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ポリオ

(急性灰白髄炎、小児麻痺)

執筆者:

Brenda L. Tesini

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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ポリオとは、非常に感染性が強く、死に至ることのあるエンテロウイルス感染症で、神経を侵して永久的な筋力低下や麻痺などの症状が生じます。

  • ポリオはウイルスが原因で生じる病気で、通常は汚染された食べものや水を飲食したり、汚染されたものを触った後にその手で口に触れたりすることで感染します。

  • 多くの人は感染しても症状がなく、症状が出てもほとんどは軽症です。

  • 症状としては、発熱、頭痛、項部硬直や背中の硬直、深部の筋肉痛などがあり、ときに筋力低下と麻痺がみられます。

  • 症状と便の培養検査の結果に基づいて、診断が下されます。

  • 完全に回復する場合と、永久的な筋力低下が残る場合があります。

  • ワクチンの定期予防接種で感染を予防できます。

  • ポリオに対する根治的な治療法はありません。

ポリオはエンテロウイルスの一種であるポリオウイルスが原因で発生し、感染者の便で汚染された食べものや水を飲み込んだり、汚染されたものに触れた後、その手で口に触れたりすることで感染します。ときに感染者の唾液や、感染者がくしゃみやせきをしたときに飛び散った飛沫を介して、ポリオウイルスに感染することもあります。また、空気中を漂う飛沫を吸い込んだり、感染者の唾液や飛沫で汚染されたものに触れたりしても感染します。

ポリオは通常、まず腸に感染します。その後、筋肉を制御する脳や脊髄へと広がります。

20世紀初めにはポリオは米国全土や他の地域で広く発生していましたが、今日では予防接種の普及により先進国での流行はほとんど起こらなくなり、新たなポリオ感染症を一度もみたことのない医師が大半になっています。米国でポリオウイルス感染症が最後に自然発生したのは1979年のことです。その後、西半球では1994年にポリオが消え去ったことが確認されましたが、世界では今もなおポリオ根絶プログラムが進められているものの、パキスタンとアフガニスタンでは現在も野生型のポリオウイルス感染症が発生しており、ナイジェリアでは2016年に最後の報告がありました。

野生型のポリオウイルスに加えて、経口ワクチン中の生ポリオウイルスが極めてまれに(240万回の接種につき約1例)突然変異を起こすことがあります。変異したワクチンウイルスは、ワクチンを接種した人からワクチンを接種していない人に広がり、変異を続けて、ポリオを引き起こす可能性があります。一部の国では、ほとんどすべてのポリオの原因が変異したワクチンウイルスであったことから、それらの国のほとんど(米国を含む)は経口ポリオワクチンの使用を中止しました。しかし、一部の国では、より多くの人にワクチンを接種するのに役立つことから、現在も経口ポリオワクチンが使用されています。そのため、経口で接種する生ワクチンが使用されていて、かつ予防接種を受けていない人が多くいる(そのためウイルスが広がりやすい)国でも、ポリオの症例が発生しています。ごく最近、ワクチンが原因で発生したポリオウイルス感染症がコンゴ民主共和国とシリアで報告されました。予防接種が広く普及すれば、両方のタイプのポリオの流行を阻止することができ、また、特定の国を訪れる旅行者には、十分な予防接種を受けたことを証明する書類の提出が求められます。

免疫がなければ、どの年齢でもポリオにかかるおそれがあります。かつてポリオの流行は主に小児と青年に発生していましたが、これはたいていの成人はすでにポリオウイルスに接触し、免疫ができていたためです。

症状

たいていの場合、感染しても何の症状もみられません。何らかの症状が現れるのは、感染者のおよそ25~30%だけです。

症状がみられるポリオウイルスによる感染症は以下のように分類されます。

  • 不全型ポリオ(軽症)

  • 非麻痺型ポリオ(重篤)

  • 麻痺型ポリオ(重症)

不全型ポリオ

この軽症型のポリオでは、ほとんどの場合、発熱、軽い頭痛、のどの痛み、嘔吐、全身のだるさ(けん怠感)などのインフルエンザに似た症状がみられます。症状が始まるのはウイルスにさらされてから3~5日後です。

非麻痺型ポリオ

約4%の感染者が発症するこの重篤な病型のポリオでは、インフルエンザに似た不全型ポリオの症状が現れてから数日後に首や背部の硬直と頭痛(無菌性髄膜炎)が起きるのが一般的です。その症状は2~10日間続きます。麻痺はみられません。

麻痺型ポリオ

1%未満の感染者がこの重症型のポリオを発症します。この病型の患者では、無菌性髄膜炎に加えて、麻痺もみられます。

通常は感染の7~21日後に、発熱、重度の頭痛、項部硬直、背中の硬直、深部の筋肉痛などの症状が現れます。皮膚の一部にピンや針で突かれたときのような、おかしな感覚が現れたり、痛みに対して異常に過敏になったりします。

脳と脊髄の侵された部分によっては、それ以上進行しないこともありますが、一部の筋肉に筋力低下や麻痺が現れることもあります。一般に麻痺は腕や脚の筋肉に影響を及ぼし、これにより腕や脚がだらりとして力が入らなくなります(弛緩性麻痺)。

このような患者は、ものを飲み込みにくくなったり、唾液、食べもの、液体がのどに詰まったりするおそれがあります。液体が鼻に上がって、鼻にかかった声になる場合もあります。また、脳の呼吸を調節する部分が侵されて胸の筋肉の筋力低下や麻痺が起きたり、まったく呼吸ができなくなったりすることもあります。

診断

  • 便やのどの分泌物のサンプルを用いた検査

  • 血液検査

  • 腰椎穿刺

不全型ポリオは、他のウイルス感染症と似ているため、基本的にポリオの流行時でない限り診断されることはありません。

非麻痺型ポリオは、インフルエンザに似た症状に加えて、首や背部の硬直がみられる場合に疑われます。

麻痺型ポリオは、筋肉や四肢(腕や脚)に麻痺や筋力低下がみられる場合に疑われます。

非麻痺型ポリオまたは麻痺型ポリオの診断は、便のサンプルやのどの粘膜から綿棒でぬぐった粘液からポリオウイルスが検出された場合、もしくは血液中でポリオウイルスに対する抗体が大量に確認された場合に確定します。

通常は、さらに腰椎穿刺を行い、脳や脊髄に影響を及ぼす別の病気がないかを確認し、髄液のサンプルを用いてポリオウイルスの検査を行います。

予後(経過の見通し)

不全型ポリオまたは非麻痺型ポリオの人は完全に回復します。

麻痺型ポリオの人の約3分の2では永久的な筋力低下がいくらか残り、どの神経と筋肉が侵されるかによりますが、少数の人(約4~6%)は死亡します。なかでも、血圧と呼吸をコントロールしている神経がポリオに侵された少数の人では、死亡率がより高くなります(10~20%)

また完全に回復したようにみえても、発病から何年あるいは何十年も経過してから筋力低下が再発したり、悪化したりする場合もあります(ポリオ後症候群を参照)。

予防

ポリオワクチン小児期の定期予防接種に組み込まれています。95%以上の小児で効果的です。

世界中で次の2種類のワクチンが利用できます。

  • 注射で接種する不活化ポリオウイルスワクチン(ソークワクチン)

  • 経口で接種する生ポリオウイルスワクチン(セービンワクチン)

経口で接種する生ワクチンの方が集団レベルでより強い免疫が得られますが、このワクチンではウイルスが突然変異を起こす可能性があり、240万回の接種につき1例の頻度でポリオが発生します。米国ではポリオが根絶されていることから、米国の小児には不活化ポリオウイルスワクチンの注射のみが推奨されています。経口のワクチンは米国では現在利用できませんが、世界の他の地域では現在も使用されています。

また、米国では成人がポリオにかかるリスクが非常に低いため、18歳以上になってから初めてワクチン接種を受けることは通常、勧められません。しかし、世界にはまだポリオが発生している地域があることから、予防接種を受けたことがない人や推奨される接種を完了していない人が、ポリオの感染リスクがある地域に旅行する場合は、注射ワクチンの3回の接種をすべて受けておくべきです(訳注:日本でのポリオワクチン接種の詳細についてはhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/dl/leaflet_120601.pdfをご参照ください)。旅行前に4~8週間の間隔で少なくとも2回の接種を受けることが理想的です。過去にワクチン接種を完了している人も、ワクチンの注射を1回受けるようにしてください。ポリオが発生している地域についての情報は、地域や州の保健局と米国疾病予防管理センターで提供されています(CDC:ポリオ[Polio])。

予防接種が広く普及すれば、両方のタイプのポリオの流行を阻止することができ、また、特定の国を訪れる旅行者には、十分な予防接種を受けたことを証明する書類の提出が求められます。

治療

  • 安静

  • 鎮痛薬と解熱薬

ポリオは治すことができず、今ある抗ウイルス薬も病気の経過に影響を与えることはできません。

安静にして、鎮痛薬と解熱薬を使用します。

呼吸に使用する筋肉に筋力低下が起きている場合は人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)が必要になりますが、多くの場合、人工呼吸器の使用は一時的なものです。

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