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HIV関連認知症

執筆者:

Juebin Huang

, MD, PhD, Department of Neurology, University of Mississippi Medical Center

医学的にレビューされた 2020年 4月
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HIV関連認知症とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が脳に感染することで精神機能が進行性に悪化する病気です。

  • 他の大半の種類の認知症と異なり、HIV関連認知症は比較的若い人に発生する傾向があります。

  • この種の認知症は、発生当初は目立たないことが多いのですが、数カ月から数年間かけて着実に進行してい、典型的にはHIVの感染による他の症状が現れた後に発症します。

  • HIV関連認知症の診断は、症状と精神状態検査、HIVの血液検査、画像検査の結果に基づいて下されます。

  • 抗レトロウイルス療法によるHIV感染症の治療は、ときに精神機能の劇的な改善をもたらしますが、この治療によって認知症が治癒することはありません。

HIV感染症の患者では、別の病気から認知症が発生することもあり、例えば、脳を侵す リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、Bリンパ球やTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です。Bリンパ球は、いくつ... さらに読む リンパ腫の概要 や、免疫機能が低下しているHIV感染症患者がかかりやすい感染症などが原因になります。このような感染症は日和見感染症と呼ばれ、 進行性多巣性白質脳症 進行性多巣性白質脳症(PML) 進行性多巣性白質脳症は、JC(John Cunningham)ウイルスが原因で起こる、まれな脳の感染症です。 この病気に特にかかりやすいのは免疫機能が低下している人です。 動きがぎこちなくなったり、話すのが難しくなったり、部分的な失明が生じたりすることがあり、精神機能が急速に低下します。 通常は9カ月以内に死に至ります。 頭部の画像検査と腰椎穿刺が行われます。 さらに読む トキソプラズマ症 トキソプラズマ症 トキソプラズマ症は、単細胞の寄生虫であるトキソプラズマ原虫 Toxoplasma gondiiによる感染症です。通常は症状を引き起こしませんが、一部の患者ではリンパ節の腫れ、発熱、漠然とした体調の悪さがみられ、ときにはのどの痛みまたはかすみ目や眼の痛みが現れることもあります。エイズまたは他の病気によって免疫機能が低下している人では、トキソプラズマ症が再活性化することがあり、その場合、通常は脳に影響が及びます。感染症が再活性... さらに読む (寄生虫感染症の一種)、 真菌による髄膜炎 亜急性および慢性髄膜炎 亜急性慢性髄膜炎は、髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)に数日から数週間で炎症が起きる病気です。慢性髄膜炎は、緩やかに進行する髄膜炎が4週間以上にわたり続く場合です。 炎症を引き起こす多くの感染症や病気が、慢性髄膜炎の原因になる可能性があります。 免疫機能が低下していると、慢性髄膜炎のリスクが高まります。 症状は通常、急性細菌性髄膜炎のもの(頭痛、発熱、項部硬直)に似ていますが、それ以外に錯乱、難聴、複視がみ... さらに読む (表「 エイズに合併する一般的な日和見感染症 エイズに合併する一般的な日和見感染症 エイズに合併する一般的な日和見感染症 」を参照)などがあります。なかには治療可能な感染症もあり、いくぶんの改善がみられることもあります。

他の大半の種類の認知症と異なり、HIV関連認知症は比較的若い人に発生する傾向があります。

認知症は後期のHIV感染症患者の7~27%にみられますが、30~40%の患者により軽度のHIV関連認知症がみられることがあります。

  • 認知症では主に記憶力が障害され、せん妄では主に注意力が障害されます。

  • 認知症は一般にゆっくり発生し、いつ始まったのかをはっきり特定できません。せん妄は突然発生し、たいていいつ始まったのかをはっきり特定できます。

症状

HIV関連認知症は、発生当初は目立たないことが多いのですが、数カ月から数年間かけて着実に進行していきます。通常はHIV感染症による他の症状が現れた後に発生します。

HIV関連認知症の初期症状には以下のものがあります。

  • 思考やその表出が遅くなる

  • 集中力の低下

  • 無関心

しかし病識はあります。動きが緩慢になって、筋力が低下するほか、協調運動障害が起きることもあります。

一部の患者では、 幻覚 幻覚 健常者の間でも、全体的なパーソナリティ、気分、行動には大きな個人差があります。また各個人でも、状況に応じて日毎に変化があります。しかし、パーソナリティや行動に突然大きな変化がみられることは、特に明らかな出来事(薬の服用、大切な人を亡くすなど)と関連していない場合、しばしば何らかの問題があることを意味します。 ( 精神障害の概要も参照のこと。) パーソナリティや行動の変化は、おおまかに以下のいずれかに分類することができます。... さらに読む 妄想 妄想 健常者の間でも、全体的なパーソナリティ、気分、行動には大きな個人差があります。また各個人でも、状況に応じて日毎に変化があります。しかし、パーソナリティや行動に突然大きな変化がみられることは、特に明らかな出来事(薬の服用、大切な人を亡くすなど)と関連していない場合、しばしば何らかの問題があることを意味します。 ( 精神障害の概要も参照のこと。) パーソナリティや行動の変化は、おおまかに以下のいずれかに分類することができます。... さらに読む 、パラノイアなどの精神病症状が生じます。躁状態になる場合もあります。すなわち、落ち着きがなく過活動になるということです。早口にしゃべったり、適切な判断をせずに行動してしまうこともあります。

HIV関連認知症は、治療しなければ通常は進行し、やがて重症化します。

診断

  • 認知症、HIV感染症、またはその両方についての医師による評価

  • HIV感染症の重症度を確認する血液検査

  • MRI検査のほか、通常は腰椎穿刺

一般に、HIV感染症患者における認知症の診断は、他の認知症の診断と似ています。

医師は、患者に認知症があるかどうかを判定し、あればそれがHIV関連認知症であるかどうかを判定しなければなりません。

認知症の診断

医師は、以下の点に基づいて認知症を診断します。

精神状態検査は、簡単な質問と課題から成り、患者が認知症を有するかどうかを判定する上で役立ちます。

ときに、より詳細な検査(神経心理学的検査)が必要になります。この検査は気分を含めた重要な精神機能をすべて網羅していて、通常は終了までに1~3時間かかります。この検査は、 加齢に伴う記憶障害 認知症 軽度認知障害 認知症 うつ病 認知症 などの類似の症状を引き起こす病気から認知症を鑑別する上で役立ちます。

HIV関連認知症の診断

HIV感染症があるかどうか分からない患者に、認知症の症状が現れ、患者にHIV感染症の危険因子がある場合、医師はHIV関連認知症を疑い、HIV感染症の検査と同時に認知症の検査を行います。

その結果HIV感染症の診断がついた場合や、HIV感染症の患者に精神機能の変化がみられた場合には、MRI検査を行って トキソプラズマ症 トキソプラズマ症 トキソプラズマ症は、単細胞の寄生虫であるトキソプラズマ原虫 Toxoplasma gondiiによる感染症です。通常は症状を引き起こしませんが、一部の患者ではリンパ節の腫れ、発熱、漠然とした体調の悪さがみられ、ときにはのどの痛みまたはかすみ目や眼の痛みが現れることもあります。エイズまたは他の病気によって免疫機能が低下している人では、トキソプラズマ症が再活性化することがあり、その場合、通常は脳に影響が及びます。感染症が再活性... さらに読む リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、Bリンパ球やTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です。Bリンパ球は、いくつ... さらに読む リンパ腫の概要 など脳機能不全の他の原因がないかを確認します。突然精神機能の変化が起こった場合は、早く治療すれば余命を延長できる可能性があるため、原因を迅速に特定する必要があります。治療しなければ、HIV関連認知症の発症から6カ月以内に死に至ります。

HIV感染症がある場合、またはHIV関連認知症が疑われる人の場合には、血液検査も行い、以下の項目を測定します。

これらの検査の結果は、HIV感染症の重症度を判定する際に参考になります。CD4陽性細胞数が非常に少なく、ウイルス量が非常に多いと、脳感染症、リンパ腫、HIV関連認知症のリスクが高まります。

治療

  • 抗レトロウイルス薬

治療では、他の認知症の場合と同様に、安全と支援を提供するための一般的な対策が講じられます。

安全対策と患者の支援

一般に、明るく楽しげで、落ち着いた安全な環境が望ましく、また見当識を保つ工夫をするとよいでしょう。ラジオやテレビなどの適度な刺激も有用ですが、過度の刺激は避けるべきです。

物の配置や1日のスケジュールを定型化することは、認知症患者が見当識を保つのに役立ち、安心感や安定感を与えます。周囲の環境や日課が変わる場合や、介護者が交代する場合は、明確かつ簡潔に説明します。

入浴、食事、睡眠など日常生活のスケジュールを一定に保つことは、HIV関連認知症患者の記憶の助けになります。就寝前の手順を一定に保つと、睡眠の質を改善できる可能性があります。

その他の活動を定期的なスケジュールで組み込むと、楽しい活動や生産的な行為に注意が向き、自立して他者から必要とされているという感覚をもつのに役立ちます。こういった活動には身体的活動と精神的活動を両方含めるべきです。認知症が悪化してきた場合には、活動を細かく分けたり単純化したりする必要があります。

介護者に対するケア

認知症患者の介護は多くのストレスがかかる重労働であり、介護者は自分自身の精神的・肉体的健康に無頓着になりがちで、抑うつ状態になったり疲弊困憊したりすることがあります。以下のような対策が介護者の助けになります(表「 介護者に対するケア 介護者へのケア 介護者へのケア 」を参照)。

  • 認知症患者のニーズを効果的に満たす方法を学び、認知症患者に何が期待できるかを知る:介護者は、このような情報を、看護師、ソーシャルワーカー、関係団体、雑誌やインターネットから得ることができます。

  • 必要な場合は支援を求める:介護者は、ソーシャルワーカー(地域病院にいる人を含みます)に相談し、デイケアプログラム、訪問看護、パートまたはフルタイムのホームヘルパー、住み込みでの介護サービスなどの適切な支援について検討することもできます。また、家族支援団体に相談することも有用です。

  • 介護者自身に対するケア:介護者は自分自身にも気を配る必要があります。友人との交流、趣味、種々の活動を諦めてはいけません。

終末期の問題

HIV関連認知症の人は、意思決定能力が大きく損なわれる前に、医療方針についての様々な決定を行っておくとともに、金銭上および法律上の手続きも済ませておくべきです。こうした取り決めを記載した書類は 事前指示書 事前指示書 医療に関する事前指示書は、ある人が医療に関する決断を下すことができなくなった場合に、医療についての本人の希望を伝達する法的文書です。事前指示書には、基本的にリビングウィルと医療判断代理委任状の2種類があります。( 医療における法的問題と倫理的問題の概要も参照のこと。) リビングウィルは、終末期ケアに代表されるような、個人が医療に関する決定能力を喪失する事態に備え、将来の医学的治療に関する指示や要望を事前に表明するものです。... さらに読む と呼ばれます。患者は自分の代わりに治療に関する決定を行う人(医療代理人)を法律に基づいて指名し、 治療に関する希望 終末期の治療選択肢 終末期ケアの選択肢には多くの場合、余命が短くなるおそれがあるが快適な状態を保つ治療を受けるか、わずかでも余命を延ばすために不快で自由が損なわれる積極的な治療を試みるか、という決断が含まれます。例えば、重度の肺疾患で死期が近づいている場合は、人工呼吸器(呼吸を補助する装置)を使用することで余命を延ばすことができます。しかし、ほとんどの人は人工呼吸器の装着を非常に不快に感じ、たびたび強い鎮静を望みます。... さらに読む について、その代理人および主治医と話し合っておくべきです。こうした問題は、実際に意思決定が必要になる前に、できるだけ早く関係者全員で話し合っておく必要があります。

認知症が悪化するに従って、治療の重点は、余命を延ばすことから快適さを保つことに移されていきます。

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