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尋常性天疱瘡

執筆者:

Daniel M. Peraza

, MD, Geisel School of Medicine at Dartmouth University

最終査読/改訂年月 2017年 4月
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尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)は、様々な大きさの水疱が皮膚、口の粘膜、その他の粘膜に急に多数発生する、まれな重度の自己免疫疾患です。

  • 尋常性天疱瘡は、免疫系が皮膚の上層に含まれるタンパク質を誤って攻撃することで発生します。

  • 口の中や他の部位に重度の水疱が生じ、ときには広い範囲の皮膚が剥がれ落ちることもあります。

  • 尋常性天疱瘡の診断は、皮膚のサンプルを顕微鏡で調べることによって下されます。

  • 治療は通常、コルチコステロイドや免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬)により行います。

天疱瘡は中年層や高齢者に最も多くみられる病気で、発生率に男女差はありません。小児ではほとんど起こりません。

この自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む では、正常な状態では異物の侵入から体を守っている免疫系が誤って自分の体の細胞、この場合は皮膚を攻撃してしまいます。表皮の細胞(皮膚の最も外側の層を構成する細胞)同士をつないでいる特定のタンパク質を攻撃する抗体 抗体 獲得免疫(特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識したときに始まります。そして、獲得免疫を構成する要素が、それぞれの抗原について最良の攻撃方法を学習し、抗原を記憶していきます。獲得免疫が特異免疫とも呼ばれているのは、過去に遭遇した抗原に対し、それぞれに応じた(特異的な)攻撃をするからです。その優れたところは、学習し、適応し、記... さらに読む 抗体 が、免疫系によって作り出されます。細胞間のつながりが破壊されると、表皮細胞はお互いから、また皮膚の下層から分離していき、それにより水疱が形成されます。それほど危険ではない皮膚の病気である水疱性類天疱瘡 水疱性類天疱瘡 水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)は、皮膚に水疱ができる自己免疫疾患です。 (水疱ができる病気の概要も参照のこと。) 水疱性類天疱瘡は、免疫系が皮膚を攻撃することで発生し、その攻撃によって水疱が生じる自己免疫疾患です。 皮膚の炎症とともに、かゆみを伴う大きな水疱ができます。 診断は、皮膚のサンプルを顕微鏡で調べ、特定の抗体の沈着を確認することで下されます。 さらに読む 水疱性類天疱瘡 でも、同様の外観をした水疱が発生します。

症状

尋常性天疱瘡の主な症状は、透明で軟らかく、痛みを伴う(ときに圧痛もみられる)、様々な大きさの水疱ができることです。さらに、皮膚を軽くつまんだりこすったりしただけで、皮膚の最も外側の層が下の層から剥がれ、大きくむけてしまい、痛みのある開いた傷口(びらん)ができます。

水疱は多くの場合、最初に口の中にできてすぐ破れ、痛みを伴うびらん(潰瘍)になります。その後も水疱と潰瘍が次々とできて口の粘膜全体に広がり、ものを飲み込むこと、食べること、水分を摂取することが難しくなります。水疱はのどにもできます。水疱は皮膚にも生じて破れ、痂皮に覆われた痛みを伴う傷になります。患者は全身のだるさを感じます。水疱は広範囲に及ぶことがあり、それらが破れると感染症にもつながります。尋常性天疱瘡は重症の場合、重篤な熱傷と同じくらい危険です。熱傷の場合と同様に、尋常性天疱瘡で損傷した皮膚からは、大量の体液がしみ出し、様々な細菌に感染しやすい状態になります。

知っていますか?

  • 尋常性天疱瘡は治療しないとしばしば死に至りますが、治療を受ければ85~95%の人が命を取りとめます。

診断

  • 医師による評価

  • 皮膚生検

通常は特徴的な水疱から見当がつきますが、診断の確定は、皮膚のサンプルを顕微鏡で調べる検査(皮膚生検 生検 皮膚の病気には、医師が皮膚を観察しただけで特定できるものが数多くあります。全身の皮膚の診察には、頭皮、爪、粘膜の診察も含まれます。ときに、皮膚の一部を詳細に観察するために、手持ち式の拡大鏡やダーモスコープ(拡大レンズと内蔵式のライトを備えた器具)を使用することもあります。 診断につながる特徴としては、皮膚に現れている異常部分の大きさ、形、色、部位に加え、その他の症状や徴候の有無があります。皮膚の異常の広がりを調べるため、しばしば衣服をす... さらに読む 生検 )によって行います。検査では、抗体の沈着を顕微鏡で見えるようにするために、ときに特殊な化学染色を行うこともあります。尋常性天疱瘡と水疱性類天疱瘡 水疱性類天疱瘡 水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)は、皮膚に水疱ができる自己免疫疾患です。 (水疱ができる病気の概要も参照のこと。) 水疱性類天疱瘡は、免疫系が皮膚を攻撃することで発生し、その攻撃によって水疱が生じる自己免疫疾患です。 皮膚の炎症とともに、かゆみを伴う大きな水疱ができます。 診断は、皮膚のサンプルを顕微鏡で調べ、特定の抗体の沈着を確認することで下されます。 さらに読む 水疱性類天疱瘡 の区別は、症状が及んでいる皮膚の層と特徴的な抗体の沈着の有無を調べることで行います。

予後(経過の見通し)

治療しない場合、尋常性天疱瘡はしばしば死に至ります(通常は5年以内)。しかし、コルチコステロイドの内服(経口投与)または静脈内投与による治療を行えば、5年以内の死亡率は約5~15%まで低下します。死亡および重度の合併症のリスクは、尋常性天疱瘡が広範囲に生じている場合、病気をコントロールするために免疫系を抑制するコルチコステロイドなどの薬を高用量で投与する必要がある場合、またはほかに重篤な病気がある場合に、高くなる傾向があります。

治療

  • コルチコステロイド(経口または静脈内投与)

  • 破れた水疱に対する抗菌薬の使用と保護的なドレッシング

  • ときに、免疫抑制薬または免疫グロブリン製剤

症状が中等度から重度の場合は入院して治療します。入院中は、尋常性天疱瘡で皮膚がむけてしまった表面に対し、重度の熱傷患者に対するものと同様の綿密なケアが必要になります。破れた水疱の感染を治療するために抗菌薬が必要になる場合もあります。ドレッシングによって、皮膚がむけてじくじくしている部位を保護することができます。

治療の中心は、コルチコステロイドを高用量で投与することです。内服で使用しますが、入院している場合は静脈内投与も可能です。病状がコントロールできるようになったら、コルチコステロイドの用量を徐々に減らしていきます(漸減)。

治療の効果がみられない場合や、コルチコステロイドの用量を漸減している間に症状が再燃した場合は、免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬)であるアザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、リツキシマブなども投与します。免疫抑制薬は、コルチコステロイドの長期間または高用量の投与が必要な患者に対して、その必要性を減らすために投与されることもあります。重度の尋常性天疱瘡では、血液から抗体をろ過して取り除く血漿交換という治療を行うこともあります( 血小板献血 血小板献血 以下のような、特別な供血方法がいくつかあります。 (輸血の概要も参照のこと。) 血小板献血では、全血ではなく血小板だけを採取します。供血者から採取した血液を機器で成分毎に分け、血小板だけを選別して、残りの成分は供血者に戻します。血液の大部分が体内に戻るため、全血の場合と比べて、1回に8~10倍の血小板を安全に採取できます。3日毎に1回(ただし、供血は1年に24回まで)と、より頻繁に血小板を採取できます。全血の場合は採血にかかる時間は10... さらに読む )。重度の尋常性天疱瘡に対する別の治療法として、免疫グロブリン製剤を静脈内注射で使用することもできます。薬物療法を中止できるくらい効果が得られる場合もあれば、長期間にわたり低用量で投与を続けなければならない場合もあります。

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