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ムコール症

(接合菌症)

執筆者:

Sanjay G. Revankar

, MD, Wayne State University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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ムコール症は、数種類の近縁のカビが起こす感染症です。

  • ムコール症の感染は、原因となるカビの胞子を吸い込むか、それよりはまれですが、切り傷などの皮膚にできた開口部から体内に胞子が入ることで起こります。

  • 感染により痛み、発熱、ときにはせきが生じ、顔の構造が破壊されることがあります。

  • 診断は組織サンプル中でこの真菌を特定することで下されます。

  • 大半の患者に対して高用量のアムホテリシンBを静脈内に投与し、感染組織や死んだ組織を取り除く手術を行います。

様々な種類の真菌がムコール症を起こします。これらの真菌は、ケカビ目と呼ばれるカビの大きなグループに属します。そのようなカビには、クモノスカビ(Rhizopus)、リゾムコール(Rhizomucor)、ユミケカビ(Absidia)、ケカビ(Mucor)などがあります。それぞれが同様の症状を引き起こします。

このようなカビは環境中に多数存在し、よくみられるパンのカビの多くが含まれます。おそらく誰でもこうしたカビの胞子を絶えず吸い込んでいるはずです。しかし、これらのカビは通常は感染症を引き起こしません。ムコール症は基本的に以下のいずれかに該当する場合に起こります。

ムコール症は次の経路で発生することがあります。

  • カビが作り出す胞子を吸い込む(最も一般的な原因)

  • カビの胞子が皮膚の傷口から体内に入る

胞子を吸い込むことで、次の数種類の感染症につながります。

  • 感染が最もよく起こるのは、鼻、副鼻腔、眼、脳です。これは鼻脳型ムコール症という重度の感染症で、しばしば死に至ります。

  • 胞子が肺に入ることがあり、肺ムコール症の原因になります。

  • 口に入った胞子を飲み込むと、消化管に感染症が生じる場合があります。

胞子が皮膚の傷口から体内に入って起こる感染症は、皮膚を侵します(皮膚ムコール症)。この種の感染症は通常、免疫機能が正常な人の傷口に汚染された土が付着して発生し、地震などの自然災害時や、戦闘中に爆発で負傷した人にみられることがあります。

ムコール症は人から人に広がることはありません。

症状

鼻脳型ムコール症では、痛み、発熱、副鼻腔の痛みのほか、眼窩(がんか)の感染(眼窩蜂窩織炎[ほうかしきえん] 眼窩蜂窩織炎 眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)は眼窩内および眼の周囲と後方の組織の感染症です。 鼻の周りの副鼻腔などから感染が眼窩に広がることがあります。 症状には、痛み、腫れ、眼が赤くなる、発熱、眼球の突出、視覚障害、眼球運動の障害などがあります。 通常、眼窩のCT(コンピュータ断層撮影)検査またはMRI(磁気共鳴画像)検査が行われます。 入院し、抗菌薬が静脈から投与されます。 さらに読む 眼窩蜂窩織炎 を起こしている)が起きている場合には、感染した方の眼が突出する 眼球の突出 眼球が前に飛び出したり押し出されたりすることを、眼球突出と呼びます。 眼球突出という言葉は、甲状腺の活動が過剰になった状態(甲状腺機能亢進症)を引き起こすバセドウ病によって、眼球が前方に飛び出した状態を指して用いられるのが通常です。眼球の突出は、眼が大きいことではありません。 クッシング病や重度の肥満などは、顔貌や眼の外観を変えることがありますが、真の眼球の突出が起こることはありません。... さらに読む 眼球の突出 ことがあります。視力が失われることもあります。また、口の天井部分(口蓋[こうがい])、眼窩や副鼻腔周辺の顔の骨、2つの鼻孔を仕切っている壁(鼻中隔)が破壊されることがあります。壊死した組織は黒く変色します。脳に感染すると、言語の使用と理解に支障をきたし、けいれん発作、部分麻痺、昏睡が起こることがあります。

肺のムコール症では、発熱、せき、呼吸困難などの重度の症状が起こります。

ムコール症の皮膚感染では、皮膚にできた傷の周囲が赤く腫れて熱感を帯び、痛みを伴います。発熱がみられたり、潰瘍や水疱ができたり、感染した組織が黒くなったりすることもあります。

この真菌はよく動脈に侵入します。その結果、動脈に血栓ができて血流が妨げられ、その先の組織が壊死します。死んだ組織内で真菌が無制限に増殖し、その部分が黒く変色します。周囲で出血することもあります。

診断

  • 感染組織のサンプルの培養と観察

ムコール症の症状はほかの感染症とよく似ているため、すぐには診断がつかないことがあります。

ムコール症を診断するには、感染組織のサンプルを採取し、検査室で培養(菌を増殖させること)と顕微鏡での観察を行います。サンプル中に原因菌の存在を特定したら、診断を下します。ただし、これらの検査で真菌が検出されない場合もあります。

CT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、顔の内部構造に損傷がないか確認します。

知っていますか?

  • ムコール症は早期に診断を下して治療を行わないと、顔の損傷がひどくなり、手術が必要になって外観が損なわれることがあります。

治療

  • 抗真菌薬

  • 基礎にある異常に応じた治療

  • 感染した組織や壊死した組織を除去する手術

死亡や広範な手術で外観が損なわれる事態に至らないよう、ムコール症の早急な診断と治療が重要です。そのため、この感染症の診断や疑いが生じた時点で、直ちに治療が開始されます。

ムコール症の患者やその疑いがある人のほとんどに、抗真菌薬のアムホテリシンBを高用量で静脈内に投与します。イサブコナゾール(isavuconazole)を経口または静脈内に投与します。代わりにポサコナゾールを使用する場合もあります。

基礎にある異常をコントロールすることが非常に重要です。例えば、白血球数が減少している人には、白血球数を増やす注射を行います。コントロール不良の糖尿病がある人にはインスリンを投与して血糖値を下げます。

感染組織、特に死んだ組織は手術で取り除く必要があります。

ムコール症は大変重篤な病気です。感染組織や壊死した組織をできる限り取り除き、抗真菌薬を適切に使用しても、多くの患者が死に至ります。

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