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腹部大動脈の分枝の閉塞

執筆者:

Mark A. Farber

, MD, FACS, University of North Carolina;


Thaniyyah S. Ahmad

, MD, MPH, University of North Carolina

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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腹部大動脈の分枝の閉塞とは、腹部で大動脈から枝分かれした太い動脈の1つがふさがったり狭くなったりした状態です。

  • 大動脈の分枝は、動脈硬化、動脈の壁の筋肉の異常増殖(線維筋性異形成)、血栓、その他の病気によってふさがる(閉塞)することがあります。

  • 閉塞が起きると、閉塞した動脈から血液の供給を受けていた領域において、血流の不足に関連した症状(痛みなど)が起こります。

  • 診断を下すには画像検査が用いられます。

  • 治療は、血栓の除去、血管形成術、ときに外科的なバイパス移植術で行います。

大動脈は全身で最も太い動脈です。酸素を豊富に含む血液を心臓から受け取り、枝分かれする動脈を介して全身に血液を送り出しています。腹部大動脈とは、大動脈のうち腹腔を通過する部分のことです。腹部大動脈から枝分かれする重要な動脈としては、以下の部分に血液を送る動脈があります。

  • 腸(腹腔動脈と上下腸間膜動脈)

  • 腎臓(腎動脈)

  • 脚(腸骨動脈)

大動脈から枝分かれる動脈の閉塞は、突然起こる場合と、徐々に起こる場合があります。

腹部大動脈の分枝が徐々にふさがる病気は、動脈の壁にコレステロールなどの脂質の沈着物(アテロームまたはアテローム性プラーク)が形成されて動脈が硬くなる 動脈硬化 動脈硬化 アテローム性動脈硬化とは、太い動脈や中型の動脈の壁の中に主に脂肪で構成されるまだら状の沈着物(アテロームあるいはアテローム性プラーク)が形成され、それにより血流が減少ないし遮断される病気です。 アテローム性動脈硬化は、動脈の壁が繰り返し損傷を受けることによって引き起こされます。... さらに読む 動脈硬化 や、動脈の壁の筋肉が異常に増殖する 線維筋性異形成 線維筋性異形成 線維筋性異形成は、動脈壁が異常に厚くなる病気で、動脈硬化や炎症とは関連しませんが、動脈の狭窄や閉塞を引き起こします。 線維筋性異形成は、閉塞性の末梢血管疾患の一種です。 線維筋性異形成は、通常は40~60歳の女性に発生します。原因は不明です。しかし、おそらく遺伝的要素があり、喫煙は危険因子であると考えられます。線維筋性異形成は、特定の結合組織疾患(エーラス-ダンロス症候群、嚢胞性中膜壊死[大動脈の壁が変性する病気]、遺伝性腎炎、神経線維... さらに読む 、腹部で増殖する腫瘍による動脈の圧迫などが原因で起こります。

症状

突然の閉塞では、血流が遮断されるため、すぐに激しい痛みが生じます。どの動脈が閉塞したかに応じて、痛みは腹部、背部、脚に生じます。血流が回復しないと、数時間以内に臓器不全および組織の壊死が起こります。

閉塞が徐々に起こる場合の症状は、閉塞した動脈と閉塞の重症度によって異なります。

大動脈の下部と総腸骨動脈

大動脈の下部が左右の総腸骨動脈に分かれる部分で突然閉塞が起きると、両脚が突然痛み出し、青白く、冷たくなります。両脚で脈がとれなくなり、しびれたようになることもあります。総腸骨動脈の突然の閉塞では、片側の脚でのみ症状が生じます。これらの症状には緊急の治療が必要です。

大動脈の下部または両側の総腸骨動脈が徐々に閉塞していくと、歩行中におしりと両脚の太ももにけいれんと痛みが生じることがあります( 間欠性跛行 症状 症状 )。脚が冷たく感じられたり、外見が青白くなったりすることもありますが、通常は見た目は正常です。慢性閉塞では 勃起障害 勃起障害(ED) 勃起障害(ED)とは、性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できないことです。 (男性の性機能障害の概要も参照のこと。) どんな男性でもときに勃起に至らない問題を抱えることがあり、そのような問題の発生は正常なことと考えられています。勃起障害は男性が次のような場合に起こります。 一切勃起できない 短い間勃起するが性交には十分な時間ではない さらに読む も起こることがあります。間欠性跛行と勃起障害の組合せは、ときにルリッシュ症候群と呼ばれます。

腎動脈

腎臓に血液を供給している腎動脈の片方が突然完全に閉塞すると、その動脈と同じ側が突然痛み出し、血尿がみられます。これらの症状には緊急の治療が必要です。

腎動脈の片方または両方が徐々に少しずつ閉塞していく場合は、症状がみられず、腎臓の機能も影響を受けないことがあります。まれに、腎動脈の片方または両方がほとんどふさがったために、腎不全や高血圧(腎血管性高血圧と呼ばれる病気)が起きることがあります。高血圧の人が腎血管性高血圧である割合は5%未満です。しかし、腎血管性高血圧はコントロールが難しくなることがあります。

上腸間膜動脈

上腸間膜動脈が突然完全に閉塞すると、重度の腹痛、吐き気や嘔吐が起き、緊急の治療が必要になります。この閉塞が起きた人は、最初は嘔吐したり、急激な便意を感じたりします。上腸間膜動脈は腸の大部分に血液を供給しているため、やがてはひどく具合が悪くなり、腹部に重度の痛みが起こります。診察では医師が腹部を圧迫したときに痛み(圧痛)を感じることもありますが、広い範囲に感じる漠然とした圧痛よりも、重度の痛みの方が顕著です。腹部がわずかに腫れることがあります(腹部膨隆)。聴診では、腹部で聴こえる腸音が最初は正常時より少なくなりますが、その後は聴こえなくなることがあります。便には最初は少量の血液が含まれるだけですが、すぐに明らかな血便になります。血圧が低下して、腸が部分的に壊死(壊疽[えそ]ともいいます)を起こすと、ショック状態に陥ります。

上腸間膜動脈が徐々に閉塞していく場合は、一般的には毎食後30~60分間ほどで腹痛が起こりますが、これは消化のために腸がより多くの血液を必要とするからです。この痛みは一定した強い痛みで、へそを中心に感じます。この痛みを恐れて食事を避けるようになるため、体重が大幅に減少することがあります。また、腸への血液供給が減少するために血流中に取り込まれる栄養素が少なくなることも、体重減少の一因となります。食後に痛みがある人では、吐き気、嘔吐、便秘、下痢がみられる場合もあります。

肝動脈と脾動脈

肝臓に血液を供給する肝動脈や脾臓に血液を供給する脾動脈の閉塞は、腸につながっている主要な動脈の閉塞ほど危険ではありません。しかし、肝臓や脾臓の一部に損傷が生じます。肝動脈閉塞では、無症状のこともありますが、腹痛、発熱、悪寒、吐き気、嘔吐、黄疸(皮膚が黄色くなる症状)が起きることもあります。

脾動脈閉塞では、無症状のこともありますが、腹痛、発熱、悪寒が起きることもあります。

診断

  • 画像検査

通常は症状と身体診察での所見から、この病気が疑われます。デュプレックス法による超音波検査、CT血管造影、MRアンギオグラフィー検査、従来法の血管造影などの画像検査によって診断を確定します。

通常、 血管造影検査 血管造影 血管造影検査は、X線を用いて血管の詳細な画像を描出する検査で、CT血管造影検査やMRアンギオグラフィー検査と区別するために「従来の血管造影」と呼ばれることもあります。血管造影の撮影を行いながら、医師が血管の異常を治療することも可能です。 血管造影では静止画像だけでなく動画(シネアンギオグラフィーといいます)も撮影でき、血液が血管内を流れる速さを測ることも可能です。 血管造影は体に負担をかける検査法ですが、それでも比較的安全です。... さらに読む (柔軟な合成樹脂製の管[カテーテル]を太ももの上部にある太い動脈に挿入して行う、体に負担をかける検査)は、外科手術または血管形成術(動脈内で小さな風船[バルーン]を膨らませて、閉塞した部分を開通させる処置)が必要な場合にのみ行われます。この場合の目的は、手術や血管形成術を行う前に、異常のある動脈の鮮明な画像を撮影することです。まれに、外科手術や血管形成術が実施可能かどうかを判断するために血管造影検査が必要になることもあります。血管造影検査では、造影剤(X線画像に写る物質)をカテーテル(柔軟な合成樹脂製の管)から動脈に注入します。その造影剤により、動脈の内側の輪郭がX線画像上で映し出されます。その結果、血管造影検査では動脈の内径を正確に調べることができ、一部の閉塞はドプラ超音波検査よりも正確に検出されます。

最近では、ほとんどの病院で、CT血管造影( CT angiography CT血管造影 CT検査では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度から撮影された一連のX線画像であり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとはcomputed... さらに読む CT血管造影 )や MRアンギオグラフィー検査 MRアンギオグラフィー検査 MRI(磁気共鳴画像)検査は、強力な磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強力な磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置内で生じるような強力な磁場の中に置かれると、磁場... さらに読む MRアンギオグラフィー検査 など、体への負担が少ない方法で血管造影検査が行われています。これらの検査は、柔軟なカテーテルを主要な動脈まで挿入する必要がなく、腕の静脈に挿入した標準的なカテーテルから少量の造影剤を血流中に注入して行います。

治療

  • 血管形成術または血栓の除去による血流の回復

急性閉塞では、影響が出ている部位への血流を回復させるために、緊急に手術をしなければならず、血栓の除去(塞栓除去術)、血管形成術、その他の手技(血栓を溶かすための薬剤の注射や緊急の外科的バイパス術)が必要になります。

大動脈の下部と総腸骨動脈

大動脈の下部や総腸骨動脈が突然完全に閉塞した場合は、直ちに手術を行います。動脈にカテーテルを挿入してから血栓を除去または吸引するか、開腹手術で動脈を切開し、手作業で血栓を除去します。

腎動脈

腎動脈の突然の完全閉塞では、血栓の除去または外科手術により血管形成術を行います。速やかに行われれば、この手術によって腎臓への血流と機能を回復させることができます。

血管形成術では、先端にバルーンの付いたカテーテルを動脈の狭くなった部分まで挿入し、そこでバルーンを膨らませて閉塞部を開通させますが、ときに血管の開通を長期間保つために、拡張可能なメッシュ状の金属製チューブ(ステント)を閉塞があった部分に設置することもあります。現在では、薬剤を徐々に放出するタイプのステント(薬剤溶出性ステント)もあり、閉塞の再発を予防する効果があります。慢性閉塞によって症状が生じている場合は、外科手術または血管形成術が必要です。 抗血小板薬 抗血小板薬 心筋は酸素を豊富に含んだ血液を絶えず必要とします。その血液を心臓に送る血管は、大動脈が心臓から出たところで枝分かれする冠動脈です。この血管が狭くなる冠動脈疾患では、血流が遮断されて、胸痛(狭心症)や急性冠症候群が発生します。急性冠症候群では、冠動脈が突然ふさがり、心筋の一部への血液供給が大きく減少または遮断されます。組織への血液供給がなくなることを虚血といいます。血液供給が2~3分以上にわたって大きく減少するか遮断されると、心臓の組織が... さらに読む が役立つこともあります。

腎動脈が徐々に閉塞していく場合は、血圧がよくコントロールされ、腎臓が十分に機能していることが血液検査で示されれば、特別な治療は必要ありません。腎血管性高血圧が発生した場合は、 降圧薬 高血圧の薬物治療 高血圧の治療に使用される薬剤は降圧薬と呼ばれています。降圧薬にはいろいろな種類があり、高血圧のほとんどを制御することができますが、治療は患者一人ひとりに適した方法で行う必要があります。(高血圧も参照のこと。)患者と医師が十分なコミュニケーションをとり、協力して治療プログラムを実行できれば、治療効果も高まります。 降圧薬の血圧を下げるメカニズムは薬剤の種類によって異なるため、様々な治療戦略があります。患者によっては段階的な薬物療法を行う場... さらに読む を使用します。多くの場合、3種類以上の降圧薬が必要になります。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は特に有効ですが、使用する場合は腎機能をモニタリングする必要があります。高血圧が重度のまま持続する場合や、腎機能が悪化している場合は、腎臓への血流を回復させるために血管形成術かバイパス手術を行います。

上腸間膜動脈

上腸間膜動脈が突然完全に閉塞した場合は、ステントを使用する血管形成術、外科手術、または薬物治療を直ちに行って、迅速に血液供給を回復させなければ、救命することができません。しばしば、一刻も早く外科手術を行うため、診断のための検査を先に行わないこともあります。外科手術では、閉塞を解除する処置や閉塞部の迂回路を作る処置のほか、ときに腸の影響を受けた部分を切除する処置が行われます。

血管造影検査で閉塞の診断が確定した場合は、その検査中に、血栓を溶かすや動脈を拡張させる薬を投与することがあります。これらの薬は閉塞が起きた動脈に直接投与され、閉塞部を開通させられる可能性があります。この処置によって、外科手術を回避できる場合があります。救命できるかどうか、腸の壊死を回避できるかどうかは、いかに早く血液供給を回復できるかにかかっています。

上腸間膜動脈が徐々に狭くなった場合は、ニトログリセリンの投与で腹痛が軽減する可能性がありますが、動脈を広げるためには依然として血管形成術か外科手術が必要です。

肝動脈と脾動脈

肝動脈や脾動脈が閉塞した場合には、外科手術で血栓を取り除く必要があります。

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