髄膜炎菌ワクチンは、髄膜炎菌 Neisseria meningitidisによる感染症を予防します。 髄膜炎菌感染症 髄膜炎菌感染症 髄膜炎菌感染症は、 細菌である髄膜炎菌 Neisseria meningitidisを原因とする病気で、髄膜炎と敗血症が含まれます。 鼻やのどからの分泌物に直接触れることで感染が拡大します。 全身のけん怠感が生じ、感染部位に応じてその他の症状(重篤なことが多い)が発生します。... さらに読む は 髄膜炎 髄膜炎に関する序 髄膜炎とは、髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)の炎症のことです。 髄膜炎は細菌、ウイルス、または真菌、感染症以外の病気、薬剤などによって引き起こされます。 髄膜炎の症状には、発熱、頭痛、項部硬直(あごを胸につけるのが難しくなる症状)などがありますが、乳児では項部硬直がみられない場合もあり、非常に高齢の人や免疫... さらに読む (脳を覆う組織の感染症)や 危険な水準の血圧低下 ショック ショックとは、臓器への酸素の供給量が低下し、生命を脅かす状態で、臓器不全やときには死亡につながります。通常、血圧は低下しています。 ( 低血圧も参照のこと。) ショックの原因には血液量の減少、心臓のポンプ機能の障害、血管の過度の拡張などがあります。 血液量の減少または心臓のポンプ機能の障害によってショックが起きると、脱力感、眠気、錯乱が生じ、皮膚が冷たく湿っぽくなり、皮膚の色が青白くなります。... さらに読む (ショック)につながり、死に至ることもあります。これらの細菌は、 小児の細菌性髄膜炎 小児の髄膜炎 細菌性髄膜炎とは、脳と脊髄を覆う膜( 髄膜)に起きる感染症です。 細菌性髄膜炎は、月齢の高い乳児と小児では、通常、呼吸器系に入った細菌が原因になり、新生児では、しばしば血流の細菌感染( 敗血症)から引き起こされます。 年長児や青年では発熱を伴う項部硬直、頭痛、錯乱がみられ、新生児や幼若な乳児では通常、むずかる、食べなくなる、嘔吐するなどの症状が現れます。 診断は、腰椎穿刺と血液検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む の原因として最も多く、 成人の細菌性髄膜炎 急性細菌性髄膜炎 急性細菌性髄膜炎とは、急速に進行する髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)の炎症のうち、細菌が原因であるものをいいます。 年長の小児や成人では、あごを胸につけるのが難しくなる症状(項部硬直といいます)が現れ、また通常は発熱や頭痛もみられます。 乳児では、項部硬直がみられないことがあり、体調が悪そうに見えたり、体温が高くまたは低くなったり、哺乳が少なくなったり、眠そうにむずかったりするだけのことがあります。... さらに読む の原因としては2番目に多いものです。
詳細については、CDCによる髄膜炎菌ワクチン説明書(Meningococcal vaccine information statement)を参照してください。
髄膜炎菌 Neisseria meningitidisには、いくつかの種類(血清群と呼ばれます)があります。髄膜炎菌ワクチンは、ほとんどの髄膜炎感染症の原因になっている血清群(A群、B群、C群、W群、Y群)を予防します。米国では以下の髄膜炎菌ワクチンが使用できます。
結合型ワクチン(MCV4、これはA群、C群、W群、Y群の感染を予防します)は、生後9カ月の乳児から55歳までの成人に適しており、小児定期接種に採用されています。
多糖体ワクチン(MPSV4)は、55歳以上の特定の人にのみ使用されます。
B群髄膜炎菌ワクチン(MenB)は、ある種類の髄膜炎菌が引き起こす感染症の予防に用いられます。この菌は大学新入生の間で起きた流行で多くみられた菌です。
髄膜炎菌ワクチンの接種
MCV4ワクチンは 小児定期接種 小児期の予防接種スケジュール 米国では、ほとんどの医師は米国疾病予防管理センター(CDC—乳児・小児用スケジュール[schedule for infants and... さらに読む に含まれており、筋肉内への注射で2回接種します。11~12歳時に初回接種を、16歳時に2回目の接種を行います。
また、髄膜炎菌感染症のリスクが高い小児には、より低い年齢でこのワクチンの接種を受けることが推奨されています。例えば、脾臓(ひぞう)の機能不全を抱える小児や特定の免疫不全疾患がある小児などが該当します。ワクチン接種が可能な最低年齢は、使用する製剤により生後6週から生後9カ月まで様々です。
MPSV4ワクチンは皮膚の下への注射で1回接種します。
MenBワクチンは、筋肉内への注射で2回接種します。このワクチンはリスクの高い特定の病態がある10歳以上の人に接種できます。しかし、リスクの高い特定の病態がなく、感染するリスクが高くない場合でも、16~23歳の希望者に接種できます。ワクチンは16~18歳時に接種するのが理想です。
髄膜炎菌ワクチンは、以下の青年や成人にも推奨されています。
HIVに感染している人
特定の免疫不全疾患を患っている人
日常的に細菌を扱っている微生物研究者
青年(未接種の場合)
16歳の誕生日以降にワクチン接種を受けておらず、学生寮で生活している21歳以下のすべての大学1年生
すべての軍隊の新兵
この感染症の流行地域への旅行者と流行地域の居住者
髄膜炎の流行にさらされた人
対象者が一時的に病気にかかっている場合、ワクチンの接種はその病気が治まるまで待つのが通常です(CDC:ワクチン接種を受けるべきでない人[CDC: Who Should NOT Get Vaccinated With These Vaccines?]も参照)。
髄膜炎菌ワクチンの副反応
注射部位が赤くなり、痛み、腫れが生じることがあります。頭痛を感じて疲労感を覚える人もいます。少数ながら発熱もみられます。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国疾病予防管理センター(CDC):髄膜炎菌ワクチン説明書(Information statement about meningococcal vaccine)
CDC:髄膜炎菌ワクチンを接種すべきでない人に関する情報(Information about people who should NOT get vaccinated with meningococcal vaccine)