭、体の筋肉が突然収縮することもあります。やがて、自分では止められない筋肉の異常な動きとともに、けいれんが起こり、知能と言語能力が低下していきます。

その後、筋肉が徐々に硬直していき、ものを飲み込みにくくなることがあります。ものが飲み込みにくいと、唾液がのどに詰まって肺炎が起こることがあります。失明する場合もあります。最終段階では、体温が上昇し、血圧と脈拍が異常になることもあります。

亜急性硬化性全脳炎の診断

  • 髄液または血液の検査

  • 画像検査

若い人で、精神遅滞および筋肉のけいれんがみられ、過去に麻疹にかかったことがある場合、亜急性硬化性全脳炎が疑われます。診断は、髄液検査の結果、麻疹ウイルスに対する抗体の量が多いことを示した血液検査の結果、異常な脳波、およびの異常を示したMRI検査またはCT検査の結果によって確定できる場合があります。

検査で原因が明らかにならない場合、脳の生検が必要になることもあります。

亜急性硬化性全脳炎の予後(経過の見通し)

亜急性硬化性全脳炎の患者は、ほぼ必ず、1~3年以内に死亡します。亜急性硬化性全脳炎では極度の脱力が起こり、筋肉の異常な動きを制御できなくなるために肺炎が発生し、通常はこれが直接の死因となります。

亜急性硬化性全脳炎の治療

  • けいれんに対する抗てんかん薬

亜急性硬化性全脳炎の進行を止める手段はありません。けいれんを抑えたり、頻度を減らしたりするために抗てんかん薬を使うことがあります。

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