ボレリア属 Borreliaのいくつかの細菌が回帰熱を引き起こします。ライム病を引き起こすボレリア属 Borrelia細菌とは、菌種が異なります。
ダニ媒介性回帰熱は、米国、アフリカ、アジア、および欧州でみられます。米国では、主に西部の州で5~9月を中心に発生しています。ボレリア属 Borrelia細菌の感染を媒介するダニは通常、げっ歯類の動物(シマリスやリスなど)によって運ばれます。げっ歯類の動物が住み着いた山小屋で睡眠をとると、感染したダニに咬まれることがあります。しかし、ダニは一晩だけ吸血し、それほど長期にわたって付着しないため、ダニに咬まれたことを本人も忘れてしまいがちです。
シラミ媒介性回帰熱は、米国ではまれな病気で、主に中央および東アフリカの山岳地帯と南米のアンデス山脈で発生しています。シラミ媒介性回帰熱は欧州でもアフリカからの難民の間で発生しています。この感染症は大流行することがあり、特に戦争の影響を受ける地域や難民キャンプでよくみられます。通常、シラミの寄生は見ればすぐに分かります。人への感染は、シラミが潰されて細菌が放出され、それが咬まれた箇所や皮膚の損傷した箇所から体内に侵入することで起きます。傷ついていないシラミが感染を広めることはありません。
症状
回帰熱では、悪寒が突然みられた後、高熱、重度の頭痛、嘔吐、筋肉痛、関節痛が発生します。ダニに咬まれた箇所に、厚くて黒いかさぶた(痂皮)ができることがあります。体幹と腕や脚に赤みを帯びた発疹が現れ、眼が充血することもあります。一部の患者はせん妄状態に陥ります。
数日後に発熱が急に治まり、快方に向かいます。しかし、やがて発熱と通常は他の症状がぶり返し(再燃)、1週間ほどの間隔で最大30回の再燃がみられます。そのたびに症状は軽くなっていき、最終的に患者は回復して、この病気に対する免疫を獲得します。
病気の後期には、他の症状が現れることもあります。具体的には、黄疸(皮膚や白眼の部分が黄色くなる症状)、肝臓と脾臓の腫大、心筋炎(心臓の組織の炎症)、心不全などがみられます。これらの症状はシラミ媒介性回帰熱の患者で比較的多くみられます。
眼、脳、脊髄に感染が起きることもあり、例えば、髄膜炎が発生することがあります。これらの病態はダニ媒介性回帰熱の患者で比較的多くみられます。
妊婦が回帰熱を発症すると、流産になる可能性があります。
大半の患者は回復しますが、わずかながら亡くなる人もいます。死に至る可能性が高いのは、非常に若い妊婦、高齢者、栄養状態が悪い人、衰弱した人、シラミ媒介性回帰熱の流行期に感染した人です。