鼻の周りの副鼻腔などから感染が眼窩に広がることがあります。
症状には、痛み、腫れ、眼が赤くなる、発熱、眼球の突出、視覚障害、眼球運動の障害などがあります。
通常、眼窩のCT(コンピュータ断層撮影)検査またはMRI(磁気共鳴画像)検査が行われます。
入院し、抗菌薬が静脈から投与されます。
(眼窩の病気に関する序 眼窩の病気に関する序 眼窩(がんか)は、眼球が入っている、骨でできた空間で、眼球とその支持構造を保護しています(図「 眼の内部の構造」および「 眼を保護する構造」を参照)。眼窩の病気には以下のものがあります。 骨折 海綿静脈洞血栓症 炎症 感染症(例えば、 眼窩蜂窩織炎[ほうかしきえん]や 眼窩隔膜前蜂窩織炎) さらに読む も参照のこと。)
眼窩蜂窩織炎も 眼窩隔膜前蜂窩織炎 眼窩隔膜前蜂窩織炎 眼窩隔膜前蜂窩織炎(がんかかくまくまえほうかしきえん)は、まぶた、および眼の前方周囲の皮膚と組織の感染症です。 ( 眼窩の病気に関する序も参照のこと。) 眼窩隔膜前蜂窩織炎も 眼窩蜂窩織炎も小児により多くみられます。眼窩隔膜前蜂窩織炎は、眼窩蜂窩織炎よりはるかに一般的です。しかし、眼窩蜂窩織炎の方が危険です。 眼窩隔膜前蜂窩織炎は多くの場合、顔面またはまぶたの感染症、昆虫や動物の刺し傷による感染、結膜炎、麦粒腫(ばくりゅうしゅ、俗称もの... さらに読む も、小児により多くみられます。眼窩隔膜前蜂窩織炎は、眼窩蜂窩織炎よりはるかに一般的です。しかし、眼窩蜂窩織炎の方が危険です。
眼窩蜂窩織炎は多くの場合、鼻の周りの空洞(副鼻腔)から波及した感染症に起因しますが、歯または血流から広がった感染症によることもあります。動物や昆虫による刺し傷またはその他のまぶたの傷口から感染症が広がり、眼窩蜂窩織炎につながることもあります。
眼窩蜂窩織炎は、十分な治療を行わないと重症化し、失明につながることがあります。感染が脳や脊髄(せきずい)に広がる場合もあります(髄膜炎 髄膜炎 )。また、眼の周囲の静脈にできた血のかたまりが脳の基底部にある太い静脈(海綿静脈洞)へと流れ込み、 海綿静脈洞血栓症 海綿静脈洞血栓症 海綿静脈洞血栓症は、血液のかたまり(血栓)で海綿静脈洞(頭蓋骨底部にある太い静脈)が閉塞されてしまう非常にまれな病気です。 海綿静脈洞血栓症は通常、顔と眼窩(鼻の皮膚を含む)、眼窩、または副鼻腔の感染症から細菌が広がることにより起こります。 症状には、頭痛、顔面の痛み、視覚障害、突然現れる眼球の突出、高熱などがあります。 診断は、症状とMRI(磁気共鳴画像)検査またはCT(コンピュータ断層撮影)検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む と呼ばれる重篤な病気を引き起こすこともあります。
症状
眼窩蜂窩織炎の症状には以下のものがあります。
痛み
眼の充血
眼球運動の制限
複視
眼球運動に伴う痛み
まぶたの腫れ
発熱
やがて、視覚が損なわれます。
診断
医師による評価
CTまたはMRI検査
血液と、副鼻腔から採取したサンプルの培養
多くの場合、医師は検査を行わなくても眼窩蜂窩織炎と分かります。しかし、診断を確定するために通常は CT検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査 眼の病気を診断したり、その重症度や広がりを特定したりするために、様々な検査が行われます。左眼、右眼それぞれ別に検査します。 血管造影検査は一般に、血管に造影剤を注射し、画像検査で血管を見えやすくするものです。しかし、眼の血管造影検査では造影剤(色素)を使うことで、医師が直接診察するときに血管を見えやすくするものであり、この色素は写真にも写ります。 フルオレセイン蛍光眼底造影検査を行うと、医師は眼底の血管をはっきりと観察できるようになりま... さらに読む または MRI検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査 眼の病気を診断したり、その重症度や広がりを特定したりするために、様々な検査が行われます。左眼、右眼それぞれ別に検査します。 血管造影検査は一般に、血管に造影剤を注射し、画像検査で血管を見えやすくするものです。しかし、眼の血管造影検査では造影剤(色素)を使うことで、医師が直接診察するときに血管を見えやすくするものであり、この色素は写真にも写ります。 フルオレセイン蛍光眼底造影検査を行うと、医師は眼底の血管をはっきりと観察できるようになりま... さらに読む が行われます。また、原因を特定するために、歯と口腔の検査や、副鼻腔のCTまたはMRI検査が必要になることもあります。医師は、しばしば副鼻腔と血液からサンプルを採取し、検査に送ります。サンプルを 培養 感染症の診断 感染症は、 細菌、 ウイルス、 真菌、 寄生虫などの 微生物によって引き起こされます。 医師は、患者の症状や身体診察の結果、危険因子に基づいて感染症を疑います。まず、患者がかかっている病気が感染症であり、他の種類の病気ではないことを確認します。例えば、せきが出て、呼吸が苦しいと訴える人は、肺炎(肺の感染症)の可能性があります。また、喘息や... さらに読む する(微生物を増殖させる)ことで、どのような細菌が感染症を起こしたのか、どの領域が感染しているのか、どの抗菌薬を使用すべきかを決定します。眼窩蜂窩織炎のある人の診察は、眼科医(眼疾患を専門とする医師)が行います。
治療
入院
抗菌薬
手術
眼窩蜂窩織炎では、一般に入院が必要です。臨床検査の結果が出るのを待たず、できるだけ早く抗菌薬の投与を開始します。抗菌薬は静脈から投与します。培養結果から、最初に使用したものとは別の抗菌薬の方がより効果的と思われる場合は、抗菌薬を切り替えることもあります。視覚障害があれば、ときに外科的処置が必要になることがあります。外科的処置により、膿の貯留部(膿瘍[のうよう])もしくは感染した副鼻腔から膿を排出したり、異物を取り除いたり、抗菌薬が無効であった場合に感染症を治療したりします。