ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、 HPV ヒトパピローマウイルス感染症(HPV感染症) ヒトパピローマウイルス(HPV)は、いぼの原因になります。HPVの中には皮膚にいぼを作り出すものもあれば、性器のいぼ(腟、陰茎、または直腸の内部や周囲に生じるできもので、尖圭コンジローマと呼ばれます)の原因になるものもあります。一部の種類のHPVに感染すると、がんになることもあります。HPVは性感染症です。 ヒトパピローマウイルス(HPV)の種類が違えば、引き起こされる感染症も異なります。例えば、性器にできる、目で見て確認しやすいいぼも... さらに読む の中でも以下の病態を引き起こす可能性が非常に高い株による感染の予防に役立ちます。
女性の 子宮頸がん 子宮頸がん 子宮頸がんは子宮頸部(子宮の下部)に発生します。 子宮頸がんは通常、性交時に感染するヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症の結果として発生します。 最初の症状は通常、不規則な性器出血(不正出血)(通常は性交後)ですが、がんが大きくなるか広がるまで何の症状もみられない場合もあります。 通常は子宮頸部細胞診で異常が見つかり、その場合は生検を行います。 定期的に子宮頸部細胞診を受け、ヒトパピローマウイルスのワクチン接種を受けることで子宮... さらに読む
、 腟がん 腟がん 腟がんはまれながんで、典型的には60歳以上の女性において、通常は腟の内側を覆っている細胞から発生します。 腟がんでは、異常な性器出血(不正出血)が生じることがあります(特に性交後)。 腟がんの疑いがある場合は、腟から組織サンプルを採取して検査します(生検)。 がんは手術により切除するか、放射線療法を行います。 ( 女性生殖器のがんの概要も参照のこと。) さらに読む 、 外陰がん 外陰がん 外陰がんは通常、腟の開口部周辺に生じる皮膚がんです。 しこりやかゆみ、あるいは、なかなか治らないただれとして現れます。 異常がある組織のサンプルを採取して検査します(生検)。 外陰部の一部もしくは全体とその他の病変部を手術で切除します。 再建手術を行うことで、外観や機能が改善します。 さらに読む
男女を問わず、 肛門がん 肛門がん 肛門がんの危険因子には特定の性感染症などがあります。 典型的な症状は、排便時の出血、痛み、ときに肛門周囲のかゆみです。 診断の確定は指診、S状結腸鏡検査、大腸内視鏡検査、生検により行います。 治療には、手術のみ、放射線療法と化学療法の組合せ、または放射線療法と手術の組合せがあります。... さらに読む 、 のどのがん 口とのどのがん 口とのどのがんは、唇、口蓋、口の側面や底部、舌、扁桃、のどの奥で発生するがんです。 ( 口、鼻、のどのがんの概要も参照のこと。) 口とのどのがんは、口の中にできた潰瘍やびらん、増殖性の病変、または変色した領域のように見えます。 口腔がんの診断は、生検やX線検査によって行います。 がんの大きさを測定したり、広がりを確認したりするために、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査が行われます。 さらに読む
、 尖圭コンジローマ ヒトパピローマウイルス感染症(HPV感染症) ヒトパピローマウイルス(HPV)は、いぼの原因になります。HPVの中には皮膚にいぼを作り出すものもあれば、性器のいぼ(腟、陰茎、または直腸の内部や周囲に生じるできもので、尖圭コンジローマと呼ばれます)の原因になるものもあります。一部の種類のHPVに感染すると、がんになることもあります。HPVは性感染症です。 ヒトパピローマウイルス(HPV)の種類が違えば、引き起こされる感染症も異なります。例えば、性器にできる、目で見て確認しやすいいぼも... さらに読む
これらの病気はヒトパピローマウイルスによって引き起こされ、このウイルスは尖圭コンジローマも引き起こします。
HPVワクチンには、このウイルスの特定の部分だけが含まれています。生きたウイルスは一切含んでいないため、このワクチンが原因でHPV感染症が生じることはありません。
詳細については、CDCによるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン説明書(HPV (Human Papillomavirus) vaccine information statement)を参照してください。
(予防接種の概要 予防接種の概要 予防接種(ワクチン接種)を行うことで、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めることができます。免疫(特定の細菌やウイルスによって引き起こされる病気から自らを守る体に備わった能力)は、細菌やウイルスにさらされることで自然に生じる場合と、予防接種を受けることで人為的に得られる場合があります。ある病気に対して免疫ができる... さらに読む も参照のこと。)
HPVのワクチンには以下の3種類があります。
9価:9種類のHPVの感染を予防
4価:4種類のHPVの感染を予防
2価:2種類のHPVの感染を予防
これらの3つのHPVワクチンはどれも、子宮頸がんの原因の約70%と肛門がんの原因の90%を占める2種類のHPV(16型と18型)に対して予防効果があります。9価ワクチンと4価ワクチンは、16型と18型に加えて、尖圭コンジローマの90%以上を引き起こしている2種類のHPV(6型と11型)の感染も予防します。男児および男性には9価ワクチンと4価ワクチンのみが推奨されています。
米国では現在、9価ワクチンのみが使用されています。
HPVワクチンの接種
HPVワクチンは筋肉内への注射で、合計2回または3回接種されます。HPVワクチンの初回接種が9~14歳に行われた場合、計2回の接種が行われます。HPVワクチンの初回接種が15歳以上で行われた場合、計3回の接種が行われます(小児定期接種 小児期の予防接種スケジュール 米国では、ほとんどの医師は米国疾病予防管理センター(CDC—乳児・小児用スケジュール[schedule for infants and children]および年長児・青年用スケジュール[schedule for older children and adolescents]を参照)が推奨している予防接種スケジュールに基づいて予防接種を行っており、このスケジュールは病院の新生児室で行われる... さらに読む を参照)。
米国では、このワクチンの接種は以下の人に推奨されています。
11歳または12歳のすべての男女(ただし、9歳から開始することができる)、未接種または接種不十分な26歳までのすべての男女
ワクチン接種の必要性について医師と話し合った27~45歳のすべての成人
対象者が一時的に病気にかかっている場合、ワクチンの接種はその病気が治まるまで待つのが通常です(CDC:ワクチン接種を受けるべきでない人[CDC: Who Should NOT Get Vaccinated With These Vaccines?]も参照)。
HPVワクチンの副反応
注射部位が赤くなり、痛みや腫れが生じることがあります。重篤な副反応の報告はありません。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention (CDC)):HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン説明書(Information statement about HPV (human papillomavirus) vaccine)
CDC: HPVワクチンを接種すべきでない人に関する情報(Information about people who should NOT get vaccinated with HPV vaccine)