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百日ぜき

(百日咳)

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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百日ぜきは、百日ぜき菌 Bordetella pertussisという感染力の強いグラム陰性細菌によって引き起こされる感染症で、せき込みが起こり、通常はそれに続いて、息を深く吸い込む際に長く高い音(笛声)が出るという一連のせきの発作がみられます。

  • 百日ぜきは通常、小児と青年にみられます。

  • 軽いかぜのような症状に続いて、激しいせきの発作が起こり、徐々に回復します。

  • 特徴的な響きのせきと、鼻とのどの粘液の検査結果に基づいて診断します。

  • たいていの場合、ゆっくりとですが完全に回復します。

  • この感染症の予防にはワクチン接種が役立ちます。

  • 症状が非常に重い小児は通常、入院させ、抗菌薬を投与して感染症を根治させます。

細菌の概要も参照のこと。)

百日ぜきはかつて米国でまん延しましたが、現在までに根絶には至らぬものの、かなり少なくなりました。2016年の米国における百日ぜきの発症数は約18,000例でした。予防接種を受けていない人々の間で地域的な流行が3~5年毎に発生しています。

発展途上国では、どの国でもいまだに大きな問題となっています。

百日ぜきは、ワクチンで予防できるにもかかわらず、発生率が上昇しています。この増加の背景には、次の要因があると考えられます。

  • 以前にワクチンを接種した人の免疫が弱くなっている。

  • 一部の親が子どもにワクチンを接種させようとしない。

ワクチンが普及する前は、百日ぜきは幼児の病気でした。現在では、年齢にかかわらず百日ぜきを発症する可能性があります。半数以上の症例は青年と成人で発生しています。しかし、百日ぜきは2歳未満の小児に発生した場合に最も重篤となり、死亡する人はほぼすべて1歳未満の乳児です。ほとんどの死亡は肺炎と脳に影響を及ぼす合併症によるものです。百日ぜきは高齢者においても重篤な病気です。

百日ぜきに1回かかっても一生続く免疫を得られるとは限りませんが、2回目に感染して発症しても通常は症状が軽く、百日ぜきだと気づかないこともあります。成人では誤って非定型肺炎(症状の軽い肺炎)と診断される症例もあるほどです。

感染した人がせきをして百日ぜきの菌を含んだ飛沫が空気中に飛び散り、その飛沫を近くにいた人が吸い込んで感染することがあります。通常、感染して3週目以降は他の人に感染しなくなります。

症状

百日ぜきは、原因菌にさらされてから1~2週間後に症状が現れます。合併症が起きなければ、6~10週間をかけて次の3つの段階を経ながら経過します。

  • 軽いかぜのような症状

  • 重度のせき発作

  • 段階的な回復

かぜのような症状とは、くしゃみ、鼻水、食欲不振、ぼんやりする、夜間の空せき、全身のだるさ(けん怠感)などを指します。声がれがみられることがありますが、発熱はまれにしか起こりません。

せき発作は10~14日後に発生します。まず、ひどいせきが立て続けに5回以上続けて出て、多くの場合、その後に笛声(長くて高い、ヒューという音を立てながら深く息を吸う音)が聞こえます。典型的な笛声がみられる患者は約半数に過ぎません。予防接種を受けた小児では、笛声がみられにくい可能性が低くなります。発作が治まると呼吸は正常に戻りますが、その後すぐに新たな発作が始まります。

せきをすると濃厚な粘液が大量に出ることが多く、通常は乳児や小児がそれを飲み込んだり、鼻から大きなあぶくとして出たりします。

より年齢の低い小児は長いせきの発作の後で嘔吐することがよくあります。また、乳児では息苦しさや、呼吸が一時的に止まる(無呼吸)ことで皮膚が青白くなる場合があります。笛声よりも、こちらの症状の方がよくみられることがあります。

百日ぜきにかかった小児の約4分の1が肺炎を発症し、呼吸困難に陥ります。また、耳の感染症(中耳炎)を起こすこともよくあります。まれに、百日ぜきが乳児の脳を侵し、脳の出血や腫れ、炎症などにより、けいれん発作、錯乱、脳の損傷、知的障害を起こすことがあります。けいれん発作は乳児に多くみられますが、年長の小児ではまれです。

せきの発作は数週間で次第に治まりますが、何週間あるいは何カ月間にもわたってせきの発作が続く場合もあります。

百日ぜきにかかった小児の大半は、ゆっくりではありますが完全に回復します。しかし、1歳未満の乳児の少数は死亡します。

診断

  • 粘液サンプルの培養検査

  • ときに粘液サンプルに対する他の検査

笛声を伴うせきなどの典型的な症状があると、医師は百日ぜきを疑い、鼻の奥やのどの粘液で培養検査を行って、診断を確定します。最初の2段階に当てはまる百日ぜきの患者では、通常は培養検査で陽性と判定されますが、発症から数週間以上経過した患者では陰性になることがよくあります。培養検査の結果が出るまでには最大7日間かかります。

鼻またはのどの分泌液のサンプルで行われるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査は、最も有用な検査です。これは細菌のDNAを増幅させることで、より速やかに細菌を検出し、より容易に種類を特定することができる方法です。

予防

小児が受ける百日ぜきの定期予防接種では、通常、百日ぜきワクチンとジフテリアおよび破傷風に対するワクチンを混合して使用し、7歳未満の小児にはDTaP(3種混合)として、青年と成人にはTdap(成人用3種混合)として接種します( 乳児と小児のための定期予防接種)。ワクチンの接種により獲得された免疫は、最終の接種から5~10年で弱まる傾向にあります。

青年と19歳以降の成人(65歳以上も含む)には、Tdapを1回、追加接種することが推奨されます。妊娠のたびに追加接種することも推奨されます。

百日ぜき菌にさらされた後の対応

予防接種を受けているかどうかにかかわらず、百日ぜきの患者と接触した特定のグループの人には抗菌薬が投与されます。こうした抗菌薬の投与(曝露後投与と呼ばれます)は、百日ぜきの患者で最初にせきがみられてから21日以内に、以下に該当する人に対して行われます:

  • 百日ぜきの患者と家庭内で接触した人(同じ家に住む人)

抗菌薬の曝露後投与は、百日ぜきの人と接触した、以下のような高リスクの人にも行われます。

  • 12カ月未満の乳児

  • 第3トリメスター(訳注:日本の妊娠後期にほぼ相当)の妊婦

  • 百日ぜきにより悪化する可能性がある病気(中等度から重度の喘息、慢性肺疾患、免疫機能が低下する病気など)をもつすべての人

  • 生後12カ月未満の乳児、妊婦、または感染した場合に重度の病気や合併症が発生する可能性がある人と濃厚な接触がある人

  • 12カ月未満の乳児または第3トリメスターの妊婦がいる環境(保育所、産科病棟、新生児集中治療室など)にいるすべての人

予防手段として抗菌薬のエリスロマイシン(または、ときにクラリスロマイシンやアジスロマイシン)を投与します。生後1カ月未満の乳児には、アジスロマイシンが選択されます。

さらに7歳未満の小児がワクチン接種を3回以下しか受けておらず、百日ぜき患者と濃厚な接触がある場合も、ワクチン接種が必要です。

治療

  • 重篤な病態の乳児には、入院と隔離

  • 抗菌薬

重篤な病態の乳児は、呼吸困難がひどくなると気管にチューブを挿入し人工呼吸器を付けなければならないため、通常は入院させます。のどの粘液の吸引が必要になる場合もあれば、酸素補給や輸液が必要になる場合もあります。重篤な状態の乳児は、通常は抗菌薬を5日間投与し終わるまで隔離されます。これは汚染された飛沫が空気中に飛び散って他の人に感染するのを防ぐためです(空気感染隔離)。ささいなきっかけでせき発作を起こすことがあるため、こうした状態の乳児は暗く静かな部屋に寝かせ、安静を乱す要素は極力排除します。

年長児で軽症の場合は、自宅で抗菌薬を使用して治療します。自宅で治療する小児は、症状が現れてから治まるまで少なくとも4週間は隔離する必要があります。

せき止め薬の効果は疑わしいため、通常は使用されません。

百日ぜきの原因菌を殺すために、通常は抗菌薬のエリスロマイシンかアジスロマイシンを服用します。

抗菌薬は百日ぜきに伴って起こる肺炎や耳の感染症の治療にも用います。

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