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リケッチア感染症の概要

執筆者:

William A. Petri, Jr

, MD, PhD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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リケッチア感染症とそれに関連する感染症(アナプラズマ症、エーリキア症、Q熱など)は、他の生物の細胞内でしか生きられない特殊な種類の細菌によって引き起こされます。

  • これらの感染症のほとんどは、ダニ、ノミ、シラミを介して感染します。

  • 発熱、重度の頭痛のほか、通常は発疹が起こり、全身のけん怠感がみられます。

  • 医師は症状からこれらの感染症を疑い、血液や発疹から採取したサンプルを採取して特別な検査を行って、診断を確定します。

  • これらの感染症が疑われる場合には、医師は即座に抗菌薬を使用します。

リケッチア属細菌と関連(リケッチア様)細菌(エーリキア属 Ehrlichia、アナプラズマ属 Anaplasma、コクシエラ・ブルネッティ Coxiella burnetiiなど)は、以下のような類似した病気を引き起こす特殊な種類の細菌です。

これらの細菌は、大気や土壌などの環境中では生きられず、他の生物(宿主)の細胞内にのみ生息して増殖するという点で、他の大半の細菌と異なります。

これらの細菌の多くは、宿主と呼ばれる小動物(ネズミなど)の体内に生息します。ウシ、ヒツジ、ヤギは、Q熱を引き起こすコクシエラ・ブルネッティ Coxiella burnetiiの宿主で、人間は発疹チフスを引き起こす発疹チフスリケッチア Rickettsia prowazekiiの主な宿主です。宿主になった動物は、感染により発病することもしないこともあります。

人間は通常、感染した動物の血を吸ったダニ、ノミ、シラミに刺されることでリケッチアやリケッチア様細菌に感染します。ダニ、ノミ、シラミは、病気の原因となる微生物を宿主から別の宿主に広める(運ぶ)ことから、媒介生物と呼ばれます。コクシエラ・ブルネッティ Coxiella burnetiiによって引き起こされるQ熱は、空気や汚染された食べものや水を介して感染し、媒介生物を必要としません。

各種のリケッチアとリケッチア様細菌には、それぞれ決まった宿主と主な媒介生物がいます。

これらの細菌(とそれらが引き起こす病気)には、世界中でみられるものがあります。細菌は特定の地域でのみ発生しているものもあります。

こうした細菌の一部は、細い血管の内皮細胞を侵し、血管の炎症や閉塞、周辺組織への出血を引き起こします。白血球に侵入する細菌(エーリキア属 Ehrlichiaとアナプラズマ属 Anaplasma)もあります。

損傷部位や体が反応する程度によって、症状が異なります。

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主なリケッチア感染症と関連感染症

感染症

感染する微生物

宿主

感染症の発生する地域

説明

発疹チフス

発疹チフス(シラミ媒介性発疹チフス)

ブリル-ジンサー病(発疹チフスの再発。最初の感染から数年後に起こる場合もある)

発疹チフスリケッチア Rickettsia prowazekii、シラミや、詳細は不明であるがムササビの1種によっても媒介される

ヒト、ムササビ

世界中(米国ではまれであるが、ときにムササビと接触した人に発生)

細菌が体内に侵入してから7~14日後に、発熱、頭痛と極度の疲労感の症状が突然起こります。4~6日目に発疹が発生します。治療しなければ死に至ることがあり、特に50歳以上の人では注意が必要です。

発疹熱

発疹熱リケッチア Rickettsia typhiまたはリケッチア・フェリス Rickettsia felis、ノミにより媒介

ネコ、げっ歯類、オポッサム

世界中

細菌が体内に侵入してから8~16日後に症状が始まり、発疹チフスと似ていますがより軽度です。

ツツガムシ病

ツツガムシ病

オリエンティア・ツツガムシ Orientia tsutsugamushi(以前はツツガムシ病リケッチア Rickettsia tsutsugamushi)、ダニの幼虫(ツツガムシ)により媒介

ダニ(ダニは媒介者にも宿主にもなる)

日本、韓国、中国、インド、オーストラリア北部に囲まれるアジア太平洋地域

細菌が体内に侵入してから6~21日後に、発熱、悪寒、頭痛、リンパ節の腫れが突然発生します。ツツガムシに刺された部位に黒いかさぶたができます。5~8日目に発疹が発生します。

紅斑熱

ロッキー山紅斑熱リケッチア R. rickettsii、マダニにより媒介

げっ歯類

米国の大半(メイン州、ハワイ州、アラスカ州を除く)と中南米を含む西半球

細菌が体内に侵入してから3~12日後に症状が始まります。

リケッチア・アフリカーエ Rickettsia africae、マダニにより媒介

ウシ

サハラ以南アフリカと西インド諸島

細菌が体内に侵入してから4~10日後に症状が始まります。マダニに咬まれた部位に黒いかさぶたができます。

地中海紅斑熱(ボタン熱)

リケッチア・コノリイ Rickettsia conorii、イヌダニにより媒介

イヌ

アフリカ、インド、南欧、中東の地中海、黒海、カスピ海沿岸地域

細菌が体内に侵入してから5~7日後に症状が始まります。マダニに咬まれた部位に黒いかさぶたができます。

リケッチア・シビリカ Rickettsia sibirica、マダニにより媒介

げっ歯類

アルメニア、中央アジア、シベリア、モンゴル、中国

マダニに咬まれた部位に黒いかさぶたができます。

リケッチア・オーストラリス Rickettsia australis、マダニにより媒介

げっ歯類

オーストラリア

マダニに咬まれた部位に黒いかさぶたができます。

リケッチア・パルケリ Rickettsia parkeri、マダニにより媒介

げっ歯類

米国南部および南米

細菌が体内に侵入してから2~10日後に症状が始まります。マダニに咬まれた部位に黒いかさぶたができます。

痘瘡リケッチア Rickettsia akari、ダニにより媒介

ハツカネズミ

ニューヨークで最初に発見

米国の他の地域、ロシア、韓国、アフリカ

ダニに刺された部位に小さな黒いかさぶたが現れます。それが小さな潰瘍となり、治癒すると瘢痕になります。約1週間後、発熱、頭痛、筋肉痛、広範な発疹が現れます。

ヒト単球エーリキア症

エーリキア・シャフェンシス Ehrlichia chaffeensis、マダニ(主にローンスターダニ)により媒介

オジロジカやその他の哺乳類

米国南東部と中南部

マダニに咬まれてから約12日後に症状が始まります。発熱、悪寒、筋肉痛、脱力、吐き気や嘔吐、せき、頭痛、全身のだるさなどがみられます。発疹が体幹、腕、脚に現れます。

ヒト顆粒球アナプラズマ症

アナプラズマ・ファゴサイトフィルム Anaplasma phagocytophilum、マダニにより媒介

主にネズミなど小形のげっ歯類

米国の北東部、中部大西洋沿岸、中西部北方地域、西海岸

欧州

マダニに咬まれてから約12日後に症状が始まります。発熱、悪寒、筋肉痛、脱力、吐き気や嘔吐、せき、頭痛、全身のだるさ(けん怠感)などがみられます。

Q熱

コクシエラ・ブルネッティ Coxiella burnetii、空気中の細菌に汚染された飛沫を吸入することや、汚染された生の牛乳を飲むことにより感染

ヒツジ、ウシ、ヤギ

世界中

細菌が体内に侵入して9~28日後に症状が突然始まります。発熱、重度の頭痛、悪寒、極度の脱力、筋肉痛、食欲減退、発汗、空せき、胸の痛み、息切れ(肺炎が原因)などの症状がみられますが、発疹は起こりません。

症状

リケッチア感染症の種類が違っても、症状は類似していることがよくあります。

  • 発熱

  • 重度の頭痛

  • 特徴的な発疹

  • 全身のだるさ(けん怠感)

刺された部位に黒いかさぶた(痂皮)で覆われた潰瘍ができることがあります。発疹は数日後まで現れないことが多いため、初期のリケッチア感染症は、インフルエンザのような一般的なウイルス感染症と間違えられることがよくあります。リンパ節が腫れる場合もあります。

この感染症が進行すると、典型的には錯乱と重度の脱力をきたし、しばしばせき、呼吸困難、ときには嘔吐を伴います。

さらに病状が進行すると、壊疽(えそ)が起こる、肝臓や脾臓が腫大する、腎臓が機能不全に陥る、血圧が危険なレベルまで低下する(ショックを引き起こす)といった状態に陥ることがあります。死に至ることもあります。

診断

  • 医師による評価

  • 血液検査と発疹の生検

リケッチアとリケッチア様細菌はダニ、ノミ、シラミによって媒介されるため、医師は患者に次の質問をします。

  • ダニなどの媒介生物に刺されましたか

  • これらの感染症が多く発生している地域に旅行しましたか

媒介生物に刺されたという情報は有力な手がかりになり、特にリケッチア感染症や関連する感染症が流行している地域では役に立ちます。しかしながら、多くの人は刺されたことを覚えていません。

Q熱が疑われる場合、医師は患者が農場やその付近にいたかどうかを尋ねます(ウシ、ヒツジ、ヤギがこの感染症を引き起こす細菌の宿主になるため)。

これらの感染症の診断では、症状も参考になります。そのため、医師は次のような質問をします。

  • 刺されてから発疹が出るまでにどのくらいの時間がありましたか(分かる範囲で)

  • ほかに症状はありますか

身体診察では、症状がみられる体の部位と発疹の外観を確認します。さらに、リンパ節の腫れや患者が気づいていないかさぶたがないか調べます。

検査

通常、診断を確定するには検査が必要です。リケッチアやリケッチア様細菌は一般の臨床検査で検出できないため、多くの場合、これらの細菌による感染症の診断をすぐに下すことはできません。これらの細菌に対する特殊な血液検査ができる施設は限られ、しかも時間がかかるため、通常は検査結果を待たずに治療を始める必要があります。医師は患者の症状と感染している確率を考慮し、治療法を決定します。

以下の検査が役立ちます。

  • リケッチアまたはリケッチア様細菌に対する抗体を検出する血液検査

  • 患者に発疹が出ている場合は、発疹部分の皮膚を少量だけ採取して行う検査(生検)

細菌の検出と特定を容易にするために、医師は次の2種類の方法を利用します。

  • 蛍光抗体法では、細菌(抗原)によって産生される異物を蛍光染料で標識する。

  • より早く細菌を検出するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて細菌のDNA量を増加させる。

治療

  • 抗菌薬

抗菌薬は通常、検査の結果が出るのを待たずに開始されます。リケッチア感染症は早期に治療すれば、合併症を予防し、死亡のリスクを減らし、回復を早めることができます。

リケッチア感染症は、抗菌薬のドキシサイクリン(望ましい)やクロラムフェニコールで早期に治療すれば、速やかに効果が出ます。症状が重くなければ、これらの抗菌薬を内服します。重症の場合は、抗菌薬を静脈内に投与します。

治療後、軽症の患者のほとんどは1日か2日で症状が大きく改善し、発熱は通常2~3日で治まります。発熱が継続する場合は、最短で1週間は抗菌薬を使用します。治療が遅れると、症状の改善に時間がかかり、発熱も長く続きます。治療を行わない場合や開始が遅すぎる場合には患者が死亡することがあり、特に発疹チフスツツガムシ病ロッキー山紅斑熱では注意が必要です。

シプロフロキサシンと類似の抗菌薬は、地中海紅斑熱の治療に使用されることがありますが、他のリケッチア感染症や他の関連感染症の治療には一般に使用されません。

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