ナトリウムは体内の 電解質 電解質の概要 人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。 細胞内の体液 細胞の周囲の体液 血液 体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。 さらに読む のうちの1つで、体内で比較的大量に必要とされる ミネラル ミネラルの概要 体の細胞が正常に機能するには、ミネラルが必要です。体は、以下のものを比較的大量に必要とします。 カルシウム 塩化物 マグネシウム リン さらに読む です。電解質は血液などの体液に溶けると電荷を帯びます。(電解質の概要 電解質の概要 人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。 細胞内の体液 細胞の周囲の体液 血液 体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。 さらに読む も参照のこと。)
体内のナトリウムは、ほとんどが血液中または細胞の周囲の体液中に存在しています。ナトリウムには体液のバランスを正常に保つ働きがあります(体内の水分について 体内の水分について 水分は体重の約半分から3分の2を占めます。脂肪組織は筋組織より水分の割合が少なく、女性は脂肪が多い傾向があるため、平均的な女性で水分が体重に占める割合は男性より低くなります(男性が60%に対して女性は52~55%)。高齢者や肥満の人も水分が体重に占める割合が低く、反対に出生時や乳幼児期では水分が体重に占める割合が高く(70%)なります。7... さらに読む を参照)。ナトリウムはまた、神経と筋肉が正常に機能するのに重要な役割を果たしています。
ナトリウムは食べものや飲みものから摂取され、主に汗や尿と一緒に体の外へ排出されます。健康な腎臓は、尿の排出量を調整することで、体内のナトリウム濃度を一定に維持しています。ナトリウムの摂取量と排出量のバランスが崩れると、体内の総ナトリウム量が変化します。血液中のナトリウム量(濃度)は以下の場合があります。
血液量の調節
体内のナトリウムの総量は血液中の水分量(血液量)や細胞の周囲にある体液量に影響を及ぼします。体内では常に血液量とナトリウムの濃度がモニタリングされています。どちらかが高くなりすぎると、心臓、血管、腎臓にある受容器(センサー)がそれを察知し、腎臓を刺激してナトリウムの排泄量を増やし、それによって血液量を正常に戻します。
反対に、血液量またはナトリウム濃度が低くなりすぎると、これらの受容器は血液量を増やす仕組みを作動させます。血液量を増やす仕組みには以下のものがあります。
腎臓が 副腎 副腎の概要 人間の体には2つの副腎があり、それぞれ左右の腎臓の上部に位置しています。これらは 内分泌腺であり、血液中にホルモンを分泌します。それぞれの副腎には以下の2つの部分があります。 髄質:副腎内部は、アドレナリン(エピネフリン)などのホルモンを分泌し、血圧、心拍数、発汗など、交感神経系によっても調節される身体活動の制御に影響を与えます。... さらに読む を刺激してアルドステロンというホルモンを分泌します。アルドステロンは腎臓に働きかけ、ナトリウムを保持しカリウムを排出するよう促します。ナトリウムが保持されると、尿量は少なくなるため、やがて血液量が増加します。
下垂体がバソプレシン(ときに抗利尿ホルモンと呼ばれる)を分泌します。バソプレシンは腎臓に働きかけ、水分を保持するよう促します。
高齢者における体液およびナトリウムバランスの維持
加齢に伴い、水分とナトリウムのバランスを保つことが難しくなりますが、それは以下のような理由によります。
のどの渇きを感じにくくなる:のどの渇きの感覚が生じにくくなったり鈍くなったりして、必要なときに水分を摂取できないことがあります。
腎臓の変化:腎臓の機能が衰える結果、尿を濃縮する能力(水分と電解質を尿から取り出す能力)が低下し、より多くの水分が尿中に排出されるようになります。
体液の減少:高齢者では、体内の水分量が少なくなります。若年者では体重の60%が水分ですが、高齢者ではこの割合が45%に低下します。こうした変化のため、発熱や十分な水分および食事を摂取しないなどによって(1~2日間のみであったとしても)、水分とナトリウムがわずかに失われただけで、高齢者にはより深刻な症状が発生しやすくなります。
水分を摂取できなくなる:身体障害のある高齢者は、のどが渇いていても飲みものを飲めない場合があります。また、 認知症 認知症 認知症とは、記憶、思考、判断、学習能力などの精神機能が、ゆっくりと進行性に低下していく病気です。 典型的な症状は、記憶障害、言語や動作の障害、人格の変化、見当識障害、破壊的または不適切な行動などです。 症状が進行すると普段の生活が送れなくなり、他者に完全に依存するようになります。 診断は症状と身体診察および精神状態検査の結果に基づいて下されます。 原因を特定するために血液検査と画像検査が行われます。 さらに読む のためにのどが渇いても気づかない人や、伝えることができない人もいます。こうした人は、他の人に飲みものを用意してもらう必要があります。
薬剤:多くの高齢者は、 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなった状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む
、 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に産生しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 神経を損傷し、知覚に問題が生じます。 血管を損傷し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、視力障害のリスクが高まります。... さらに読む 、または心疾患の薬を飲んでいて、これらの薬剤が水分の過剰な排泄を促したり、水分喪失による悪影響を助長したりすることがあります。
上記のような状況により、水分を失ったり十分な水分を摂取できなかったりして、血液中のナトリウム濃度の上昇(高ナトリウム血症 高ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度が高いこと) 高ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が非常に高い状態をいいます。 高ナトリウム血症には脱水がかかわっていますが、この脱水の原因としては、水分の摂取不足、下痢、腎機能障害、利尿薬など様々なものがあります。 主にのどの渇きを覚えるほか、高ナトリウム血症が悪化した場合は、錯乱や筋肉のひきつり、けいれん発作を起こすことがあります。 血液検査を行い、ナトリウム濃度を測定します。... さらに読む )や 脱水 脱水 脱水は体内の水分が不足している状態です。 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリウムやカリウムなどの無機塩(電解質)を補給する治療が行われます。 さらに読む に陥ることがあります。こうした状況は高齢者に多いため、高ナトリウム血症も高齢者で多くみられます。高齢者は高ナトリウム血症に耐える能力が低く、重度の高ナトリウム血症になると錯乱、昏睡、死に至ることさえあります。
水分とナトリウムの過剰も高齢者によくみられますが、これは体内の水分過剰(体液過剰 水分過剰 水分過剰は体内に過剰な水分がある状態です。 体の水分排泄能力を低下させる病気または体の水分貯留傾向を高める病気があると、水分過剰に陥る可能性があります。 水分を摂取しすぎても、腎臓が正常であれば過剰な水が容易に排泄されるため、水分過剰になることはまれです。 多くの場合、症状は現れませんが、重度の水分過剰では、錯乱やけいれん発作が起こることもあります。 水分摂取の制限と、場合によっては利尿薬の投与が行われます。 さらに読む )をもたらす病気(心不全 心不全(HF) 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む 、肝疾患、腎疾患)が高齢者に多いためです。
低ナトリウム血症 低ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度が低いこと) 低ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が非常に低い状態をいいます。 大量の水分摂取、腎不全、心不全、肝硬変、利尿薬の使用など、多くの原因でナトリウム濃度が低下します。 症状は、脳の機能障害によるものです。 まず動作や反応が緩慢になり、錯乱がみられます。低ナトリウム血症が悪化するにつれて、筋肉のひきつりやけいれん発作が発生して無反応状態に進行します。 診断は、ナトリウム濃度を測定する血液検査に基づいて下されます。 さらに読む (血液中のナトリウム濃度が低いこと)も、高齢者でよくみられます。低ナトリウム血症は通常、心不全や肝疾患などにより、体内に過剰な水分が保持されることで起こります。特定の利尿薬(ヒドロクロロチアジドなどのサイアザイド系利尿薬)を使用している高齢者(特に腎臓の機能が低下している人)でも、低ナトリウム血症が起こることがあります。利尿薬はwater pillと呼ばれることもあります。栄養補助ドリンクや入院中の輸液(いずれもナトリウムの含有量が少ない場合)も、高齢者における低ナトリウム血症の原因になります。