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血管性認知症

執筆者:

Juebin Huang

, MD, PhD, Memory Impairment and Neurodegenerative Dementia (MIND) Center, University of Mississippi Medical Center

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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血管性認知症とは、脳組織への血液供給が減少または途絶し、脳組織が破壊されることにより精神機能が失われる病気です。原因は通常脳卒中であり、少数の大きな脳卒中による場合もあれば、多数の小さな脳卒中による場合もあります。

  • 脳に血液を供給する血管が損傷される病気(通常は脳卒中)は、認知症を引き起こす可能性があります。

  • 症状は連続的に徐々に進行するのではなく、段階的に進行する傾向があります。

  • 脳卒中の危険因子または症状のある患者における認知症は、たいてい血管性認知症です。

  • 脳卒中の危険因子を除去すると、脳組織のさらなる損傷を遅らせたり予防したりできる可能性があります。

せん妄と認知症の概要認知症も参照のこと。)

血管性認知症は、高齢者の認知症の原因として2番目に多いものです。

認知症とは、記憶、思考、判断、学習能力などの精神機能が、ゆっくりと進行性に低下する病気です。認知症とせん妄は異なる病態であり、せん妄は注意力および思考力の低下、見当識障害、覚醒(意識)レベルの変動を特徴とします。

  • せん妄では主に注意力が障害され、

  • 認知症は一般にゆっくり発生し、いつ始まったのかをはっきり特定できません。せん妄は突然発生し、たいていいつ始まったのかを特定できます。

脳卒中を繰り返すと、血管性認知症になることがあります。こういった脳卒中は男性に多く、通常は70歳以降に始まります。

血管性認知症の危険因子には以下のものがあります。

高血圧、糖尿病、動脈硬化は脳内の血管に損傷を与えます。心房細動では、心臓内で血栓が形成されることによって脳卒中の発生リスクが高まります。凝固過剰の原因になる病気は、脳卒中のリスクも高めます。血管性認知症は、他の種類の認知症と異なり、脳卒中の危険因子を是正または除去することで予防できる可能性があります。

虚血性脳卒中の原因:血栓と塞栓

脳に向かう動脈が閉塞する(詰まる)と、虚血性脳卒中が起こる可能性があります。動脈の閉塞は、動脈硬化によってできた脂肪の沈着物(アテローム、プラーク)によって起こることがあります。アテロームは、首の動脈、なかでも特に内頸動脈によくできます。

動脈の閉塞は血液のかたまり(血栓)によって起こることもあります。血栓は動脈のアテロームのところにできることもあれば、心疾患がある人では心臓にできることもあります。血栓は一部が剥がれて落ちて、血流に乗って別の部位に運ばれること(塞栓)があります。塞栓は、脳動脈など、脳に血液を供給する動脈をふさぐことがあります。

虚血性脳卒中の原因:血栓と塞栓

脳卒中になると、脳の一部への血液供給が止まって、脳組織が破壊されます。このようにして破壊された脳組織の領域を梗塞と呼びます。

認知症は、少数の大きな脳卒中が原因で起こる場合もあれば、多数の小さな脳卒中が原因で起こる場合もあります。大したものではないと考えられたり、気づかれてすらいない脳卒中が、認知症に寄与することもあります。しかし、このように小さな脳卒中であっても何度も起こることにより、脳組織が一定量以上破壊されると、認知症が発生します。したがって、脳卒中によって重度の症状やようやく気づく程度の症状が起こる前に、血管性認知症が発生する場合もあります。

血管性認知症には、以下のような病気があり、いずれもある程度重複することがあります。

  • 多発脳梗塞性認知症:複数の脳卒中(通常は中程度の大きさの血管が関与した脳卒中)によって生じる認知症です。

  • ラクナ梗塞病:多数のラクナ梗塞(細い血管の閉塞に起因する脳卒中)による多発脳梗塞性認知症に対して、ときにこの用語が用いられます。

  • ビンスワンガー型認知症:コントロール不良の重度の高血圧と全身の血管が侵される血管疾患がある人において、いくつかの細い脳血管が閉塞するラクナ梗塞が起きる病気です。

  • 戦略的部位の単一梗塞による認知症:極めて重要な脳領域における単一の部位が破壊されます。

血管性認知症は、しばしばアルツハイマー病と併発します(混合型認知症)。

症状

アルツハイマー病による認知症と異なり、血管性認知症は段階的に進行します。症状が突然悪化することがあり、その後はしばらく同じ状態が続くか、いくぶん改善することもあります。数カ月から数年後に再度脳卒中が起こると、症状が悪化します。多数の小さな脳卒中が原因で起こる認知症は、少数の大きな脳卒中によって起こる認知症より小刻みに進行する傾向があります。小さな脳卒中による変化は軽微であるため、段階的にではなく、連続的に徐々に進行しているかのように見えることがあります。

血管性認知症の症状(記憶障害、活動や課題の計画と開始が困難になる、思考が鈍くなる、徘徊を繰り返す)は、その他の認知症の症状と同様です。しかしアルツハイマー病と比べると、血管性認知症では記憶障害に至るまでの時間が長く、判断力と人格への影響が小さい傾向がみられます。血管性認知症では、アルツハイマー病よりも早期に、活動を計画して開始することが困難になる傾向があります。思考が著しく遅くなる可能性もあります。

具体的な症状は、脳のどの領域が破壊されたかによって変わってきます。通常、脳卒中では脳の一部の組織しか破壊されないため、精神機能の一部は障害を免れます。したがって、患者は精神機能の低下を強く自覚している場合もあり、その結果、別の種類の認知症患者より抑うつ状態に陥りやすくなります。

脳卒中の回数が増え、認知症が進行するにつれて、脳卒中による別の症状が生じる場合もあります。例えば、(1)腕または脚に筋力低下や麻痺が生じる、(2)発話が困難になる(話し方が不明瞭になるなど)、(3)眼がかすむ、または視力が低下するもしくは完全に失われる、(4)協調運動ができなくなり、歩行が不安定になる、(5)不適切な状況で笑ったり泣いたりする、(6)膀胱を制御するのが困難になって、尿失禁を起こす、などの症状が現れます。

通常は症状が始まってから5年以内に、10人中6人が死亡します。多くの場合、死因は脳卒中または心臓発作です。

診断

  • 医師による認知症の評価

  • CTまたはMRI検査

血管性認知症の症状は、他の認知症の症状と似ています。

医師は、患者に認知症があるかどうかを判定し、あればそれが血管性認知症であるかどうかを判定しなければなりません。

認知症の診断

診断では以下のような情報が参考にされます。

  • 症状(本人、家族、その他の介護者に質問することで特定する)

  • 身体診察の結果

  • 精神状態検査の結果

  • CTまたはMRI検査などの追加検査の結果

精神状態検査は、簡単な質問と課題から成り、患者が認知症を有するかどうかを判定する上で役立ちます。

ときに、より詳細な検査(神経心理学的検査)が必要になります。この検査は気分を含めた重要な精神機能をすべて網羅していて、通常は終了までに1~3時間かかります。この検査は、加齢に伴う記憶障害軽度認知障害うつ病などの類似の症状を引き起こす病気から認知症を鑑別する上で役立ちます。

上記の検査や情報は、症状の原因としてせん妄を除外する上でも役立ちます( せん妄と認知症の比較)。せん妄は迅速な治療によって回復を望めるため、この判断は不可欠です。

血管性認知症の診断

脳卒中の危険因子や脳卒中の症状がある人が認知症と診断された場合、医師は血管性認知症を疑います。そして、脳卒中の有無を確認するため徹底的した評価を行います。脳卒中の徴候を確認するため、CTまたはMRI検査が行われます。これらの検査の結果は診断の補助になりますが、決定的ではありません。

治療

  • 安全対策と患者の支援

  • リスクを増大させる病態の管理

血管性認知症の治療では、すべての認知症の場合と同様に、安全と支援を提供するための一般的な対策が講じられます。

安全対策と患者の支援

患者の支えとなる安全な環境を整えることは非常に役立ちます( 認知症患者に適した環境を作る)。

一般に、明るく楽しげで、落ち着いた安全な環境が望ましく、ラジオやテレビなどの適度な刺激も必要です。ラジオやテレビなどの適度な刺激も有用ですが、過度の刺激は避けるべきです。

物の配置や1日のスケジュールを定型化することは、認知症患者が見当識を保つのに役立ち、安心感や安定感を与えます。周囲の環境や日課が変わる場合や、介護者が交代する場合は、明確かつ簡潔に説明します。

入浴、食事、睡眠など日常生活のスケジュールを一定に保つことは、血管性認知症患者の記憶の助けになります。就寝前の手順を一定に保つと、睡眠の質を改善できる可能性があります。

その他の活動を定期的なスケジュールで組み込むと、楽しい活動や生産的な行為に注意が向き、自立して他者から必要とされているという感覚をもつのに役立ちます。こういった活動には身体的活動と精神的活動を両方含めるべきです。認知症が悪化してきた場合には、活動を細かく分けるか単純化するべきです。

リスクを高める病態の管理

血管性認知症のリスクを高める病態(糖尿病、高血圧、コレステロール高値)を治療することは、血管性認知症を予防し、進行を遅らせたり止めたりするのに役立ちます。禁煙も推奨されます。

さらなる脳卒中の予防に役立てるため、医師は脳卒中の危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙、コレステロール高値、肥満、運動不足)を管理する対策を推奨します。

アスピリンなど、血栓が形成されにくくする薬を処方したり、心房細動や凝固過剰を引き起こす病気がある人には、ワルファリン(抗凝固薬)を処方することもあります。これらの薬剤は、脳卒中が再発するリスクの軽減に役立ちます。

薬剤

血管性認知症に対する特別な治療法はありません。血管性認知症の人がアルツハイマー病を併発している場合もあるため、アルツハイマー病に用いられるコリンエステラーゼ阻害薬(リバスチグミンなど)やメマンチンが使用されることがあります。

うつ病がある場合は、抗うつ薬で治療します。

介護者に対するケア

認知症患者の介護は多くのストレスがかかる重労働であり、介護者は自分自身の精神的・肉体的健康に無頓着になりがちで、抑うつ状態になったり疲弊困憊したりすることがあります。以下のような対策が介護者の助けになります( 介護者へのケア)。

  • 認知症患者のニーズを効果的に満たす方法を学び、認知症患者に何が期待できるかを知る:介護者は、このような情報を、看護師、ソーシャルワーカー、関係団体、雑誌やインターネットから得ることができます。

  • 必要な場合は支援を求める:介護者は、ソーシャルワーカー(地域病院にいる人を含みます)に相談し、デイケアプログラム、訪問看護、パートまたはフルタイムのホームヘルパー、住み込みでの介護サービスなどの適切な支援について検討することもできます。また、家族支援団体も助けになります。

  • 介護者自身に対するケア:介護者は自分自身にも気を配る必要があります。友人との交流、趣味、種々の活動を諦めてはいけません。

終末期の問題

血管型認知症の人は、意思決定能力が大きく損なわれる前に、医療方針についての様々な決定を行っておくとともに、金銭上および法律上の手続きも済ませておくべきです。こうした取り決めを記載した書類は事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)と呼ばれます。患者は自分の代わりに治療に関する決定を行う人(医療代理人)を法律に基づいて指名し、治療に関する希望について、その代理人および主治医と話し合っておくべきです。こうした問題は、実際に意思決定が必要になる前に、できるだけ早く関係者全員で話し合っておくことが最善です。

認知症が悪化するに従って、治療の重点は、余命を延ばすことから快適さを保つことに移されていきます。

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