糖尿病
(小児と青年における糖尿病も参照のこと。)
糖尿病は、血液中の糖分の量が上昇する病気です。英語では通常「diabetes」と呼ばれる糖尿病ですが、医師はしばしば「diabetes mellitus」という正式名を使います。これは「diabetes insipidus:尿崩症」という病気と区別するためです。尿崩症は血糖値に影響を及ぼさない比較的まれな病気ですが、糖尿病とまったく同じように排尿の増加を引き起こします。
血糖
多くの食物を構成する主な栄養素は炭水化物、タンパク質、そして脂肪の3つです。糖類は、デンプンや繊維と並んで、炭水化物の3つの種類のうちの1つです。
糖類には多くの種類があり、構造が単純なものも複雑なものもあります。ショ糖(スクロース)は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)という2つの単純な糖からできています。乳糖(ラクトース)はブドウ糖とガラクトースと呼ばれる単純な糖でできています。パン、めん類、米などの食品のデンプンに含まれる炭水化物は、種類の異なる単純な糖分子が長くつながってできています。ショ糖、乳糖、炭水化物などの複雑な糖類は、体がこれらを吸収するために消化管の酵素の働きで単純な糖に分解される必要があります。
単純な糖は、吸収されると、通常は体の主な燃料源であるブドウ糖にすべて変換され、これは体にとって重要な燃料源です。ブドウ糖は血流に乗って運ばれ、細胞に取り込まれます。体はまた、脂肪やタンパク質からもブドウ糖をつくることができます。血糖の「糖」とは、ブドウ糖のことです。
インスリン
インスリンは膵臓(胃の後ろにある臓器で消化酵素も産生します)から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖の量をコントロールしています。血液中のブドウ糖は、膵臓を刺激して インスリンを産生させます。 インスリンには、ブドウ糖を血中から細胞へ移動させる働きがあります。細胞に取り込まれたブドウ糖は、エネルギーに変換されてすぐに消費されるか、必要なときが来るまで脂肪やグリコーゲンとして蓄えられます。
正常であれば、血液中のブドウ糖の量(血糖値)は1日を通して変動します。血糖値は食後に上昇し、食後約2時間以内に食事前の値に戻ります。血糖値が食事前の値に戻ると、 インスリン産生量が低下します。通常の血糖値の変動幅は狭く、健康な人で約70~110mg/dLです。炭水化物を大量に摂取した場合、血糖値はより高くなります。65歳以上の人では、血糖値(特に食後)がやや高くなる傾向があります。
ブドウ糖を細胞内に移行させる インスリンが体内で十分につくられない場合、または細胞が インスリンに正常に反応しなくなった場合は(インスリン抵抗性と呼ばれます)、血糖値が高くなるとともに、細胞内のブドウ糖の量が不足し、これらが合わさって糖尿病の症状と合併症を引き起こします。
糖尿病の種類
前糖尿病(Prediabetes)
1型糖尿病
1型糖尿病(以前は インスリン依存性糖尿病あるいは若年型糖尿病と呼ばれていたもの)では、体の免疫系が膵臓の インスリン産生細胞を攻撃し、90%を超える細胞が破壊されて回復不能になります。そのため、膵臓は インスリンをほとんど、あるいは完全につくれなくなります。米国では糖尿病の人のうち約5~10%が1型です。多くの人が30歳前に1型糖尿病を発症しますが、それより後に発症する人もいます。
科学者は、小児期または青年期のウイルス感染症や栄養因子などの環境因子が原因となって、免疫系が膵臓の インスリン産生細胞を破壊するのではないかと考えています。遺伝的素因によって、環境因子の影響を受けやすくなることもあります。
2型糖尿病
2型糖尿病(以前は インスリン非依存性糖尿病あるいは成人型糖尿病と呼ばれていたもの)では、多くの場合、膵臓で インスリンがつくられており、ときには正常値より高い場合さえあります(特に糖尿病の初期において)。しかし、体が インスリンの作用に抵抗性を示し、その結果、体内の インスリンだけでは体の需要を満たすことができなくなります。2型糖尿病が進行するにつれ、膵臓が インスリンをつくる力が弱まります。
かつて2型糖尿病は小児期や青年期ではまれでしたが、最近ではよくある病気になってきています。とはいうものの、通常は30歳以上の人が発症し、年齢が高くなるにつれて多くなります。65歳以上の約26%の人が2型糖尿病にかかっています。特定の人種や民族に属している人は2型糖尿病を発症するリスクが高いことが知られています。例えば、黒人、アジア系アメリカ人、アメリカンインディアン、スペイン系またはラテンアメリカ系アメリカ人の祖先を有する人で米国に住んでいる人は、白人に比べてリスクが2~3倍も高くなります。2型糖尿病も遺伝する傾向にあります。
肥満は2型糖尿病発症の主な危険因子であり、この病気の人の80~90%が過体重もしくは肥満です。これは肥満によって インスリン抵抗性が引き起こされるためで、肥満の人は正常な血糖値を維持するのに大量の インスリンが必要になります。
特定の病気や薬が体内での インスリンの使われ方に影響し、2型糖尿病を誘発することがあります。
インスリンの使われ方が損なわれる最も一般的な原因は以下のものです。
糖尿病の症状
血糖値がかなり上昇している場合、1型糖尿病も2型糖尿病も症状は非常に似ています。
高血糖による症状には以下のものがあります。
血糖値が160~180mg/dLを超えると、尿中にブドウ糖が出てきます。尿中のブドウ糖の値がさらに高くなると、腎臓が大量のブドウ糖を希釈するため水分を過剰に排出します。腎臓が尿を過剰につくるため、糖尿病の人は大量の排尿が頻繁にあります(多尿症)。排尿の増加により、異常なのどの渇きを覚えます(多飲症)。尿中に大量のカロリーが失われるため、体重が減少することがあります。その代償として、しばしば強い空腹感を覚えます。
その他の糖尿病の症状には以下のものがあります。
1型糖尿病
1型糖尿病では、しばしば症状が突然、劇的に始まります。糖尿病性ケトアシドーシスと呼ばれる病態は、体が過剰な酸を産生する合併症で、急激に発生することがあります。糖尿病性ケトアシドーシスの初期症状には、強いのどの渇きと頻尿という通常の糖尿病の症状に加えて、吐き気、嘔吐、疲労のほか、(特に小児で)腹痛がみられることもあります。酸性に傾いた血液の状態を是正しようと、呼吸は深く速くなる傾向があり( アシドーシス)、吐く息がマニキュアの除光液に似たフルーツ臭になります。治療しなければ糖尿病性ケトアシドーシスが進行して、昏睡や死に至るおそれがあり、ときには直ちにこういった状態につながることがあります。
1型糖尿病を発症した後でも、 インスリン分泌の部分的な回復のために、一時的にですが血糖値が正常値に近い期間(ハネムーン期)が長く続くことがあります。
2型糖尿病
2型糖尿病の人では、診断されるまで数年から数十年にわたり症状が現れないか、あってもごく軽い症状です。排尿の増加とのどの渇きは初め軽度ですが、数週間から数カ月かけて徐々に悪化します。やがて強い疲労を感じるようになり、かすみ目と脱水が進行します。
糖尿病の初期の段階では、低血糖と呼ばれる血糖値が異常に低い状態になる場合もあります。
2型糖尿病では、ある程度の インスリンがつくられているため、長く治療していない場合でも、通常はケトアシドーシスになりません。まれではありますが、血糖値が極めて高くなります(しばしば1000mg/dLを超えます)。このような高い値は、感染や薬の使用などのストレスが重なった場合によく起こります。血糖値が非常に高いと、重度の脱水症に陥り、精神錯乱、眠気、けいれん発作など、高浸透圧高血糖状態と呼ばれる病態を引き起こします。現在では、2型糖尿病の人の多くは、このような重度の高血糖になる前に、通常の血糖値の検査で診断されます。
糖尿病の合併症
糖尿病の診断
血液中のブドウ糖の値(血糖値)が異常に高ければ糖尿病と診断されます。糖尿病のリスクがあるものの症状がない人を対象に、スクリーニング検査が行われます。
血糖値の測定
ヘモグロビンA 1c
血中タンパク質のヘモグロビンA1C(糖化ヘモグロビン)が測定される場合もあります。ヘモグロビンは、赤血球中の酸素を運搬する赤い物質です。長期にわたって血糖値が高い状態が続くと、ブドウ糖がヘモグロビンに結合して糖化ヘモグロビンが形成されます。ヘモグロビンA1Cの値(全ヘモグロビンのうちヘモグロビンA1Cが占める割合)は、血糖値の急速な変化ではなく長期にわたる血糖値の傾向を反映しています。
(自宅や診療所で使用される検査機器によるものではなく)認定された専門施設で測定されたヘモグロビンA1Cの値は、糖尿病の診断に使用できます。ヘモグロビンA1C値が6.5%以上であれば糖尿病です(訳注:日本の糖尿病の診断では血糖値の基準も満たす必要があります)。5.7~6.4%であれば前糖尿病(Prediabetes)です。
経口ブドウ糖負荷試験
その他の血液検査としては、経口ブドウ糖負荷試験があります。この検査は妊婦に対する妊娠糖尿病のスクリーニング時や、糖尿病の症状がある高齢者で空腹時の血糖値が正常な場合など、特定のケースを対象に行われます。ただし、非常に煩雑なため、糖尿病の検査として常に行われるものではありません。
この検査では、まず絶食状態で採血し、空腹時血糖値を測定します。次に、多量のブドウ糖を含む特殊な溶液を飲みます。2~3時間後に再度採血し、血糖値が異常に高くなっていないかを判定します。
糖尿病のスクリーニング
血糖値は、通常の身体診察の際にしばしば測定されます。高齢者では糖尿病がかなり多くみられるため、年1回の血糖値測定が特に重要です。糖尿病(特に2型糖尿病)になっていても、気づいていないことがあります。
1型糖尿病では、たとえ1型糖尿病のリスクが高い人の場合でも(1型糖尿病にかかっている兄弟姉妹や子どもがいる場合など)、スクリーニングのための決まった検査はありません。ただし、以下のような2型糖尿病のリスクがある人は、スクリーニング検査を受けることが重要です。
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45歳以上の人
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前糖尿病の人
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過体重または肥満の人
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体を動かさない生活習慣のある人
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血圧が高い人やコレステロール高値などの脂質の病気がある人
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心血管疾患がある人
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糖尿病の家族歴がある人
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妊娠中に糖尿病になった女性または出生時の子どもの体重が4000gを超えていた母親
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多嚢胞性卵巣疾患がある人
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アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系、アジア系アメリカ人、アメリカンインディアン
これらの危険因子を有する場合は、少なくとも3年に1回、糖尿病のスクリーニング検査を受けるようにします。糖尿病のリスクは、インターネット上で公開されているリスク計算ツールで推定することができます。医師は、空腹時血糖値とヘモグロビンA1C値を測定したり、経口ブドウ糖負荷試験を行ったりします。検査結果が正常値と異常値の境界であれば、スクリーニング検査をより頻繁に(少なくとも年に1回)行います。
糖尿病の治療
食事療法や運動、教育は、糖尿病治療の基本であり、軽度の糖尿病の人に対して最初によく勧められる治療です。過体重の場合は減量も重要です。生活習慣の変化にもかかわらず高血糖が続く場合や、血糖値が非常に高い場合、1型糖尿病(血糖値を問いません)の場合には薬も必要です。
糖尿病になっても血糖値を厳密にコントロールしていれば、合併症が生じる可能性が低くなるため、糖尿病の治療では血糖値をできるだけ正常値に近づけることを目標とします。
高血圧とコレステロール高値の治療は、血液の循環を改善するとともに、糖尿病の合併症の予防にもなります。心疾患の危険因子がある人では、低用量のアスピリンを毎日服用することが推奨されます。糖尿病で、年齢が40歳~75歳の場合には、コレステロール値にかかわらず、スタチン(コレステロール値を低下させる薬)が投与されます。心疾患のリスクが上昇している比較的若年の人もスタチンを服用すべきです。
糖尿病の人は、医療従事者に糖尿病であることが分かるように、医療情報を記したブレスレットやタグなどを常に携帯するか身につけておくことが役立ちます。この情報があれば、医療従事者は素早く救命処置を始めることができ、特に大けがや精神状態の変化などの際に役立ちます。
糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態は、昏睡や死亡に至ることのある緊急の治療を要する事態です。いずれの場合も治療法は同じで、静脈内輸液と インスリンの投与が中心となります。
糖尿病治療の目標
専門家は、血糖値を以下の値に保つことを推奨しています。
ヘモグロビンA1c値は7%未満に保つ必要があります。
このような目標を達成するために積極的な治療を行うと、血糖値が極端に低くなる(低血糖になる)リスクがあるため、高齢者のように低血糖が望ましくない人では、目標を調節します。
他の目標として、収縮期血圧を140mmHg未満および拡張期血圧を90mmHg未満に保つことがあります。血液中の低比重リポタンパク(LDL)コレステロール(悪玉コレステロール)は100mg/dL未満に保つ必要があります。
糖尿病の一般的な治療法
糖尿病の人が自分の病気について学び、食事と運動が血糖値にどのように影響するかを理解し、合併症の予防法を知ることはとても有益です。糖尿病指導に携わる看護師から、食事の管理、運動法、血糖値のモニタリング、薬の服用について情報提供を受けることができます。
糖尿病の人は禁煙し、アルコールも適量(1日に女性は1杯、男性は2杯まで)に抑えるようにします。
糖尿病患者の食事
食事管理はいずれのタイプの糖尿病の人にも非常に重要です。医師は健康的な栄養バランスのとれた食事と健康的な体重を維持することを推奨します。糖尿病患者は、栄養士や糖尿病療養指導士(diabetes educator)と相談して最適な食事プランを作成することが有益です。プランの具体例としては、単糖や加工食品を避け、食物繊維を増やし、炭水化物が豊富で脂肪の多い食べもの(特に飽和脂肪)を制限することなどが挙げられます。 インスリンを用いている場合は、低血糖を予防するため、食事と食事の間隔を長くあけすぎないようにします。食事に含まれるタンパク質と脂肪は摂取カロリー量に寄与しますが、血糖値に直接影響を与えるのは炭水化物の量のみです。米国糖尿病協会は、レシピを含む多くの食事のヒント(tips on diet)を紹介しています。適切な食事を摂取している場合でも、心疾患のリスクを低下させるために、コレステロール値を下げる薬が必要となります(推奨を参照)。
1型糖尿病の人や2型糖尿病の一部の人では、カーボカウントや炭水化物交換表を用いて、食事中の炭水化物の量と インスリンの量を合致させるようにします。食事中の炭水化物の量を「カウント」して、食事の前に使用する インスリンの量の計算に用います。ただし、炭水化物とインスリンの比(食事に含まれる炭水化物1グラム当たりの インスリンの量)は人によって様々であるため、糖尿病の人はこの手法を習得するにあたり、糖尿病における食事管理の経験がある栄養士とよく相談する必要があります。専門家の中には、急速に代謝される炭水化物とゆっくり代謝される炭水化物を区別するために、グリセミック指数(炭水化物が含まれる食べものが消化された際に血糖値に与える影響を数値化したもの)を用いることを助言している人もいますが、このアプローチを支持する科学的証拠はあまりありません。
糖尿病患者の運動
糖尿病患者の減量
糖尿病患者、特に2型糖尿病の患者では、過体重や肥満が多くみられます。2型糖尿病の一部の患者では健康的な体重を維持することで薬物療法の必要がなくなるか、その使用を遅らせることができる可能性があります。過体重は糖尿病の合併症につながるため、このような患者では、減量も重要です。食事や運動のみでは減量が困難な患者には、医師は減量のための薬を投与するか、肥満外科手術(体重減少を引き起こす手術)を勧めることがあります。
糖尿病の合併症の予防
糖尿病の薬物療法
糖尿病の治療に用いられる薬には多くのものがあります。1型糖尿病の場合は、 インスリンを注射して血糖値を下げる必要があります。2型糖尿病では、ほとんどの場合血糖値を下げる経口薬の服用が必要ですが、 インスリンや他の注射可能な薬の投与が必要な人もいます。
糖尿病治療経過のモニタリング
糖尿病の治療では、血糖値の定期的な測定が不可欠です。血糖値のモニタリングを行うことで、薬物療法や食事、運動面での調整を行うために必要な情報を得ることができます。症状が現れるまで低血糖あるいは高血糖を放っておくと深刻な事態になります。
以下のように多くの因子が血糖値に影響を与えます。
気づかずに炭水化物の非常に多い食事をとったために、食後に血糖値が急に上昇することもあります。精神的ストレス、感染症、薬などは血糖値を上げる傾向があります。多くの人は早朝に血糖値が上がりますが、これは正常なホルモン(成長ホルモンと コルチゾール)分泌に由来する、暁現象と呼ばれる反応です。低血糖に反応して、ある種のホルモンが分泌されると、血糖値が急に跳ね上がることがあります(ソモジー効果)。運動により血糖値が下がることがあります。
血糖値のモニタリング
血糖値は自宅でもどこでも容易に測定できます。
血糖値のモニタリングには、指先採血による血糖測定が最もよく用いられます。たいていの血糖測定器では、まずランセットと呼ばれる小さな穿刺針で指先を軽く刺し、血液を1滴採取します。ランセットは指先を突く小さな針のことで、バネ仕掛けになっていて、素早く皮膚を突くことができます。多くの人は針を刺してもほんのわずかな痛みしかありません。次に、1滴の血液を試験紙に載せます。この試験紙には血糖値に応じて変化する化学物質が含まれています。その変化を血糖測定器が読み取ってデジタルディスプレーに結果を表示します。測定器によっては、別の場所(手のひら、前腕、上腕、太もも、ふくらはぎ)から血液を採取することも可能です。家庭用血糖測定器は一組のトランプより小さなサイズです。
持続血糖測定(CGM)システムでは、皮膚の下に血糖センサーを取り付けます。このセンサーで、血糖値を数分毎に測定します。CGMには以下の2つのタイプがあり、それぞれ目的が異なります。
プロフェッショナルCGMは一定の期間(72時間から最大14日間)、継続して血糖値の情報を収集するものです。この情報をもとに医療専門家は患者に勧める治療を決めます。プロフェッショナルCGMは糖尿病の患者に情報を与えるものではありません。
パーソナルCGMは糖尿病の患者が使用するもので、小型の携帯用モニターまたは接続されたスマートフォン上に血糖値がリアルタイムで表示されます。CGMシステムのアラームを設定しておくと、血糖値が異常に下がった場合や上がった場合に音で知らせてくれるため、血糖値に懸念される変化が起きたときに速やかに把握できます。
以前CGMには、指先採血による血糖測定値を用いた頻繁な較正が必要でした。また、得られる結果も正確ではなかったため、利用者は例えば食事の前や高血糖を是正するためなどにインスリンの量を計算する際には常にCGMに表示される値を指先採血によって確認しなければなりませんでした。しかし、最近の技術の進歩によってCGMにも改善がみられています。プロフェッショナルCGMの中には、最長で14日間もの間、較正なしで使用できるものがあります。パーソナルCGMも、指先採血による血糖値測定で確認することなく、 インスリンの量の調整に使用できるものがあります。現在では、CGMの機器とインスリンポンプ間の通信を行うためのシステムが存在し、血糖値が低下すると インスリンの注入を停止するか(threshold suspend機能)、または日々の インスリン注入を行うか(ハイブリッド型クローズドループシステム)のいずれかの機能を有しています。
CGMシステムは、1型糖尿病で血糖値に急激な変化がしばしばみられる場合(特に血糖値が大きく低下する場合)など、指先採血による血糖測定器で特定するのが困難な状況で特に有用です。
糖尿病の人は、血糖値を記録して医師や看護師に報告し、血糖値を調節する インスリンと経口血糖降下薬の量についてアドバイスを受けるようにします。多くの人は インスリン量の調節を体得し、必要なときに自分でできるようになります。軽度もしくは初期の2型糖尿病で、1~2種類の薬剤で良好なコントロールが得られている場合は、指先採血による血糖値測定をそれほど頻回には行わずに済むかもしれません。
尿中のブドウ糖も検査できますが、尿検査は治療のモニタリングや治療の調節にはあまり向いていません。というのも、尿検査で示された尿中のブドウ糖の量は、その時点の血糖値を直接反映しているわけではないため、検査結果によって誤った方向へ導かれるおそれがあるからです。血糖値が大幅に低くなったり、やや高くなったりしているにもかかわらず、尿中のブドウ糖濃度は変化しないことがあります。
ヘモグロビンA 1C
医師は、ヘモグロビンA1Cという血液検査で治療の経過をモニタリングします。血糖値が高いと、血液中で酸素を運ぶタンパク質であるヘモグロビンが変化します。この変化は一定期間の血糖値と直接の相関関係にあります。ヘモグロビンA1Cの値が高いほど、それまでの間、血糖値が高い状態が続いていることを意味します。つまり、ある瞬間の血糖値を示す血糖値測定と異なり、ヘモグロビンA1C値は血糖値が過去数カ月にわたりコントロールされていたかどうかを示します。
糖尿病の人は、ヘモグロビンA1C値を7%未満に抑えることを目標にします。この値を達成することは困難ですが、ヘモグロビンA1C値が下がれば合併症になる可能性も低くなります。患者の健康状態に合わせて、医師はやや低めの値か、やや高めの値を目標値として推奨する可能性があります。ただし、9%以上の値はコントロールが悪いことを、12%以上は非常に悪いことを示します。糖尿病治療の専門医はヘモグロビンA1Cを3~6カ月毎に測定することを勧めています。
フルクトサミン
膵臓移植
1型糖尿病ではときに、膵臓全体の移植または インスリンを産生する細胞のみの移植が行われます。移植を行うことで、1型糖尿病の人が正常な血糖値を維持することができるようになる可能性があります。ただし、移植された細胞に対する体の拒否反応を防ぐために免疫抑制薬を投与する必要があるため、膵臓移植は通常、糖尿病による重篤な合併症がみられる人か、腎臓など他の臓器の移植を受けようとしていていずれにせよ免疫抑制薬の投与が必要になる人に限定して行われます。
血糖値の維持が困難なケース
ブリットル型糖尿病という用語がありますが、この用語は、糖尿病の人にしばしば明らかな理由なく再発性の劇的な血糖変動がみられる場合に使用されてきたものです。ただし、この用語はもはや使用されていません。1型糖尿病では、インスリンがまったく産生されないために、血糖値の変動がより頻回にみられる可能性があります。感染症や胃からの食物の移動の遅延のほか、その他の内分泌疾患などによっても血糖値が変動する場合があります。血糖値の管理が困難なケースでは、医師は血糖値の管理を困難としている他の病気がないかを調べるとともに、患者に対して糖尿病をどのように管理し、薬をどのように服用するべきかについてさらなる情報を提供します。
高齢者における糖尿病
高齢者の糖尿病管理も、若年者と同じ原則(教育、食事、運動、薬)に従う必要があります。ただし、複数の医学的問題を有している場合には、低血糖(血糖値が低い状態)になるリスクを冒して厳密な血糖コントロールを行おうとすることは実際には害になる可能性があります。
高齢者の糖尿病管理は若年者の場合より困難です。視力が低下すると、血糖測定器や インスリン注射器の目盛りが見えにくくなります。関節炎やパーキンソン病を患っていたり、以前に脳卒中を起こしていたりして、注射器の操作が難しいこともあります。
心理教育
食事
運動
薬
血糖値のモニタリング
低血糖
高血糖値の治療に伴う合併症で最もよくみられるものは、血糖値の低下(低血糖)です。フレイルである、もしくは頻繁な入院が必要な高齢者や、数種類の薬を使用している高齢者では、最もリスクが高くなります。糖尿病治療に用いられる薬のなかでも長時間作用型のスルホニル尿素薬は、高齢者の低血糖が最も発生しやすい薬です。この薬を高齢者に投与すると、低血糖のために、失神や転倒などの深刻な症状や思考の停滞、あるいは身体各部の動作障害を起こすことが比較的よくあります。
高齢者の低血糖は、若年者よりも分かりにくい場合があります。低血糖による錯乱は、認知症や薬による鎮静作用と間違われることがあります。また、コミュニケーションが困難な人(脳卒中の後遺症として、または認知症結果として)では、低血糖になっても症状を伝えることができません。
