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自己免疫性溶血性貧血

執筆者:

Evan M. Braunstein

, MD, PhD, Johns Hopkins University School of Medicine

医学的にレビューされた 2020年 9月
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自己免疫性溶血性貧血は免疫系機能の異常を特徴とする疾患群で、赤血球をまるで異物であるかのように攻撃する自己抗体が産生されます。

  • 症状がまったくない人もいますし、疲労感や息切れを覚えたり、顔が青白くなったりする人もいます。

  • 重症の場合は、黄疸がみられたり、脾腫(脾臓の腫大)のために腹部に不快感や膨満感を覚えたりすることがあります。

  • 血液検査を行って、貧血であることを確認し、自己免疫反応の原因を特定します。

  • 治療は、コルチコステロイドなどの免疫系を抑制する薬で行い、ときとして脾臓摘出術(脾臓を取り除く手術)を行います。

自己免疫性溶血性貧血は、まれな病気ですが、年齢に関係なく発生する可能性があります。発生頻度は男性より女性の方が高いようです。自己免疫性溶血性貧血の約半数は、原因を特定することができないものです(特発性自己免疫性溶血性貧血)。自己免疫性溶血性貧血は、別の病気である 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは、関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ 炎症性の自己免疫結合組織疾患です。 関節、神経系、血液、皮膚、腎臓、消化管、肺、その他の組織や臓器に問題が発生します。 診断を下すため、血液検査のほか、ときにその他の検査を行います。 全身性エリテマトーデスの全患者でヒドロキシクロロキンが必要であり、損傷を引き起こし続けている全身性エリテマトーデス(活動性の全身性エリテマトーデス)の患者には、コルチコステロイドな... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、Bリンパ球やTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です。Bリンパ球は、いくつ... さらに読む リンパ腫の概要 などによって引き起こされたり、そういった病気に伴って発生したりすることもあり、ペニシリンのような特定の薬の使用が原因で発生することもあります。

自己抗体による赤血球の破壊は、突然起こることもあれば、ゆっくりと起こることもあります。原因がウイルスの場合、このような破壊がしばらくすると止まることがあります。また、赤血球の破壊が止まらず、慢性化する人もいます。自己免疫性溶血性貧血には、主に以下の2種類があります。

  • 温式抗体による溶血性貧血:正常な体温で自己抗体が赤血球に結合して破壊します。

  • 冷式抗体による溶血性貧血(寒冷凝集素症):正常な体温よりかなり低い温度のときだけ自己抗体の活性が高くなり、赤血球を攻撃します。

発作性寒冷血色素尿症(ドナート・ランドシュタイナー症候群)は、冷式抗体による溶血性貧血のまれなタイプです。寒気にさらされることが原因で赤血球が破壊されます。冷たい水を飲んだり、冷たい水で手を洗ったときなど、寒気にさらされる身体部分が小さくても赤血球が破壊されることがあります。低温で赤血球に抗体が結合し、温まると動脈や静脈内の赤血球が破壊されます。ウイルス感染後に最も多くみられ、それ以外は健康な人にもみられますが、 梅毒 梅毒 梅毒は、梅毒トレポネーマ Treponema pallidumという細菌によって引き起こされる性感染症です。 梅毒の症状は、見かけ上は健康な時期をはさんで、3段階で生じます。 まず患部に痛みのない潰瘍が現れ、第2期では、発疹、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退がみられます。 治療しないでいると、第3期には、大動脈、脳、脊髄、その他の臓器が侵されることがあります。 医師は通常、患者に梅毒があることを確認するために2種類の血液検査を... さらに読む 梅毒 患者にみられるときもあります。貧血の程度や現れる速さは様々です。

症状

自己免疫性溶血性貧血では、特に赤血球の破壊が軽度でゆるやかに進む場合は、症状がみられないことがあります。それ以外では、特に赤血球の破壊が重度な場合や急速な場合に、別の種類の貧血でみられるものと似た症状(疲労、脱力感、蒼白など)が現れます。

赤血球の破壊が重度な場合や急速な場合の症状としては、黄疸(皮膚や白眼が黄色くなる)、発熱、胸痛、失神、 心不全 心不全(HF) 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む 心不全(HF) の症状(例、息切れ)などがあり、死に至ることさえあります。赤血球の破壊が数カ月以上続くと、脾臓が腫れて、腹部の膨満感や不快感が生じます。

冷式抗体による溶血性貧血では、手や足が冷たくなったり、青みがかったりすることがあります。

自己免疫性溶血性貧血の原因が別の病気によるものであれば、リンパ節の腫れや圧痛、発熱など、原因になっている基礎疾患の症状が主に現れることがあります。

発作性寒冷血色素尿症では、背中や脚に激しい痛みが生じたり、頭痛、嘔吐、下痢がみられることもあります。尿の色が暗褐色になる場合があります。

診断

  • 血液検査

血液検査で貧血であることが明らかになると、医師はその原因を調べます。血液検査で未熟な赤血球(網状赤血球)の数が増加しているか、 血液塗抹検査 血液塗抹検査 医師は、症状と 身体診察の結果に基づいて血液疾患の診断に役立つ検査を選択します。症状が認められず、別の理由で臨床検査を実施した際に、血液疾患が発見されることがあります。例えば、定期的な健診の一部として実施した血算により 貧血が明らかになることがあります。血液疾患が疑われる場合は、具体的な診断を行うために、血算やその他の検査を行う必要があります。 最も多く行われる血液検査は、血算(CBC)です。血算では、血液中のすべての血球成分(赤血球、... さらに読む (血液を1滴分スライドガラスに広げて顕微鏡で調べる検査)で血液の破壊の証拠があれば、赤血球の破壊が進んでいることが疑われます。あるいは、血液検査から、赤血球が破壊されるとできるビリルビンという物質が増加し、ハプトグロビンというタンパク質(破壊された赤血球から放出されたヘモグロビンと結合します)が減少していることが分かる場合もあります。

原因として自己免疫性溶血性貧血の診断が確定するのは、血液検査で特定の抗体の量が多いことが確認された場合で、このような抗体は、赤血球に付着している抗体(直接抗グロブリン試験または直接クームス試験で測定)、または血液の液体成分に含まれる抗体(間接抗グロブリン試験または間接クームス試験で測定)のいずれかです。赤血球を破壊する自己免疫反応の原因を突き止めるため、その他の検査が行われることもあります。

治療

  • 輸血

  • コルチコステロイド

  • ときに脾臓摘出術

  • 発作性寒冷血色素尿症に対して、冷気を避ける

  • ときに免疫抑制薬

赤血球の破壊が激しい場合は、 輸血 輸血の概要 輸血とは、血液や血液成分を健康な供血者(ドナー)から病気の受血者(レシピエント)に移すことです。輸血を行うことで、血液が酸素を運ぶ能力を高め、体内の血液量を回復させるとともに、血液凝固の障害を正常にします。 米国では毎年約2100万件の輸血が行われています。典型的な輸血の受血者は以下のような人達です。... さらに読む 輸血の概要 が必要になります。血液が「不適合」であることを理由に、生命を脅かす貧血に対して輸血を差し控えるべきではありません。しかし、輸血は貧血の原因を治療するものではなく、一時的な対症療法にすぎません。

温式自己免疫性溶血性貧血には、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)などのコルチコステロイドがまず治療薬として選択されるのが普通です。最初に高用量の投与から始め、数週間ないし数カ月かけて徐々に減量していきます。

コルチコステロイドで効果がみられない場合や、耐えがたい副作用が起きた場合は、脾臓を切除する手術(脾臓摘出術)が、次の治療としてよく行われます。抗体が結合した赤血球を破壊する主な場所は脾臓であることから、これを切除します。脾臓摘出後も赤血球の破壊が止まらない場合や、手術ができない場合は、リツキシマブという薬や、シクロスポリンなどの免疫抑制薬を使用します。

冷式溶血性貧血は通常、症状の誘因を回避するか、原因となる基礎疾患(リンパ腫など)を治療することで管理します。重症例では、プラズマフェレーシスによって原因抗体を除去することができます。

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