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ハンセン病

(らい病)

執筆者:

Dylan Tierney

, MD, MPH , Harvard Medical School;


Edward A. Nardell

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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ハンセン病は、らい菌 Mycobacterium lepraeまたはマイコバクテリウム・レプロマトーシス Mycobacterium lepromatosisという細菌によって引き起こされる慢性感染症です。感染の結果、主に末梢神経(脳と脊髄以外の神経)、皮膚、精巣、眼、鼻、のどの粘膜に障害が起こります。

  • ハンセン病は軽症のもの(皮膚の患部が1カ所から数カ所)から重症のもの(皮膚の患部が多数で、多くの臓器に障害が生じる)まで様々な場合があります。

  • 発疹と隆起が現れ、患部にしびれが生じ、筋力が低下することもあります。

  • ハンセン病の診断は、症状から疑われ、患部組織の生検により確定します。

  • 抗菌薬でハンセン病の進行は抑えられますが、神経の損傷や患部の変形を元の状態に戻すことはできません。

治療をしなければ患者の外観が損なわれ、しばしば重い障害が起きることから、患者は長い間恐れられ、遠ざけられてきました。ハンセン病は、感染力が強いわけではなく、死に至ることもまれなうえ、抗菌薬で効果的な治療が可能であるにもかかわらず、今もなお大きな社会的偏見がつきまとっています。このため、ハンセン病にかかった人やその家族は心理的、社会的問題に苦しむことが少なくありません。

世界中でハンセン病の発生数は減少しています。2016年に新たに報告された患者数は約214,783人でした。2015年には、新たな症例の約80%がインド、ブラジル、インドネシアで発生しました。米国では、2015年に178人の新規患者が報告されています。

米国で起こるハンセン病のほとんどは、ハンセン病が多く発生している発展途上国で働いていた人か、そうした国から移住してきた人に起こっています。症例の70%以上が、アーカンソー州、カリフォルニア州、フロリダ州、ハワイ州、ニューヨーク州、テキサス州、ルイジアナ州の7州で発生しました。一部の症例は、らい菌を運ぶアルマジロとの接触に関連していると考えられます。

ハンセン病はどの年齢でも発生しますが、5~15歳または30歳以上の人によくみられるようです。

らい菌 Mycobacterium lepraeに感染した人の95%以上では免疫系が感染を防御するため、ハンセン病を発症することはないと推定されています。発症する人は、菌に感染しやすい遺伝子をもっている可能性があります。

ハンセン病の感染

ハンセン病は、感染者が鼻や口から吐き出した飛沫を吸い込んだり、それに触れたりすることで、人から人に伝染する場合があります。しかし、菌に触れた場合でも、ほとんどの人はハンセン病にかかりません。そのためハンセン病患者の約半数は、おそらく感染者と長期にわたって濃厚な接触のあった人だと考えられます。短期間の軽い接触では感染しないようです。ハンセン病は患者に触れるだけで感染すると広く信じられていますが、そのような事実はありません。医療従事者はしばしばハンセン病患者に長年にわたって関わりますが、ハンセン病にかかることはありません。

人間以外で確認されている感染源はアルマジロだけですが、他の動物や環境が感染源として存在する可能性はあります。

ハンセン病の分類

ハンセン病は病型と皮膚の患部の数によって分類することができます。

  • 少菌型

  • 多菌型

少菌型ハンセン病の患者は、皮膚の患部の数が5カ所以下の患者です。患部のサンプルから菌は検出されません。

皮膚上の患部が6カ所以上の患者や、患部から採取したサンプルに細菌が見つかった患者は、多菌型ハンセン病に該当します。

また患者が示す症状や他の所見に基づき、次のようにも分類できます。

  • 類結核型

  • らい腫型

  • 境界型

類結核型のハンセン病は、一般的に皮膚の患部数が少なく(少菌型)、比較的軽症で、発生数は少なく、感染力が弱い型です。

らい腫型のハンセン病は、皮膚の患部数が多く(多菌型)、より重症で、発生数が多く、感染力が強い型です。

境界型の患者には、類結核型とらい腫型の両方の特徴がみられます。

いずれの分類でも、ハンセン病の種類によって以下のことが決まります。

  • 患者の長期的な健康状態

  • 可能性の高い合併症

  • 抗菌薬による治療が必要な期間

症状

ハンセン病を起こす菌は非常にゆっくり増殖するため、症状が出るのは感染してから早くて1年後です。平均では感染後5~7年経過した後に症状が現れますが、20~30年後の場合もあります。発症した後は、ゆっくりと進行していきます。

症状は主に皮膚と末梢神経にみられ、特徴的な発疹と隆起が生じます。かゆみはありません。末梢神経が侵されると、その神経の支配下にある皮膚にしびれが生じ、筋力が低下します。

具体的な症状はハンセン病の病型によって異なります。

  • 類結核型:比較的色の薄い平らな領域が1カ所または少数できる発疹が現れ、それらの境界は明確で隆起しています。患部では、皮膚の下にある神経が細菌によって損傷されるため、しびれが生じます。

  • らい腫型:様々な大きさと形をとる隆起した発疹が皮膚に多数現れます。類結核型に比べてしびれが生じる範囲が広く、一部の筋肉群に筋力の低下がみられるほか、皮膚の広い範囲や腎臓、鼻、精巣など体の多くの部位が侵されることもあります。男性患者の乳房が膨らむことがあります。まつ毛とまゆ毛がなくなることもあります。

  • 境界型:類結核型とらい腫型の両方の特徴をもっています。治療を行わない場合、症状が軽くなって類結核型になることもあれば、悪化してらい腫型に似た症状を示すこともあります。

ハンセン病の最も重い症状は、末梢神経の感染により触覚が鈍くなり、痛みや温度が感じられなくなることです。末梢神経の損傷がある患者は、気づかないうちに自分で自分に熱傷(やけど)や切り傷などを負わせてしまうことがあります。何度も損傷を繰り返すと、最終的には手足の指を失うことにつながります。また末梢神経が損傷されることで筋力が低下し、患部が変形することもあります。例えば指の筋力が低下すると、内側に(かぎ爪のように)弯曲(わんきょく)します。下垂足と呼ばれる症状では、足を曲げられないほどの筋力の低下がみられます。感染した神経が大きくなり、医師が身体診察中に触知できる場合があります。

ハンセン病の画像

皮膚に感染すると腫れやしこりが広範囲に現れ、特にこれらが顔面に及ぶと著しく外観が損なわれます。

以下のように、体の他の部分にも感染することがあります。

  • 足:足の裏がただれることがあり、歩行時に痛みが出ます。

  • 鼻:鼻腔が侵されると慢性的な鼻づまりや鼻血がみられ、治療しないでいると鼻全体にびらんが生じます。

  • 眼:眼が侵されると緑内障や失明につながります。

  • 性的機能:らい腫型ハンセン病の男性では勃起障害(インポテンス)が生じたり、不妊症になることがあります。これは感染により精巣で作られるテストステロンと精子の量が減ってしまう場合があるためです。

  • 腎臓:腎臓の機能が低下することがあります。重症の場合は、腎不全が起こります。

ハンセン病は未治療の場合に限らず、治療中であっても、体の免疫系による炎症反応が生じることがあります。発熱や皮膚または末梢神経の炎症がよくみられますが、ほかにリンパ節、関節、精巣、腎臓、肝臓、眼にも炎症が生じます。このような反応も神経の損傷につながる可能性があります。隆起した皮膚の周りが赤く腫れて痛みが生じ、隆起した部分が潰瘍化することもあります。発熱、リンパ節の腫れ、関節痛がみられる人もいます。

診断

  • 感染した皮膚組織のサンプルの検査

なかなか消えない特徴的な発疹、神経の腫大、触覚の喪失、筋力低下による体の変形などの症状があれば、ハンセン病が疑われます。しかし米国では、ハンセン病がまれにしか発生せず、医師もその症状になじみが薄いため、ハンセン病が疑われない場合もあります。

感染した皮膚組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べ(生検)、診断を確定します。らい菌は検査室では増殖しないため、組織サンプルを培養しても役に立ちません。

必ずしも抗体が存在するわけではないため、らい菌に対する抗体を測定する血液検査の有用性は限定的なものです。(抗体とは、ハンセン病の原因菌のような特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出す物質です。)

知っていますか?

  • ハンセン病は容易には感染しません。

予防

ハンセン病は感染力があまり強くなく、感染リスクの低い病気です。感染力があるのは、未治療のらい腫型ハンセン病だけですが、その場合も簡単には感染しないうえ、治療を開始すれば、感染が広がることはなくなります。

ハンセン病の最適な予防法は次の通りです。

  • 感染者の体液や発疹に触らない

  • アルマジロに接触しない

結核の予防に使用されるBCG(カルメット-ゲラン桿菌)ワクチンはハンセン病の予防にもある程度有効ですが、ハンセン病予防の目的ではあまり使用されていません。

治療

  • 抗菌薬

抗菌薬でハンセン病の進行は抑えられますが、神経の損傷や患部の変形を元の状態に戻すことはできません。そのため、早期の発見と治療が非常に重要です。

特定の抗菌薬を単独で使用すると、らい菌がその薬に耐性をもつようになるため、複数の抗菌薬が処方されます。

らい菌は根絶しにくいため、抗菌薬による治療を長期間行う必要があります。感染症の重症度によって、6カ月から数年にわたって抗菌薬の投与を続けます。

使用する薬は、ハンセン病の病型に応じて選択します。

  • 多菌型:標準的な薬の組合せは、ジアフェニルスルホン、リファンピシン、クロファジミンです。米国では、リファンピシン、ジアフェニルスルホン、クロファジミンを1日1回、24カ月にわたって投与します。他の国や地域では、医療従事者の監督のもとで、リファンピシンとクロファジミンを月1回使用します。また患者はジアフェニルスルホンとクロファジミンを自分で1日1回服用します。このレジメン(投薬計画)を12カ月継続します。

  • 少菌型:米国では、リファンピシンとジアフェニルスルホンを1日1回、12カ月間投与します。他の国や地域では、医療従事者の監督のもとで、リファンピシンを月1回使用し、加えて患者が自分でジアフェニルスルホンを1日1回、6カ月間服用します。皮膚の患部が1カ所だけの場合は、リファンピシン、オフロキサシン、ミノサイクリンを1回服用します。

ジアフェニルスルホンは比較的安価で概して安全ですが、アレルギー性発疹や貧血が起こることがあります。

リファンピシンはジアフェニルスルホンより高価ですが、効果も高い薬です。最も重篤な副作用として、肝臓の損傷やインフルエンザ様の症状のほか、まれに腎不全がみられます。

クロファジミンは極めて安全であり、主な副作用は皮膚の一時的な色素沈着で、これは消えるまでに数カ月かかることがあります。

ハンセン病に対する炎症反応はコルチコステロイドで治療されます。軽度の皮膚の炎症であれば治療は不要です。

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