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脊髄の病気の概要

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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本ページのリソース
  • 脊髄の病気の原因には、外傷、感染症、血流の遮断、骨折または腫瘍による圧迫などがあります。

  • 典型的には筋力の低下や麻痺、感覚の異常や消失が起こるほか、排尿や排便の制御が困難になることもあります。

  • 診断は症状と身体診察および画像検査(MRI検査など)の結果に基づいて下されます。

  • 可能であれば、脊髄の病気を引き起こしている病態に対して治療を行います。

  • できるだけ機能を回復させるために、しばしばリハビリテーションが必要になります。

脊髄は、脳と体の各部を結ぶ主要な通信経路です。長く傷つきやすい管状の構造物で、脳の底部から下方へ伸びています。脊髄は、背骨(椎骨)でできた脊椎(脊柱)に守られています。椎骨と椎骨の間には軟骨でできた椎間板があり、衝撃を和らげています。

脊髄の損傷領域とその影響

脊髄を守っている脊椎(脊柱)は、以下の4つの領域に分けられます。

  • 頸椎(Cervical):首

  • 胸椎(Thoracic):胸

  • 腰椎(Lumbar):腰

  • 仙椎(Sacral):骨盤

各領域は頭文字のアルファベット(それぞれC、T、L、S)で表記されます。

脊椎の各領域の椎骨には上から番号が付けられています。例えば頸椎の1番上の椎骨はC1、2番目の椎骨はC2、胸椎の2番目の椎骨はT2、腰椎の4番目の椎骨はL4と呼ばれます。これらの番号は、脊髄の特定の位置(レベル[高さ])を指し示すのにも使われます。

それぞれの神経は、あるレベルで脊髄から出た後、対応する体の部位へ向かいます。そのため神経科医は、筋力低下、麻痺、感覚消失などの機能喪失がどこに起こったかに着目することで、脊髄のどこに損傷が生じたかを特定できます。

脊髄の損傷領域とその影響

脊椎は4つの領域に分けられ、各領域はアルファベット1文字で表されます。

  • 頸椎(C):首

  • 胸椎(T):胸

  • 腰椎(L):腰

  • 仙椎(S):骨盤

脊椎の各領域の椎骨には上から番号が付けられています。この標識(アルファベットと番号)は、脊髄の位置(レベル)を指し示すのに用いられます。

脊髄の長軸方向に沿って31対の脊髄神経が椎骨の間の隙間から出ています。それぞれの脊髄神経は、脊椎の特定の椎骨から、対応する体の部位に伸びています。これに基づき、皮膚表面は、皮膚分節と呼ばれる領域に分けられています。1つの皮膚分節は、1つの脊髄神経根から伸びている感覚神経が支配する領域です。特定の皮膚分節の感覚が失われている場合は、脊髄のどこに損傷があるかを特定できます。

皮膚分節

皮膚の表面は皮膚分節と呼ばれる領域に分けられています。1つの皮膚分節は、1つの脊髄神経根から伸びている感覚神経が支配する領域です。(感覚神経は、触感、痛み、温度、振動などの情報を皮膚から脊髄に伝えます。)

脊髄神経根は対になっていて、各対の1つずつが体の右側と左側に対応します。全部で31対あります。

  • 7個の頸椎に対して8対の感覚神経根があります。

  • 12個の胸椎、5個の腰椎、5個の仙椎のそれぞれに1対の脊髄神経根が対応しています。

  • さらに、脊髄の下端に1対の尾骨神経根があり、これは尾骨周囲の皮膚の狭い範囲を支配しています。

これらそれぞれの神経根に対応する皮膚分節があります。

ある皮膚分節における感覚情報は、感覚神経線維によって対応する椎骨の脊髄神経根に伝えられます。例えば、太もも後ろ側の帯状の領域における皮膚の感覚情報は、感覚神経線維によって第2仙椎(S2)の神経根に伝えられます。

皮膚分節

1つの脊髄神経につき2つの神経根(運動神経根と感覚神経根)があります。唯一の例外は感覚神経根をもたない第1脊髄神経です。

  • 運動神経根:前方に位置する運動神経根は前根とも呼ばれ、脊髄からの信号を筋肉に伝えて筋肉の運動(収縮)を引き起こす神経線維が含まれています。

  • 感覚神経根:後方に位置する感覚神経根は後根とも呼ばれ、体表から伝わる触覚、姿勢、痛み、温度などの感覚情報を脊髄に伝える神経線維が含まれています。

知っていますか?

  • 医師は通常、症状と身体診察の結果に基づいて、脊髄のどこに損傷があるかを特定できます。

  • 脊髄の最下部から出ている神経は、足ではなく肛門に伸びています。

脊髄は腰(L1かL2の辺り)で終わりますが、それより下の脊髄神経根は下に伸びて、ウマの尾に似た神経の束(馬尾— 馬尾症候群とは)を形成しています。

脊髄神経は高度に系統化されています( 脊椎の成り立ち)。脊髄の中心部には、断面が蝶のような形をした灰白質があります。

  • 前側の「羽」(前角)には、脳または脊髄からの信号を運動神経根を経由して筋肉に伝える神経細胞が含まれています。

  • 後ろ側には後角があり、痛みや温度などの感覚情報の信号を、脊髄の外にある神経細胞から感覚神経根を経由して受け取る神経細胞が含まれています。

脊髄の外側は白質と呼ばれ、ここには、神経線維の経路があります。それぞれの経路は特定のタイプの神経信号を伝えていて、脳に信号を伝える経路(上行路)と、脳からの信号を伝える経路(下行路)とがあります。

脊髄伝導路

脊髄神経は、神経根を経由して、脊髄から出る信号と脊髄に入る信号を伝えています。神経根には次の2つがあります。

  • 運動神経根(前根):前方に位置します。脊髄から出た信号はこの神経根を通り、筋肉に信号を伝えて筋肉の運動を引き起こします。

  • 感覚神経根(後根):後方に位置します。体表から伝わる触覚、姿勢、痛み、温度などの感覚情報は、この神経根を通って脊髄に入ります。

脊髄の中央には、蝶のような形をした灰白質があり、ここで脊髄神経から出る信号と、脊髄神経に入る信号が中継されています。蝶の「羽」は角と呼ばれています。

  • 前角:脳や脊髄からの信号を、運動神経根を経由して筋肉に伝える神経細胞があります。

  • 後角:痛みや温度などの感覚情報の信号を、脊髄の外にある神経細胞から感覚神経根を経由して受け取る神経細胞があります。

信号は、脊髄を上行するもの(脳に行く信号)と、下行するもの(脳から来る信号)とがあり、それぞれ別の経路を通ります。様々な経路が、それぞれ異なるタイプの神経信号を伝えています。例えば、次のような経路があります。

  • 外側脊髄視床路:後角で受け取られた痛みや温度に関する信号が、この経路を通って脳に送られます。

  • 後索:腕や脚の位置に関する信号が、この経路を通って脳に送られます。

  • 皮質脊髄路:筋肉を動かすための信号が、この経路を通って脳から前角に伝わり、そこからさらに筋肉に伝わります。

脊髄伝導路
脊髄伝導路

原因

脊髄の病気には、脊髄外部に由来するものもあれば、より頻度は下がりますが、脊髄内部に由来するものもあります。

脊髄の外部

脊髄の外部に由来する病気には以下のものがあります。

脊髄の圧迫は、骨(頸椎症や骨折などの場合)、血腫(血液の貯留)、腫瘍、膿瘍(内部に膿がたまった空洞)、椎間板破裂や椎間板ヘルニアなどによって起こります。

脊髄の内部

脊髄の内部に由来する病気には、髄腔に液がたまる空洞症血液供給の遮断、炎症(急性横断性脊髄炎など)、腫瘍、膿瘍、出血、ビタミンB12または銅の欠乏、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症多発性硬化症梅毒などがあります。

症状

脊髄は系統的に機能しているため、脊髄が損傷を受けると、損傷部位に応じて特有の症状のパターンが現れます。以下のような症状が、様々なパターンで生じます。

  • 筋力低下

  • 感覚の消失(軽い触覚、痛覚、温度覚、振動覚、または腕や脚の位置を知る感覚などがなくなる)

  • 反射の変化

  • 尿失禁

  • 便失禁

  • 勃起障害

  • 発汗の減少

  • 麻痺

  • 背部痛

どの機能が失われたかを特定することにより、脊髄のどの部位(脊髄の前部、後部、側方、中央、または全体など)に損傷があるかを判断できます。症状のある部位(例えば、どの筋肉が麻痺しているか、または、体のどの部位の感覚が失われているか)を特定することにより、脊髄のどの高さで損傷が生じたか(損傷が起こったレベル)を正確に判断できます。

機能は完全に失われることもあれば、部分的に失われることもあります。損傷より上の領域の脊髄によって制御されている機能には影響が出ません。

筋力低下や麻痺が突然起きた場合は、筋肉の緊張(筋緊張)が失われて、だらりと(弛緩)します。筋肉が弛緩した後には、筋緊張がやがて強くなり、筋肉が不随意に収縮する傾向があります(この状態は「けい縮」あるいは「けい性」と呼ばれています)。

脊髄をゆっくり損傷する病気(頸椎症や遺伝性けい性対麻痺など)がある場合は、筋緊張が亢進し、筋肉のけい縮を伴う麻痺(けい性麻痺)が起こることがあります。

けい縮が起こるのは、脳からの信号が損傷部位を通過できず、反射を制御できないためです。その結果、数日から数週間にわたって、反射がさらに顕著になります。すると、反射によって制御されている筋肉は緊張して硬くなり、ときに不随意にピクッと縮むことがあります。

診断

  • 身体診察

  • MRI検査またはCT脊髄造影検査

医師は通常、症状の特徴的なパターンから脊髄の病気を認識することができます。診断の手がかりを得るため、必ず身体診察が行われます。脊髄が損傷されていれば、身体診察は損傷の位置を判定する上でも役に立ちます。診断を確定し原因を突き止めるためには、画像検査が行われます。

脊髄の病気に対する最も正確な画像検査はMRI検査です。MRI検査では、脊髄のほか、脊髄の周囲の軟部組織の異常(膿瘍、血腫、腫瘍、椎間板の破裂など)と骨の中の異常(腫瘍、骨折、頸椎症など)も描出されます。MRI検査が使えない場合は、CT脊髄造影検査が用いられます。CT脊髄造影検査では、X線を通さない造影剤を脊髄の周りの空間に注入してからCTを撮影します。

脊椎に骨折や腫瘍などの問題がないか調べるためにX線撮影を行う場合もあります。

知っていますか?

  • 感覚の消失、腕や脚の筋力低下(片側のみか両側かを問いません)、失禁などが急に起こった場合は、直ちに救急外来を受診するべきです。

治療

  • 可能であれば、原因の治療

  • 合併症の予防

  • 理学療法と作業療法

脊髄機能障害の症状(麻痺や感覚の消失など)が突然起こった場合は、直ちに救急外来を受診するべきです。すぐに受診することで、恒久的な神経損傷や麻痺が起こるのを防げる場合があります。可能であれば原因の治療または是正が行われます。しかし、このような処置が行えなかったり奏功しなかったりすることも少なくありません。

脊髄の病気により麻痺が生じた人や、寝たきり状態になった人は、次のような合併症を予防するために高度な介護を必要とします。

  • 床ずれ看護師が毎日皮膚を確認し、皮膚を乾燥した清潔な状態に保ち、頻繁に体の向きを変えます。必要であれば、ストライカーフレームと呼ばれる特殊なベッドが用いられます。このベッドは、圧力のかかる部位が前後左右に移るように回転します。

  • 排尿障害:自力で動けずトイレが使えない場合は尿道カテーテルが必要です。尿路感染症のリスクを減らすために、カテーテルの挿入は無菌操作で行い、抗菌薬の軟膏または液剤を毎日塗布します。

  • 肺炎:肺炎のリスクを減らすために、理学療法士や看護師から深呼吸の方法を習います。肺に蓄積する分泌物を排出しやすいように体の角度を調節したり(体位ドレナージ)、分泌物を吸い出したりするなどの介助も行われます。

  • 血栓:ヘパリンや低分子ヘパリンなどの抗凝固薬を注射で投与します。抗凝固薬を使用できない場合(出血性疾患や胃潰瘍がある場合など)は、下大静脈(血液を腹部から心臓に運ぶ太い静脈)の中に血栓フィルター(傘の骨組みのような形状をしたフィルター)を留置します( 下大静脈フィルターによる肺塞栓症の予防)。このフィルターは、脚の静脈から剥がれてきた血栓(血液のかたまり)を心臓にたどり着く前に捕まえます。

体の機能を広範囲に失うことは、痛烈な打撃となって、抑うつや自尊心の喪失をもたらすことがあります。このような場合、正式なカウンセリングは非常に有用です。何が起こったのか、そして近い将来および遠い将来に何が起こりうるかを正確に知ることは、機能の喪失と向き合いリハビリテーションに備える助けとなります。

リハビリテーション:リハビリテーションはできるだけ多くの機能を回復するのに役立ちます。最善の方法は、看護師、理学療法士作業療法士、ソーシャルワーカー、栄養士、臨床心理士、カウンセラー、そして本人と家族で構成されるチームがケアにあたることです。例えば、膀胱と腸管の機能障害に対しては、カテーテルの挿入の仕方、下剤を使用するタイミング、指で排便を刺激する方法などを看護師から習うことができます。

理学療法では、筋力強化の運動やストレッチを行います。装具、歩行器、車いすなどの補助器具の使用方法や筋肉のけい縮への対処法を学ぶこともできます。

作業療法では、日常作業を再開するための方法を習うことができ、器用さと協調運動の改善にも役立ちます。患者は、失われた機能を補うための工夫や技術を習います。仕事、趣味、その他の活動を再開するのに必要な調整を臨床心理士やカウンセラーが手助けすることもあります。性機能障害への対処方法も教わります。多くの人は、感覚が失われていても性行為が可能です。

家族や親しい友人からの心理的な支えも重要です。

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