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肺がん

執筆者:

Robert L. Keith

, MD, Division of Pulmonary Sciences and Critical Care Medicine, University of Colorado School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 4月
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本ページのリソース
  • 肺がんの最も一般的な原因は喫煙です。

  • よくみられる症状は、持続性のせき、または、性状が変化する慢性的なせきです。

  • 肺がんの大部分は胸部X線検査で発見できますが、他の画像検査や生検をさらに行う必要があります。

  • 肺がんの治療には、手術、化学療法、分子標的療法、放射線療法のいずれも用いられます。

男女ともに、がんによる死亡の中で最も多い原因が肺がんです。肺がんによる死亡者数は、男性では減少しつつあり、女性では数十年間にわたって増加した後、横ばいまたは減少に向かっているようです。このような傾向は、この30年間で喫煙者の数の変化を反映しています。2018年における、肺がんによる推定死亡者数は15万4000人(男性が約8万3500人、女性が約7万500人)を超えています。この数字は、すべてのがんによる死亡者数の約25%に相当します。

原発性肺がんは、肺の細胞に由来するがんです。原発性肺がんは、気管から分かれて肺につながる気道(気管支)や肺にある小さな空気の袋(肺胞)に発生することがあります。

転移性肺がんは、別の場所(主に乳房、結腸、前立腺、腎臓、甲状腺、胃、子宮頸部、直腸、精巣、骨、皮膚)に発生したがんが肺に広がった(転移した)ものです。

原発性肺がんは、主に次の2つに分類されます。

  • 非小細胞肺がん:肺がんの約85~87%が、これに分類されます。このがんは、小細胞肺がんよりもゆっくりと増殖します。それでも、約40%の患者では、診断を受けた時点で、すでに胸部以外の部位にがんが広がっています。非小細胞肺がんの中で最もよくみられるタイプは、扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんです。

  • 小細胞肺がん:この肺がんは燕麦細胞がんとも呼ばれ、すべての肺がんのうち13~15%を占めています。非常に進行が速く、急速に広がります。ほとんどの患者が診断を受けた時点で、すでに体の別の部位にがんが広がっています。

まれな肺がんには以下のものがあります。

原因

肺がんの原因として最も多いのはタバコの喫煙で、肺がん全体の約85%を占めます。肺がんが発生するリスクは、喫煙したタバコの本数と喫煙年数の両方によって変わります。それでも、肺がんが発生しないヘビースモーカーもいます。禁煙した場合は、肺がんになるリスクが低下しますが、まったく喫煙したことのない人に比べるとリスクの高い状態が続きます。

肺がん患者の約15~20%は、まったく喫煙したことがない、またはごくわずかしか喫煙したことがない人です。このような人に肺がんが発生する理由は分かっていませんが、遺伝子の突然変異が原因ではないかといわれています。

ほかに考えられる危険因子には、大気汚染、マリファナの喫煙、葉巻の煙への曝露やタバコの受動喫煙、職場で触れたり吸い込んだりする発がん性物質(アスベスト、放射線、ラドン、ヒ素、クロム酸塩、ニッケル、クロロメチルエーテル、多環芳香族炭化水素、マスタードガス、コークス炉排出物など)のほか、もっぱら調理や暖房で薪火を使うなどがあります。こうした物質にさらされた人で、かつ喫煙者の場合は、肺がんになるリスクがより高くなると考えられています。

電子タバコなど、電気的にニコチンが送り出されるシステムに関する肺がんのリスクはまだ分かっていません。

家庭でのラドンへの曝露が肺がんのリスクを高めるかどうか、またその程度については意見が割れています。しかし、ラドン曝露が肺がんの危険因子であることを示唆する報告もあります。

まれに、結核 結核 結核は、空気感染する細菌である結核菌 Mycobacterium tuberculosisによって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。通常は肺が侵されます。 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。 最もよくみられる症状はせきですが、発熱や寝汗、体重減少、体調不良を感じることもあります。... さらに読む 結核 などの別の肺疾患によって肺が瘢痕化した患者に、肺がん、特に腺がんや細気管支肺胞上皮がん(腺がんの一種)がみられることがあります。また、ベータカロテンのサプリメントを摂取している喫煙者は、肺がんになるリスクがさらに高まります。

知っていますか?

  • 肺がんのほとんどの原因が喫煙ですが、まったく喫煙したことのない人でも肺がんになることがあります。

症状

肺がんの症状は、がんのタイプや発生部位のほか、肺の内部、肺の付近または体の他の部位への広がり方によっても異なります。診断時には症状がまったくない人もいます。

そのほかに、肺がんに限った症状ではありませんが、食欲不振、体重減少、疲労、胸痛、脱力などが生じることもあります。

肺がんの合併症

肺がんにより気道が狭くなって、喘鳴が生じることもあります。腫瘍によって気道がふさがれると、その気道につながる肺の一部がつぶれて、無気肺 無気肺 無気肺は、肺の一部または全体に空気がなく、肺がつぶれた状態です。 無気肺の一般的な原因は気管支の閉塞です。 酸素レベルが低くなる、または肺炎が起こると、息切れが生じます。 診断を確定するには胸部X線検査を使います。 治療では、深い呼吸を確実にできるようにすること、気道の障害物を取り除くこと、またはその両方が必要になることがあります。 さらに読む という状態になることもあります。気道閉塞の結果、息切れや肺炎が生じ、肺炎になると、せき、発熱、胸痛をきたすこともあります。

腫瘍が胸壁の中まで増殖すると、耐えがたい胸痛が持続します。がん細胞を含む液体が、肺と胸壁の間にたまることがあり(悪性胸水 胸水 胸水とは、胸腔(厳密には2つの胸膜の間)に液体が異常にたまることや、その液体自体のことをいいます。 胸腔に液体がたまる原因としては、感染症、腫瘍、外傷、心不全、腎不全、肝不全、肺血管の血栓(肺塞栓症)、薬物など、数多くあります。 症状には、呼吸困難や胸痛などがあり、特に呼吸やせきをしたときに現れます。 診断には、胸部X線検査や胸水の検査が用いられ、CT血管造影検査もよく使用されます。... さらに読む 胸水 と呼ばれる状態)、その量が多いと、息切れを起こすことがあります。がんが肺全体に広がると血液中の酸素レベルが低下し、息切れをきたし、最終的には心臓の右側部分が大きくなって心不全(肺性心 肺性心 肺性心は、肺の基礎疾患によって生じた肺高血圧症(肺の中の血圧が高くなった状態)のために、右心室に拡大と肥厚が起きた状態です。右心室に拡大と肥厚が起きた結果として、心不全に陥ります。 肺高血圧症とは、心臓から肺につながる動脈(肺動脈)の血圧が異常に高くなる病気です。肺疾患によって肺高血圧症が引き起こされる原因はいくつかあります。 血液中の酸素レベルが低い状態が長く続くと、肺動脈が収縮して肺動脈の壁が肥厚します。この収縮と肥厚により、肺動脈... さらに読む と呼ばれる病気)に陥る可能性があります。

肺がんが増殖して、首にある神経の一部に到達すると、まぶたが垂れ下がる、瞳孔が縮む、顔の片側の発汗が減少するなどの症状が現れることがあり、これらの症状をまとめてホルネル症候群 ホルネル症候群 ホルネル症候群では、顔の片側において、まぶたが垂れ下がり、瞳孔が小さくなり(収縮)、発汗が減少します。原因は、脳と眼をつないでいる神経線維が分断されることです。 ホルネル症候群は自然に発生することもあれば、脳から眼につながる神経線維を分断する病気が原因で発生することもあります。 まぶたが垂れ下がり、瞳孔が縮小したままになり、異常が生じた側の顔面はあまり汗をかかなくなることがあります。... さらに読む ホルネル症候群 と呼びます。肺の上部にあるがんが増殖して、腕につながっている神経にまで到達すると、腕または肩の痛み、しびれ、筋力低下などの症状が現れることがあります。この部分にできた腫瘍は、パンコースト腫瘍とよく呼ばれています。腫瘍が胸部の中心にある神経にまで増殖すると、発声器につながる神経が損傷を受けて声がれをきたしたり、横隔膜につながる神経が損傷されて息切れや血液中の酸素レベルの低下をきたしたりすることがあります。

肺がんが食道の中や食道の近くまで増殖すると、嚥下が困難になったり、飲み込むときに痛みを感じることがあります。

肺がんが心臓の中や胸部中央(縦隔)領域まで増殖すると、不整脈、心臓への血流の妨害、心臓を取り囲む袋(心膜嚢)内への液体貯留などが生じます。

肺がんが胸部にある太い静脈の1つ(上大静脈)まで増殖したり、これを圧迫したりすることがあります。この状態を上大静脈症候群と呼びます。上大静脈が閉塞すると、その代わりに上半身にあるほかの静脈に通常より多くの血液が流れ込みます。そのため、胸壁にある静脈が拡張します。顔や首、胸壁上部(乳房を含む)が腫れて、痛みを生じ、赤くなることがあります。また、息切れ、頭痛、ものがゆがんで見える、めまい、眠気などの症状も現れることがあります。これらの症状は、一般に前かがみになったり横になったりすると悪化します。

肺がんが血液の流れに乗って、体の他の部位へ転移することもあり、最も多いのが肝臓、脳、副腎、脊髄、骨への転移です。がんの経過の初期から転移することもあり、小細胞肺がんでは特にその傾向が強くなります。何らかの肺の障害が明らかになる前に、頭痛、錯乱、けいれん発作、骨痛などの症状が現れることもあり、この場合早期の診断がさらに難しくなります。

腫瘍随伴症候群 腫瘍随伴症候群 腫瘍随伴(「がんに伴う」という意味、がんの概要も参照)症候群は、がんによって血液中を循環する物質を原因とする異常な症状が引き起こされると発生します。このような物質は、腫瘍から分泌されたホルモンであったり、免疫系によって作られた抗体であったりします。これらの物質は様々な組織や臓器の機能に影響を及ぼし、腫瘍とは遠く離れた部分に症状を引き起こします。腫瘍随伴症候群は神経系や内分泌系(ホルモンを分泌する器官)などの様々な器官系に影響を与え、神経... さらに読む とは、がんによる影響が、神経や筋肉といったがん自体から離れた部位に現れることをいいます。このような腫瘍随伴症候群は、肺がんの大きさや位置には関係なく、肺がんが胸部の外へ広がっていることを示すものではありません。この症候群は、がんが分泌する物質(ホルモン、サイトカイン、その他の様々なタンパク質)によって引き起こされます。肺がんに随伴する一般的な症候には以下のものがあります。

診断

  • 画像検査

  • 腫瘍細胞の顕微鏡検査

  • 腫瘍の遺伝子検査

  • 病期診断

患者、特に喫煙者に、せきの持続や悪化、その他の肺症状(息切れや、血が混じったたんを伴うせきなど)、体重減少がみられる場合、医師は肺がんの可能性を疑います。

画像検査

最新の検査法として、PET検査(陽電子放出断層撮影検査 胸部の画像検査には、X線検査、CT検査、MRI検査、肺シンチグラフィー、超音波検査、陽電子放出断層撮影(PET)検査などがあります。胸部X線検査は、ほぼ必ず行われます。診断を下す上でさらに詳細な情報が必要な場合は、その他の画像検査が行われます。 (肺疾患に関する病歴聴取と身体診察および呼吸器系も参照のこと。) 通常の胸部X線検査は、後ろから前方向に撮影されます。また、側面からの撮影も一般的に行われています。胸部X線検査では心臓や主要な血... さらに読む )やヘリカル(スパイラル)CTと呼ばれるCT検査があり、小さながんの検出能力が向上しつつあります。腫瘍医(がん患者の治療を専門とする医師)は、1台の装置にPETとCTの技術を取り入れたPET-CT検査を頻繁に利用して、がんの疑いがある患者を評価します。CT検査またはPET-CT検査で十分な情報が得られなかった場合は、MRI検査を利用することもあります。

顕微鏡検査

肺がんの診断を確定するには、通常、がんと疑われる部分から採取した肺組織を顕微鏡で調べる必要があります。ときに、せきとともに吐き出されたたんから、喀たん細胞診と呼ばれる検査に十分な材料が得られることもあります。がんによって悪性胸水がたまっている場合、胸水を採取して検査するだけで十分なこともあります。しかし、通常はやはり、腫瘍から直接組織サンプルを採取する必要があります。組織サンプルの採取によく使用される方法に、気管支鏡検査 気管支鏡検査 気管支鏡検査とは、気管支鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を用いて発声器(喉頭)や気道を直接観察することです。気管支鏡の先端にはカメラが付いていて、これによって太い気道(気管支)から肺の内部を観察できます。 肺疾患に関する病歴聴取と身体診察および呼吸器系も参照のこと。) 気管支鏡は、肺の出血源を探るために用いられることもあります。肺がんが疑われる場合は、気道を調べて、がん化しているように見えるところからサンプルを採取することもあります。気管... さらに読む 気管支鏡検査 があります。この方法では、患者の気道を直接観察しながら、腫瘍サンプルを採取できます。

がんが太い気道からかなり離れた部位にあって気管支鏡が届かない場合は、通常、皮膚から器具を挿入してサンプルを採取します。この方法を経皮的針生検と呼びます。場合によっては、開胸術 開胸術 開胸術は、胸壁を切り開いて、胸部にある内臓を観察したり、検査用の組織サンプルを採取したり、肺、心臓、主要な動脈などの病気を治療したりする手術です。 この開胸術は大手術であるため、他の診断検査ほど頻繁に行われることはありません。胸腔穿刺や気管支鏡検査、縦隔鏡検査などでは十分な情報が得られなかった場合に開胸術が行われます。サンプルを採取する場所を実際に見て選ぶことができるだけでなく、大きな組織サンプルを採取できるため、開胸術を行った患者の9... さらに読む という外科手術でしか、サンプルを採取できないこともあります。縦隔鏡検査が行われることもあり、この方法では、胸部の中央から腫大したリンパ節のサンプルを採取して調べ(生検)、リンパ節腫大の原因が炎症なのか、がんなのかを判定します。

遺伝子検査

医師は組織サンプルを用いて遺伝子検査を行うこともあり、この検査によって、がんの原因が突然変異であるのかどうか、その突然変異による影響を標的とした薬剤でがんを治療できるのかどうかを調べます。

病期診断

顕微鏡検査でがんが特定されると、通常はさらに検査を行って、がんが広がっていないか調べます。PET-CT検査と頭部画像検査(脳のCTまたはMRI検査)を行い、特に肝臓、副腎、または脳などに肺がんが転移していないか調べることもあります。PET-CT検査が利用できない場合は、胸部、腹部、骨盤部のCT検査とともに骨シンチグラフィーを行います。骨シンチグラフィーにより、がんの骨への転移が明らかになることがあります。

がんは以下に基づいて分類されます。

  • 腫瘍の大きさ

  • 近くのリンパ節に転移しているかどうか

  • 離れた臓器に転移しているかどうか

肺がんのスクリーニング

普遍的に使用されているスクリーニング検査はありません。スクリーニング検査では、肺がんを早期の段階で発見するために、胸部X線検査、CT検査、喀たん検査、またはこれらすべてを組み合わせた方法が使用されています。

すべての人を対象としたスクリーニングを行っても、肺がんによる生存率が改善することは証明されていないため、危険因子のない人にスクリーニングは推奨されていません。検査には費用がかかるものもあり、偽陽性の結果が出る(がんがないのに誤ってがんがあると判定される)と、いたずらに不安をあおられることもあります。また、その逆もあり、がんが実際にあるにもかかわらず、スクリーニング検査で陰性の結果が出ることもあります。

しかし、高リスクの人を対象としたスクリーニングは推奨されています。医師はスクリーニング検査 がんのスクリーニング 患者の症状と身体診察の結果、ときにスクリーニング検査の結果に基づいて、医師はがんを疑います。外傷など、別の理由で撮影されたX線画像で、がんが疑われる異常が見つかることもときにあります。がんの存在を確定するには、他の検査(診断検査)が必要になります。 がんであることが診断されたら、がんの病期分類(ステージング)が行われます。病期とは、がんの大きさや、隣接する組織に広がっているかどうか、またはより遠く離れたリンパ節や臓器に転移しているかどう... さらに読む を実施する前に、個人毎に特定のがんに対するリスクを正確に判定するように努めます。肺がんのスクリーニングが有益でありうるのは、中年以降のヘビースモーカーまたは長年喫煙している人などです。現在のガイドラインでは、30 pack-year(1日あたりの箱数に喫煙年数を掛けて計算する)を超える喫煙歴があり、現在喫煙しているか、または禁煙してからの経過期間が15年以内の55~80歳の人にスクリーニングが推奨されています。放射線量を通常より抑える技術を用いたCT検査を毎年行うことで、治療できるがんを発見でき、人の命を救えると考えられています。しかし、これらのリスクの高い人において胸部X線検査と、たんの検査によるスクリーニングは推奨されていません。

予防

肺がんの予防法には、禁煙 喫煙 喫煙は体のほぼすべての臓器に害を及ぼします。 喫煙により、心臓発作、肺がん、慢性閉塞性肺疾患などの病気のリスクが高まります。 ニコチンはタバコに含まれる依存性の強い物質です。 ニコチンの使用をやめた人は、離脱期間中イライラし、不安で、悲しく、落ち着きのない状態になることがあります。... さらに読む や発がん性物質にさらされないようにすることなどがあります。自宅のラドンを減らす対策を講じるのもよいかもしれません。予防効果があるかもしれないその他の薬剤は、臨床試験の一環としてのみ使用するべきです。

治療

  • 手術

  • 放射線療法

  • 化学療法

  • 分子標的療法

小細胞肺がんでも非小細胞肺がんでも、様々な治療法が用いられます。手術、化学療法、放射線療法を単独で使用したり、併用したりします。どの治療を組み合わせるかは以下に基づいて決定されます。

  • がんの種類

  • がんの部位

  • がんの重症度

  • がんの広がりの程度

  • 患者の全般的な健康状態

例えば、進行した非小細胞肺がんの患者には、手術で摘出する前または後に化学療法や放射線療法を行うこともあれば、手術をせずに化学療法や放射線療法だけを行うこともあります。

肺がんの手術

手術は、肺の外へ広がっていない(早期の)非小細胞肺がんに対して選択される治療法です。一般に、小細胞肺がんは進行が速く、化学療法や放射線療法が必要なことから、早期がんでも手術は使用されません。また、がんが肺の外へ広がっている場合や気管に近すぎる場合、がん以外の重篤な疾患(重度の心疾患や肺疾患など)がある場合には、手術ができないこともあります。

医師は、手術に先立って肺機能検査 肺機能検査 肺機能検査では、肺に空気を取り込む能力、肺から空気を出し入れする能力、肺で酸素と二酸化炭素を交換する能力を測定します。これらの検査は、肺の病気の具体的な原因を突き止めるというより、一般的なタイプや重症度を調べるのに適していますが、喘息や気腫のような特定の病気を診断するために使用されることもあります。 (肺疾患に関する病歴聴取と身体診察および呼吸器系も参照のこと。) 肺の病気の評価では、肺が吸い込める空気の量や吐き出せる空気の量と速さを調... さらに読む 肺機能検査 を行い、手術後に残った肺だけで十分な酸素を供給し、呼吸機能を維持できるかどうかを判断します。検査の結果、肺のがん化した部分を切除することによって肺機能不全に陥ると判断される場合、手術はできません。切除する肺の範囲は手術担当医の判断で決められ、肺の一区域の一部分から片肺全体まで、患者によって様々です。

非小細胞肺がんは、手術で取りきれることがありますが、必ずしも治癒するわけではありません。手術後にさらに補助(アジュバント)化学療法を行うことで、生存率が改善する可能性があるため、極めて小さながんである場合を除き、すべての患者に行われます。手術を行う前に腫瘍を縮小させるため、手術前に化学療法(術前補助療法と呼ばれます)が行われることがあります。

がんが他の部位(結腸など)で発生して肺へ転移した場合、原発巣の切除後に、肺へ転移したがんも切除することもあります。この処置が勧められることはまれで、がんが肺以外に転移していないことを検査で明らかにする必要があります。

肺がんに対する放射線療法

放射線療法は、非小細胞肺がんと小細胞肺がんのいずれにも使用されます。手術を望まない患者、別の病気(重度の冠動脈疾患など)があるため手術が受けられない患者、がんがリンパ節などの肺近くの組織に広がっている患者に対して、放射線療法を行うことがあります。がんを治療するために放射線療法を用いますが、患者によっては、がんが部分的に小さくなるだけ、あるいはがんの増殖が遅くなるだけのこともあります。このような患者では、放射線療法に化学療法を併用することで生存率が改善します。

小細胞肺がんの患者で、化学療法に対する反応が良好な場合、脳への転移を予防するために、頭部への放射線療法が有益な場合があります。すでに脳に転移している場合でも、頭痛、錯乱、けいれん発作などの症状を緩和するために、脳への放射線療法がよく使用されます。

放射線療法は、喀血、骨痛、上大静脈症候群、脊髄圧迫など肺がんの合併症を抑える効果もあります。

肺がんに対する化学療法

化学療法は、非小細胞肺がんと小細胞肺がんのいずれにも使用されます。小細胞肺がんでは、化学療法が治療の柱になりますが、ときに放射線療法と併用されることもあります。小細胞肺がんで化学療法が選択されるのは、このがんは進行が速く、診断時にすでに肺から離れた場所に転移していることが多いためです。肺がんが進行している患者では、化学療法により生存期間が延長することがあります。治療しなければ、生存期間の中央値はわずか6~12週間です。

非小細胞肺がんでも、通常、化学療法により生存期間が延長し、症状が緩和します。非小細胞肺がんが体の他の部位へ転移している患者では、治療することで生存期間の中央値が9カ月に延びます。分子標的療法でも、肺がん患者の生存期間が改善することがあります。

肺がんに対する分子標的療法

非小細胞肺がんの患者は、化学療法や放射線療法、または最新の分子標的療法によって、治療しない場合に比べてかなり長く生きられる可能性があります。分子標的療法には、肺腫瘍だけを標的とした生物製剤などの薬剤があります。最新の研究では、がん細胞の中にあるタンパク質や、がん細胞を栄養とする血管内にあるタンパク質がいくつか確認されています。これらのタンパク質は、がんの増殖や転移を制御したり、促進したりすることに関与している可能性があります。そこで、がん細胞にみられる異常なタンパク質だけに作用し、がん細胞を殺傷したり、増殖を阻止したりする能力をもった薬剤が開発されています。そのような異常を標的とした薬剤には、ベバシズマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、クリゾチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブなどがあります。

ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブといった、免疫療法と呼ばれる新しいクラスの薬剤は、患者自身の免疫系ががんと戦うのを助けます。これらの薬剤は、通常の化学療法の薬剤の代わりに用いられたり、同時に用いられることもあれば、従来の化学療法を試して効果がなかった場合に初めて使用されることもあります。

肺がんに対するレーザー療法

レーザー療法が用いられることもあり、レーザーを利用して肺腫瘍を取り除いたり、小さくしたりします。腫瘍が小さい患者や手術が受けられない患者では、高エネルギー電流(ラジオ波焼灼術)または凍結(凍結療法)により腫瘍細胞を破壊することもあります。

その他の治療

肺がんの患者では、その他の治療が必要になることもよくあります。そのような治療の多くは緩和療法と呼ばれ、がんそのものの治癒よりも、むしろ症状を和らげ、生活の質を改善することを目的としています。

しばしば痛みに対する治療も必要になります。オピオイドは、しばしば痛みの緩和に用いられますが、便秘などの副作用があり、その副作用にも治療を必要とします。

予後(経過の見通し)

肺がんの予後は良くありません。平均すると、進行した非小細胞肺がんの患者で治療しない場合の生存期間は6カ月です。治療した場合でも、進展型の小細胞肺がんの患者や進行した非小細胞肺がんの患者は特に見通しが悪く、5年生存率は1%に達しません。早期診断により生存期間が改善します。早期の非小細胞肺がんの患者では、5年生存率が60~70%です。しかし、早期の肺がんを確実に治療して命が助かった人でも、喫煙を続けていれば、別の肺がんを発症するリスクが高くなります。

生存者は、胸部X線検査やCT検査などにより定期的に診察を受けて、肺がんが再発していないか確認しなければなりません。通常、肺がんが再発する場合は、2年以内に現れます。しかし、肺がんの治療終了から5年間は頻繁にモニタリングを続け、その後は生涯にわたって年に1回は診察を受けることが勧められます。

多くの人が肺がんにより死亡するため、通常は終末期ケア 死の前に行う選択 重篤な病状の患者とその家族は、致死的な病気と様々な治療に翻弄されて、ものごとを自分たちでコントロールできないと感じがちです。人によっては、この無力感に身を委ねて、行うべきことを決定する責任から逃れようとすることがあります。反対に、ときには葬儀や埋葬の詳細に至るまで、受けるケアのあらゆる面を自分たちで決めたいと望む人もいます。 終末期のケアに対する希望を、患者と医師の間で正直かつオープンに話し合えば、致死的な病態に陥ったときの生活の質を極... さらに読む について計画を立てる必要があります。終末期ケアは進歩しており、特に、治る見込みのない肺がんの患者には不安や痛みが一般的にみられること、また、そのような症状は適切な薬剤によって緩和できることが広く認識されるようになり、ホスピスサービス を利用してもしなくても、自宅で安らかな死期を迎えられる患者が増えています。

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