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脳卒中の概要

執筆者:

Elias A. Giraldo

, MD, MS, California University of Science and Medicine School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 2月
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脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。

  • 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。

  • 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間以内に解消します。

  • 症状は突然起こり、筋力低下、麻痺、体の片側の感覚異常または感覚消失、発話困難、錯乱、視覚障害、めまい、バランス障害と協調運動障害などがみられるほか、突然重度の頭痛を生じるタイプのものもあります。

  • 診断は主に症状に基づいて下されますが、画像検査と血液検査も行われます。

  • 脳卒中後どの程度回復するかは、損傷の場所と程度、患者の年齢、他の病気の有無など多くの要因によって変わります。

  • 高血圧、コレステロール高値、高血糖のコントロールと禁煙は、脳卒中の予防に役立ちます。

  • 治療では、血栓をできにくくする薬や血栓を分解する薬が使用されるほか、ときに手術や血管形成術が行われることもあります。

脳卒中は、脳自体と脳に血液を供給する血管の病気であることから、脳血管疾患とも呼ばれています。

脳への血液供給

血液は以下の2対の太い動脈を通って脳に送られます。

  • 内頸動脈:心臓から出た血液を首の前側に沿って運びます。

  • 椎骨動脈:心臓から出た血液を首の後面に沿って運びます。

左右の椎骨動脈は頭蓋内で合流して、後頭部で脳底動脈となります。内頸動脈と脳底動脈は、大脳動脈を含む数本の動脈に枝分かれします。動脈の枝のいくつかはつながって輪(ウィリス動脈輪)になっていて、椎骨動脈と内頸動脈はこのウィリス動脈輪でつながっています。ちょうど環状道路から分岐する道路のように、ウィリス動脈輪からは複数の動脈が枝分かれしていて、これらの枝を介して脳全体に血液が供給されています。

脳に血液を送っている太い動脈が詰まっても、症状がまったく現れないか、軽い脳卒中しか起こらない人もいます。しかし、同じような閉塞によって大きな虚血性脳卒中が起こる人もいます。これはなぜでしょうか。その理由の1つは、側副動脈にあります。側副動脈は動脈の間を走って、接続路を増やしています。側副動脈には、ウィリス動脈輪や、そこから枝分かれしている動脈間の接続路などがあります。生まれつき側副動脈が太い人もいます。すると、1本の動脈が詰まっても、側副動脈によって血流が保たれるため、脳卒中が起こらないことがあります。一方、生まれつき側副動脈が細い人もいます。細い側副動脈は障害を受けた領域に血液を十分に送ることができないため、脳卒中が起こります。

体には、新しい動脈を作って脳卒中から自分を守る働きもあります。閉塞がゆっくり生じている場合は(動脈硬化症のときなど)、脳の障害領域への血液供給が保たれるように新しい血管が成長するため、脳卒中が起こらないこともあります。脳卒中が起こった場合も、新しい動脈ができて次の脳卒中が予防されることがあります(ただし、すでに起こった損傷を元に戻すことはできません)。

脳への血液供給

世界的には、脳卒中は2番目に多い死因となっています。米国では、脳卒中は死因の第5位で、成人においては神経損傷による身体障害をもたらす病気の第1位です。米国では毎年約79万5千人が脳卒中になり、約13万人が脳卒中で亡くなっています。

脳卒中は若い成人より高齢者ではるかに多くみられますが、これは通常、脳卒中につながる病気が時間の経過とともに進行するためです。脳卒中の3分の2以上は、65歳以上の人に発生しています。脳卒中は男性より女性にわずかに多く、脳卒中による死亡者の60%が女性となっていますが、この理由としては、女性の方が発症時の平均年齢が高いという事実が考えられます。

黒人、ヒスパニック系、アメリカンインディアン、アラスカ先住民は、非ヒスパニック系白人やアジア人よりも脳卒中を起こす可能性が高くなっています。脳卒中を初めて起こすリスクは、黒人では白人のほぼ2倍です。脳卒中で死亡する可能性も黒人の方が白人より高くなっています。

脳卒中の種類

脳卒中には以下の2種類があります。

米国では脳卒中の約80%が虚血性で、これは通常、動脈が血のかたまり(血栓)で詰まることによって起こります。動脈が詰まると、脳細胞に流れる血液が減り、したがって酸素と糖分(ブドウ糖)が十分に届かなくなります。それによってどのような損傷が起こるかは、脳細胞の血液不足がどのくらい長く続いたかによって異なります。ほんの短時間であれば、脳細胞はストレスを受けるものの、回復するでしょう。酸素不足が長く続くと、脳細胞が死んでしまい、一部の機能が(ときに永久に)失われることもあります。血流が途絶えてから脳細胞が死ぬまでの時間は様々です。脳には、血流が数分途絶えただけで脳細胞が死んでしまう領域もあれば、30分以上血流が途絶えても影響を受けない領域もあります。場合によっては、死んだ脳細胞が領域が担っていた機能を、脳の別の領域が担えるようになることがあります。

一過性脳虚血発作(TIA)は、ミニ脳卒中とも呼ばれ、虚血性脳卒中が起こりそうな状態であることを警告する初期徴候です。一過性脳虚血発作の原因は、脳の一部への血液供給が短時間だけ遮断されることです。すぐに血流が回復するため、脳卒中とは異なり、脳組織が死ぬわけではなく、脳機能は速やかに回復します。

脳卒中の残りの20%は出血性で、これは、脳の内部や周囲への出血が原因で起こります。出血性脳卒中では、血管が破裂して血液が正常に流れなくなり、血液が脳組織の内部や周囲に漏れていきます。血液が脳組織に直接接触すると組織が炎症を起こし、やがて脳に瘢痕組織ができることがあり、これがときにけいれん発作の原因になります。

脳卒中の危険因子

脳卒中の危険因子の中には、例えば脳卒中のリスクを高める病気を治療するといった対策によって、ある程度のコントロールや是正が可能なものがあります。

いずれのタイプの脳卒中でも、重要かつ是正可能な危険因子は以下の通りです。

  • インスリン抵抗性(インスリンに対して十分な反応がみられない状態のことで、2型糖尿病でみられる)

  • 肥満(特に腹部周りに過剰に脂肪がある場合)

  • 過度の飲酒

  • 運動不足

  • 不健康な食事(飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、カロリーの高い食事など)

  • 抑うつやその他の精神的ストレス

  • 心臓内で形成された剥がれた血栓が血管内を移動して塞栓になるリスクが高まる心疾患(心臓発作心房細動と呼ばれる不整脈など)

  • 感染性心内膜炎(心臓の内側を覆っている膜の感染症で、通常は心臓弁にも感染が広がる)

  • 血管の炎症(血管炎

これらの要因の多くは、虚血性脳卒中の一般的な原因である動脈硬化の危険因子でもあります。動脈硬化とは、動脈の壁に形成される斑状の脂肪組織によって動脈が狭くなったり詰まったりする異常です。

血液の凝固が過剰に起こる凝固亢進状態は虚血性脳卒中の危険因子であり、出血を起きやすくする出血性疾患は出血性脳卒中のリスクを高めます。

高血圧は出血性脳卒中の危険因子として特に重要です。

出血性脳卒中の是正可能な危険因子としては、以下のものがあります。

  • 抗凝固薬(血液の凝固を妨げる薬剤)の使用

  • 脳の動脈の膨らみ(脳動脈瘤

  • 頭蓋内の動脈と静脈の異常な接続(動静脈奇形)

脳卒中の発生率は、ここ数十年で低下しています。これは主に、人々が高血圧と高コレステロール血症をコントロールすることの重要性を認識し、禁煙するようになったためです。これらの危険因子をコントロールすれば、動脈硬化のリスクが低下します。

是正できない危険因子としては、以下のものがあります。

  • 過去に脳卒中を起こしたことがある

  • 高齢である

  • 近親者に脳卒中を起こした人がいる

症状

脳卒中や一過性脳虚血発作の症状は突然に起こります。現れる症状は、血管の閉塞または出血が脳のどこで起こったかによって異なります( 脳の特定の領域が損傷すると...)。脳の各領域は、それぞれ固有の動脈から血液供給を受けています。例えば、左脚の筋肉の運動を支配している脳領域への動脈が詰まると、左脚に筋力低下や麻痺が起こります。右腕の触覚を受けもっている脳領域が侵されると、右腕の感覚が失われます。

脳卒中で体の片側だけに症状が現れる理由

脳卒中では通常、脳の片側だけに損傷が起こります。脳から出る神経は途中で交差して体の反対側の部位とつながっているため、症状は脳組織の損傷とは反対側の部位に現れます。

脳卒中で体の片側だけに症状が現れる理由

脳卒中の警戒すべき症状

脳卒中の早期治療は機能と感覚の低下を食い止めるのに役立つため、脳卒中の初期症状については誰もが知っておくべきです。

以下の症状が1つでもみられる場合は、たとえ症状がすぐに消えた場合も、直ちに医師の診察を受ける必要があります。

  • 突然、体の左右どちらか一方(顔面の半分、片方の腕または脚、体の片側全体など)に筋力低下または麻痺が生じる

  • 突然、体の左右どちらか一方で感覚の消失または異常がみられる

  • 突然、発話が困難になる(言葉を見つけるのが困難になる、ときに話し方が不明瞭になるなど)

  • 突然、錯乱が起こり、人の話を理解するのが困難になる

  • 突然、かすみ目または視力の障害が(特に片方の眼に)生じる

  • 突然、めまいが起こるか、平衡感覚と協調運動が失われ、転倒する

出血性脳卒中でも虚血性脳卒中でも、典型的にはこれらのうち1つまたは複数の症状がみられます。一過性脳虚血発作の症状もこれと同じですが、通常は数分以内に消失し、1時間以上続くことはめったにありません。

出血性脳卒中の症状には以下のものがあります。

  • 突然起きた重度の頭痛

  • 吐き気と嘔吐

  • 一時的または持続的な意識消失

  • 極度の高血圧

その他の症状

その他の初期症状としては、記憶、思考、注意力、または学習能力の障害などがあります。体の一部を認識できなくなり、そのような脳卒中の影響に気づかない場合もあります。その他、視野の辺縁部が欠ける、聴覚が部分的に失われる、嚥下困難、浮動性めまい、回転性めまいなどが生じることもあります。

脳卒中から数日以上経過してから、尿失禁や便失禁をきたすこともあります。失禁は生涯残る可能性があります。

後から現れる症状として、ほかに筋肉の不随意なこわばりとけい縮(けい性)、感情の制御不能などがあります。脳卒中が起こったことで抑うつ状態に陥る人もいます。

脳卒中の影響

ほとんどの虚血性脳卒中では、機能喪失が最も大きいのは発症直後です。しかし、約15~20%では脳卒中が進行し、1~2日後に機能喪失が最大になります。このタイプの脳卒中は、進行性の脳卒中と呼ばれます。出血性脳卒中の場合は、数分から数時間かけて進行性に機能が失われていきます。

通常は、数日から数カ月かけて一部の機能が回復してきます。これは、一部の脳細胞が壊死しても、他の脳細胞はストレスを受けただけで、回復できるためです。また、脳卒中で損傷を受けた領域が受けもっていた機能を、脳の別の部分が代行できるようになる場合があります。脳がもつこの特性を可塑性(かそせい)といいます。しかし、麻痺などの脳卒中の初期にみられる影響が生涯残る場合もあります。筋肉が使われずにいると、けい縮とこわばりが永続的に残り、痛みを伴う筋肉のけいれんが起こることもあります。歩く、飲み込む、言葉をはっきり発音する、日常活動を行う、などの困難が続くことがあります。記憶、思考、注意力、学習能力、感情の制御などに、様々な問題が残ることもあります。抑うつ、聴覚障害、視覚障害、回転性めまいなどが続くこともあります。排便障害または排尿障害は生涯残る可能性があります。

脳卒中の合併症

重度の脳卒中では、脳が腫れて、頭蓋内の圧力が上昇します。この圧力によって頭蓋内で脳が押し下げられ、脳に直接的または間接的な損傷が生じる可能性があります。脳の各部分を仕切っている硬い構造物の隙間から脳が押し出されると、脳ヘルニアという重篤な状態に陥ります( ヘルニア:脳の圧迫)。圧力の上昇は、脳幹(大脳と脊髄をつなぐ部位)の意識と呼吸を制御している領域にも影響を及ぼします。ヘルニアが起きると、意識喪失、昏睡、不規則な呼吸などがみられ、死に至ることもあります。

脳卒中によって起こる症状が別の問題をもたらす場合もあります。

飲み込むこと(嚥下)が困難になると、口に入った食べものや飲みもの、唾液が気管に入ってしまうことがあります。これは誤嚥と呼ばれ、肺炎の原因になることがあり、誤嚥性肺炎はときに重篤化します。飲み込むのが困難になると食べるのにも支障をきたし、低栄養や脱水をきたす可能性があります。

呼吸困難がみられることもあります。

長い間動けないでいると、床ずれができる、筋肉が減少する、筋肉が恒久的に短縮する(拘縮)、脚と鼠径部の深部静脈に血栓ができる(深部静脈血栓症)、などの問題が生じます。血栓は、剥がれて、血流に乗って移動し、肺の動脈をふさぐことがあります(肺塞栓症)。

尿失禁があると、尿路感染症が起こる可能性が高くなります。

診断

  • 医師による評価

  • CTまたはMRI検査

  • 血糖値の測定を含む臨床検査

診断は症状から疑われますが、以下のことを見極めるために検査を行う必要があります。

  • 脳卒中が起こったかどうか

  • 虚血性脳卒中か、それとも出血性脳卒中か

  • 直ちに治療が必要かどうか

  • 脳卒中の再発を予防する最善の方法は何か

  • リハビリテーションが必要かどうか、必要であれば何を行うべきか

低血糖では、ときに脳卒中と似た症状(体の片側の麻痺など)が現れることがあるため、医師は血糖値をすぐに測定します。

以下の目的で、脳のCT検査またはMRI検査が行われます。

  • 脳卒中が起きたかどうかを判定する

  • 虚血性脳卒中か出血性脳卒中かを判定する

  • 機械的に除去できる血栓で塞がれた太い動脈を特定する

  • 頭蓋骨内部の圧力(頭蓋内圧)上昇の徴候を確認する

これらの検査では、一部のくも膜下出血を除いて、ほとんどの出血性脳卒中を検出できます。虚血性脳卒中についても多くを検出できますが、症状が現れてから数時間経たないと検出できない場合があります。

その他の画像検査としては、MRアンギオグラフィー検査CT血管造影検査、カテーテル(細く柔軟なチューブ)を末梢の動脈から首の動脈に通して行う脳血管造影検査などがあります。CT血管造影検査の方が体への負担が小さいことから、脳血管造影検査は今ではあまり行われなくなっています。

診断の確定に必要であれば、拡散強調MRIと呼ばれる特殊なMRI検査により、重度の損傷が起きて機能が失われた脳組織を描出することもできます。拡散強調MRI検査は、しばしば一過性脳虚血発作と虚血性脳卒中を区別するのに役立ちます。ただし、拡散強調MRI検査はどの医療機関でも行えるわけではありません。

医師は脳卒中を起こした人の心臓、血管、血液を調べ、感染症、血液中の酸素レベルの低下、脱水など、脳卒中の原因になる病態がないかを確認します。その他必要に応じた検査が行われます。脳卒中が疑われる場合、直ちに嚥下能力が評価されます。ときに、バリウムなどの造影剤(X線画像に写る物質)を投与してからX線撮影が行われます。脳卒中の種類によっては、原因を特定するためさらなる検査が行われます。

医師は多くの場合、標準化された一連の基準を用いて脳卒中の重症度や回復状況を判断します。この尺度を用いて、意識レベル、質問に答える能力、簡単な指示に従う能力、視力、四肢の機能、発話能力などが評価されます。

予後(経過の見通し)

脳卒中に対する治療の開始が早いほど、脳の損傷は軽度にとどまり、回復する可能性が高くなります。

ある種の要因がある場合は、予後が悪くなる可能性が高くなります。脳卒中により意識が障害された場合や、言語機能を担う左脳が広範囲に損傷を受けた場合は、特に深刻です。

通常は、脳卒中を起こした後の数日間に早い回復がみられるほど、最終的な回復も良好です。回復は、脳卒中が起こってから一般に6カ月間続きます。虚血性脳卒中では、成人で12カ月後も障害が残っている場合、その障害は一生残る可能性が高いのですが、小児では何カ月にもわたって回復がゆっくり続きます。高齢者では、若い人ほどには回復が見込めません。認知症など、すでに他の重篤な病気がある場合は、回復がさらに限られます。

出血性脳卒中では、出血が大規模でなく、脳圧もそれほど上昇しなかったのであれば、同様の症状がみられた虚血性脳卒中と比べて良好な経過が期待できます。出血性脳卒中の血液は、虚血性脳卒中による酸素不足ほどには脳組織を損傷しません。

脳卒中後には、しばしば抑うつがみられ、回復を妨げることがあります。しかし、抑うつは治療できます。そのため、脳卒中を起こした人は、異常な悲しみを覚えたり、以前は楽しめていた活動に興味や喜びを覚えなくなった場合には、そのことを主治医に伝えるべきです。そうすれば、医師が抑うつがあるかどうかを判定して、あれば治療することができます。

予防

脳卒中は、治療より予防が重要です。最初の脳卒中を予防する上で中心となるのは、重要な危険因子の管理です。脳卒中の既往がある人には、通常、追加の予防策が必要です。

危険因子の管理

高血圧糖尿病をコントロールすべきです。コレステロールの値を測定し、もし高ければ、動脈硬化のリスクを低下させるために、コレステロール値を下げる薬(脂質低下薬)を使用します。

喫煙と、アンフェタミンやコカインの使用をやめ、飲酒は1日2ドリンク以下にします。定期的に運動すること、過体重であれば減量することが、高血圧、糖尿病、コレステロール高値を管理する上で役立ちます。

定期健診を受けておくと、医師は脳卒中の危険因子を特定しやすく、迅速に対処できます。

抗血小板薬

虚血性脳卒中の既往がある人は、抗血小板薬を服用することで、次の虚血性脳卒中のリスクを低下させることができます。抗血小板薬を使用すると、血小板が集まりにくくなり、虚血性脳卒中の一般的な原因である血栓が形成される可能性が低くなります。(血小板は、血液中にある細胞のような微細な粒子で、血管の損傷時に血液がかたまるのを助けます)。通常は、特に効果が高い抗血小板薬の1つであるアスピリンが処方されます。毎日、アスピリンの通常の錠剤を1錠、または低用量の錠剤(通常の錠剤の約4分の1)を1錠、服用します。どちらの用量も、脳卒中を同じくらいよく予防できると考えられています。低用量のアスピリンとジピリダモール(抗血小板薬)を含有する配合剤を服用すると、アスピリンだけを服用するよりわずかに効果が高くなります。

クロピドグレルは別の抗血小板薬であり、アスピリンの副作用に耐えられない場合に処方されることがあります。TIAまたは軽微な脳卒中がある場合、クロピドグレルとアスピリンを併用すると、アスピリンを単独で使用する場合と比べて、さらなる脳卒中のリスクが低下するようですが、その効果は脳卒中後最初の3カ月間だけに限られます。それ以降は、アスピリン単独と比べて、これらを併用することの利点はなくなります。また、クロピドグレルとアスピリンを併用すると、出血のリスクがわずかに高まります。

一部の人は、抗血小板薬や同類の薬剤に対するアレルギーがあり、そのような人はこれらの薬剤を使えません。消化管出血がある人も、抗血小板薬を使用すべきではありません。

抗凝固薬

虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作が心臓から移動してきた血栓に起因するものである場合、血がかたまるのを防ぐために抗凝固薬のワルファリンが使用されます。ワルファリンと抗血小板薬を併用すると、出血のリスクが著しく高まるため、脳卒中の予防のためにこれらの薬剤を併用することはほとんどありません。

ダビガトラン、アピキサバン、リバーロキサバンは、ときにワルファリンの代わりに使用される新しい抗凝固薬です。

治療

  • 必要に応じて、呼吸などの生命維持に必要な機能を補助する対策

  • 様々な薬剤、血管造影、または手術

  • リハビリテーション

  • 脳卒中後に生じる問題の治療

脳卒中の症状が現れた人は、直ちに医師の診察を受けるべきです。治療の開始が早いほど、回復する可能性が高くなります。そのため、救急隊や病院の関係者は、脳卒中を起こした人を発症後できるだけ早く治療できるようにするための方法を常に開発し続けています。

医師は、心拍数、呼吸、体温、血圧など、生命維持に必要な機能が十分であるかを確認します。十分でない場合は、直ちに対処します。昏睡または無反応状態である場合は(脳ヘルニアなど)、呼吸を補助するために人工呼吸器(口または鼻から呼吸用のチューブを挿入します)が必要になることがあります。症状から頭蓋内圧が高いと疑われる場合は、脳の腫れを減らすために薬剤を投与します。圧力を定期的に測定するため脳内に測定器を留置することもあります。

最初の数時間および数日間に行われるその他の処置は、脳卒中の種類によって異なります。

虚血性脳卒中の治療としては以下のものがあります。

  • 薬剤(抗血小板薬、抗凝固薬、血栓を溶かす薬、高血圧の治療薬)

  • カテーテル(細く柔軟なチューブ)を動脈(通常は鼠径部の動脈)に挿し込み、大動脈を経由して首の動脈まで到達させる

  • 血栓を溶かす薬剤をカテーテルを介して注入する(動脈内血栓溶解療法

  • カテーテルに器具を通して血栓を除去する(機械的血栓除去術

  • 首の動脈の血流を妨げる脂肪の沈着物を除去する手術(頸動脈内膜剥離術

出血性脳卒中の治療としては以下のものがあります。

  • 必要であれば、血液の凝固を助ける治療(ビタミンKの投与や新鮮凍結血漿または血小板の輸血など)

  • 血圧が非常に高い場合、血圧をコントロールするための薬剤

  • ときに、広範囲にたまった血液を除去する手術、または上昇した頭蓋内の圧力を下げるためにシャントを留置する手術

  • カテーテルを介して小さなコイルまたはステントを挿入して、破裂した脳動脈瘤(出血性脳卒中の一種であるくも膜下出血の最も一般的な原因)を治療する

その後、継続的に行われる治療では以下の点に重点が置かれます。

  • 脳卒中の再発を予防する

  • 脳卒中に起因する問題を治療して予防する

  • 機能を可能な限り取り戻せるように支援する(リハビリテーション)

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脳卒中後に生じる問題の予防と治療

障害

対策

血栓を予防するため、ヘパリンまたは低分子ヘパリンなどの抗凝固薬を投与する。血液循環を改善するため、弾性ストッキングまたはエアポンプ式のストッキングを脚に着用する。抗凝固薬とストッキングを併用することもある。

脚を動かすことも血流の改善に役立つ。可能であれば、歩行か、脚を動かす簡単な動作(足首の曲げ伸ばしなど)が勧められる。脚を動かすことができない場合は、理学療法士などの医療スタッフが脚を動かす(他動運動)。

看護師などの医療スタッフや介護者は、寝たきりの患者や車いすの患者の体位を頻繁に変える。床ずれが生じやすい部位を毎日確認する。

筋肉の恒久的な短縮(拘縮)による可動域の制限

四肢を動かすことにより、拘縮を予防できる。可能であれば、定期的に動いて姿勢を変えることが勧められる。あるいは、理学療法士などの医療スタッフが患者の四肢を動かし、適切な安静位置にあることを確認する。四肢を適切な位置に保つため副子を使用することもある。

嚥下困難の状態を評価する。嚥下困難がある場合は、水分と栄養を十分に摂取できるよう注意を払う。単純なこつ(飲み込むときの頭の位置や、呼吸の仕方など)を覚えることで、安全に飲み込めるようになる場合がある。飲み込む能力が回復するまでは、経管栄養が必要なこともある。腹部を小さく切開し、胃または小腸の中に栄養チューブを直接挿入することもある。

喫煙している人には禁煙が勧められる。

また、療法士が深呼吸の仕方や気道内の異物を排出させるためのせきの方法を指導する。手持ち式の呼吸訓練器具を使用することもある。

必要であれば、フェイスマスクまたは鼻もしくは口から入れたチューブで酸素投与を行う。

排尿の問題の徴候がないかを医療従事者が定期的に確認します。

尿道カテーテルは尿路感染症の原因になる可能性があるため、可能であれば使用しない。尿道カテーテルが必要な場合も、できるだけ早く使用をやめる。

落胆と抑うつ

医師は、脳卒中の影響について、患者および家族などの介護者と話し合う。話し合いの内容には、どのような回復が期待できるか、機能の制限にどのように対処するか、なども含める。患者と介護者が、脳卒中の支援団体と連絡を取り合えるようにする。うつ病の治療のため、正式なカウンセリングまたは薬剤が必要になることがある。

リハビリテーション

脳卒中後の集中的なリハビリテーションは、障害を克服するのに役立ちます。脳では、損傷を受けていない領域が、損傷を受けた領域がそれまで担っていた機能を代行できるようになることがあり、リハビリテーションの運動と訓練はこの働きを促します。リハビリテーションでは、脳卒中の影響を受けなかった筋肉を使って、失われた機能を補う方法も習得します。

リハビリテーションの目標は以下の通りです。

  • 日常生活を送る上での正常な機能をできるだけ回復する

  • 身体の状態を維持および改善し、歩行を改善する

  • 以前の技能を再習得し、必要に応じて新しい技能を習得する

リハビリテーションがどのくらい成功するかは、脳の損傷範囲と全身の健康状態、脳卒中以前の機能的能力と認識力、社会的状況、学習能力、本人の姿勢によって異なります。忍耐と根気が重要です。リハビリテーションプログラムに積極的に参加することは、抑うつの予防や軽減にも役立ちます。

リハビリテーションは、身体的に可能になったらすぐに(通常は入院後1~2日以内に)開始されます。障害のある腕や脚を動かすことは、リハビリテーションの重要な要素です。障害のある腕や脚を定期的に動かすことで、筋肉が短縮し張りつめるのを防ぐのに役立ちます。また、筋肉の緊張と筋力の維持にも役立ちます。患者が自分で筋肉を動かすことができない場合は、理学療法士がその腕や脚を動かします。ベッドに入る、向きを変える、寝返りを打つ、起き上がるなどの動作も奨励されます。

脳卒中による問題の中には、例えば歩行を補助したり(歩行訓練)、協調運動やバランスを改善したり、けい縮(不随意に筋肉が張りつめた状態になる)を減らしたり、視覚や発話の問題を補ったりするために特別な治療法が必要なものがあります。

退院後のリハビリテーションは病院の外来、介護施設、リハビリテーション専門施設、自宅などで継続します。作業療法士と理学療法士は、障害のある人が無理なく生活を送り、自宅に安全な環境を整えるための、助言を行います。

家族や友人は脳卒中による影響を常に心に留めておくことで、患者をよりよく理解し支援することができます。その結果、リハビリテーションにもいっそう貢献できるでしょう。各種支援団体は、脳卒中患者や介護者に精神的な励ましと実践的な助言を提供しています。

終末期の問題

場合によっては、治療を行っても生活の質が大きく低下したままになることが予測されます。このような場合は、痛みを管理し、不快感を軽減し、水分と栄養を補給することがケアの中心になります。

脳卒中の再発と進行は予測できないため、脳卒中を起こした人はできるだけ早く、将来の治療に関する事前指示書を作成しておくべきです。事前指示書は、本人が意思決定できない状態に陥った場合に、その人がどのような治療を望んでいるかを医師が判断する上で役立ちます。

加齢に関連する注意点:脳卒中

高齢者では、脳卒中の後に、床ずれ、肺炎、動きを制限する筋肉の恒久的な短縮(拘縮)、抑うつなどの問題が生じやすくなります。高齢になると、脳卒中の治療が制限されるような病気をもっている可能性が高くなります。例えば、血圧が非常に高いか消化管出血があるなどの場合は、血栓のリスクを低下させるために抗凝固薬を使用できません。頸動脈内膜剥離術(頸動脈に沈着した脂肪を除去する手術)など、治療法によっては、高齢者で合併症が起こりやすいものもあります。とはいえ、治療法の決定は、年齢自体よりその人の健康状態に基づいて行われるべきです。

高齢者に多い病気の中には、脳卒中後の回復を妨げるようなものもあります。以下はその例です。

  • 認知症の人は、リハビリテーションのために何をしなければならないかを理解できない場合があります。

  • 心不全などの心疾患がある人は、リハビリテーションの運動中に脳卒中が再発するリスクまたは心臓発作が起こるリスクがあります。

以下に該当する場合は、高齢者でも良好な回復が得られる可能性が高まります。

  • 支援する家族や介護者がいる

  • 自立を促す環境で生活している(例えば、1階に住んでいる、近所に店があるなど)

  • リハビリテーションの費用をまかなえる資金がある

脳卒中後の回復には、医学的要因、社会的要因、金銭的要因、生活習慣など、多数の要因が影響を及ぼします。したがって高齢者のリハビリテーションと介護は、患者毎に個別に計画し、様々な医療従事者(医師、理学療法士、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなど)から成るチームによって管理されるべきです。医療チームのメンバーが、脳卒中患者とその介護者の日常生活に役立つ資源や対策に関する情報を提供することもあります。

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