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がん治療の原則

執筆者:

Robert Peter Gale

, MD, PhD, DSC(hc), Imperial College London

医学的にレビューされた 2020年 9月
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やさしくわかる病気事典

がんの治療は、医療の中でもとりわけ複雑なものの1つです。治療には、様々な医師(かかりつけ医、婦人科医やその他の専門医、腫瘍内科医、放射線腫瘍医、外科医、病理医など)とその他の様々な医療従事者(看護師、放射線技師、理学療法士、ソーシャルワーカー、薬剤師など)が1つのチームとなって取り組みます。

治療に関する意思決定では、以下のような他の要因も考慮に入れます。

  • 治癒の可能性、または治癒が望めない場合は延命の可能性

  • 治療が症状に与える影響

  • 治療の副作用

  • 患者の希望

がんの治療を受ける人は、最善の成果を期待し、できるだけ高い生活の質を維持しながら、できるだけ長く生きることを望みます。しかし、一方で治療に伴うリスクについても理解しなければなりません。患者は医療に関する希望について担当医師全員と話し合い、治療に関する意思決定に自ら参加するべきです(さらに 事前指示書 事前指示書 医療に関する事前指示書は、ある人が医療に関する決断を下すことができなくなった場合に、医療についての本人の希望を伝達する法的文書です。事前指示書には、基本的にリビングウィルと医療判断代理委任状の2種類があります。( 医療における法的問題と倫理的問題の概要も参照のこと。) リビングウィルは、終末期ケアに代表されるような、個人が医療に関する決定能力を喪失する事態に備え、将来の医学的治療に関する指示や要望を事前に表明するものです。... さらに読む を作成すべきです)。

最初にがんと診断された段階での主な治療目標は、可能であればがんを(手術 がんの手術 手術は、がんに対して昔から用いられてきた治療法です。大半のがんでは、リンパ節や遠く離れた部位に転移する前に除去するには、手術が最も効果的です。手術のみを行う場合もあれば、 放射線療法や 化学療法などの治療法と併用する場合もあります( がん治療の原則も参照)。医師は以下の他の治療を行うことがあります。 手術前に腫瘍を小さくする治療(術前補助療法) 手術後にできるだけ多くのがん細胞が除去されるようにする治療(術後補助療法)... さらに読む 放射線療法 がんに対する放射線療法 放射線は、コバルトなどの放射性物質や、粒子加速器(リニアック)などの特殊な装置から発生する強いエネルギーの一種です。 放射線は、急速に分裂している細胞や DNAの修復に困難がある細胞を優先的に破壊します。がん細胞は正常な細胞より頻繁に分裂し、多くの場合、放射線によって受けた損傷を修復することができません。そのため、がん細胞はほとんどの正常な細胞よりも放射線で破壊されやすい細胞です。ただし、放射線による破壊されやすさはがん細胞によって異な... さらに読む 化学療法 化学療法 化学療法では、薬を使ってがん細胞を破壊します。正常な細胞は傷つけずに、がん細胞だけを破壊する薬が理想的ですが、大半の薬はそれほど選択的ではありません。その代わりに、一般的には細胞の増殖能力に影響を与える薬を用いることで、正常な細胞よりがん細胞に多くの損傷を与えるよう設計された薬が使用されます。無秩序で急速な増殖ががん細胞の特徴です。しかし正常な細胞も増殖する必要があり、なかには非常に速く増殖するもの(骨髄の細胞や口または腸の粘膜の細胞な... さらに読む 、ときに新しいがん治療を、それぞれ単独または組み合わせて用いることで)完全に除去することです。その徴候がなくても他の部位に存在しているがん細胞を除去することも治療の目標になることがあります。

根治が望めない場合でも、生活の質を向上させる治療(緩和治療)によって、がんに起因する症状を軽減できることが多くあります。例えば、腫瘍を手術で切除できない場合に、放射線を照射することで腫瘍が小さくなることがあり、一時的に腫瘍のすぐ近くの痛みと症状(局所症状)が軽減します。

治療が複雑なため、患者が確実に最も安全で効果的なケアを受けられるよう、治療プロトコルと呼ばれる具体的な治療計画が作られています。治療プロトコルは、綿密な科学的試験に基づく標準的な方法で患者が治療を受けられるよう保証するものです。一般的には、プロトコルは臨床試験を通じて作成、改善されます。臨床試験が行われることで、新しい薬や治療の組合せと標準治療を比較し、新しい治療法がより効果的かどうかを判断できます。しばしば、こうした試験に参加する機会ががん患者に提供されますが、すべてのがん患者が 臨床試験 臨床試験について参加者が知っておくべきこと 人々は医師に対して、効果のある治療法を選択し、効果のない治療は中止するように期待します。しかし、どの治療法が有効か見分けることは、医師や研究者にも困難であることが往々にしてあります。その判断を下すことが 医学の役割の1つであり、具体的には、臨床試験において治療法の効果を検討することで達成されるのが通常です。 臨床試験とは、ある介入(治療や検査など)が安全かつ有効かどうかを明らかにするために計画される実験です。介入の内容は、たいていは薬剤... さらに読む に参加できるわけではありません。

がんの治療に対する反応

治療後にがんが一定期間消失した場合を完全奏効(寛解)といいます。医師は、がんに対する治療を受けている人や治療を終えた人に対して、定期的にモニタリングを行います。これは画像検査や臨床検査によって行われるのが通常で、治療に対するがんの反応をモニタリングし、再発した場合にがんを速やかに発見することを目的とします。

一部のがんはタンパク質を産生し、それが血液中から検出できます。そうした物質は腫瘍マーカーと呼ばれます。前立腺特異抗原(PSA)はその一例です。 前立腺がん 前立腺がん 前立腺がんのリスクは年齢とともに高くなります。 排尿困難、頻尿や急な尿意、血尿などの症状は通常、がんが進行するまで現れません。 この種のがんは転移する可能性があり、最も転移しやすい部位は骨とリンパ節です。 スクリーニング検査には議論の余地がありますが、症状のない男性で前立腺がんの可能性をチェックするためには、手袋をはめた指で直腸内から前立腺を診察する直腸指診や血液検査(PSA)を行います。... さらに読む 前立腺がん の男性ではPSAの値が高くなります。腫瘍マーカーの大半は、がん以外のいくつかの病気の場合にも血液中に検出されるため、がんのスクリーニング(症状が出る前にがんを発見すること)や診断に有用となるほど特異的というわけではありません。しかし、腫瘍マーカー(PSAや卵巣がんに対するがん抗原[CA]125など)は、治療効果を評価するのに役立つ可能性があります。治療前に検出されていた腫瘍マーカーが治療後の血液サンプルで検出されなくなった場合には、おそらく治療が成功したものと考えられます。治療後にいったん消失した腫瘍マーカーがその後再び検出された場合は、おそらくがんが再発したものと考えられます。

治癒は、治療が最も成功した場合の結果です。治癒とは、がんのあらゆる徴候がなくなり、長期間の経過観察で再発がみられない状態を意味します。一部のがんでは、再発が5年以上みられない場合に治癒したと判断されます。がんの種類によっては、治癒したとみなされるまでにさらに長期間の経過観察が必要になる場合もあります。

部分奏効では、がんの大きさや範囲(例えば、X線検査、CT検査、PET検査などの画像検査で測定)が半分より小さくなったものの、まだ画像検査で確認できるがんが残っています。部分奏効を達成すると、通常は症状が減り、生存期間の延長も望めますが、ほとんどの場合、がんが再び大きくなります。奏効の持続期間は、部分奏効と判定された時点からがんが再び増殖したり広がったりするまでの期間として測定されます。

一部の患者では、治療により完全奏効や部分奏効に至らないものの、がんが増殖したり広がったりせず、長期間にわたり新たな症状が現れない場合があります。こうした反応も有益であるとみなされます。最低限の反応しか得られない場合には、治療を行っても腫瘍が大きくなり続けたり、新たな部位に病変が現れたりします。

完全に消失したがんが後になってまた現れることを再発といいます。

がんが完全に消失してから再発するまでの期間を無病期間といいます。

また、がんの診断から死亡までの期間を全生存期間といいます。

乳がんやリンパ腫(リンパ節の腫瘍)など一部のがんは、化学療法や放射線療法によく反応する傾向があるため、治療反応性と呼ばれます。一方、黒色腫(皮膚がんの一種)や悪性脳腫瘍などは、患者の多くが化学療法や放射線療法に反応しないため、治療抵抗性と呼ばれます。腸管や肺の多くの腫瘍など一部の腫瘍は、最初は化学療法に反応することが多いものの、治療を継続していてもやがて抵抗性を示すようになります。

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