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協調運動障害

執筆者:

Hector A. Gonzalez-Usigli

, MD, HE UMAE Centro Médico Nacional de Occidente;


Alberto Espay

, MD, University of Cincinnati

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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本ページのリソース

協調運動障害は、随意運動を協調させてバランスの制御を行う脳領域である小脳の機能不全が原因で起こります。

  • 小脳の機能不全により、協調運動障害が起きます。

  • 腕や脚をうまく制御できず、歩幅が大きくなって歩行が不安定になります。

  • 診断は症状、家族歴、脳のMRI検査の結果のほか、しばしば遺伝子検査の結果に基づいて下されます。

  • 可能であれば原因を是正しますが、それができない場合の治療としては、症状の緩和に重点が置かれます。

小脳は脳の一部で、主に一連の動作を協調させる機能のほか、バランスと姿勢を制御する役割も担っています。小脳が損傷を受けると、どのような損傷であれ、協調運動障害(運動失調)につながることがあります。

原因

協調運動障害の原因で最も多いのは以下のものです。

  • 長期間にわたる過度の飲酒:小脳の永続的な損傷の発生につながります。

頻度は下がりますが、甲状腺機能低下症(甲状腺の活動が不十分になった状態)、ビタミンE欠乏症、脳腫瘍などの病気が協調運動障害を引き起こす場合もあります。フリードライヒ運動失調症などの遺伝性疾患も協調運動障害の原因になります。

まれに、がん(特に肺がん)の人では、免疫系が機能不全に陥って小脳を攻撃することがあります(自己免疫反応)。亜急性小脳変性症と呼ばれるこの病気でも、協調運動障害がみられます。

特定の薬剤(抗てんかん薬など)は、特に高用量で使用した場合に、協調運動障害を引き起こすことがあります。その場合は、その薬剤の使用を中止すると症状はなくなるでしょう。

知っていますか?

  • 協調運動障害の最も一般的な原因は、長期間にわたる過度の飲酒です。

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協調運動障害の原因

種類

小脳の病気

小脳の先天異常

小脳内の出血

小脳の脳腫瘍(特に小児)

頭部外傷(繰り返し起こった場合)

小脳の脳卒中

遺伝性疾患

その他の病気

熱中症または極度の高熱

亜急性小脳変性症

甲状腺機能低下症(甲状腺の活動が不十分になった状態)

薬物および有害物質

飲酒(長期間にわたる過度の飲酒)

フェニトインなどの抗てんかん薬(特に高用量で長期間使用した場合)

重金属(水銀やなど)

高用量の鎮静薬(ベンゾジアゼピン系薬剤)

症状

協調運動障害になると、腕や脚の位置や姿勢を制御できなくなります。そのため、歩行時に歩幅が大きくなってよろめき、腕は大きくジグザグに動きます。

協調運動障害はほかに次のような異常を引き起こすこともあります。

  • 測定障害:体の動きの範囲をコントロールできなくなります。例えば、測定障害のある人が何かを手に取ろうとすると、手が対象物を通り越してしまうことがあります。

  • 構音障害声を出す筋肉の運動が協調しなくなるために、話し方が不明瞭になり、抑揚を制御できなくなります。口の周囲の筋肉が通常より大きく動くこともあります。

  • 断綴性(だんてつせい)言語:話し方が単調になり、語または音節の頭でためらう傾向がみられます。

  • 眼振:何かを見つめようとしたときに視線が対象物を通過してしまい、眼振が生じます。眼振では、眼球が一方向に急速に動いた後、ゆっくり元の位置に戻るというパターンが繰り返し起こります。

  • 振戦(ふるえ)小脳の損傷が原因で振戦が起こることもあり、例えば物に手を伸ばそうとしたときなど、ある意図的な動作を試みたときの振戦(企図振戦)や、腕や脚を伸ばして一定の姿勢を保持しようとしたときの振戦(姿勢時振戦)がみられます。

  • 体幹の運動失調:体幹を安定させることができなくなります。症状が非常に重度の場合、真っ直ぐに座っているだけでも左右に揺れ、転倒しないように腕で体を支えなければならないこともあります。また、歩くのが難しくなり、動き回るのに家具や壁で体を支えなければならなくなる場合もあります。

筋肉の緊張が低下することもあります。

フリードライヒ運動失調症

通常、この病気の遺伝子は劣性遺伝します。それはつまり、この病気を発症するには、原因になる異常遺伝子を両親からそれぞれ1つずつ受け継ぐ必要があるということです。

フリードライヒ運動失調症は進行性の病気で、5~15歳の間に歩行が不安定になります。その後、腕の協調運動が難しくなり、話し方が不明瞭になって発言を聞き取りにくくなります。

この病気の小児の多くは、生まれつき内反足、脊柱の弯曲(脊柱側弯症)、またはその両方があります。

フリードライヒ運動失調症の患者は、振動を感じることができず、自分の腕や脚がどこにあるのかが分からず(位置覚の消失)、反射もみられません。精神機能が低下することもあります。振戦は、あるとしてもわずかです。

しばしば心臓に異常が発生し、徐々に悪化することがあります。

フリードライヒ運動失調症の患者は、20代後半までに車いすでの生活を余儀なくされることもあります。中年期までに亡くなることが多く、多くの場合、死因は不整脈または心不全です。

脊髄小脳失調症(SCA)

この病気の遺伝子は優性遺伝します。つまり、両親のどちらかから異常な遺伝子を1つ受け継ぐだけで、この病気を発症するということです。この病気には様々な種類(病型)があります。脊髄小脳失調症3型(以前はマシャド-ジョセフ病と呼ばれていました)は、世界的に最も多くみられる病型と考えられています。これらの病気はどれも進行性の変性疾患で、しばしば死に至ります。効果的な治療はありません。

脊髄小脳失調症の症状は病型によって異なりますが、協調運動障害のほか、たいていの場合、感覚の異常(例えば、痛覚、触覚、振動覚が低下しているまたはまったくない)、筋力低下、レストレスレッグス症候群がみられます。平衡感覚、発話、眼球運動にも異常が現れます。一般的に協調運動障害しかみられない病型もあります。

脊髄小脳失調症は、企図振戦(意図的な動作をきっかけに起こる振戦)の一般的な原因です。パーキンソン病に似た症状(振戦や筋強剛)がみられることもあります。

マシャド-ジョセフ病の患者の中には、協調運動障害と振戦に加えて他の症状がみられる人もいます。例えば、眼球運動に障害が起きたり、筋肉や舌が勝手にぴくついたり、眼球が突き出たりすることがありします。

長く続く(持続性の)、痛みを伴う不随意な筋収縮(ジストニア)が生じることもあります。

診断

  • 医師による評価

  • 通常はMRI検査

  • 遺伝子検査

協調運動障害の診断は症状に基づいて下されます。医師は、近親者に似た症状のある人がいないか(家族歴)と、症状がどのような状況で起こるかについても質問します。

通常は脳のMRI検査を行います。

協調運動障害の家族歴が考えられる場合には、遺伝子検査が行われることが多くなっています。

治療

  • 可能であれば、原因の治療

  • 理学療法と作業療法

可能であれば、原因を取り除くか、治療します。例えば、協調運動障害の原因が飲酒である場合は、飲酒をやめます。高用量の薬剤(フェニトインなど)が原因の場合は、用量を減らします。甲状腺機能低下症やビタミンE欠乏症などの基礎疾患があれば治療します。脳腫瘍がある場合は、手術で症状が軽減することがあります。

遺伝性の協調運動障害に対する根治的な治療法はありません。このような場合の治療では、症状の緩和に重点が置かれます。

理学療法士の指導を受け、バランス、姿勢、協調運動の改善に役立つ運動を習得することもできます。このような運動を行うことにより、よりまともな歩き方ができるようになり、より自立した生活を送れるようになります。作業療法士が、歩行や食事など日常生活の行為を補助する器具を勧めることもあります。言語療法も役立つ場合があります。

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