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前頭側頭型認知症

執筆者:

Juebin Huang

, MD, PhD, Memory Impairment and Neurodegenerative Dementia (MIND) Center, University of Mississippi Medical Center

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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前頭側頭型認知症とは、脳の一部(主に前頭葉、ときに側頭葉)の組織が変性する遺伝性または原因不明の病気によって発生する一群の認知症を指します。

  • アルツハイマー病と比べると、人格、行動および言語機能への影響が大きく、記憶への影響は少ない傾向があります。

  • 診断は症状と神経学的診察の結果に基づいて下され、脳損傷を評価するために画像検査も行われます。

  • 治療の目標は症状を管理することです。

せん妄と認知症の概要認知症も参照のこと。)

認知症とは、記憶、思考、判断、学習能力などの精神機能が、ゆっくりと進行性に低下する病気です。認知症とせん妄は異なる病態であり、せん妄は注意力および思考力の低下、見当識障害、覚醒(意識)レベルの変動を特徴とします。

  • 認知症では主に記憶力が障害され、せん妄では主に注意力が障害されます。

  • 認知症は一般にゆっくり発生し、いつ始まったのかをはっきり特定できません。せん妄は突然発生し、たいていいつ始まったのかをはっきり特定できます。

認知症患者の10人に1人が前頭側頭型認知症です。典型例では、65歳以下で発症します。男女差はほとんどなく、

前頭側頭型認知症は家族内で遺伝する傾向があります。前頭側頭型認知症のおよそ半数が遺伝性のものです。

脳細胞中のタウタンパクの量または種類に異常がみられます。

前頭側頭型認知症では、前頭葉と側頭葉が萎縮して、神経細胞が失われます。これらの領域は、人格や行動に関わっています。

前頭側頭型認知症には複数の型があります。

症状

前頭側頭型認知症は進行性の病気ですが、一般的な認知症の状態に至るまでの期間には個人差があります。

概して、前頭側頭型認知症はアルツハイマー病と比べて、人格、行動、言語機能への影響が大きく、記憶への影響は小さい傾向があります。前頭側頭型認知症の人は、抽象的に考えること、注意を維持すること、言われたことを思い出すことなども困難になります。ある課題を遂行するために、アイデアを出したり、正しい手順を踏むこと(順序立て)も苦手になり、すぐに気が散ります。一方で、通常は時間、日付、場所に関する認識は維持されていて、日常生活行為は行うことができます。

筋肉が侵される場合もあります。その場合、筋力が低下し、筋肉が萎縮していきます。頭頸部の筋肉に異常が生じると、飲み込む、食べものをかむ、話すなどの行為が困難になります。食べもの、唾液、嘔吐物を肺に吸い込む(誤嚥する)と、誤嚥性肺炎が起こることがあります。

発生する症状は、前頭葉または側頭葉のどの部分が侵されているかによって異なりますが、具体的には以下のものがあります。

  • 人格および行動の変化

  • 言語能力に関する問題

複数の種類の症状がみられることもあり、特に認知症が進行するとその傾向が強くなります。

人格および行動の変化

前頭側頭型認知症では、遠慮をしなくなる結果、不適切な行動が増えることがあります。失礼な発言が増えたり、性的な興味が異常に強くなったりする場合もあります。

衝動的な行動や強迫的な行動がみられることもあります。例えば、同じ行動を何回も繰り返す、毎日同じ場所に歩いて行く、やみくもに物を手に取っていじる、物を口に入れる、自分の唇を吸ったり鳴らしたりする、過食や極度の偏食をする、などの症状がみられます。

また、身の回りの衛生状態に気を配らなくなります。

言語能力に関する問題

前頭側頭型認知症患者のほとんどは、言葉を見つけるのが困難になり、言葉の使用と理解が次第に困難になります(失語)。声を出すことが物理的に難しくなる人もいます(構音障害)。また、注意力を維持するのが非常に難しくなります。10年以上にわたって言語障害だけで推移する人もいる一方、2~3年で別の症状が現れる人もいます。

言葉を理解できなくても流暢に話す人もいますが、その場合、話す内容はまったく意味を成しません。物の名前を思い出すのが難しくなることや(失名詞)、人の顔を認識するのが難しくなることもあります(相貌失認)。

認知症が進行するにつれ、患者はますます話さなくなり、自分や他者が言ったことを繰り返すようになります。最終的には、まったく話さなくなります。

診断

  • 医師による評価

  • CTまたはMRI検査

医師は、患者に認知症があるかどうかを判定し、あればそれが前頭側頭型認知症であるかどうかを判定しなければなりません。

認知症の診断

診断では以下のような情報が参考にされます。

  • 症状(本人、家族、その他の介護者に質問することで特定する)

  • 神経学的診察を含む身体診察の結果

  • CTまたはMRI検査などの追加検査の結果

患者が自分の症状に気がついていないこともあるため、家族から事情を聞くことが必要になる場合もあります。

精神状態検査は、簡単な質問と課題から成り、患者が認知症を有するかどうかを判定する上で役立ちます。

ときに、より詳細な検査(神経心理学的検査)が必要になります。この検査は気分を含めた重要な精神機能をすべて網羅していて、通常は終了までに1~3時間かかります。この検査は、加齢に伴う記憶障害軽度認知障害うつ病などの類似の症状を引き起こす病気から認知症を鑑別する上で役立ちます。

上記の検査や情報は、症状の原因としてせん妄を除外する上でも役立ちます( せん妄と認知症の比較)。認知症と異なり、せん妄は迅速な治療によって回復を望めるため、せん妄を除外することは極めて重要です。

前頭側頭型認知症の診断

前頭側頭型認知症の診断は、発症の過程も含め、典型的な症状に基づいて下されます。

脳のどこにどの程度の損傷があるかを調べ、考えられる他の原因(脳腫瘍脳膿瘍脳卒中など)の可能性を否定するため、CT検査とMRI検査を行います。しかし、CT検査やMRI検査では、かなり進行するまで前頭側頭型認知症に特徴的な変化を検出できない可能性があります。PET(陽電子放出断層撮影)検査は、前頭側頭型認知症とアルツハイマー病を鑑別するのに役立つ可能性があります。

治療

  • 症状の緩和

  • 患者の支援

前頭側頭型認知症に対する特別な治療法はありません。

一般に、治療では以下の点に重点が置かれます。

  • 症状の管理

  • 支援の提供

例えば、強迫的な行動が問題である場合には、抗精神病薬が使用されることがあります。言語に関わる問題がある場合は言語療法が役立ちます。

安全対策と患者の支援

患者の支えとなる安全な環境を整えることは非常に役立ちます( 認知症患者に適した環境を作る)。

一般に、明るく楽しげで、落ち着いた安全な環境が望ましく、また見当識を保つ工夫をするとよいでしょう。ラジオやテレビなどの適度な刺激も有用ですが、過度の刺激は避けるべきです。

物の配置や1日のスケジュールを定型化することは、前頭側頭型認知症患者が見当識を保つのに役立ち、安心感や安定感を与えます。周囲の環境や日課が変わる場合や、介護者が交代する場合は、明確かつ簡潔に説明します。

入浴、食事、睡眠など日常生活のスケジュールを一定に保つことは、前頭側頭型認知症患者の記憶の助けになります。就寝前の手順を一定に保つと、睡眠の質を改善できる可能性があります。

その他の活動を定期的なスケジュールで組み込むと、楽しい活動や生産的な行為に注意が向き、自立して他者から必要とされているという感覚をもつのに役立ちます。こういった活動には身体的活動と精神的活動を両方含めるべきです。認知症が悪化してきた場合には、活動を細かく分けたり単純化したりする必要があります。

介護者に対するケア

認知症患者の介護は多くのストレスがかかる重労働であり、介護者は自分自身の精神的・肉体的健康に無頓着になりがちで、抑うつ状態になったり疲弊困憊したりすることがあります。以下のような対策が介護者の助けになります( 介護者へのケア)。

  • 認知症患者のニーズを効果的に満たす方法を学び、認知症患者に何が期待できるかを知る:例えば、認知症患者の間違いやもの忘れを叱っても、患者の行動がますます悪化するだけであることを介護者は知っておく必要があります。

  • 必要な場合は支援を求める:介護者は、ソーシャルワーカー(地域病院にいる人を含みます)に相談し、デイケアプログラム、訪問看護、パートまたはフルタイムのホームヘルパー、住み込みでの介護サービスなどの適切な支援について検討することもできます。また、家族支援団体に相談することも有用です。

  • 介護者自身に対するケア:介護者は自分自身にも気を配る必要があります。友人との交流、趣味、種々の活動を諦めてはいけません。

終末期の問題

前頭側頭型認知症の人は、意思決定能力が大きく損なわれる前に、医療方針についての様々な決定を行っておくとともに、金銭上および法律上の手続きも済ませておくべきです。こうした取り決めを記載した書類は事前指示書と呼ばれます。患者は自分の代わりに治療に関する決定を行う人(医療代理人)を法律に基づいて指名し、治療に関する希望について、その代理人および主治医と話し合っておくべきです。こうした問題は、実際に意思決定が必要になる前に、できるだけ早く関係者全員で話し合っておく必要があります。

前頭側頭型認知症が悪化するに従って、治療の重点は、余命を延ばすことから快適さを保つことに移されていきます。

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