フィラリアには多くの種類がありますが、人間に寄生するのはごく少数です。人間に寄生する種は、次のような部位に生息しています。
皮膚の下の組織(皮下組織)または眼の中: ロア糸状虫症 ロア糸状虫症 ロア糸状虫症は、線虫の一種であるロア糸状虫による皮膚の下の組織または眼を覆う透明な外膜(結膜)の下の感染症です。 主に腕や脚にかゆみのある腫れが現れることがあります。 ときおり、目を覆っている透明な膜の下に線虫が移動することがあります。 医師は、血液サンプル中に幼虫(ミクロフィラリア)を特定するか、成虫が眼を横切って移動するのを見ることで、ロア糸状虫症の診断を下します。... さらに読む を引き起こすロア糸状虫(Loa loa)、または オンコセルカ症 オンコセルカ症 オンコセルカ症は、回旋糸状虫という線虫の一種によって引き起こされる感染症です。これによって、かゆみ、発疹、ときに瘢痕が生じ、失明につながる眼の症状が引き起こされることもあります。 この感染症は河川で繁殖する雌のブユが人間を刺すことで広がります。 激しいかゆみだけが発生することもありますが、ときに発疹、リンパ節の腫れ、視覚障害、失明なども起こります。 この感染症の診断は通常、皮膚の中にいる線虫の幼虫を特定することで下されます... さらに読む (河川盲目症)を引き起こす回旋糸状虫
フィラリア感染症のほとんどは、熱帯や亜熱帯の地域で発生します。
イヌ糸状虫 イヌ糸状虫感染症 イヌ糸状虫感染症は、線虫の一種であるディロフィラリア・イミティス(または別の近縁の線虫)によって引き起こされる病気で、人間には感染した蚊に刺されることで感染します。 イヌ糸状虫は、人の体内ではライフサイクルを完了できず、あまり長く生きられないため、人に症状が現れることはほとんどありません。 ほとんどの感染者は無症状ですが、寄生虫が肺に移動してそこで死ぬと、せきや胸痛がみられることがあります。... さらに読む (ディロフィラリア・イミティス)による感染症は北米を含む世界中でみられます。イヌ糸状虫はヒトの体内では成虫にまで成熟しないため、この感染症が症状を引き起こすことはほとんどありません。しかし、ときに幼虫が肺に到達し、胸痛やせきを引き起こすこともあります。非常にまれに、幼虫が眼、脳、精巣に結節を形成することがあります。
(寄生虫感染症の概要 寄生虫感染症の概要 寄生虫とは、他の生物(宿主[しゅくしゅ])の体表や体内にすみつき、宿主を利用して(例えば、栄養素を奪うことによって)生きている生物のことです。この定義は細菌、真菌、ウイルスなど多くの微生物に当てはまりますが、「寄生虫」という用語は以下のものを指して用いられます。 単一の細胞のみで構成される原虫(... さらに読む も参照のこと。)
感染経路
フィラリア感染症は、以下の経路で感染します。
感染したアブ(ウシアブやメクラアブなど)や蚊が人間を刺したときに、フィラリアの幼虫が皮膚の中に侵入します。
成虫はミクロフィラリアと呼ばれる子を産み、これが血流に乗って体内を循環したり、皮下に住みついたりします。
アブや蚊が感染者を刺し、その際にミクロフィラリアを取り込むことで感染が広がります。
昆虫の体内で、ミクロフィラリアが感染力のある幼虫に成長します。
この昆虫がまた別の人間を刺すことで、幼虫の感染が広がります。
これらの感染症は人から人に広がることはありません。
フィラリア感染症の症状
フィラリアの成虫は体内を移動し、その種類に応じてリンパ管や皮膚の下にしこりを形成することがあります。雌の成虫はミクロフィラリアという未熟な寄生虫を産みます。フィラリア感染症による損傷と症状の多くは、成虫またはミクロフィラリアに対する体の炎症反応が原因です。
リンパ組織(リンパ系を構成する細胞や臓器)が侵されている場合、バンクロフト糸状虫またはマレー糸状虫の成虫とそれに伴う炎症によってリンパ管がふさがれ、脚、腕、または性器が炎症を起こして腫れることがあります。何年も経つと、脚、腕、性器が大きく腫れて変形します。
血中を循環しているバンクロフト糸状虫またはマレー糸状虫のミクロフィラリアは、肺にアレルギー反応を誘発し、せき、息切れ、喘息のような症状を引き起こします。ロア糸状虫の成虫は皮膚の下を移動し、一時的な結節を形成したり、ときに眼の透明な外膜(結膜)の下を通過したりします。回旋糸状虫の成虫は皮膚の下の小結節に生息し、ミクロフィラリアを生産し、これがかゆみや皮膚の損傷の原因となります。また、眼に入って炎症や瘢痕をもたらし、何年も経過するとそれが失明につながることがあります。