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中枢性尿崩症

(バソプレシン感受性尿崩症)

執筆者:

Ian M. Chapman

, MBBS, PhD, University of Adelaide, Royal Adelaide Hospital

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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中枢性尿崩症(にょうほうしょう)は、バソプレシン(抗利尿ホルモン)の欠乏のために非常に薄い尿が過剰につくられる病気です(多尿症)。

  • 中枢性尿崩症には、脳腫瘍、脳の損傷や脳の手術、結核、他のいくつかの病気など、複数の原因があります。

  • 主な症状は、強いのどの渇きと多尿です。

  • 診断は、尿検査、血液検査、水制限試験に基づいて下されます。

  • 中枢性尿崩症の患者には、通常、バソプレシンやデスモプレシンという薬が投与されます。

バソプレシンは視床下部(下垂体のすぐ上に位置する脳内の部位)でつくられるホルモンで、下垂体 下垂体の概要 下垂体はエンドウマメ大の腺で、脳基底部の骨でできた構造(トルコ鞍[あん])の内部に収まっています。トルコ鞍は下垂体を保護していて、下垂体が大きくなる余地はほとんどありません。 下垂体は他の多くの内分泌腺の働きを制御しているため、内分泌中枢とも呼ばれます。また、下垂体は脳内でそのすぐ上に位置している視床下部に大部分を制御されています。視床下... さらに読む の後葉がその貯蔵と分泌を担っています。バソプレシンは、つくられる尿の量を減らすよう腎臓に信号を送ることで、体液量の調節を助けます( 体内の水分について 体内の水分について 水分は体重の約半分から3分の2を占めます。脂肪組織は筋組織より水分の割合が少なく、女性は脂肪が多い傾向があるため、平均的な女性で水分が体重に占める割合は男性より低くなります(男性が60%に対して女性は52~55%)。高齢者や肥満の人も水分が体重に占める割合が低く、反対に出生時や乳幼児期では水分が体重に占める割合が高く(70%)なります。7... さらに読む )。尿の量を増加させる物質を利尿薬と呼ぶことから、バソプレシンは抗利尿ホルモンと呼ばれています。

原因

中枢性尿崩症の原因は、バソプレシンの欠乏です。欠乏の原因には以下のものがあります。

  • 遺伝

  • 他の病気

  • 原因不明

そのほかに中枢性尿崩症の原因となる病気には、視床下部や下垂体の手術による偶発的な損傷、頭蓋底の骨折をはじめとする脳損傷、腫瘍、サルコイドーシスや結核、動脈瘤(動脈壁の隆起)や脳につながっている動脈の閉塞、脳炎や髄膜炎、まれな病気であるランゲルハンス細胞組織球症などがあります。

症状

症状はいずれの年齢でも、徐々にあるいは突然発生します。多くの場合、以下のような症状だけがみられます。

  • 強いのどの渇き

  • 尿の過剰産生

排尿回数が過度に増え、夜間にトイレにいくことが多くなります。尿として失われた水分を補うために、1日に約3~30リットルもの水を飲むことがあります。氷水がよく好まれます。水分を補充できないと、すぐに脱水 脱水 脱水は体内の水分が不足している状態です。 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリウムやカリウムなどの無機塩(電解質)を補給する治療が行われます。 さらに読む になって低血圧とショック症状を起こすおそれがあります。継続的に薄い尿が大量に排出されますが、特に夜間に著しくなります。

診断

  • 水制限試験

患者に大量の排尿がみられる場合、医師は尿崩症を疑います。糖尿病 糖尿病 糖尿病は体が必要とするインスリンを十分に産生しないため、血糖(ブドウ糖)値が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇き、減量しようとしていないのに体重が減少します。 神経を損傷し、知覚に問題が生じます。 血管を損傷し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、視力障害のリスクが高まります。... さらに読む (過度の排尿を引き起こす原因としてより一般的にみられます)の疑いを否定するために、最初に尿糖の検査が行われます。血液検査ではナトリウムの高値のほか、多くの電解質が異常値を示します。

中枢性尿崩症の最良の診断方法は水制限試験です。水制限試験では、約12時間にわたって定期的に尿の量や血液中の電解質濃度、体重を測定しますが、その間の水分摂取は禁止されます。検査の間、患者の状態が注意深くモニタリングされます。12時間が経過したら(あるいは血圧の低下、心拍数の増加、または5%以上の体重減少がみられたらすぐに)、検査を中止してバソプレシンを注射します。バソプレシンに反応して排尿の増加が止まり、尿が濃くなり始め、血圧が上昇し、心拍数が正常に近くなった場合は、中枢性尿崩症と診断されます。注射後も排尿の増加が続き、尿は薄いままで、血圧や心拍数も変化しない場合は、腎性尿崩症と診断されます。

治療

  • デスモプレシン

デスモプレシン(作用がより長く続くバソプレシン)は、1日2回の鼻腔スプレーのほか、ときに錠剤または皮下注射や静脈内注射で投与されることもあります。投与量は体の水分バランスと正常な尿量を維持できるように調節されます。バソプレシンを過剰に使用すると、体液が貯留し、むくみなどの問題が生じるおそれがあります。手術中または意識不明の中枢性尿崩症の患者には、バソプレシンが注射されます。

中枢性尿崩症は、クロルプロパミド、カルバマゼピン、クロフィブラート、サイアザイド系利尿薬など、バソプレシンの産生を刺激する薬によって制御できる場合もあります。しかし、これらの薬では重症の尿崩症の症状を解消することはできません。

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