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昏迷と昏睡

執筆者:

Kenneth Maiese

, MD, Rutgers University

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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昏迷とは、反応がなく、激しい物理的な刺激によってのみ覚醒させることができる状態です。昏睡とは、反応がなく、覚醒させることができない状態です。

  • 昏迷や昏睡の原因は通常、脳の左右両側の広い領域または意識の維持に特化した領域に影響を及ぼす病気、薬、またはけがです。

  • 身体診察、血液検査、脳の画像検査、家族や友人への問診は、原因を特定する上での助けになります。

  • 考えられる原因を是正し、身体機能を補助する処置(人工呼吸器による呼吸の補助など)を行います。

  • 昏睡から回復するかどうかは原因によって大きく異なります。

意識の制御

正常な脳は、必要に応じて活動レベルと意識レベルをすばやく調節できます。この調整は、眼、耳、皮膚などの感覚器官から受け取る情報に基づいて行われます。例えば、脳は、代謝活動(エネルギーレベル)を減らして睡眠を誘発することができます。

目が覚めているかどうか(覚醒)は、脳幹 脳幹 脳の機能は神秘的であり、驚異的です。思考、信念、記憶、行動、気分は、すべて脳から起こります。脳は思考と知能の場所であり、体全体をコントロールしている司令塔です。脳はまた、運動、触覚、嗅覚、味覚、聴覚、視覚の統合も行っています。人は脳の働きによって、言葉を話して他者とコミュニケーションをとる、数字を理解して計算する、作曲や音楽鑑賞をする、幾何学的な形を認識したり判別したりする、将来の計画を立てる、さらには想像して空想を楽しむことなどを可能... さらに読む 脳幹 (大脳と脊髄を接続している脳の一部)の上部にある神経細胞と神経線維のシステム(網様体賦活系 脳の機能は神秘的であり、驚異的です。思考、信念、記憶、行動、気分は、すべて脳から起こります。脳は思考と知能の場所であり、体全体をコントロールしている司令塔です。脳はまた、運動、触覚、嗅覚、味覚、聴覚、視覚の統合も行っています。人は脳の働きによって、言葉を話して他者とコミュニケーションをとる、数字を理解して計算する、作曲や音楽鑑賞をする、幾何学的な形を認識したり判別したりする、将来の計画を立てる、さらには想像して空想を楽しむことなどを可能... さらに読む )によって制御されています。大脳 大脳 脳の機能は神秘的であり、驚異的です。思考、信念、記憶、行動、気分は、すべて脳から起こります。脳は思考と知能の場所であり、体全体をコントロールしている司令塔です。脳はまた、運動、触覚、嗅覚、味覚、聴覚、視覚の統合も行っています。人は脳の働きによって、言葉を話して他者とコミュニケーションをとる、数字を理解して計算する、作曲や音楽鑑賞をする、幾何学的な形を認識したり判別したりする、将来の計画を立てる、さらには想像して空想を楽しむことなどを可能... さらに読む 大脳 (脳の最大の部位)は、脳幹の上部と相互に作用して、意識と覚醒を維持しています。大脳は左右2つの半球(大脳半球)で構成されています。

活動レベルと意識レベルを調節する脳の機能は、以下のような場合に損なわれます。

  • 両方の大脳半球が機能不全に陥ったとき、特に突然重度の損傷が起きたとき

  • 網様体賦活系が機能不全に陥ったとき

活動レベルと意識レベルを調節する脳の機能は、以下の状況でも損なわれます。

  • 重度の睡眠不足のとき

  • けいれん発作の最中とその直後

  • 脳に供給される血流または栄養(酸素や糖など)が減少したとき

  • 有害物質によって脳の働きが損なわれたとき

有害物質は(例えば、摂取や吸入によって)体内に取り込まれたものである場合と、体内の正常なプロセスの老廃物として作られ、正常に分解・除去されずに体内に蓄積したものである場合があります。

意識障害のレベル

意識障害は短時間だけの場合もあれば、長く続く場合もあります。障害の程度は、以下のように軽いものから重いものまで様々です。

原因

意識障害の原因になるものは数多くあり、同じ原因でも、生じる意識障害のレベル(嗜眠、昏蒙、昏迷、昏睡)は様々です。

最も一般的な原因は以下のものです。

加齢に関連する注意点

高齢者では、以下の理由から、嗜眠、昏迷、昏睡などの意識障害が特に懸念されます。

高齢者では、一般に薬への反応、脱水、感染症によって意識が障害されます。

病気

一部の病気では、脳に必要な物質が供給されるプロセスが妨げられたり、体内で必要な物質が利用されるプロセスが妨げられたりします。例えば、以下のものがあります。

また、体中の細胞の機能不全を引き起こす病気もあります。多くの場合、最も影響を受けるのが脳の細胞です。例として、以下のような病気が挙げられます。

上記のほかに、意識を制御している脳領域を侵す病気も原因としてよくみられます。そのような病気には以下のものがあります。

頭蓋内の圧力(頭蓋内圧)を上昇させるあらゆる病気は、意識障害を招く可能性があります。血腫(血液の貯留)、腫瘍、膿瘍など、脳内の腫瘤は、意識を制御する脳領域を圧迫することによって間接的に意識を障害する可能性があります。腫瘤が大きいと、頭蓋内の比較的硬い構造に脳が押しつけられて、脳組織が傷つくことがあります。意識を制御する脳領域がこうした影響を受けると、患者は昏迷または昏睡に陥ります。圧があまりに高くなると、脳の各部分を仕切っている比較的硬い組織の壁にある小さな穴から脳が押し出されることがあります。この状態は脳ヘルニアと呼ばれ、生命を脅かします( )。脳ヘルニアが起こると、脳組織にさらに損傷が起こり、状態がますます悪化する可能性があります。

脳卒中を起こしたことがある人や、脳機能に影響を及ぼす別の病気がある人では、意識が障害される他の脳疾患にかかりやすくなります。

物質

一般的に、過度の飲酒 アルコール 遺伝特性や個人的な性質がアルコール関連障害の発症に関与しています。 アルコールを飲みすぎると、眠くなったり攻撃的になり、運動協調や精神機能が損なわれ、仕事、家族関係、その他の活動を妨げます。 長期間大量のアルコールを飲むと、アルコールに依存するようになり、肝臓、脳、心臓を損傷します。 医師は質問票を利用したり血中のアルコール濃度を測定して、アルコール関連障害の人の特定に役立てます。... さらに読む をしたり、鎮静薬( 処方睡眠薬:安易に服用しないこと 処方睡眠薬:安易に服用しないこと 睡眠関連の問題で最も多い訴えは、不眠症と日中の過度の眠気(EDS)です。 不眠症とは、寝つきが悪い、途中ですぐに目が覚める、朝早く目が覚める、あるいは、睡眠の質が悪く、寝足りない感じがしたり、すっきりした感じが得られなかったりする状態です。 日中の過度の眠気は、日中に異常なほど眠くなったり、眠り込んでしまったりする状態を指します。 寝つきが悪い、途中ですぐに目が覚める、朝早く目が覚めるという症状は、年齢を問わずみられます。成人の約10%... さらに読む )やオピオイド オピオイド鎮痛薬 基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止め(鎮痛薬)が必要になる場合もあります。 医師が鎮痛薬を選択する際、痛みのタイプと持続期間、それぞれの鎮痛薬の便益とリスクを考慮します。ほとんどの鎮痛薬は侵害受容性疼痛(通常の組織... さらに読む など、特定の薬剤を過剰に使用したりすると、意識が障害されます。アルコールと一部の薬は、脳細胞の機能を鈍らせるだけでなく、脳細胞を間接的に損傷することもあります。アルコールや薬により呼吸速度が大きく低下して、血液中の酸素レベルが非常に低くなり、脳に損傷が生じることがあります。

(複数の病気の治療のために)複数の薬を使用することも意識障害の一般的な原因であり、その理由の1つに、複数の薬を使用すると薬同士が相互作用するリスクが高まることが挙げられます。

精神障害と精神的ストレス

ときに、精神障害または精神的ストレスのある人が、無反応に見えることがあります。例えば、がんを告知された人や、配偶者が離婚を考えていることを知ってしまった人は、意気消沈し、話しかけられたり触られたりしても反応しなくなることがあります。しかし、そのような人は、自分の周囲で何が起こっているのかを認識していて、脳は正常に機能している可能性があります。

高齢者

高齢者における意識障害の一般的な原因には、以下のものがあります。

  • 薬への反応

  • 脱水

  • 感染症

  • 脳機能に影響を及ぼす特定の病気(脳卒中や心不全など)

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症状

意識障害の程度は様々です。昏迷状態の患者は、通常は意識がありませんが、激しい刺激を与えると覚醒させることができます。昏睡状態の患者は、意識がなく、眼は閉じたままで、覚醒させることができません。

昏迷や昏睡を引き起こす脳の損傷また機能障害は、体の他の部位にも影響を及ぼします。

通常は、呼吸のパターンが異常になります。呼吸が速すぎる、遅すぎる、深すぎる、または不規則になることがあります。あるいは、これらの異常な呼吸パターンが交互に現れることもあります。

血圧を制御する神経が影響を受けると、血圧が上昇することがあります。

筋肉が収縮したり、異常な姿勢で収縮したまま元に戻らなくなったりすることがあります。例えば、頭が後ろに傾いて両腕と両脚は伸びたままになることがあり、この状態は除脳硬直と呼ばれます。あるいは、両脚が伸びて両腕は曲がったままになることもあり、この状態は除皮質硬直と呼ばれます。全身がだらりと緩むこともあります。ときに筋肉が散発的にまたは不随意に収縮することがあります。

に影響が及ぶこともあります。片方または両方の瞳孔が広がって(散大して)、光の変化に反応しなくなることがあります。あるいは、瞳孔が小さくなることもあります。眼球が動かなくなったり、動きが異常になったりすることもあります。

意識を障害する病気によって、その他の症状が現れることがあります。例えば、原因が髄膜炎(脳と脊髄を覆う組織層の感染症)であれば、発熱、嘔吐、頭痛などの症状がみられたり、あごを胸に近づけようとすると首に痛みが出て硬くなる徴候(項部硬直)がみられたりします。

診断

  • 医師による評価

  • 神経学的診察

  • 臨床検査と画像検査

通常、意識障害の有無は観察と診察の結果に基づいて判断できます。治療方法は原因によって異なり、意識障害が進行して昏睡や脳死に至る可能性があるため、医師は障害が起こっている脳の部位と障害の原因を特定するよう努めます。

何度も激しく起こそうとすると短時間だけ覚醒する場合は、昏迷と診断されます。まったく覚醒させることができず、患者が眼を閉じたままである場合は、昏睡と診断されます。

昏迷や昏睡は生命を脅かす病気が原因で起こることもあるため、昏迷または昏睡状態の人がいる場合は、直ちに病院に搬送しなければなりません。医療従事者は原因の特定に努め、それと並行して救急処置を行います。例えば、血糖値を推定するために迅速な検査を行います。血糖値が低い(直ちに永続的な脳の損傷が起こる可能性がある)ことが分かれば、直ちに治療を開始できます。

昏迷または昏睡状態の患者は、意思を伝えることができません。そのため医師は通常、患者が医療情報を記したブレスレットやネックレスを身につけていないか確認します。これらによって意識障害の原因を推測できることがあります。原因を特定するために、患者の財布、カバン、ポケットの中を調べて医療情報(病院の診察券など)や薬がないか確認することもあります。そのため、昏迷や昏睡のリスクを高める病気(糖尿病やけいれん性疾患など)がある人は、自身の医療情報が分かるものを何らかの形で携帯したり着用したりしておくべきです。

患者の意識が変化したときに居合わせた人に、医師はそのときの状況について尋ねます。医師は患者の家族や友人とも話し、家族や友人は、患者に関する次のような重要な情報を救急医療従事者や医師に正直にすべて伝える必要があります。

  • 薬(処方薬およびレクリエーショナルドラッグ)、アルコール、その他の有害物質を使用しているかどうか、何を使用しているか

  • 意識が変化する前にけがをしなかったか

  • 症状がいつ、どのように始まったか

  • 何らかの感染症、その他の病気(糖尿病、高血圧、甲状腺、腎臓、肝臓の病気など)、その他の症状(頭痛や嘔吐など)が現在または過去になかったか

  • 最後に正常に見えたのはいつか

  • いつもと違うものを食べたり、旅行したりしなかったか

  • 可能性のある原因に関する心当たりがないか(例えば、最近患者が抑うつ状態にあった、自殺をほのめかしていたなど)

このような情報は、原因の特定に役立ち、回復の可能性を評価する助けになります。このような情報が得られなければ、たとえ広範な診断検査を行ったとしても、原因の多くが特定されません。例えば、患者がいつもと違うものを食べていた場合は、毒素(毒キノコに含まれるものなど)が原因の可能性があります。患者が最近旅行していた場合は、訪れた地域でよくみられる感染症が原因の可能性があります。錠剤の空の容器または薬を使用するための道具が近くで見つかれば、薬が原因の可能性があります。患者が薬剤や有害物質を摂取した場合、家族や友人はその物質のサンプルまたは容器を医師に渡すべきです。

知っていますか?

  • 昏睡の原因を特定する上で、家族や友人からの情報が、診断検査よりも役立つことがよくあります。

家族や友人からの情報は通常は貴重であり、正しい診断につながる可能性は身体診察や検査を上回ります。例えば、すべての薬について過剰摂取の可能性を否定できるような検査はありません。

身体診察

体温を測定します。体温が異常に高い場合は、感染症、熱中症、体を刺激する薬(コカインやアンフェタミンなど)の過剰摂取が考えられます。体温が異常に低い場合は、寒冷への長時間の曝露、甲状腺機能低下症、アルコール中毒、鎮静薬の過剰摂取の可能性が考えられ、高齢者では感染症も考えられます。

医師は、頭部、顔、皮膚を診察し、以下のような原因の手がかりがないかを調べます。

神経学的診察

  • 意識障害はどれくらい重症か

  • 脳幹が正常に機能しているかどうか

  • 脳のどの部分に損傷があるか

  • 可能性のある原因は何か

患者に意識がない場合、医師はまず声をかけて起こそうとし、次に患者の腕や脚、胸、または背中を触って起こそうと試みます。これらの方法で患者が目を覚まさなければ、爪床を圧迫したり皮膚をつねったりして、痛みや不快感を伴う刺激を与えます。それによって患者が眼を開いたり、顔を歪めたり、意図的に痛みの刺激から身を引くような動きをしたりする場合、意識障害は重度でないと判定されます。患者が音を立てられる場合、大脳半球はある程度機能しています。眼が開く場合、おそらく脳幹の一部は機能しています。

医師はときに、グラスゴー昏睡スケール(Glasgow Coma Scale)などの標準化された尺度を用いて意識レベルの変化を追うことがあります。このスケールは、刺激への反応を点数化するもので、眼の動き、発話、運動を評価します。これは、患者の反応のなさを評価する上で、比較的信頼できる客観的な尺度です。

異常な呼吸パターンは、脳のどの部分が機能していないかを知る上での手がかりになります。

痛みの刺激に対する反応を確認することは、脳や脊髄のどこかに機能不全が起こっているかどうかを判断するのに役立ちます。昏睡状態にある患者に痛みの刺激を与えると、除脳硬直や除皮質硬直といった異常な姿勢が誘発されることがあります。この検査は、正常に機能していない脳の領域を特定する助けになります。ときに、脳内の腫瘤(脳膿瘍や脳腫瘍など)が頭蓋内の圧力を高め、脳ヘルニア( )を引き起こすことにより、機能障害が生じることがあります。

全身の筋肉が緩んでいて、痛み刺激を与えてもまったく動かない状態は、考えられる中で最悪の反応です。これは中枢神経系(脳と脊髄)に重度の機能障害があることを意味します。しかし、そのような問題が解消する場合(つまり筋緊張と動きが回復する場合)は、原因が可逆的なもの(鎮静薬の過剰摂取など)である可能性があります。

無反応になった原因が意識に影響を及ぼさない精神障害であれば、自動的な反射はすべて正常にみられます。

を観察することでも、脳幹がどの程度機能しているか、また意識障害の原因は何かを知る上で重要な手がかりが得られます。瞳孔の位置、大きさ、明るい光への反応、(意識がはっきりしている患者では)動く物を追う能力、網膜の状態を確認します。正常な瞳孔は、暗い所では大きく開き(散大)、明るい所では小さくなります(収縮)。

正確な評価を行うには、患者が緑内障の治療薬(瞳孔の大きさに影響を及ぼす薬)を使用しているかどうかの情報が必要であり、通常はもともと瞳孔の大きさに違いがあるかどうかの情報が必要です。

医師は眼の中を検眼鏡で観察し、頭蓋内圧の上昇を示す徴候がないかも調べます。頭蓋内圧が上昇していれば、腫瘍、血腫、膿瘍など脳の腫瘤が原因であることが示唆されます。

特定の手技への反応が、脳幹の機能が正常かどうかを判断する上で参考になりますが、具体的には以下のものがあります。

  • 頭を回転させて眼の動きを観察する。

  • 患者の意識がなければ、片方の耳、次に他方の耳に冷水を流し込み、眼の動きを観察する(温度刺激検査またはカロリックテストと呼ばれます)。

臨床検査

臨床検査を行うと、昏迷または昏睡の原因に関するさらなる手がかりが得られます。

血液中の糖、電解質(ナトリウムなど)、アルコール、酸素、ミネラル(マグネシウムなど)、二酸化炭素の濃度や量を測定します。二酸化炭素の濃度が高ければ、呼吸障害が示唆されることがあり、人工呼吸器が必要になることがあります。また、赤血球数と白血球数を測定します。血液検査を行い、肝機能と腎機能を調べます。

尿を分析し、広く使用されている物質または摂取が疑われる有害物質がないかを調べます。血液と尿のサンプルを検査室に送って、培養検査(微生物を増殖させて調べる検査)を行い、感染の有無を確認します。

指にセンサー(パルスオキシメトリーと呼ばれます)を取り付けて、血液中の酸素レベルを測定します。動脈から採取した血液のサンプルを用いて、血液中の酸素や二酸化炭素、ときにその他の気体のレベルも測定します(動脈血ガス検査)。これらの検査は、心臓や肺の病気の有無を調べるために行います。

疑われる昏睡の原因に応じて、その他の臨床検査が行われることもあります。

その他の検査

心電図検査を行い、心疾患がないかを確認します。

原因が速やかに特定されない場合は、CT(コンピュータ断層撮影)またはMRI(磁気共鳴画像)検査による頭部の画像検査を行い、腫瘤などの構造的な脳の損傷がないかを確認します。

画像検査を行っても原因がはっきりしない場合や、髄膜炎またはくも膜下出血 くも膜下出血 くも膜下出血は、脳を覆っている組織(髄膜)の内側層(軟膜)と中間層(くも膜)との間にあるすき間(くも膜下腔)への出血です。 最も多い原因は、動脈のこぶ(動脈瘤)の破裂です。 通常、動脈が破裂すると、突然の激しい頭痛が起こり、その後にしばしば短時間意識を失います。 診断を確定するためにCT検査またはMRI検査のほか、ときに腰椎穿刺と血管造影検査が行われます。 頭痛を軽減し血圧をコントロールするために薬剤が投与され、出血を止めるために手術が... さらに読む くも膜下出血 (脳を覆う組織層と組織層の間への出血)の可能性がある場合は、腰椎穿刺を行って髄液のサンプルを採取します( 腰椎穿刺の方法 腰椎穿刺の方法 病歴聴取と神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 神経系の病気(神経疾患)の診断に一般的に用いられる画像検査としては、以下のものがあります。 CT(コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 血管造影検査 さらに読む 腰椎穿刺の方法 )。採取した髄液を観察して分析し、様々な原因の特定に役立てます。腰椎穿刺の前には頭部のCTまたはMRI検査を行うのが一般的で、例えば腫瘍や脳内出血(脳内への出血)によって頭蓋内の圧力が上昇していないかを確認します。圧力が高い状態で腰椎穿刺を行うと、脳の下で圧力が急激に低下することにより脳の位置が下側にずれ、少なくとも理論的には、脳ヘルニア ヘルニア:脳の圧迫 頭部外傷の一般的な原因には、転倒や転落、自動車事故、暴行、スポーツやレクリエーション活動中の事故などがあります。 軽症の頭部外傷では頭痛やめまいが起こることがあります。 重症の頭部外傷では、意識を失ったり、脳機能障害の症状が現れたりすることがあります。 重症の頭部外傷かどうかを調べるには、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。... さらに読む が発生または悪化する可能性があります(ただし実際に脳ヘルニアが起こることはまれです)。

それでも原因を特定できないときは、脳波検査 脳波検査 病歴聴取と神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 神経系の病気(神経疾患)の診断に一般的に用いられる画像検査としては、以下のものがあります。 CT(コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 血管造影検査 さらに読む 脳波検査 を行って脳の電気的な活動を確認することがあります。脳波検査では、腕や脚がひきつっていなくても、ときにけいれん発作が起きていることが明らかになる場合があります(非けいれん性てんかん重積状態と呼ばれます)。

予後(経過の見通し)

一般に、患者が6時間以内に音、触覚、またはその他の刺激に反応し始めれば、回復する可能性は高いです。1日目に以下のうち1つ以上がみられる場合も、回復の見込みが高いといえます。

  • 発話が回復する(内容が不可解な場合も含む)

  • 眼で物を追うことができる

  • 指示に従うことができる。

  • 収縮していた筋肉が弛緩する、筋緊張が正常に戻る

以下に挙げるように、回復の可能性は、意識障害の原因と持続時間によっても変わります。

  • 鎮静薬の過剰摂取:脳に損傷が起こるほど長時間の呼吸停止が起こっていない限り、回復が見込めます。

  • 低血糖:脳に糖が不足している状態が1時間以内であれば、完全な回復を期待できます。

  • 頭部外傷:昏睡が数週間続いても(ただし3カ月を超えない場合)、かなり回復する場合があります。

  • 脳卒中:昏睡が6時間以上続いた場合は、永続的な脳の損傷が残る可能性が高くなります。

  • 感染症:迅速に治療すれば、しばしば完全な回復が可能です。

心停止後に以下のうち1つでも該当するものがあれば、完全な回復はまれになります。

  • 1~3日経過後、明るい光を当てても瞳孔が収縮しない

  • けいれん発作が続いていて、治療しても効果が得られない

  • 3日経過後、角膜(眼の前方を覆う透明な層)に触れられても反射的にまばたきせず、痛みの刺激を与えられても腕や脚を意図的に動かさない(例えば、腕や脚を引っ込めようとする動作がない)

  • 1~2週間経過後、簡単な指示に従えない

しかし、心停止後に医師が低体温療法により患者の体を冷却していれば、通常はこれらの反応が起こるのをさらに3日待つことにします。体を冷却すれば、心停止後も脳の機能が保護される傾向がありますが、脳機能の回復も遅くなる傾向があります。

脳幹または大脳半球が機能しているかどうかを判定するため、ときに誘発反応 誘発反応検査 病歴聴取と神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 神経系の病気(神経疾患)の診断に一般的に用いられる画像検査としては、以下のものがあります。 CT(コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 血管造影検査 さらに読む 誘発反応検査 と呼ばれる検査が行われます。この検査では、弱い電気信号を発する電極を体の各部に取り付け、脳波を利用して、電気信号が脳に到達するまでの時間を測定して記録します。信号が脳に届かないことが何度も繰り返される場合は、予後が良くない傾向があります。

若い人では脳の自己修復がより速く完全に起こるため、小児や(ときに)若い成人では、高齢者と比べて回復の度合いが高くなります。

治療

  • 呼吸を助け、脳への血流を改善するための処置

  • 原因の治療

緊急治療

患者の覚醒レベルが急速に低下し、起こすことが難しくなってきている場合、迅速な治療が必要であり、診断を下す前に治療が必要になることもしばしばあります。このような急速な意識レベルの悪化がみられる場合、緊急の治療が必要です。

治療の最初の段階としては以下の点について確認を行い、これらはときに救急医療従事者が行うこともあります。

  • 気道が開通しているか

  • 呼吸が十分であるか

  • 脈拍、血圧、心拍数が正常であるか(血液が脳に確実に届いていることを確認するため)

可能であれば、問題を是正します。

患者はまず救急外来で治療され、その後病院の集中治療室に収容されます。救急外来でも集中治療室でも、看護師によって心拍数、血圧、体温、血中酸素レベルがモニタリングされます。脳がさらに損傷されるのを防ぐため、これらの値に異常があれば直ちに是正します。多くの場合、直ちに酸素投与を行い、薬やブドウ糖を速やかに投与できるように静脈ラインを確保します。

原因の治療

可能であれば、原因に対する治療を行います。

低血糖に対しては、ブドウ糖を直ちに静脈内に投与します。低血糖が原因で起こった昏睡は、このブドウ糖の投与によってすぐに回復します。このとき、ブドウ糖と一緒に、必ずチアミンが投与されます。これは、低栄養状態の人(通常の原因はアルコール乱用)にブドウ糖だけを投与すると、ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症は、チアミン欠乏により錯乱、眼の障害、平衡感覚の喪失を引き起こす脳疾患です。 ウェルニッケ脳症は、ビタミンB群の1つであるチアミンの重度の欠乏が原因で発症します。体内にチアミンが少量しか蓄えられていない場合、炭水化物の摂取が誘因となることがあります。 重度のアルコール依存症患者は、長期にわたる過剰なアルコール摂取により、消化管からのチアミンの吸収や、肝臓のチアミンの貯蓄が妨げられるため、しばしばウェルニッケ脳症を発症しま... さらに読む と呼ばれる脳疾患を誘発したり、悪化させたりすることがあるためです。

オピオイドが原因である可能性がある場合は、解毒剤であるナロキソンが投与されます。意識障害の原因がオピオイドだけである場合は、ほとんど即時に回復する可能性があります。オピオイドを使用している患者には、ナロキソンの自己注射器が処方されることがあります。患者がオピオイドを過剰摂取した場合や、その可能性が疑われる場合、家族や介護者がこの注射器を使って直ちにナロキソンを投与できます。

頭部外傷が原因であれば、医師が脊椎の損傷がないことを確認するまで、患者の首が動かないように固定しておく必要があります。頭部外傷後に昏迷または昏睡状態に陥った人には、アマンタジンのように神経細胞の機能を改善する薬による治療が有益となる場合があります。このような治療により、より早く一定水準の機能が回復する可能性があります。しかし、長期的な改善という観点からは、このような治療を行っても行わなくてもほとんど差が出ない可能性があります。

まれに、ある種の有害物質を1時間以内に飲み込んだことが疑われる場合は、太いチューブを口から胃の中に入れ、胃の内容物を吸い出すことがあります。胃の内容物を吸い出すのは、中身を調べるためと、その有害物質がさらに吸収されるのを防ぐためです。その同じチューブか鼻から入れたより細いチューブ(経鼻胃管)を介して、活性炭を投与する場合もあります。活性炭は、問題の物質が胃からさらに吸収されるのを阻止します。

呼吸を制御する治療

呼吸用のチューブ(気管内チューブ)は、鼻または口から気管に挿入されます(これを気管挿管といいます)。これにより、嘔吐が起きたときに胃の内容物を肺に吸い込んでしまう事態を予防でき、呼吸が遅すぎる場合や浅すぎる場合には人工呼吸器で呼吸を補助しやすくなります。

その他の治療

診察や検査の結果から頭蓋内圧の上昇が疑われる場合、特に医師が脳ヘルニアを疑う場合には、ドリルで頭蓋骨に小さな穴を開け、脳室(脳の内部の液体で満たされた空間)の1つに圧力をモニタリングするための装置を挿入することがあります。圧力の上昇が確認された場合は、減圧のために以下のような対策をとります。

  • ベッドの頭側を高くします。

  • 呼吸を速めるために人工呼吸器を使用することもあります。呼吸を速くすると、肺から二酸化炭素が除去され、血液中の二酸化炭素濃度が低下します。その結果、脳内の血管が狭くなり、脳に到達する血液が少なくなります。こうして、人工呼吸器を使用することで頭蓋内圧を一時的に低下させることができます。

  • 脳内および全身の体液を減らすために利尿薬などの薬が使用されることもあります。利尿薬は、腎臓がナトリウムと水を尿中に排泄するのを促すことにより、過剰な体液の除去を助けます。

  • 筋肉の過度の不随意収縮は頭蓋内圧を高める可能性があり、それを抑えるために鎮静薬が投与されることもあります。

  • 血圧を下げることがあります(特に血圧がすでに高い場合)。

脳腫瘍または脳膿瘍によって頭蓋内の圧力が高まっている場合は、圧力を下げるためにデキサメタゾンなどのコルチコステロイドが役立つ場合があります。しかし、コルチコステロイドは脳内出血や脳卒中などの特定の病気を悪化させる可能性があるため、そのような病気によって圧力が高まっている場合は、コルチコステロイドは使用しません。

ほかの方法で効果がなければ、以下の手段が試みられます。

  • 頭部外傷または心停止の後に圧力が上昇した場合、体温を下げる対策を試みることがあります。しかし、こうした対策が効果的であるかどうかは、明らかになっていません。

  • ペントバルビタール(バルビツール酸系薬剤の一種)を用いて、人為的に昏睡状態にすることがあります。その結果として、脳への血流が減少し、脳の活動が低下します。この治療により、人によっては予後が改善する場合があります。しかし、すべての人に有益というわけではなく、低血圧や不整脈などの副作用があります。

  • 外科的に頭蓋骨を開き(開頭術)、腫れた脳が広がれるスペースを作り、脳にかかる圧力を下げることもあります。この治療によって死を回避することはできますが、機能はあまり改善しないかもしれません。

長期的なケア

昏睡状態にある人には包括的なケアが必要になります。栄養は鼻から胃に挿入したチューブを介して与えられます(経管栄養 経管栄養 経管栄養は、消化管は正常に機能しているものの、十分に栄養所要量を満たすほど食べられない人に、栄養を与えるために用いられることがあります。例としては、以下の状態の人が挙げられます。 長期間にわたる食欲不振 重度のタンパク-エネルギー低栄養(重度のタンパク質とカロリーの欠乏症) 昏睡または覚醒レベルの大幅な低下 肝不全 さらに読む 経管栄養 と呼ばれます)。腹部を切開して直接胃にチューブを挿入し、そのチューブから栄養を胃または小腸に送り込むこともあります。このチューブから薬を投与することもあります。

拘縮を予防するため、患者の関節をすべての方向に優しく動かしたり(他動的関節可動域訓練)、関節を特定の姿勢で固定したりするケアを理学療法士が行います。

血栓の予防策として、薬剤の使用や脚の圧迫または挙上などが行われます。他動的関節可動域訓練で行うように、四肢を動かすことも血栓の予防に役立つ可能性があります。

床ずれは、頻繁に体位を変えるとともに、ベッドの表面に接する部分(かかとなど)の下に保護パッドを置いて保護することで、予防することができます。

まばたきができないため、眼が乾燥することがあります。これには点眼薬が有用です。

失禁がある場合は、皮膚を清潔で乾燥した状態に保つためのケアが必要です。膀胱が機能せず、尿がたまってしまう場合は、膀胱にチューブ(カテーテル)を留置して排尿させます。尿路感染症を予防するため、カテーテルは丁寧に洗浄し、定期的に点検を行います。

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