非ホジキンリンパ腫

執筆者:Peter Martin, MD, Weill Cornell Medicine;
John P. Leonard, MD, Weill Cornell Medicine
レビュー/改訂 2022年 6月
プロフェッショナル版を見る
やさしくわかる病気事典

非ホジキンリンパ腫は、リンパ球と呼ばれる白血球のがんで、多くの種類に分類されています。

  • 首、わきの下、脚の付け根にあるリンパ節が急に腫れることが多く、痛みは伴いません。

  • 腫れたリンパ節が臓器を圧迫して、痛みや息切れなどの症状が現れる場合もあります。

  • 診断にはリンパ節や骨髄の生検が必要になります。

  • 治療法としては、放射線療法、化学療法、モノクローナル抗体による免疫療法と、それらの併用療法などが考えられます。

  • ほとんどの場合、治癒が期待できますが、そうでなくても何年にもわたって生きることができます。

  • 再発した人には幹細胞移植によって治療を行います。

リンパ腫の概要ホジキンリンパ腫も参照のこと。)

リンパ腫は、リンパ球と呼ばれる白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です。Bリンパ球は、いくつかの感染症に対する防御に不可欠な抗体を生産します。

非ホジキンリンパ腫は、B細胞またはT細胞(リンパ球)が関与する実に50種類を超える異なる疾患を集めたものです。これらのリンパ腫は、それぞれが顕微鏡ではっきりと判別でき、細胞パターンも、症状や予後のパターンも異なっています。非ホジキンリンパ腫の大半(80~85%)がB細胞由来の腫瘍です。T細胞由来の腫瘍は15~20%未満です。

非ホジキンリンパ腫の方がホジキンリンパ腫より多くみられます。米国で6番目に多いがんであり、すべてのがんによる死亡の4%を引き起こしています。年齢が高くなるほど多くみられます。

米国では、毎年8万人以上が新たに非ホジキンリンパ腫と診断され、この新規症例数は特に高齢者と免疫系が正常に機能しない人を中心に増加しています。臓器移植を受けた人やC型肝炎ウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している人では、非ホジキンリンパ腫が発生するリスクが高くなります。

白血病も白血球から発生するがんです。白血病では、がん化した白血球のほとんどが血流中と骨髄内にみられます。リンパ腫では、がん化した白血球のほとんどがリンパ節の内部と脾臓や肝臓などの臓器内にみられます。しかし、リンパ腫で血流中にがん化した白血球がみられたり、白血病でリンパ節や臓器にがん細胞がみられたりすることがあるため、白血病と非ホジキンリンパ腫には重複した特徴がときにみられます。

知っていますか?

  • 実際には、50種類を超える異なった病気のグループが非ホジキンリンパ腫です。

非ホジキンリンパ腫の原因

ほとんどの非ホジキンリンパ腫の原因は明らかになっていませんが、一部のまれなタイプでは、ウイルスの関与を強く裏付ける証拠が得られています。日本の南部とカリブ海諸島にみられる非ホジキンリンパ腫で、急速に進行するまれなタイプは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1:ヒトTリンパ球向性ウイルス1型、成人T細胞白血病ウイルスとも呼ばれます)というヒト免疫不全ウイルス(HIV)に似たレトロウイルスによる感染が原因と考えられます。エプスタイン-バーウイルスは、バーキットリンパ腫という別のタイプの非ホジキンリンパ腫に関係しています。ウイルス性の原因として疑われているものに、C型肝炎ウイルスカポジ肉腫ヘルペスウイルスなどがあります。HIVに感染している人は、一部の種類の非ホジキンリンパ腫を発症するリスクが高くなります。ヘリコバクター・ピロリなどの細菌もリンパ腫(特に胃のリンパ腫)のリスクを高めます。

そのほかに非ホジキンリンパ腫のリスクが高いのは、以下に該当する人です。

非ホジキンリンパ腫の症状

最初にみられる症状では、首、わきの下、脚の付け根のリンパ節が急速に腫れることが多く、痛みは伴いません。胸部リンパ節が腫れると、気道が圧迫されて、せきや呼吸困難が起こり、胸部の血管が圧迫されて、顔面、首、腕が腫れます(上大静脈症候群)。腹部の深いところにあるリンパ節が腫れると、様々な臓器が圧迫されて、食欲不振、便秘、腹痛、脚の進行性浮腫(むくみ)などがみられることがあります。

一部のリンパ腫細胞は血流中や骨髄内にみられる可能性があります。

骨髄内のリンパ腫細胞によって、骨髄が正常な血球を十分に生産する能力が阻害されることがあります。

  • 発熱と大量発汗は感染を示唆している場合があり、 感染は正常な白血球が減りすぎることで起こる場合があります。

  • 脱力、疲労、蒼白は、赤血球が減りすぎること(貧血)で起こる場合があります。呼吸が困難になったり、心拍数が速くなったり、胸に痛みが出たりすることもあります。

  • 血小板が極端に少なくなるために(血小板減少症)、あざや出血が生じやすくなり、ときには鼻血や歯ぐきからの出血がみられます。一部の患者では、脳や腹部の中で出血が起きることもあります。

非ホジキンリンパ腫は、消化管や皮膚のほか、ときに神経系に浸潤する場合もあり、様々な症状を引き起こします。不明熱と呼ばれる明らかな病因が判明しない発熱が長く続くことがあります。この種の発熱は、一般に病気が進行していることを示しています。

小児で最初にみられる症状には、貧血や発疹のほかに、脱力感や異常感覚などの神経症状があり、これらはリンパ腫細胞が骨髄、血液、皮膚、腸、脳、脊髄に浸潤することから生じている可能性が高いと考えられます。腫れたリンパ節は、通常体の深い場所にあり、次のような症状を引き起こします。

  • 肺の周りに水がたまり、呼吸困難を引き起こす

  • 腸を圧迫し、食欲不振や嘔吐を引き起こす

  • リンパ管が詰まり、それによりリンパ浮腫と呼ばれる体液の貯留が引き起こされ、これは腕と脚で最も顕著となる

診断と分類

  • リンパ節の生検

明らかな感染症がみられず、痛みを伴わないリンパ節の腫れが数週間にわたって続いている場合には、非ホジキンリンパ腫が疑われます。別の理由で行った胸部X線検査やCT検査で、胸部や腹部の深い位置にあるリンパ節の腫れが偶然見つかることもあります。

腫れたリンパ節の生検を行って、非ホジキンリンパ腫の診断を下し、同じようにリンパ節の腫れを引き起こすホジキンリンパ腫などの他の病気との鑑別を行います。

生検には様々な方法があり、その選択は腫大しているリンパ節の位置と検査に必要な組織の量によって異なります。ホジキンリンパ腫、感染症、炎症、他のがんなど、リンパ節腫大が起きる別の病気を非ホジキンリンパ腫と鑑別できるように、十分な量の組織を採取しなければなりません。十分な量の組織を確実に得るには、切除生検(小さな切開創からリンパ節の一部を採取する方法)が最も適しています。腫れたリンパ節が体表面に近いところにある場合は、(通常は超音波検査またはCT検査の画像を見ながら)皮膚を通して中空の針をリンパ節に刺す方法(コア針生検)により、十分な量の組織を採取できることがあります。腫れたリンパ節が胸部や腹部の深い位置にある場合は、手術が必要になることもあります。

50種類を超える異なった病気が、非ホジキンリンパ腫という1つの病名で呼ばれますが、大きく2つのグループに分類することがあります。

インドレントリンパ腫というグループの特徴は以下の通りです。

  • 生存期間が長い(何年も生きられる)

  • 多くの治療法に対して効果が速く現れる

  • 寛解期間は様々であるが、現在の標準治療では治癒は得られない

アグレッシブリンパ腫というグループの特徴は以下の通りです。

  • 治療しないと進行が速い

  • 標準化学療法による治癒率が高いが、治癒しない場合は生存期間が短い

非ホジキンリンパ腫は中年齢層から高年齢層に多くみられる病気ですが、小児や若年成人にもみられることがあります。小児や若年成人に発生するリンパ腫では、アグレッシブリンパ腫が多くみられます。

非ホジキンリンパ腫の病期診断

  • 画像検査

  • 骨髄生検

  • 血液検査(肝臓と腎臓の働きを調べる検査など)

非ホジキンリンパ腫の多くは、診断時点ですでに病変が広がっています。病変が1つの領域に限局される人は、わずか10~30%です。非ホジキンリンパ腫では、ホジキンリンパ腫と同様の手順で病期診断が行われます。

治療法の選択や予後の予測は病期に基づいて行われるため、病期診断が重要です。非ホジキンリンパ腫の病期診断や評価のために、いくつかの検査が行われます。血算や肝機能と腎機能の検査などの基本的な血液検査のほか、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)B型肝炎C型肝炎の感染の検査も行われます。

PET検査とCTを組み合わせた検査(PET-CT検査)は、がん性病変の位置や大きさ、がん細胞の活動性を判定する最も感度の高い検査法です。PET-CT検査が利用できない場合は、胸部、腹部、骨盤部の造影CT検査を行います。神経系の症状がみられる場合は、脳または脊髄のMRI検査など、他の検査が行われます。

骨髄生検が行われることがあり、特に血液検査で貧血や血小板数の低下が認められた場合に行われます。一部の種類の非ホジキンリンパ腫では、PET-CT検査によって確実に骨髄浸潤を検出できるため、骨髄生検は必ずしも必要ではありません。それら以外の非ホジキンリンパ腫では、PET-CT検査で確実に骨髄浸潤を検出することができず、病期診断によって治療法の選択が変わる場合は骨髄生検が必要になることがあります。

ホジキンリンパ腫は、広がりの程度によって4つの病期(I期、II期、III期、IV期)に分類されます。病期の数字が大きいほど、リンパ腫の広がり程度が大きいことを示します。

限局期にはI期とII期、進行期にはIII期とIV期があります。I期とII期で、非ホジキンリンパ腫がリンパ系以外の器官に存在する場合は、IE期またはIIE期に分類されます。バルキー病変とは、胸部に腫瘍のかたまり(大きさはリンパ腫の種類によって異なる場合があります)がある場合に用いられる用語です。

非ホジキンリンパ腫の治療

  • 化学療法、放射線療法、またはその両方

  • 免疫療法(がん細胞を攻撃する抗体でできた薬)、単独または化学療法を併用

  • ときに幹細胞移植

非ホジキンリンパ腫の治療法は、その種類によって非常に様々です。

インドレントリンパ腫では、最初にリンパ腫と診断された時点で、治療の必要がない場合があります。待機することで結果が悪くなることはなく、必要以上に早い段階での治療による副作用を避けられることが、研究によって示されています。インドレントリンパ腫で治療が必要な場合は、治療によって生存期間を延ばし、何年にもわたって症状を軽減します。

アグレッシブリンパ腫の場合は、治癒が期待できるため、治療せずに待機することは通常ありません。

治癒や長期生存の見込みは、非ホジキンリンパ腫のタイプや治療開始時の病期によって異なります。やや矛盾するようですが、インドレントリンパ腫は治療に速やかに反応して寛解(病勢が抑えられた状態)が得られ、長期生存が可能になることが多い半面、治癒することは通常はありません。これとは対照的に、アグレッシブ非ホジキンリンパ腫では、寛解に至るまでには非常に強い治療が必要になるのが普通ですが、十分に治癒する可能性があります。

I期の非ホジキンリンパ腫:限局期

病変が極めて限局したインドレントリンパ腫(I期)の治療では、多くの場合、放射線療法でリンパ腫とその周囲の領域に限定して照射します。この方法では、照射領域に再発がみられることはほとんどありませんが、治療から10年経過しても、体の他の部分に非ホジキンリンパ腫が再発することがあるため、経過観察を長期にわたって行う必要があります。ごく初期のアグレッシブリンパ腫の治療では、多剤併用化学療法が必要で、放射線療法を併用することもあります。

II期の非ホジキンリンパ腫:限局期または進行期

II期の非ホジキンリンパ腫には通常、限局期(I期)に似た挙動がみられますが、ときに進行期の挙動がみられることもあります。医師は、その挙動に応じた治療を選択します。

III期からIV期の非ホジキンリンパ腫:進行期

インドレントリンパ腫は、ほぼすべてがII期からIV期の状態で見つかります。必ずしも最初から治療を行う必要はありませんが、最初の診断から、ときには数年にわたって経過観察を行い、リンパ腫が進行して治療が必要になっていないか調べます。より進行したインドレントリンパ腫では、早期に治療を開始することで生存期間が延びるという証拠は得られていません。リンパ腫が進行し始めた場合でも、様々な治療選択肢があります。

多くの治療選択肢があり、治療法の選択は、リンパ腫の種類、広がりの程度、患者の症状、併存する医学的状態など、様々な要因によって異なります。治療法には、モノクローナル抗体(リツキシマブなど)単独、または化学療法との併用があります。ほとんどの治療薬は静脈投与されます。ときには、経口薬が使用されることもあります。普通は治療により寛解になります。平均的な寛解持続期間は、治療の強さによって異なります。ときに維持療法(初回治療後に再発予防を目的として行う治療)が追加されることがあります。

II期からIV期のアグレッシブリンパ腫では、早急に併用化学療法薬を行いますが、リツキシマブを加えることもよくあります。化学療法薬の中で有効と考えられる組合せが多くあり、使用されています。化学療法薬の組合せの多くは、含まれている薬のそれぞれの頭文字を並べた名前で呼ばれています。例えば、最も古くから使われており、現在でもよく使われている併用療法の1つは、CHOP療法(シクロホスファミド、[ヒドロキシ]ドキソルビシン、ビンクリスチン[オンコビン]、プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン])として知られています。リツキシマブの追加によりCHOPの治療成績が向上したことが報告されており、現在では決まってこの併用療法に追加されています(R-CHOP療法)。進行したアグレッシブ非ホジキンリンパ腫のR-CHOP療法による治癒率は約60~70%です。他の薬の組合せによる併用療法が現在も研究されています。化学療法の多くは、様々な種類の血球の数を減少させますが、血球の増殖と成長を促進する増殖因子と呼ばれる特殊なタンパク質も一緒に投与すると、治療に十分耐えられる場合があります。

知っていますか?

  • 化学療法薬の組合せの多くは、含まれている薬のそれぞれの頭文字を並べた名前で呼ばれています。

治療後の戦略

放射線療法を受けると、二次がんのリスクが高まり、治療後10年以上経ってから放射線を照射した領域内にある臓器にがんが発生することがあります。行った治療法にかかわらず、非ホジキンリンパ腫に対する治療が成功して何年も経ってから、白血病が発生する場合もあります。

治療が終了した後は、定期的に医師の診察を受け、リンパ腫の再発がないか検査する必要があります(治療後のサーベイランス)。検査の種類は患者の危険因子と受けた治療の種類によって異なります。

再発

アグレッシブリンパ腫が再発した人のほとんどが、化学療法薬の大量投与と自身の幹細胞を用いた自家幹細胞移植を受けています。この治療法によって、一部の人は治癒します。場合によっては、兄弟姉妹や非血縁者のドナーからの幹細胞(同種移植)を使用することもできますが、この移植法では、合併症のリスクがさらに大きくなります。ときには、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞という、リンパ腫と戦うように遺伝子工学を用いて作られたT細胞による治療が行われることがあります。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 白血病リンパ腫協会:非ホジキンリンパ腫(Leukemia & Lymphoma Society: Non-Hodgkin Lymphoma):診断、治療、支援を含めた非ホジキンリンパ腫に関する包括的な情報

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS