がんは生命を脅かす病気であることが多く、治療開始が遅れると治療が成功する可能性が低くなるため、がんの治療は通常、妊娠の有無にかかわらず同様に行われます。一般的ながんの治療法には(手術、化学療法薬、放射線療法など)は胎児に有害なものがあります。そのため、中絶を検討することもあります。しかし、胎児へのリスクが小さくなるように治療の時期を調整できることもあります。
がんの種類によっては(例えば直腸がんや 婦人科がん 女性生殖器のがんの概要 外陰部、腟、子宮頸部、子宮体部、卵管、卵巣など、がんは女性の生殖器系のどの部分にも起こりえます。これらのがんを婦人科がんといいます。 米国で最も多くみられる婦人科がんは 子宮体がん(子宮内膜がん)であり、次に 卵巣がん、そして 子宮頸がんです。先進国では 子宮頸がんのスクリーニングが広く行われ効果的であるため、子宮頸がんはあまり多くありま... さらに読む )、妊娠中の治療内容を調整できることがあります。
直腸がん
直腸がん 大腸がん 大腸がんのリスクは、家族歴や食事に関する一部の要因(低繊維、高脂肪)によって高まります。 典型的な症状としては、排便時の出血、疲労、筋力低下などがあります。 50歳以上の人ではスクリーニング検査が重要です。 診断を下すために大腸内視鏡検査がよく行われます。 早期に発見された場合に最も高い治癒の可能性があります。 さらに読む では、がんを確実にすべて取り除くため、子宮摘出術が必要になることがあります。このような場合、子宮摘出術および積極的ながん治療を開始できるよう、妊娠28週頃という早い段階で帝王切開を行うことがあります。
子宮頸がん
妊娠により 子宮頸がん 子宮頸がん 子宮頸がんは子宮頸部(子宮の下部)に発生します。 子宮頸がんは通常、性交時に感染するヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症の結果として発生します。 最初の症状は通常、不規則な性器出血(不正出血)(通常は性交後)ですが、がんが大きくなるか広がるまで何の症状もみられない場合もあります。 通常は子宮頸部細胞診で異常が見つかり、その場合は生検を行います。 定期的に子宮頸部細胞診を受け、ヒトパピローマウイルスのワクチン接種を受けることで子宮... さらに読む が悪化することはないようです。
妊婦の子宮頸部細胞診(パパニコロウ検査)で異常がみられた場合は、双眼の拡大鏡の付いた装置を使用して子宮頸部を観察します(コルポスコピー コルポスコピー 医師は、 スクリーニング検査を勧めることがあります。スクリーニング検査とは、症状がない人に対して病気の有無を調べるために行われる検査です。女性に生殖器系に関連する症状(婦人科疾患の症状)がある場合、症状を引き起こしている病気を特定するための検査(診断目的の検査)が必要になることがあります。 婦人科領域では以下の2つのスクリーニング検査が重要です。 子宮頸がん(子宮の下部のがん)の有無を調べるためのパパニコロウ検査のような細胞診... さらに読む )。コルポスコピーが胎児に害を与えることはなく、妊娠への影響もありません。医師は通常、コルポスコピーを行う際には専門家に相談し、異常組織があればサンプルを採取して顕微鏡で調べる(生検 子宮頸部または腟 医師は、 スクリーニング検査を勧めることがあります。スクリーニング検査とは、症状がない人に対して病気の有無を調べるために行われる検査です。女性に生殖器系に関連する症状(婦人科疾患の症状)がある場合、症状を引き起こしている病気を特定するための検査(診断目的の検査)が必要になることがあります。 婦人科領域では以下の2つのスクリーニング検査が重要です。 子宮頸がん(子宮の下部のがん)の有無を調べるためのパパニコロウ検査のような細胞診... さらに読む
)べきかどうかの判断に役立てます。子宮頸部の生検は、妊婦においては出血および切迫早産のリスクがあるため、常に行われるものではありません。
子宮頸がんがごく早期である場合には、通常、治療開始は分娩後まで延期します。
妊娠の早期に病期の進行した子宮頸がんが発見された場合は、通常、必要に応じて治療をすぐに開始します。
妊娠後半に子宮頸がんと診断された場合、医師は治療延期に伴うリスクを説明して、分娩可能になるまで胎児が十分に成長するのを待つために治療開始を延期するかどうかを、妊婦自身が決定できるようにします。ただし、がんが進行している場合は、帝王切開を行ってから、子宮摘出術を行います。
その他の婦人科がん
卵巣がん 卵巣がん 卵巣がんは典型的には卵巣の表面から発生しますが、通常は進行するまで診断されません。 卵巣がんでは、病巣が大きくなるか、範囲が広がるまで、症状がみられないことがあります。 卵巣がんの疑いがある場合は、血液検査、超音波検査、MRI検査、CT検査などを行います。 通常は、左右の卵巣および卵管と子宮を切除します。 多くの場合、手術後に化学療法が必要になります。 さらに読む は妊娠中に発見することが困難です。卵巣がんが発見された場合にはすぐ治療を始めなければならないことがあります(左右卵巣の切除)。
子宮体がん 子宮体がん 子宮体がんは、子宮の内側を覆っている子宮内膜という組織から発生するため、子宮内膜がんとも呼ばれています。 子宮内膜がんは通常は閉経後に発生します。 ときに異常な性器出血(不正出血)を引き起こします。 診断には、子宮内膜から採取した組織サンプルを検査します(生検)。 通常は子宮、卵巣、卵管およびときに近くのリンパ節を切除します。手術後には放射線療法を行うことが多いですが、化学療法またはホルモン療法を行うこともあります。 さらに読む (子宮内膜がん)や 卵管がん 卵管がん 卵管がんは卵巣と子宮をつなぐ管に発生します。 卵管を侵すがんは、そのほとんどが体内の別の部位から広がってきたものです。 腹部の不快感や腹部膨満など漠然とした症状が最初にみられる場合もありますが、何の症状も現れない場合もあります。 異常を調べるためにCT検査を実施し、診断を確定するために手術を行います。 通常は、子宮、卵巣、卵管、近くのリンパ節、および周辺組織を切除した後、化学療法を行います。 さらに読む が妊娠中に起こることはめったにありません。
乳がん
妊娠中は乳房が大きくなるため、 乳がん 乳がん 乳がんは、乳房の細胞が異常をきたし制御不能に分裂することで発生します。通常は、乳汁を作る乳腺(小葉)または乳腺から乳頭(乳首)へ乳汁を運ぶ乳管にがんが発生します。 乳がんは、女性がかかるがんの中で発症数が最も多く、がんによる死亡の中では第2位を占めています。 通常、最初に現れる症状は痛みのないしこりで、自分で気づくことがほとんどです。 乳がんスクリーニングの推奨は様々で、定期的なマンモグラフィー、医師による乳房の診察、乳房自己検診などが... さらに読む の発見が困難になります。しこりが見つかった場合には、医師が評価を行います。
通常、乳がんの治療はすぐに開始すべきです。
白血病およびホジキンリンパ腫
妊娠中の 白血病 白血病 および ホジキンリンパ腫 ホジキンリンパ腫 ホジキンリンパ腫は、リード・シュテルンベルク細胞と呼ばれる特殊ながん細胞が認められることで区別されるリンパ腫です。 発生原因は分かっていません。 リンパ節の腫れがみられますが、通常は痛みを伴いません。 ほかにも、がん細胞が増殖している場所によっては、発熱、かゆみ、息切れなどの症状が出ることがあります。 診断にはリンパ節の生検が必要になります。 さらに読む はまれです。これらのがんの治療に一般的に使用される抗がん剤は、流産および先天異常のリスクを高めます。
白血病は急速に致死的になる可能性があるため、胎児の成熟を待たずにできるだけ早く治療を行います。
ホジキンリンパ腫が横隔膜(腹部と胸部を隔てる筋肉)の上方に限られている場合、放射線療法を行うことがあります。腹部は放射線から胎児を守るため遮蔽されます。リンパ腫が横隔膜の下方にある場合、医師は中絶を勧めることがあります。