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不眠症と日中の過度の眠気

執筆者:

Karl Doghramji

, MD, Jefferson Sleep Disorders Center, Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2016年 2月
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睡眠関連の問題で最も多い訴えは、不眠症と日中の過度の眠気(EDS)です。

  • 不眠症とは、寝つきが悪い、途中ですぐに目が覚める、朝早く目が覚める、あるいは、睡眠の質が悪く、寝足りない感じがしたり、すっきりした感じが得られなかったりする状態です。

  • 日中の過度の眠気は、日中に異常なほど眠くなったり、眠り込んでしまったりする状態を指します。

寝つきが悪い、途中ですぐに目が覚める、朝早く目が覚めるという症状は、年齢を問わずみられます。成人の約10%に長期的な(慢性の)不眠症があり、ときおり不眠を経験する人は約30~50%に上ります。

知っていますか?

  • およそ半数の人が少なくとも一度は不眠を経験しています。

  • 睡眠薬を使用する場合は、市販薬より処方されるものの方が安全です。

睡眠が妨げられると、ときに日中の活動に支障をきたすことがあります。不眠症または日中の過度の眠気があると、日中に眠気、疲れ、いらだちを覚え、集中力が低下したり活動に支障が出たりします。日中の過度の眠気がある患者は、仕事中や運転中に眠り込んでしまうことがあります。

不眠症には、いくつかのタイプがあります。

  • 寝つきが悪い(入眠障害):精神的にリラックスできず、考えごとや悩みごとがあるときに、寝つけないことはよくあります。一般的な就寝時刻とされている時間帯に、体の寝る準備ができていない場合もあります。すなわち、体内時計が地球の明暗サイクルと同期していないことが原因であり、これは、睡眠相後退症候群、交代勤務障害、時差ぼけなど、多くの概日リズム睡眠障害でみられます。

  • 途中ですぐに目が覚めたり、朝早く目が覚めたりする(睡眠維持障害):このタイプの不眠症がある人は、寝つきには問題ないのですが、数時間後には目が覚めてしまい、そうすると今度はなかなか寝つけなくなります。熟睡できずに浅い眠りを繰り返すこともあります。睡眠維持障害は高齢者に多く、高齢者は若い人と比べて途中で目が覚めることが多くなります。特定の物質(カフェイン、アルコール、タバコなど)を使用している人、特定の薬剤を使用している人、特定の睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害など)がある人によくみられます。この種の不眠症は、年齢を問わず、うつ病の徴候であることがあります。

原因

不眠症と日中の過度の眠気(EDS)の原因は、体内のものであることもあれば、体外のものであることもあります。不眠症と日中の過度の眠気の両方を引き起こすものもあれば、いずれか片方のみを引き起こすものもあります。特定の原因との明らかな関係がほとんどまたはまったくないにもかかわらず、慢性の不眠症がある人もいます。

一般的な原因

不眠症の最も一般的な原因は以下のものです。

  • 望ましくない睡眠習慣(午後や夜間にカフェイン入り飲料を飲む、深夜に運動をする、就寝・起床時刻が不規則であるなど)

  • 精神障害(特に、気分障害、不安症、物質乱用など)

  • その他の病気(心疾患、肺疾患、筋肉または骨の病気、慢性痛など)

  • ストレス(入院や失業によるものなど[適応障害性不眠症])

  • また夜眠れないと次の日に疲労が残ってしまうのではないかという過度の不安(精神生理性不眠症)

寝不足の分を取り戻そうと、遅くまで寝ていたり仮眠をとったりすると、翌日の晩にさらに眠りにくくなります。

日中の過度の眠気の最も一般的な原因は以下のものです。

  • 眠る機会は十分あるにもかかわらず、十分な睡眠をとれない(睡眠不足症候群)

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に頻繁に呼吸が止まる重篤な病気)

  • 様々な病気、特に精神障害、脳または神経の病気(脳炎、髄膜炎、脳腫瘍、ナルコレプシーなど)、筋肉または骨の病気

  • 体内の睡眠-覚醒リズムを乱す病気(時差ぼけや交代勤務障害などの概日リズム障害

主要な精神障害のほとんどは、不眠症と日中の過度の眠気を伴います。うつ病患者の約80%には日中の過度の眠気と不眠症があり、不眠症患者の約40%には精神障害、通常は気分障害(抑うつや不安)があります。

痛みまたは不快感を伴うあらゆる病気、特に動きによって痛みまたは不快感が悪化する病気があると、短時間ずつ目が覚めてしまうため、睡眠が妨げられます。

あまり一般的でない原因

薬剤を長期間使用したり、使用を中止(離脱)したりすると、不眠症や日中の過度の眠気が起こることがあります。

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睡眠を妨げる主な薬剤

種類

薬剤を使用したとき

抗てんかん薬

フェニトイン

化学療法薬

すべて

脳を刺激する薬剤

アンフェタミン類

カフェイン

経口避妊薬

すべて

プロプラノロール

ステロイド

タンパク同化ステロイド

コルチコステロイド

甲状腺ホルモン製剤

薬剤を中止したとき

レクリエーショナルドラッグ

コカイン

ヘロイン

マリファナ

フェンシクリジン

脳の働きを鈍らせる薬剤

バルビツール酸系

オピオイド

鎮静薬

薬剤を使用したときまたは中止したとき

アルコール

抗うつ薬

一部

精神に作用する薬剤(向精神薬)の多くは、睡眠中に異常な動きを誘発し、睡眠を妨げます。不眠症の治療に一般的に用いられる鎮静薬は、易怒性や無関心をもたらし、覚醒レベルを低下させます。鎮静薬を2~3日以上使用した後に中止すると、もとの睡眠症状が突然悪化することがあります。

ときに、原因が睡眠障害である場合もあります。

中枢性睡眠時無呼吸症候群多義は、多くの場合、患者が不眠症、あるいは睡眠の妨げや眠ってもすっきりしないなどの症状を訴えたときに、初めて特定されます。この病気は、別の病気(心疾患など)がある人、または特定の薬剤を使用している人に起こることもあります。中枢性睡眠時無呼吸症候群では、夜の間中、呼吸が浅くなり、呼吸が何度も止まります。

ナルコレプシーは、日中の過度の眠気(EDS)や、通常起きている時間帯に自分では制御できない眠気が繰り返し起こることを特徴とする睡眠障害で、突然の一時的な筋力低下(情動脱力発作)を伴います。

周期性四肢運動障害(PLMD)では、睡眠中に何度も脚がぴくついたり蹴るように動いたりして、睡眠が中断されます。その結果、日中に眠くなります。PLMDの患者は一般に、睡眠中の脚の動きにも、その後に短時間目が覚めたことにも、気づいていません。

レストレスレッグス症候群は、じっと座っているときや横になっているときに、脚や(頻度は下がりますが)腕を動かさずにはいられないような衝動に駆られるため、なかなか寝つけず、途中ですぐに目が覚めてしまう病気です。通常、患者は腕や脚に虫が這うような感覚を覚えます。

評価

通常は、現在の症状に関する患者の説明と身体診察の結果に基づいて原因が特定されます。多くの患者は、望ましくない睡眠習慣、ストレス、交代勤務など、明らかな原因を抱えています。

警戒すべき徴候

以下の症状には注意が必要です。

  • 運転中またはその他の危険な状況で眠り込んでしまう

  • しばしば、予兆なく眠りに落ちる

  • 睡眠中に呼吸が止まったり、喘ぎや息詰まりで目が覚める(ベッドパートナーの証言によるもの)

  • 睡眠中に乱暴な動きをしたり、けがをしたり、他者にけがをさせる

  • 睡眠時遊行症

  • 常に変動する(不安定な)心疾患または肺疾患

  • 筋力低下の発作が長時間持続する(長時間持続する情動脱力発作

  • 最近の脳卒中

受診のタイミング

警戒すべき徴候がみられる人や、睡眠に関連する症状が日常生活に支障をきたしている人は、医師の診察を受ける必要があります。

健康な人に睡眠に関連する症状が短期間(1~2週間未満)みられたものの、警戒すべき徴候がない場合、睡眠の改善に役立つ行動の修正( 睡眠を改善するための行動修正)を試してみるとよいでしょう。およそ1週間試して効果がなければ、医師の診察を受けてください。

医師が行うこと

医師は、以下の点について質問します。

  • 睡眠パターン

  • 就寝時刻前後の習慣

  • 薬剤の使用(レクリエーショナルドラッグ[娯楽目的で使用される薬物]を含みます)

  • その他の物質の使用(アルコール[飲酒]、カフェイン、タバコ[喫煙]を含みます)

  • ストレスの程度

  • 病歴聴取

  • 身体活動のレベル

睡眠日誌をつけるよう指示されることもあります。睡眠日誌には、就寝時刻と起床時刻(夜間に覚醒した時刻を含みます)、仮眠をしたかどうか、睡眠に関する問題など、睡眠習慣を詳しく記録します。医師が不眠症の診断を検討する際は、人によって必要な睡眠時間が異なることを考慮します。

日中の過度の眠気(EDS)がある患者には、エプワース眠気スケール(Epworth Sleepiness Scale)などのアンケートに記入してもらいます。これは、様々な状況で眠り込んでしまうことがどの程度あるかを調べるための質問票です。医師は、患者のベッドパートナーに対して、患者の睡眠中の異常(いびきや呼吸の停止など)について質問することもあります。

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エプワース眠気スケール(Epworth Sleepiness Scale)

状況

座って読書しているとき

テレビを見ているとき

公共の場でじっと座っているとき

車に乗客として1時間継続して乗っているとき

午後、横になって休息しているとき

座って人と話しているとき

昼食(アルコールなし)後に静かに座っているとき

渋滞で数分間動かない車に乗っているとき

この検査では、患者は以下の尺度を用いて、特定の状況で居眠りしてしまう可能性を評価します。

  • なし(0)

  • 少し(1)

  • 中程度(2)

  • 高い(3)

10点以上は、日中の異常な眠気があることを示唆します。

身体診察を行い、不眠症または日中の過度の眠気の原因になる病気がないかを調べます。

検査

症状から、望ましくない睡眠習慣、ストレス、または交代勤務障害が疑われる場合、検査は不要です。

医師はときに、患者を睡眠障害の専門家に紹介し、睡眠検査室での評価を依頼することがあります。患者を紹介する理由には以下のものがあります。

  • 診断がはっきりしない

  • 特定の病気の疑い(睡眠時無呼吸症候群、けいれん性疾患、ナルコレプシー、周期性四肢運動障害)

  • 不眠症または日中の過度の眠気を是正する基本的対策(睡眠を改善するための行動修正、短期間の睡眠薬の使用)を行っても、症状が持続する

  • 警戒すべき徴候のほか、悪夢、睡眠中の脚または腕のぴくつきなどの症状

  • 睡眠薬への依存

  • 入眠直前または睡眠中、脚や腕を動かしたいという抗いがたい衝動に駆られる(レストレスレッグス症候群)

睡眠検査室では、睡眠ポリグラフ検査を行うとともに、睡眠中に異常な動きがないかを一晩かけて観察します。ビデオ録画が行われる場合もあります。ときに、ほかの検査が行われることもあります。

通常、睡眠ポリグラフ検査は一晩かけて睡眠検査室で行われますが、睡眠検査室は病院や診療所にある場合もあれば、ホテルの部屋や、ベッド、浴室、モニタリング装置の備わった他の施設を用いる場合もあります。電極を頭皮や顔に貼り付け、脳の電気的活動(脳波)と眼球の動きを記録します。この電極は痛くありません。これらの記録から、睡眠段階に関する情報が得られます。心拍数(心電図)や筋肉の活動(筋電図)を記録するため、体のほかの部位にも電極がつけられます。指または耳たぶに痛みを伴わないクリップを取り付け、血液中の酸素レベルを記録します。睡眠ポリグラフ検査では、呼吸障害(閉塞性睡眠時無呼吸症候群など)、けいれん性疾患、ナルコレプシー、周期性四肢運動障害、睡眠中の異常な動きや行動(睡眠時随伴症)を発見できます。睡眠ポリグラフ検査は自宅でも行えますが、その場合は通常、呼吸、心拍数(心電図で測定)、酸素レベルの記録だけになります。

睡眠潜時反復検査によって、身体的な疲労と日中の過度の眠気を区別し、ナルコレプシーがないかを確認します。患者は1日睡眠検査室で過ごし、2時間おきに4~5回仮眠をとります。この検査の一環として、睡眠ポリグラフ検査を行うことで、睡眠に入るまでにかかる時間(睡眠潜時)を測定します。睡眠ポリグラフ検査により、眠りについた時刻を記録し、睡眠段階をモニタリングします。

覚醒維持検査は、静かな部屋に座ったまま患者がどれくらいの間起きたままでいられるかを調べる検査です。この検査は、日中の眠気の重症度を判定し、患者が日常的な活動(運転など)を安全に行えるかを判断する上で有用です。

日中の過度の眠気のある患者の症状や身体診察の結果から、他の病気が疑われる場合は、心臓、肺、肝臓を評価する検査が行われることもあります。

治療

不眠症の治療は、その原因と重症度によって異なります。他の病気が原因で不眠がある場合は、その病気を治療します。その治療とは、睡眠を改善することにほかならない場合もあります。

不眠が軽度であれば、一般的な対策で十分な可能性があります。具体的には以下のものがあります。

  • 行動の修正(規則正しい睡眠をとる、昼食以降はカフェインを控えるなど)

  • 処方睡眠薬

  • 市販睡眠薬

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睡眠を改善するための行動修正

行動

方法

規則的な睡眠-覚醒リズムを作る

毎晩同じ時刻に床につく。さらに重要なのは、休日や休暇中も含めて、毎朝同じ時刻に起きる。ベッドの上で過ごす時間が長くならないようにする。

就寝前の日課を作る

ゆっくり歩く、くつろぐ音楽を聞く、歯を磨く、顔を洗う、目覚まし時計をセットするなど、就寝前の活動パターンを決めると、眠る気分が整う。自宅でも外出先でも、毎晩このパターンを守る。その一環として、就寝前には明るい光を避けるようにする。

眠りやすい環境を整える

寝室は暗く静かで、暑すぎず寒すぎないようにしておく。騒音があると、たとえ目が覚めなくても睡眠が乱される。耳栓をする、ホワイトノイズ発生器やシーリングファンを使う、寝室に厚手のカーテンを掛けて屋外の雑音と光を遮断するなどの方法が役立つ。日中、完全に暗くできない部屋で眠らなければならない人には、アイマスクが役立つ。夜中に目が覚めてしまった場合は、明るい光を避ける。

枕を使用する

膝の間や腰の下に枕を挟むと、より快適に眠れるという人もいる。背中が痛む人は、膝の間に大きな枕を挟んで横向きに寝るか、膝の下に大きな枕を置いてあお向けに寝ると楽になる場合がある。

寝室は主に寝るためだけに使用する

寝室は睡眠と性行為のためだけに使用する。寝室では、食事、読書、テレビを見る、請求書の処理をするなど、目がさえるような行為をしないようにする。

起きる

20分経っても寝つけないときは、ベッドに横になってなんとか眠ろうとするより、起きて別の部屋で何か他のことをして、眠くなったら寝室に戻ってくる方が効果的である。

定期的に運動する

運動をすることは自然な入眠に役立つ。しかし、就寝前5時間以内に運動をすると、心臓と脳が刺激されて、逆に目がさえてしまう場合もある。

リラックスする

ストレスや心配事は睡眠を妨げる。就寝時刻になっても眠くならないときは、温かい風呂に入ったり、本を読んだりするとリラックスできる。リラクゼーション法として、視覚的イメージ、段階的筋弛緩法、呼吸訓練などもある。ストレスや心配事を寝室に持ち込まないように意識することや、就寝時間帯に悩まなくて済むよう、心配事について考える「心配タイム」を日中に設けるという方法もある。

就寝前は刺激的な活動を避ける

就寝前の約1時間以内に、興奮するようなテレビ番組を見たり、スリリングなゲームをしたり、複雑な作業をしたりすると、眠りにくくなる。

睡眠の妨げになる飲食物を避ける

アルコールやカフェインを含む飲食物(コーヒー、紅茶、コーラ、ココアなど)は睡眠を妨げる。食欲抑制薬、利尿薬、(タバコやニコチンパッチに含まれる) ニコチンも同様である。カフェインを含むものは、寝る前12時間以内には摂取しないようにする。夜に大量のアルコールを摂取すると、朝早く目が覚めてしまう。禁煙も睡眠に役立つことがある。

空腹であれば軽食をとる

空腹も入眠を妨げる要因である。胃食道逆流症でなければ、場合に応じて軽食(特に温かいもの)をとると睡眠に役立つ。しかし、就寝時刻の少なくとも数時間前には食べるのをやめ、就寝前にしっかりした食事(特に消化されにくいもの)はとらないようにするべきである。重い食事をとると、胸やけが起こって、睡眠の妨げになる可能性がある。

不安を催す行動を避ける

時間に注意が向かないように、時計の向きを変える。ベッドにいるときは時計を見ないようにする。

日中に明るい光を浴びる

日中に明るい光を浴びると、睡眠-覚醒リズムを地球の明暗サイクルに同期させやすくなる。

交代勤務労働者とナルコレプシーの患者を除き、日中の仮眠を控える

不眠症の人が日中に仮眠をとると、夜眠りにくくなる可能性がある。しかし、ナルコレプシーの患者は仮眠により薬剤の必要量を減らすことができ、交代勤務労働者は仮眠により仕事の効率が向上する。仮眠が必要な場合は、毎日同じ時間に30分以内と決めて行うべきである。

ストレスが原因であれば、(可能なら)ストレスを減らすことで一般に症状がなくなります。それでも症状が持続するようであれば、対話による治療(認知行動療法)が最も効果的で最も安全です。しかし、日中の眠気と疲労があり、特に日中の活動に支障をきたしている場合は、睡眠薬による治療も是認されます。多くの場合は、認知行動療法と睡眠薬を併用するのが最善です。

不眠症とうつ病がある場合、うつ病を治療することで、しばしば不眠症が軽減します。一部の抗うつ薬は、鎮静作用もあるため、就寝前に服用すると、眠りやすくなります。ただし、これらの薬剤は日中の眠気を引き起こすことがあり、特に高齢者でこの傾向が強くなります。

処方睡眠薬

睡眠障害が日常生活に支障をきたし、健康感が損なわれている場合は、2~3週間を限度として、必要に応じて処方薬の睡眠薬(睡眠補助薬、睡眠導入剤などとも呼ばれる)を服用するのが助けになることがあります。

処方睡眠薬:安易に服用しないこと

睡眠薬として最もよく使用されているのが、鎮静薬と抗不安薬( 抗不安薬と鎮静薬)です。医師の指導のもと使用する限り、多くは安全です。

ほとんどの睡眠薬は、問題を起こす可能性があるため、処方せんが必要です。こうした問題の多くは、新しい睡眠薬では起こりにくくなっています。

  • 有効性の喪失:睡眠薬に慣れると、有効性が失われることがあります。これを耐性と呼びます。

  • 離脱症状:睡眠薬を2~3日以上服用した後に突然中止すると、もともとの睡眠症状が悪化し(反跳性不眠)、不安が増大することがあります。したがって医師は、薬剤の使用を中止するとき、数週間かけて徐々に用量を減らすよう勧めます。

  • 習慣性と依存の可能性:特定の睡眠薬を2~3日以上服用すると、それなしでは眠れないと感じるようになることがあります。薬剤の使用を中止すると、不安、神経質、短気になったり、不隠な夢を見たりすることがあります。

  • 過剰摂取の可能性:旧型の一部の睡眠薬は、推奨用量より多く服用した場合、錯乱やせん妄を生じる、呼吸が危険なほど遅くなる、脈が弱くなる、爪と唇が青くなるなどの副作用をもたらす可能性があり、死に至ることすらあります。

  • 重篤な副作用:大多数の睡眠薬は、呼吸機能を調整している脳領域を抑制する傾向があるため、特に高齢者や呼吸器系に問題がある人では、たとえ推奨用量で服用しても危険があります。薬剤によっては、昼間の覚醒レベルが低下し、車の運転や機械操作に危険が伴うことがあります。日中の眠気を催し呼吸を抑制する薬剤(アルコール、オピオイド[麻薬]、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬など)と睡眠薬を併用する場合は、特に危険です。これらの複合作用は、さらに危険です。特に、睡眠薬を推奨用量より多く服用した場合や、アルコールと一緒に服用した場合は、まれではあるものの、寝ながら歩いたり、車を運転したりしてしまうことがあり、重度のアレルギー反応が起こることも知られています。

最近の睡眠薬は、効果を失わず、習慣性をもたらさず、また離脱症状を起こさずに長期間使用できます。過剰摂取した場合の危険性もそれほど高くありません。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、最もよく使用される睡眠薬です。ベンゾジアゼピン系薬剤には、効果の比較的長いもの(フルラゼパムなど)とそうでないもの(テマゼパム[temazepam]、トリアゾラムなど)とがあります。医師は、高齢者には長時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤を処方しないようにします。高齢者は、体内で薬剤を代謝して体外に排出する能力が若い人ほど高くないため、これらの薬剤を服用すると、日中の眠気、話し方が不明瞭になる、転倒などの問題が起きる可能性があるからです。

その他の有用な睡眠薬として、ベンゾジアゼピン系薬剤ではありませんが、ベンゾジアゼピン系薬剤と同じ脳領域に作用を及ぼすものがあります。これらの薬剤(エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム)は大部分のベンゾジアゼピン系薬剤より作用時間が短く、日中の眠気が生じにくくなっています。高齢者もこれらの薬剤に耐えられると考えられています。ゾルピデムには長時間作用型(徐放性)や、超短時間作用型(低用量)の剤形もあります。

ラメルテオンは新型の睡眠薬で、作用時間の短い上記の薬剤と同じ長所があります。それに加えて、効果を失わず、離脱症状も起こさずに、ベンゾジアゼピン系薬剤より長い期間使用することができます。習慣性もなく、過剰摂取の可能性もないと考えられています。ラメルテオンは、メラトニン(睡眠を促すホルモン)と同じ脳領域に作用を及ぼすため、メラトニン受容体作動薬と呼ばれています。

一部の抗うつ薬(パロキセチン、トラゾドン、トリミプラミン)は、うつ病の治療時よりも低用量で使用すると、不眠を緩和し、早朝覚醒を予防する効果があります。これらの薬剤は、うつ病でない人が、他の睡眠薬の副作用に耐えられないというまれなケースで使用されることがあります。しかし、日中の眠気などの副作用があり、特に高齢者では問題となることがあります。

ドキセピンは、高用量では抗うつ薬として用いられますが、低用量で使用した場合、睡眠薬として効果的です。

市販睡眠薬

処方せんなしで購入できる市販の睡眠薬もありますが、市販の睡眠薬は処方薬より安全性が劣る可能性があり、特に高齢者でその傾向が強まります。市販の睡眠薬にはジフェンヒドラミンまたはドキシラミン(doxylamine)(どちらも抗ヒスタミン薬)が含まれています。これらの成分には日中の眠気のほか、ときに神経過敏、興奮、排尿困難、転倒、錯乱などの副作用があり、特に高齢者ではそのリスクが高くなります。

市販の睡眠薬は7~10日以上続けて服用してはいけません。これらは、往々にして眠れない夜に使用する目的で作られた薬剤であり、慢性の不眠症(重篤な基礎疾患の徴候である場合もあります)を治療する目的で作られた薬剤ではありません。これらの薬剤を長期間使用したり、突然中止したりすると、問題が生じることがあります。

メラトニンは、睡眠を促し、睡眠-覚醒リズムを調整するホルモンで、ときに不眠症の治療に用いられます。就寝時刻と起床時刻が常に遅い(例えば、午前3時に寝て、午前10時以降に起きるなど)こと(睡眠相後退症候群)による問題には、効果的な可能性があります。効果を得るためには、体が本来このホルモンを分泌する時間帯(ほとんどの人では夕方早く)にメラトニンを服用する必要があります。服用する時間帯を誤ると、メラトニンは症状を悪化させることがあります。メラトニンの使用については、意見の相違があります。短期間(長くても2~3週間)の使用であれば安全と考えられていますが、長期的に使用した場合の影響は分かっていません。また、メラトニン製剤には規制がかかっていないため、成分と純度は確認できません。メラトニンを使用する際は、医師の監督が必要です。

このほかにも、スカルキャップやセイヨウカノコソウなど多数の薬用ハーブや栄養補助食品が健康食品店で販売されていますが、睡眠に対する効果と副作用はよく分かっていません。

認知行動療法

認知行動療法は、睡眠障害に関する専門の訓練を受けた心理士によって行われ、不眠症が普段の活動に支障をきたしている人や、睡眠を改善するための行動修正で効果がなかった人に役立つ可能性があります。

療法士の勧めにより、患者は睡眠日誌をつけます。日誌には、睡眠の質や長さを記録するほか、睡眠の妨げとなった可能性のある行動(夜遅くの食事または運動、アルコールまたはカフェインの摂取、不安、眠ろうとしているときに考えごとをやめられないなど)についても記録します。

認知行動療法は、患者が自らの問題を理解し、望ましくない睡眠習慣を修正し、睡眠の助けにならない考えごと(眠れないことへの心配や次の日の予定についての心配など)をやめるのに役立ちます。認知行動療法には、リラクゼーション訓練も含まれます。

高齢者での重要事項

睡眠パターンは加齢とともに悪化するため、不眠症を訴える人は若齢者より高齢者に多くみられます。高齢になるほど夜間に眠れずすぐに目が覚めやすくなり、日中に眠くなり仮眠をとる傾向があります。心身を最も回復させる深い睡眠の時間は次第に短くなり、最終的にはなくなります。高齢者の場合は通常、これらの変化だけでは睡眠障害には該当しません。

よく眠れない高齢者には、以下の対策が有益な可能性があります。

  • 決まった時刻に就寝する

  • 日中に多くの光を浴びる

  • 定期的に運動する

  • 日中の仮眠を減らす(仮眠をとると夜間に良質な睡眠をとることが余計難しくなるからです)

不眠症のある高齢者の多くにとって、睡眠薬は不要です。服用の必要がある場合は、こうした薬剤によって問題が生じる可能性があることを心に留めておくべきです。例えば、睡眠薬は錯乱を引き起こし、日中の覚醒レベルを低下させるため、車の運転が危険になります。そのため、服用には注意が必要です。

要点

  • 多くの不眠症や日中の過度の眠気は、望ましくない睡眠習慣、ストレス、体内の睡眠-覚醒リズムを乱す条件(交代勤務など)が原因です。

  • しかし、ときには閉塞性睡眠時無呼吸症候群や精神障害などの病気が原因であることもあります。

  • 通常、原因として閉塞性睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が疑われる場合、診断がはっきりしない場合、一般的な対策で効果がない場合は、睡眠検査室または自宅での睡眠ポリグラフ検査が勧められます。

  • 軽度の不眠症であれば、規則的な睡眠スケジュールに従うなどの一般的な対策で十分な場合があります。

  • 不眠症が日中の活動に支障をきたし、一般的な対策で効果がない場合、認知行動療法を行ったり、睡眠薬を(最長で数週間)服用したりすると役に立つ可能性があります。

  • 睡眠薬は、特に高齢者によく問題を起こします。

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