ウェルニッケ-コルサコフ症候群は、アルコール乱用や栄養不良のある人に起こり、原因は通常、 チアミン(ビタミンB1)欠乏症 チアミン欠乏症 チアミン欠乏症(脚気やその他の問題を引き起こす)は、発展途上国で食事が主に白米や高度に精製された炭水化物から成る人や、アルコール依存症患者に最も多くみられます。 主として白小麦粉や白砂糖、その他の高度に精製された炭水化物から成る食事は、チアミン欠乏症の原因となることがあります。 最初は疲労や易怒性などの漠然とした症状がみられますが、重度の欠乏症(脚気)では神経、筋肉、心臓、脳に影響が及ぶことがあります。... さらに読む です。まれに、 頭部外傷 頭部外傷の概要 頭部外傷の一般的な原因には、転倒や転落、自動車事故、暴行、スポーツやレクリエーション活動中の事故などがあります。 軽症の頭部外傷では頭痛やめまいが起こることがあります。 重症の頭部外傷では、意識を失ったり、脳機能障害の症状が現れたりすることがあります。 重症の頭部外傷かどうかを調べるには、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。... さらに読む (外傷性脳損傷)が原因でこの症候群が起こることがあります。
症状
ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症は、 チアミン欠乏により錯乱、眼の障害、平衡感覚の喪失を引き起こす脳疾患です。 ウェルニッケ脳症は、ビタミンB群の1つである チアミンの重度の欠乏が原因で発症します。体内にチアミンが少量しか蓄えられていない場合、炭水化物の摂取が誘因となることがあります。 重度の アルコール使用障害の患者は、長期にわたる過剰なアルコール摂取により、消化管からのチアミンの吸収や、肝臓のチアミンの貯蓄が妨げられるため、しばしばウェルニッケ脳症... さらに読む は、錯乱に加えて、平衡感覚の消失、眠気、よろめきやすい傾向、眼球運動の異常を引き起こします。
コルサコフ症候群 コルサコフ精神病 コルサコフ精神病は、 ウェルニッケ脳症の合併症であり、最近の出来事に関する記憶障害、錯乱、行動変化が生じます。 ( 薬物使用と薬物乱用も参照のこと。) コルサコフ精神病は、 ウェルニッケ脳症(長期間にわたり大量の アルコールを摂取する人に生じうる一種のビタミン欠乏症によって引き起こされる脳疾患)を治療しないでいる人の80%に発生します。先に典型的なウェルニッケ脳症の発作が生じるかどうかにかかわらず、... さらに読む では、はじめに最近の出来事に関する重度の記憶障害が発生することがあります。より遠い過去の記憶は、それほど損なわれないようです。したがって、コルサコフ症候群の人は、たとえ数日前、数カ月前、数年前、場合によっては数分前の出来事も覚えていられなくても、社会的な付き合いや首尾一貫した会話をこなすことができます。患者は覚えていないことを認めようとせず、話を作ろうとする(作話)傾向があります。患者は最近したことを覚えられないため、例えば、好きな雑誌を何度読んでも飽きることがありません。
診断
医師による評価
ウェルニッケ-コルサコフ症候群は、特徴的な症状や原因になりうる病気(低栄養またはチアミン欠乏症など)がみられる場合に疑われ、特にアルコール乱用がある場合に強く疑われます。
通常は、血糖値や電解質を測定する血液検査や血算、肝機能検査、画像検査などの検査を行うことで、他の原因の可能性を否定します。ときに血液中のチアミンの濃度を測定することもあります。
治療
チアミンの静脈内投与と輸液
治療としては、チアミンと水分(輸液)を静脈内に投与します。このような治療でウェルニッケ脳症を是正できますが、完全な回復は得られないのが通常です。コルサコフ症候群は治りません。
ウェルニッケ脳症は治療を行わないと死に至る可能性がありますが、先進国での死亡例はまれとなっています。