演技性パーソナリティ障害の患者は継続的に注目の的になることを求め、しばしば他者の注目を引きつけるために不適切に誘惑的かつ挑発的な形で衣服を着用して行動したり、自分を非常に劇的に表現したりします。
演技性パーソナリティ障害の診断は、注目の的になっていないことによる不快感、不適切に誘惑的または挑発的な他者との交流、劇的な行動や感情の表現などの特定の症状に基づいて下されます。
基礎にある葛藤に焦点を当てた精神療法が役立つことがあります。
パーソナリティ障害 パーソナリティ障害の概要 パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。 パーソナリティ障害は10種類あり、自己像(セルフイメージ)と他者やストレスに対する反応のパターンに、それぞれ特徴的な問題がみられます。... さらに読む (人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。
演技性パーソナリティ障害の患者は、自分の身体的外見を利用し、他者から注目されるように不適切に誘惑的または挑発的な形で行動します。他者からの注目をつなぎとめるために服従的に行動することもよくあります。
演技性パーソナリティ障害は米国の一般の人の約2%にみられます。女性の方が多く診断されますが、男女で同じように生じることを示す研究もあります。
他の病気もしばしばみられます。次のうち1つ以上の病気がみられます。
他のパーソナリティ障害(反社会性 反社会性パーソナリティ障害(ASPD) 反社会性パーソナリティ障害は、結果や他者の権利を軽視する広汎なパターンを特徴とします。 反社会性パーソナリティ障害の患者は、自分や他者がどうなるかを考えることなく、また良心の呵責や罪悪感を感じることなく、自分の望むことを追い求めます。 反社会性パーソナリティ障害の診断は、結果や他者の権利の軽視、自分が望むことを手に入れるためにうそをついたり、操作したりすることなどの症状に基づいて下されます。... さらに読む 、境界性 境界性パーソナリティ障害(BPD) 境界性パーソナリティ障害は、人間関係、自己像、気分、行動の不安定性、そして拒絶されたり、見捨てられたりする可能性に対する過敏性を特徴とします。 境界性パーソナリティ障害の患者は拒絶されたり見捨てられたりすることを恐れますが、その理由の1つは孤独になりたくないからです。 境界性パーソナリティ障害の診断は、人間関係、自己像、気分の頻繁な変化、また自己破壊的で衝動的な行動などの具体的症状に基づいて下されます。... さらに読む 、自己愛性 自己愛性パーソナリティ障害(NPD) 自己愛性パーソナリティ障害は、優越感(誇大性)、賞賛への欲求、および共感性のなさの広汎なパターンを特徴とします。 自己愛性パーソナリティ障害の患者は自分の能力を過大評価し、自分の業績を誇張し、他者の能力を過小評価する傾向があります。 自己愛性パーソナリティ障害の診断は、自分の重要性と才能についての誇大な、根拠のない感覚、無条件に賞賛されたいという欲求、特権意識などの特定の症状に基づいて下されます。... さらに読む )
うつ病 うつ病 うつ病とは、日常生活に支障をきたすほどの強い悲しみを感じているか、活動に対する興味や喜びが低下している状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。 うつ病になると、悲しみに沈み、動作が緩慢になり、以前は楽しんでい... さらに読む または気分変調症(持続性抑うつ障害 持続性抑うつ障害 うつ病とは、日常生活に支障をきたすほどの強い悲しみを感じているか、活動に対する興味や喜びが低下している状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。 うつ病になると、悲しみに沈み、動作が緩慢になり、以前は楽しんでい... さらに読む )
症状
注目を得る必要性
演技性パーソナリティ障害の患者は継続的に注目の的になることを求め、そうなっていない場合にしばしば抑うつを生じます。患者はしばしば活発、劇的、情熱的でなれなれしく、新しい知人を魅了することもあります。
この病気の患者は、潜在的な恋愛的関心によってだけでなく、職場や学校などの様々な状況でしばしば不適切に誘惑的かつ挑発的な形で衣服を着て、行動します。患者は自分の外見で他者に印象づけたいと考え、そのためしばしば自分の外見にとらわれています。
感情に関する問題
感情を急に消したり、見せたりすることがあり、そのため、他者には浅はかにみえることがあります。同時に、感情はしばしば大げさに表現されます。話し方は劇的で、強い意見を述べますが、その意見を裏付ける事実や詳細はほとんどありません。
感情的または性的に親密な関係を得ることが困難な場合があります。患者は、しばしば自覚することなく、ある役割(被害者の役割など)を演じることがあります。誘惑的または感情的操作を利用してパートナーを支配しようとする一方で、パートナーに強く依存するようになることがあります。
その他の症状
演技性パーソナリティ障害の患者は他者や最新の流行にすぐに影響を受けます。患者は非常に暗示を受けやすくなります。また非常に人を信用しやすく、特に、自分の問題をすべて解決してくれるかもしれないと考える権威者を盲信します。
患者はしばしば自分と他者との関係を実際よりも親密であると考えます。
演技性パーソナリティ障害の患者は、目新しいものを無性に欲しがり、すぐに飽きる傾向があります。このため、仕事や友人を頻繁に変えることがあります。見返りを得るまで待たなければならないことにいらだちを覚えやすいため、患者の行動はしばしば即座の満足を得ることを動機としています。
診断
具体的な診断基準に基づく医師による評価
パーソナリティ障害の診断は、通常は米国精神医学会が発行している精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5 精神障害の分類と診断 1980年に米国精神医学会が発行した『精神障害の診断と統計マニュアル第3版』(DSM-III)は、標準化された定義と診断基準を用いて精神障害を診断しようとする初めての試みでした。2013年に発行された最新版であるDSM-5では、精神症状(考え方や感じ方を反映するものとしての患者の言動のこと)や病気の経過に基づいて、精神障害を各種の診断カテゴリーに分ける分類システムが示されています。... さらに読む )に基づいて下されます。
演技性パーソナリティ障害の診断を下すには、以下の5つ以上に示されるように、患者が持続的に自分の感情を大げさに表し、注目を求めている必要があります。
注目の的になっていないと不快感を覚える。
不適切なほど性的に誘惑的または挑発的な形で他者と交流する。
感情がすぐに変わり、浅はかにみえる。
自分に注意を引くため常に身体的外見を利用する。
会話は非常にあいまいで、詳細に欠ける。
感情を劇的で、芝居がかった、大げさな形で表現する。
他者や状況にすぐに影響を受ける。
人間関係を実際より親密なものとして捉える。
また、症状は成人期早期までに始まっている必要があります。
治療
精神療法(心理療法)
演技性パーソナリティ障害の一般的治療 治療 パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。 パーソナリティ障害は10種類あり、自己像(セルフイメージ)と他者やストレスに対する反応のパターンに、それぞれ特徴的な問題がみられます。... さらに読む は、すべてのパーソナリティ障害に対するものと同じです。
演技性パーソナリティ障害に対して認知行動療法と薬がどれほど有効かについてはほとんど分かっていません。
精神力動的精神療法 精神療法(心理療法) が使用されることがあります。このタイプの精神療法では根底にある葛藤に焦点を当てます。精神療法家は行動を言葉に置き換え、これにより患者が自分をより深く理解するよう促すことから始めます。この方法は、患者がより劇的ではない形で他者とコミュニケーションをとるのに役立ちます。精神療法家はそうして、演技的行動が他者の注意を引き、自分のことをよく思えるようにする上でどれほど効果がなく、不適切なやり方であるかを患者が理解するのを支援することができます。