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シャーガス病

(アメリカトリパノソーマ症)

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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シャーガス病は、クルーズトリパノソーマ Trypanosoma cruziという原虫による感染症で、サシガメ(アサシンバグ;サシガメ類の昆虫)に刺咬されることで感染します。

  • 原虫は刺された傷や眼の周囲の組織から体内に侵入します。

  • 侵入部位(刺された傷または眼)の周りが腫れたり、発熱がみられたりすることがあります。

  • その後、無症状の期間が長く続いた後に、何年も経過してから重篤な合併症、特に心臓や消化器の障害が発生することがあります。

  • 血液サンプルや感染した臓器から採取した体液のサンプルに含まれる原虫を特定したり、血液検査を行ったりすることで、診断を確定します。

  • 薬(ベンズニダゾール[benznidazole]またはニフルチモックス[nifurtimox])を使用して原虫を死滅させます。

シャーガス病は、メキシコ、中米、南米の人に発生し、主に貧困が蔓延している農村地域でみられます。こうした地域の環境は、クルーズトリパノソーマ Trypanosoma cruziを媒介するサシガメの生息に適しています。サシガメは、土壁の亀裂部や隙間、草ぶきの屋根の家や農場の建物、岩石や材木の集積地、鶏舎、犬小屋などに好んで生息します。

北米と中南米では、約800万人がクルーズトリパノソーマ Trypanosoma cruziに感染しています。この中には、ラテンアメリカで感染し、その後米国へ移住した人が30万人以上含まれています。欧州への移民もこの病気をもっていきました。しかし、感染を抑える対策により、ラテンアメリカでは感染者数は減少しています。

シャーガス病の感染経路

感染した昆虫が人間を刺すときに、原虫を含む糞を落とします。この原虫が傷口から体内に入ります。原虫は、眼を覆う透明な膜(結膜)などの粘膜から体内に侵入することもあります。原虫はその後、侵入部位周辺の皮膚または組織や血流に入り込み、免疫系、心臓、筋肉、神経系の細胞をはじめとする多くの種類の細胞に感染します。

イヌ、ネコ、オポッサム、ラットなど、他の多くの動物も刺されて感染することがあります。感染した人(または動物)をサシガメが刺した後に、別の人を刺すことで感染が広がります。

感染者からの輸血や臓器移植で感染することもあります。まれに、加熱調理されていない食べものを食べたり、感染した虫やその糞に汚染された飲料を飲んだりした人が感染することもあります。

さらに、原虫が妊婦の胎盤を通過し、胎児に感染して流産や死産を引き起こす場合や、ときに死に至る重篤な障害を新生児に及ぼす場合があります。

症状

シャーガス病には3つの段階があります。症状は第1段階と第3段階で現れます。

第1段階

通常、シャーガス病の症状は、原虫が傷口や眼の周りの組織から体内に入った1~2週間後に現れます。刺された傷の周辺が赤く隆起することがあります。原虫が眼の周囲の組織から侵入した場合は、眼の周辺が腫れることがあります(ロマーニャ徴候と呼ばれます)。発熱もみられます。症状がでていない人の血液中に原虫が見つかることもあります。

免疫機能が低下している人(エイズ患者によく起こる状態)の場合は、この段階で重症化することがあり、発疹や、まれに脳膿瘍がみられることがあります。

第2段階(潜伏期)

シャーガス病の症状はみられず、心電図検査と心臓や消化器系の画像検査では正常と判定されます。しかし、血液中には原虫がいます。

多くの人は、何の症状もないまま生涯この段階にとどまります。

第3段階

数年が経過すると、感染者の20~40%が慢性シャーガス病を発症します。

主な患部は以下の部位です。

  • 心臓

  • 消化器系

心臓が拡大して機能が低下することがあり、患者は疲れやすく、息切れするようになります。心臓の電気刺激伝導系にも影響が及び、失神、不整脈、突然の心停止が起こることがあります。

消化管の筋肉(食道の筋肉など)が機能不全に陥り、ものを飲み込むのが困難になったり、重度の便秘を引き起こすことがあります。ものを飲み込む動作に影響が及ぶと、食べものや飲みもの、唾液などを肺に吸い込んでしまうこと(誤嚥)で肺炎が起きたり、重度の低栄養に陥ったりします。大腸(結腸)が拡大し、重度の便秘になることがあります。

診断

  • 第1段階では、顕微鏡を用いた血液サンプルの検査または血液検査

  • 第2段階では、血液検査

  • 第3段階では、血液検査、心電図検査、心臓または消化器系の画像検査

第1段階では通常、顕微鏡で血液サンプル中の原虫を確認することで、シャーガス病を診断します。血液サンプルに原虫の遺伝物質(DNA)がないかどうかを確認する検査も行われます。

この感染症と診断された場合は、他の検査も行って問題がないか確認します。例えば、心電図検査と胸部X線検査を行い、心臓に異常がないか確認します。そのほかに、心エコー検査や、CT検査などの画像検査が行われることもあります。

嚥下困難または便秘を起こしている場合は、バリウム(放射線を通さない性質をもち、消化管の形状を画像に描き出すために使用される物質)を飲んでもらうか直腸に注入して、CT検査またはX線検査を行うことがあります。

予防

壁をしっくい塗りにする、草ぶきの屋根を別のものに変える、効果が長く持続する殺虫剤を繰り返し家に吹きつけるといった対策により、サシガメを減らし、シャーガス病の拡大を抑えることができます。

まれに、この感染症が発生している地域への旅行者が感染することがあります。日干しレンガ造りの家で寝ないか、そうした家で寝る場合は蚊帳を使用することが、旅行者の感染予防につながります。

米国をはじめ、この感染症がみられる多くの国では、感染した血液の輸血または臓器移植による感染拡大を予防するために、血液や臓器の提供者に対するスクリーニング検査が行われています。

治療

  • これらの原虫に効果的な薬

  • 心臓または消化管の慢性感染症によって問題が起きている場合は、その治療

シャーガス病に有効な抗寄生虫薬は、ベンズニダゾールとニフルチモックスの2つだけです。このうちいずれか1つの薬を1~3カ月間服用します。

この病気の第1段階では、すべての人がベンズニダゾールまたはニフルチモックスで治療されます。これらの薬には以下の作用があります。

  • 血液中の原虫の数を速やかに減らす

  • 症状の持続期間を短くする

  • 慢性感染症を起こりにくくさせる

  • 感染症が慢性化した場合に死亡するリスクを低下させる

出生前に感染した新生児にも治療が行われます。

第2段階では、小児と50歳までの成人がベンズニダゾールまたはニフルチモックスで治療されます。感染者が若ければ若いほど、また治療の開始が早ければ早いほど、治療により原虫が除去される可能性が高くなります。この段階にある高齢の感染者では、治療で得られる効果を治療のリスクと比較する必要があります。

ベンズニダゾールとニフルチモックスには、いずれも重篤な副作用があり、これらの副作用は消化管、皮膚、神経に最もよくみられます。具体的には、食欲不振、体重減少、吐き気、嘔吐、発疹、神経損傷、不眠症、めまいなどが起こります。

ベンズニダゾールとニフルチモックスは、重度の肝疾患または腎疾患のある人や、妊娠中または授乳中の女性には投与されません。

慢性感染症により心臓または消化管に問題が起きると、抗寄生虫薬は助けになりません。次のように、必要に応じて問題の治療を行います。

  • 心不全:心臓の負荷を減らす薬の使用または心臓移植

  • 不整脈:心臓の拍動を整える薬(抗不整脈薬)またはペースメーカーの使用

  • 食道の問題:ボツリヌス毒素の投与(下部食道の筋肉を弛緩させるため)または下部食道を広げる(拡張する)外科手術

  • 結腸の巨大化:手術

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