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乳汁漏出症

執筆者:

Ian M. Chapman

, MBBS, PhD, University of Adelaide, Royal Adelaide Hospital

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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乳汁漏出症では、男性や授乳期でない女性で乳汁が産生されます。

  • 乳汁漏出症の最も一般的な原因は下垂体の腫瘍です。

  • 乳汁漏出症は、男性および女性の両方で、普通では起こらないはずの乳汁の産生と不妊症を引き起こします。

  • 診断は、プロラクチンというホルモンの血中濃度に基づいて下されます。

  • 原因の調査に画像検査が行われる場合があります。

  • 薬だけでプロラクチンの産生を抑止し、腫瘍を縮小できない場合は、手術やときに放射線療法も行われます。

通常、プロラクチノーマは非常に小さい状態で、診断されます。女性よりも男性の方が大きくなる傾向がありますが、これは男性の方が気づくタイミングが遅くなることによります。下垂体のすぐ上にできる腫瘍はプロラクチンを産生しませんが、これが下垂体の茎の部分を圧迫するとプロラクチンの分泌が増加することがあります。茎の部分が圧迫されることにより、正常であればプロラクチン分泌を減少させるドパミンというホルモンが下垂体に達しなくなります。

プロラクチンの過剰産生と乳汁漏出症は、フェノチアジン系などの薬、特定の降圧薬 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなった状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む (特にメチルドパ)、オピオイド、経口避妊薬の服用、下垂体以外の特定の病気でも起こることがあります。このような病気には、甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は、甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの分泌が不十分になる病気で、身体の重要な機能が働く速度が低下します。 顔の表情が乏しく、声がかすれ、話し方はゆっくりになり、まぶたは垂れて、眼と顔が腫れます。 通常は1回の血液検査で診断が確定されます。 甲状腺機能低下症の人は、生涯にわたって甲状腺ホルモンの投与を受ける必要があります。 (甲状腺の概要も参照のこと。) さらに読む 甲状腺機能低下症 (甲状腺の活動が不十分になった状態)、慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD) 慢性腎臓病では、血液をろ過して老廃物を除去する腎臓の能力が、数カ月から数年かけて徐々に低下します。 主な原因は糖尿病と高血圧です。 血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなります。 症状としては、夜間の排尿、疲労、吐き気、かゆみ、筋肉のひきつりやけいれん、感覚の消失、錯乱、呼吸困難、皮膚の黄褐色への変色などがあります。 診断は、血液検査と尿の検査の結果により下されます。 さらに読む 、肝疾患、特定の肺がんなどがあります。

知っていますか?

  • 乳汁漏出症は男性と女性の両方で発生する可能性があります。

症状

プロラクチノーマでは、普通はみられないはずの乳汁産生が唯一の症状となる場合もありますが、多くの女性では月経が止まったり(無月経 無月経 月経がないことを無月経といいます。 以下の状況では、無月経は正常です。 思春期以前 妊娠中 授乳中 さらに読む )、月経周期が不規則になったりすることもあります。プロラクチノーマの女性はエストロゲン量が減少し、これにより腟の乾燥が生じて性交が苦痛になります。男性のプロラクチノーマ患者の約3分の2は性への関心が失われ(性欲の減退 男性の性欲減退 性欲減退とは性欲が減少することです。 考えられる原因には、心理的要因(抑うつ、不安、人間関係の問題など)、薬、テストステロンの血中濃度が低いことなどがあります。 原因に応じて、医師は心理カウンセリングを提案したり、異なる薬を処方したり、テストステロン補充療法を勧めたりします。 (男性の性機能障害の概要も参照のこと。) 性欲(リビドー)は個人差が大きく、疲労や不安といった状態によって一時的に減少することがあります。また、性欲は年齢を重ねる... さらに読む )、勃起障害 勃起障害(ED) 勃起障害(ED)とは、性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できないことです。 (男性の性機能障害の概要も参照のこと。) どんな男性でもときに勃起に至らない問題を抱えることがあり、そのような問題の発生は正常なことと考えられています。勃起障害は男性が次のような場合に起こります。 一切勃起できない 短い間勃起するが性交には十分な時間ではない さらに読む になります。一部の女性でも、性欲の減退や男性型多毛症(顔や体に過剰な毛が生える)がみられます。プロラクチン値が高いと男女ともに不妊症になるおそれがあります。

診断

  • 血液中のプロラクチン濃度の測定

  • CTまたはMRI検査

女性では月経回数が減る、無月経になる、あるいは突然乳汁が産生された場合にこの病気が疑われます。男性でも乳汁が産生されて性欲減退がみられ、血液中のテストステロン値が低ければ疑われます。

血液中のプロラクチンが高値を示せば乳汁漏出症と確定されます。

プロラクチノーマや下垂体に近い他の腫瘍を探すために、CT(コンピュータ断層撮影 CT(コンピュータ断層撮影)検査 CT検査では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度から撮影された一連のX線画像であり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとはcomputed... さらに読む CT(コンピュータ断層撮影)検査 )検査またはMRI(磁気共鳴画像 MRI(磁気共鳴画像)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査は、強力な磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強力な磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置内で生じるような強力な磁場の中に置かれると、磁場... さらに読む MRI(磁気共鳴画像)検査 )検査が行われます。下垂体に腫瘍が見つからなくても、ほかにプロラクチン値が高くなるはっきりした原因(薬など)がなければ、依然として下垂体腫瘍が原因である可能性が最も高く、女性では特にこの傾向がよくみられます。この場合、おそらく腫瘍は検査で見つけられないほど小さいと考えられます。

画像検査でプロラクチノーマが大きい場合は、視野に影響がないか眼科医による視野検査を受けます。

治療

  • プロラクチンの産生を阻害する薬

  • ときに手術または放射線療法

プロラクチンの産生を妨げる脳内化学物質であるドパミンに似た薬が投与されます。これにはブロモクリプチンとカベルゴリンという薬があります。これらの経口薬は服用し続ける限り効果がありますが、腫瘍が治癒することはほとんどありません。

この薬を服用した多くの患者で、プロラクチン量は月経周期が正常に回復するレベルまで減り、乳汁漏出が止まり(女性および男性で)、女性ではエストロゲンが、男性ではテストステロンの量が増えます。この薬によってしばしば不妊症も治ります。また腫瘍が縮小して視覚障害も軽減されます。

小さなプロラクチノーマには手術も効果的ですが、薬物療法は安全で効果があり、使用法も簡単であるため、最初から手術を行うケースはそれほどありません。

プロラクチン値が極端に高くなく、CT検査やMRI検査でプロラクチノーマが小さいかまたは検出されない場合、医師は積極的な治療を勧めないことがあります。この判断は、プロラクチン値が高いものの、妊娠には問題がなく月経周期が規則的で乳汁漏出によるトラブルがない女性や、テストステロン値が低くない男性には適切です。女性はエストロゲン値が低いと、無月経を伴い骨粗しょう症 骨粗しょう症 骨粗しょう症とは、骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。 加齢、エストロゲンの不足、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、およびある種の病気によって、骨密度や骨の強度を維持する成分の量が減少することがあります。 骨粗しょう症による症状は、骨折が起こるまで現れないことがあります。... さらに読む 骨粗しょう症 のリスクが高くなります。男性はテストステロン値が低いと、骨粗しょう症 骨粗しょう症 骨粗しょう症とは、骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。 加齢、エストロゲンの不足、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、およびある種の病気によって、骨密度や骨の強度を維持する成分の量が減少することがあります。 骨粗しょう症による症状は、骨折が起こるまで現れないことがあります。... さらに読む 骨粗しょう症 になるリスクが高くなります。

小さなプロラクチノーマのある女性で妊娠を望んでいなければ、プロラクチノーマによるエストロゲン低値の影響を打ち消すために、エストロゲンかエストロゲンを含有する経口避妊薬が投与されることがあります。エストロゲン治療で小さなプロラクチノーマが大きくなることはないとされていますが、多くの専門医は、腫瘍が増大していないことを確認するために、年1回のCT検査あるいはMRI検査を少なくとも2年間は受けるように勧めています。

大きな腫瘍の場合は、ブロモクリプチンやカベルゴリンなどのドパミンに似た薬(ドパミン作動薬)の投与または手術による治療が行われます。薬でプロラクチン値が低下し症状が軽減される場合は、手術の必要はありません。これらの薬は概して安全ですが、最近パーキンソン病の治療において、プロラクチン増加に対する治療の場合よりも多い量を投与したときに、心臓弁に過剰な結合組織が形成されたこと(線維症)や心臓弁での逆流が発生したことが報告されています。手術が必要な場合も、術前にドパミン作動薬を使用すると腫瘍を縮小させるのに役立ちます。プロラクチノーマが大きいと手術で完全には取り除けないため、術後にこの薬が投与されます。ときに、プロラクチノーマが小さくなり、プロラクチンの分泌が低下することがあるため、ドパミン作動薬の投与を中止してもプロラクチン値が上昇しなくなる場合があります。腫瘍が小さい人および妊娠後の女性では、ドパミン作動薬の投与を中止できるケースが増えます。

これらの治療法で効果がなかった場合、他の下垂体腫瘍と同じく放射線療法が必要になります。

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