Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

読み込んでいます

心不全に対する薬物療法

執筆者:

Sanjiv J. Shah

, MD, Northwestern University Feinberg School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 7月
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
本ページのリソース

心不全の薬物療法には以下のものがあります。

  • 症状を緩和する薬剤:利尿薬、硝酸薬、またはジゴキシン

  • 余命を延長する薬剤:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、ベータ遮断薬、アルドステロン拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、またはアンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬(ARNI)

どの種類の薬剤を使うかは、心不全の種類によって異なります。収縮性心不全(駆出率が低下した心不全、HFrEF)では、すべてのクラスの薬剤が役立ちます。拡張性心不全(駆出率が保持された心不全、HFpEF)では、一般に的ACE阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬、ベータ遮断薬のみが使用されます。

薬を定期的に服用し、薬がなくなっていないか確認しておくことが重要です。

利尿薬

塩分制限だけでは水分貯留が軽減しない場合、しばしば利尿薬が処方されます。この種の薬は、作られる尿の量を増やすことで腎臓からの塩分と水分の除去を助け、体全体の水分を減少させます。

フロセミドやブメタニドなどのループ利尿薬は、心不全に対して最もよく使用される利尿薬です。これらの利尿薬は通常、長期にわたって服用されますが、緊急時には静脈内投与すると非常に効果的です。ループ利尿薬は中等度から重度の心不全に適しています。

より効果が穏やかで、血圧を下げる作用もあるサイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジドなど)は、心不全に加えて高血圧がみられる人などに処方されます。

ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬には、尿中にカリウムを排出させる作用があります。そのため、カリウムの濃度を上昇させる利尿薬(カリウム保持性利尿薬)や、カリウムのサプリメントと併用することがあります。心不全のすべての人にとって、スピロノラクトンは望ましいカリウム保持性利尿薬であり、腎機能がひどく低下しない限り使用できます。この薬は心不全患者の延命に役立ちます。

利尿薬の服用は尿失禁を悪化させる可能性がありますが、通常は、トイレが利用できないときやトイレへのアクセスが不便なときに失禁のリスクが生じることがないように、利尿薬を使用するタイミングを調整することが可能です。

ACE阻害薬

ACE阻害薬は、収縮性心不全の治療に使用される主な薬剤の1つです。ACE阻害薬は症状を軽減し、入院期間を短縮するだけではなく、余命を延長させます。ACE阻害薬は、血圧の上昇に通常かかわるホルモンであるアンジオテンシンIIとアルドステロンの血中濃度を低下させます(図「血圧の制御:レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系」を参照)。これによってACE阻害薬は動脈と静脈を拡張させ、腎臓の水分排泄を促進し、心臓にかかる負担を減らします。また、心臓と血管の壁に直接有益な作用をもたらす可能性もあります。

アンジオテンシンII受容体拮抗薬

アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)には、ACE阻害薬と似た作用があります。ARBは、副作用であるせきのためにACE阻害薬に耐えられない一部の患者で、ACE阻害薬の代わりに使用されます。この副作用はARBでは起こりにくいためです。

アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬

アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬(ARNI)は、心不全治療薬の新しい組合せで、ARBと新しいクラスの薬剤であるネプリライシン阻害薬から構成されます。ネプリライシンは、ナトリウムを排出するよう体に信号を送る特定の物質(ペプチド)の分解に関与する酵素です。このようなペプチドの分解を抑制することで、これらの薬剤は血圧を低下させ、ナトリウムの排泄を増加させ、心臓の負担を軽減します。これらの薬剤には、収縮性心不全の患者においてACE阻害薬やARBを単独で使用する場合より余命を延長する効果があります。

ベータ遮断薬

ベータ遮断薬は、しばしばACE阻害薬との併用で心不全の治療に使用され、心不全の治療におけるもう1つの主要な薬剤です。心臓への負担を増やす ノルアドレナリンというホルモンの作用を阻害することによって、心機能を長期にわたって改善し、余命を延ばす効果があることから、この種の薬剤は収縮性心不全の治療に不可欠となっています。ベータ遮断薬は最初に心臓の収縮力を低下させるため、通常は他の薬で心不全を安定させた後に投与します。

アルドステロン拮抗薬

アルドステロン拮抗薬は、ACE阻害薬がアルドステロンの作用を間接的に阻害するのとは異なり、直接的に遮断し、水分貯留の制限を促します。この種の薬剤は、心不全患者の生存率を高め、入院期間を短縮します。

ジゴキシン

ジゴキシンは、最も古くから使用されている心不全の治療薬の1つで、心拍出力を強め、速すぎる心拍を遅くします。ジゴキシンは、収縮性心不全の患者の症状を和らげますが、これまで見てきた他の心不全治療薬と異なり、余命を延ばす効果はありません。

血管拡張薬

血管拡張薬は、ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬と比べると効果が低いため、あまり使用されません。ただし、ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬が効かない人や使えない人では、ヒドララジン、硝酸イソソルビド、ニトログリセリンのテープ剤(皮膚に貼って使用)やスプレー剤などの血管拡張薬で効果が得られる場合もあります。症状が進行した一部の人では、これらの薬をACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬と併用することで、生活の質や余命が改善することがあります。

その他の心不全治療薬

ときに上記以外の薬剤が役立つこともあります。

ワルファリンなどの抗凝固薬は、心房内や心室内で血栓ができるのを予防するために使用されます。

不整脈に対しては抗不整脈薬(表「不整脈の治療に用いられる主な薬剤」を参照)が投与されることがあります。

ジゴキシン以外にも心臓の拍出力を増加させる薬が試されてきましたが、これまでに有用性が実証されたものはなく、一部では死亡のリスクが上昇しました。

イバブラジンは心拍数を下げる薬剤です。心拍数が1分間に70回を超え、高用量のベータ遮断薬に耐えられない軽度から中等度の症状を伴う収縮性心不全の患者において、心不全による入院を減らすのに役立ちます。

icon

心不全の治療に用いられる主な薬剤

薬*

備考

アルドステロン拮抗薬

エプレレノン

スピロノラクトン

アルドステロン(塩分や水分の貯留を促進し、心臓に直接悪影響を及ぼす可能性があるホルモン)の作用を遮断する。

どちらもカリウム保持性利尿薬であり、生存率を高め、入院期間を短縮する。

エプレレノンは、スピロノラクトンよりも男性における乳房圧痛や乳房腫大を起こす可能性が低い。

抗凝固薬

アピキサバン

ダビガトランエテキシラート

ヘパリン

リバーロキサバン

ワルファリン

抗凝固薬は、心房内や心室内で血栓ができるのを予防するために使用する。

ヘパリンは注射薬のため、短期間の投与のみ。

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬

カプトプリル

エナラプリル

リシノプリル

ペリンドプリル

キナプリル

ラミプリル

トランドラプリル

血管を拡張させることで、心臓にかかる負担を減らす。

また、心臓に直接有益な作用をもたらす可能性がある。

心不全治療の根幹をなす薬剤である。

症状を軽減し、入院期間を短縮し、余命を延ばす効果がある。

アンジオテンシンII受容体拮抗薬

カンデサルタン

ロサルタン

バルサルタン

ACE阻害薬と同様の効果があり、忍容性(副作用に対する耐えやすさ)がより優れている場合がある。

ACE阻害薬を服用できない患者に使用されることがある。

アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬

バルサルタン + サクビトリル

この配合薬は、軽度または中等度の症状を伴う収縮性心不全の患者に使用されることがある。このような患者において、ACE阻害薬を単独で使用した場合より余命を延長する。

バルサルタン/サクビトリルを開始するときは、36時間以上前にACE阻害薬の服用を中止すべきである。

ベータ遮断薬

ビソプロロール

カルベジロール

メトプロロール

心拍を遅くし、心臓に対する過度の刺激を遮断する。

通常はACE阻害薬と併用され、さらなる効果をもたらす。

症状が一時的に悪化することがあるが、長期的には心機能を改善する。

強心配糖体

ジゴキシン

ジゴキシンなどの強心配糖体は心臓の収縮力を高め、心房細動のある人では心拍数を低下させる。

ループ利尿薬

ブメタニド

エタクリン酸

フロセミド

トラセミド

これらの利尿薬は、腎臓による塩分や水分の排出を促し、血流中の水分量を減少させる。

カリウム保持性利尿薬

アミロライド(amiloride

トリアムテレン

カリウムの消失を防ぐ作用があるため、カリウムを排出させるサイアザイド系利尿薬やループ利尿薬に追加して使用される場合がある。

スピロノラクトンとエプレレノンは、カリウム保持性利尿薬であると同時に、アルドステロン拮抗薬でもある。

サイアザイドおよびサイアザイド系利尿薬

クロルタリドン

ヒドロクロロチアジド

インダパミド

メトラゾン

ループ利尿薬と似た効果がある。2種類の利尿薬を併用すると特に効果的である。

オピオイド

モルヒネ

急性肺水腫などの緊急治療時に、不安を和らげるために使用する。

慎重な監督が必要になる。

その他の血管拡張薬

ヒドララジン

硝酸イソソルビド

ニトログリセリン

血管を拡張させる作用がある。

通常、ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬を投与できない患者に使用する。

ニトログリセリンは心不全と狭心症のある人や急性心不全の人に特に有効である。

ヒドララジンと硝酸薬の併用は有効で、特に黒人に有効であることが示されている。

その他

イバブラジン

イバブラジンは、高用量のベータ遮断薬を服用できない軽度から中等度の症状を伴う収縮性心不全の患者に使用されることがある。

*これらの薬は、心不全の予防や治療のためによく研究されてきました。

ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、利尿薬、ベータ遮断薬の主な副作用を表に示しています( 降圧薬)。

ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP