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拡張型心筋症

執筆者:

Thomas D. Stamos

, MD, University of Illinois at Chicago

最終査読/改訂年月 2017年 8月
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拡張型心筋症とは、心室(心臓の下側にある2つの部屋)が広がって(拡大)、全身に必要量の血液を送り出すことができなくなり、その結果として心不全を引き起こす一群の心筋疾患です。

  • 拡張型心筋症の一般的な原因として、ウイルス感染と一部の内分泌疾患があります。

  • 最初の自覚症状は、多くの場合、息切れと疲労です。

  • 拡張型心筋症の診断では、心電図検査、心エコー検査、MRI検査、血液検査を行います。

  • 治療は心筋症の原因に対するものとなり、通常は薬を使用します。

心筋症の概要も参照のこと。)

心筋症という用語は、ある病気が心筋に直接影響を及ぼしている場合に使用されます。冠動脈疾患や心臓弁膜症といったその他の心臓病や高血圧でも、最終的に心室の拡大と心不全が起きることがあります。しかし、このような病気によって引き起こされる心筋の異常は心筋症とはみなされません。

拡張型心筋症は年齢を問わず発生しますが、20~50歳の人で多くみられます。拡張型心筋症を発症する人の約10%は65歳以上です。この病気は、男性では女性の約3倍、また黒人では白人の約3倍多くみられます。毎年、10万人当たり5~8人が拡張型心筋症を発症しています。

原因

拡張型心筋症の最も一般的な原因は以下のものです。

  • ウイルス感染症

  • 遺伝性疾患(20~35%の症例では遺伝的な要因が関与している)

一部のウイルス感染症は、心筋の急性炎症(心筋炎)を引き起こす可能性があります。このような心筋症はウイルス性心筋症と呼ばれます。北米では、コクサッキーB群ウイルス感染症がウイルス性心筋症を引き起こす最も一般的な原因となっています。HIV感染症も心筋症を引き起こす可能性があります。他の地域では、別のウイルスによる感染症がより一般的な原因となっています。ときには、シャーガス病などの細菌感染症から拡張型心筋症が発生することもあります。

ウイルスまたは細菌が心筋に感染すると、心筋の収縮力が弱まります。その結果として、心臓が力強く拍動できなくなります。壊死した心筋は線維化(瘢痕化)した組織に置き換わります。そして心筋が伸びて心腔が拡大してしまい、ポンプ機能が低下します。そうなると心不全に至ります。

拡張型心筋症のその他の原因としては、以下のものがあります。

  • 長期にわたるコントロール不良の糖尿病やコントロール不良の甲状腺疾患などの特定の慢性内分泌疾患

  • 病的な肥満

  • 頻脈(長期間持続するもの)

  • 飲酒(飲酒量が多く、かつ低栄養もみられる場合)、コカイン、一部の抗うつ薬、一部の抗精神病薬、いくつかの化学療法薬

拡張型心筋症のまれな原因としては、妊娠や鉄過剰症のほか、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症などの結合組織疾患も挙げられます。極度のストレスが、たこつぼ型心筋症と呼ばれる拡張型心筋症の一種を引き起こすこともあります。サルコイドーシスのような病気も拡張型心筋症を引き起こすことがあります。

原因が特定できないものは、特発性拡張型心筋症と呼ばれます。

症状

通常、拡張型心筋症で最初にみられる症状は、運動時の息切れと易疲労感です。これらの症状は心臓のポンプ機能が弱まることによって発生するもので、心不全と呼ばれます。胸痛を感じる人もいます。

感染が原因の心筋症では、急な発熱やインフルエンザ様の症状が最初の症状となることがあります。

合併症

心不全は、拡張型心筋症の原因が何であれ、心臓の損傷が重度であれば発生する可能性があります。心不全になると、体液が脚や腹部にとどまり(むくみの原因となります)、肺も体液で満たされます(運動したり横になったりしたときの息切れの原因となります)。心不全が重症化すると、血圧が低下することがあります。

心臓弁の異常が現れることもあります。心臓が拡大するため、心臓弁が正常に閉じなくなり、多くの場合、血液が血管や次の心腔に流れ込まずに前の心腔に逆流するようになります。こうした異常が最も起きやすい心臓弁は、左心房(心房は上の心腔)から左心室(心室は下の心腔)に向かって開く僧帽弁と、右心房から右心室内に向かって開く三尖弁です。逆流により心雑音が生じ、聴診器を使って聞くことができます。

心筋の損傷や伸張が原因で不整脈(心拍リズムの異常)が起きることもあります。不整脈によって動悸(異常な心拍の自覚)が生じたり、死に至ったりすることもあります。弁での逆流と不整脈によって、心機能はさらに損なわれます。

血栓が心腔の壁に形成されることがありますが、これは血液が拡大した心臓にうっ滞するためであり、心室の拡大がひどく、収縮が不十分な場合に特によくみられます。血栓は砕けて小さな欠片になり、心臓から別の部位の血管に移動して閉塞を引き起こし(この現象を塞栓といいます)、その血管から血液供給を受けていた臓器に損傷を与えます。脳に血液を供給している血管が詰まれば、脳卒中が起こります。

診断

  • 心エコー検査や心臓MRI検査などの画像検査

  • ときに心筋の生検

  • ときに原因または合併症を調べる検査

拡張型心筋症の診断は、みられる症状、身体診察の結果、そして追加検査の結果に基づいて下されます。医師は心臓発作の既往、慢性の高血圧、心臓弁の損傷など、心臓の拡張をもたらす他の原因がないか調べます。

医師が原因として感染を疑っている場合には、拡張型心筋症を引き起こす一般的なウイルスに対する血液検査が行われます。

心電図検査では、心臓の電気的活動の異常が見つかることがあります。しかし、それらの異常だけでは診断を確定することはできません。

心臓の画像検査

心エコー検査(超音波を利用した心臓の画像検査)は、心臓の大きさとポンプ機能を両方確認できる最も有用な検査法です。

心臓のMRI検査は、非常に詳細な心臓の画像を撮影できるため、診断の確定に(ときに原因の特定にも)よく用いられています。

生検

診断に疑問が残る場合は、心臓のポンプ機能について詳しい情報が得られる心臓カテーテル検査を行いますが、この検査はカテーテルを腕や脚の血管から心臓の内部に挿入するため、体に大きな負担を与えます。心臓カテーテル検査の際には、医師が生検(顕微鏡下で観察するために組織を採取する検査)で組織のサンプルを採取したり、心臓内の血圧を測定したり、冠動脈疾患を除外したりすることもできます。

予後(経過の見通し)

拡張型心筋症の予後(経過の見通し)は、多くの要因に従って大きく変化します。一般に、心臓の拡張が大きいほど、また心機能が衰えているほど、予後は悪くなります。不整脈がある場合も予後は悪くなります。全体的にみると、男性では生存期間が女性の半分で、黒人の生存期間は白人の半分になります。

死亡の約40~50%は突然死で、おそらくは不整脈か重要な領域の血流を遮断する塞栓によるものと考えられます。その他の要因としては、心筋症の原因と重症度、年齢と医学的な助言に従える能力、特別な治療へのアクセス、患者の服薬コンプライアンス不良、塩分摂取量、外来受診などが挙げられます。しかし、近年では最新の治療、特に植込み型除細動器、心臓再同期療法、その他の治療法の導入により、全体的な予後は向上しています。

治療

  • 薬剤

  • ときに、除細動器やペースメーカーなどの医療機器を用いる治療

可能であれば、拡張型心筋症の原因になっている病気を治療します。例えば、拡張型心筋症の原因となった結合組織疾患を治療するために、コルチコステロイドなどの免疫抑制薬が使用されることがあります。

一般的な治療方針は、ストレスを回避し、塩分摂取量を制限し、休息をとることですが、これらは心臓への負担を軽減するのに役立ち、特に急性または重度の心筋症の場合に重要です。

拡張型心筋症の治療薬

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、ベータ遮断薬、アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)のほか、ヒドララジン、硝酸薬、ネプリライシン阻害薬の併用など、心不全に対して使用される薬は、心臓のポンプ機能を改善し、余命を延ばし、慢性の症状を軽減する効果があります。

利尿薬(尿量を増やす薬)は、肺にたまった余分な体液を減らし、体液貯留によるむくみを軽減しますが、余命を延ばす効果はありません。

ジゴキシンを使用すると、心不全による入院が減る可能性がありますが、余命が伸びることはありません。

不整脈の治療として抗不整脈薬を投与することがあります。ほとんどの抗不整脈薬は、最初は少ない用量で処方されます。用量が多すぎると、不整脈が悪化したり心臓のポンプ機能が低下したりする可能性があるため、抗不整脈薬の用量は少しずつ増やしていきます。

ワルファリンやアスピリンなどの血栓を予防する薬が使用されることもあり、心室の拡張がひどく、収縮が不十分になっている場合に特によく使用されます。

医療機器を用いる治療

心臓の電気伝導系に異常がある人では、まず心房を刺激してから次に心室を刺激するペースメーカー(心臓再同期療法)が使用されることがあります。このタイプのペースメーカーは、適切な患者に使用されれば、心臓の収縮パターンを正常化させて心機能を向上する助けになります。

心臓の機能低下が持続していて、突然死につながる不整脈のリスクが高くなっている場合には、医師は植込み型除細動器の使用も検討します。

心臓移植

拡張型心筋症における心不全は進行性で、最終的に死に至る可能性があります。このように予後が悪いため、拡張型心筋症は心臓移植や機器による心機能の補助を行う理由として最多のものになっています。心臓移植が成功すればこの病気は治癒しますが、移植自体にも合併症や制限があります。

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