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狭心症

執筆者:

Jonathan G. Howlett

, MD, Libin Cardiovascular Institute of Alberta

最終査読/改訂年月 2016年 11月
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狭心症とは、心臓の筋肉(心筋)に供給される酸素が不足するために胸部に一時的な痛みや圧迫感が起きる病気です。

  • 狭心症の人では、胸骨の後ろの部分に不快感や圧迫感がみられます。

  • 典型的には狭心症は運動時に発生し、安静にしていると回復します。

  • 狭心症の診断は、症状と心電図検査および画像検査の結果に基づいて下されます。

  • 治療法には、硝酸薬、ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬の投与や、経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス術などがあります。

冠動脈疾患の概要も参照のこと。)

米国では約1000万人に狭心症がみられ、毎年約50万人が新たに狭心症と診断されています。狭心症の発症年齢は、男性よりも女性の方が高い傾向にあります。

狭心症の原因

心筋は酸素を豊富に含んだ血液を絶えず必要とします。その血液を心臓に送る血管は、大動脈が心臓から出たところで枝分かれする冠動脈です。狭心症は通常、心臓にかかる負担(および酸素の必要量)が増大して、心臓が必要とする十分な量の血流が冠動脈から供給されなくなることで発生します。動脈に狭窄が起こると、冠動脈の血流が制限される場合があります(冠動脈疾患の概要を参照)。狭窄は通常、動脈内に脂肪分が沈着すること(動脈硬化)によって発生しますが、冠動脈のけいれんによって発生する場合もあります。組織に供給される血流が不十分になった状態を虚血と呼びます。

動脈硬化による狭心症が最初に発生するのは、運動をしたり精神的に緊張したりすることで、心臓が普段より激しく働き、通常より多くの酸素が必要になった状況であるのが通常です。動脈のかなりの部分(普通は70%以上)がふさがると、心臓の酸素需要量が最も少なくなる安静時にも狭心症が起こるようになります。

重症の貧血によっても狭心症の可能性が高まります。貧血では、赤血球(酸素を運ぶ分子であるヘモグロビンを含む細胞)の数や赤血球中のヘモグロビンの量が異常に低下します。その結果として、心筋に供給される酸素の量が減少します。

まれな原因

シンドロームXとは、太い冠動脈にけいれんや明らかな閉塞がない状況で起こる狭心症の一種です。少なくとも一部の患者では、もっと細い冠動脈が一時的に狭窄を起こしたことが原因です。一時的な狭窄が起こる理由はよく分かっていませんが、心臓内の化学物質の不均衡や細い動脈(細動脈)の機能不全による異常が関与している可能性があります。この症候群は、同じくシンドロームXと呼ばれる別の病気(メタボリックシンドロームまたは インスリン抵抗性症候群)と区別するため、心臓のシンドロームX(cardiac syndrome X)と呼ばれることもあります。

狭心症のまれな原因として、ほかにも以下のものがあります。

  • 重度の高血圧

  • 大動脈弁の狭窄(大動脈弁狭窄症)

  • 大動脈弁での血液の逆流(大動脈弁逆流症)

  • 心室の壁の肥厚(肥大型心筋症)、特に左右の心室間の壁の肥厚(閉塞性肥大型心筋症)

これらの病態では、心臓にかかる負荷が増えるため、心筋により多くの酸素が必要になります。心筋の酸素需要量が供給量を上回ると、狭心症が起こります。冠動脈の入口は大動脈弁のすぐ先にあるため、大動脈弁に異常が起こると、冠動脈への血流が減少します。

狭心症の分類

夜間狭心症は、夜間の睡眠中に起こる狭心症です。

安定狭心症は、典型的には運動やストレスに伴って胸部に痛みや不快感が起きる病気で、そうした痛みや不快感は、毎回ほぼ同程度の運動やストレスによって誘発されます。

安静時狭心症は、夜間に限らず横になっているときに起こる狭心症で、明らかな誘因は認められません。安静時狭心症は重力による体液の移動によって起こります。そうした体液の動きによって心臓への負担が増大するためです。

異型狭心症は、心臓の表面にある太い冠動脈の1つがけいれんするために起こります。異型と呼ばれているのは、運動中ではなく安静時に痛みが出ることと、狭心症の発生中に心電図上で特徴的な変化がみられることによります。

不安定狭心症とは、症状のパターンが変化する狭心症のことです。個々の狭心症患者における症状は通常一定を維持しますので、痛みがひどくなる、発作の回数が増える、少しの動作や安静時に発作が起こるといった変化がみられるのは、深刻な事態です。このような変化は通常、アテロームの破裂や血栓の形成による冠動脈の急速な狭窄を反映したものだからです。心臓発作のリスクも高くなります。不安定狭心症は急性冠症候群の一種です。

狭心症の症状

たいていの場合、狭心症は胸骨の後ろの圧迫感や痛みとして感じられますが、この感覚を経験した人は、しばしば痛みというより不快感や押しつぶされるような感覚と表現します。また、不快感が肩、腕の内側、背中、のど、あご、歯などに広がることもあります。

高齢者では、症状の現れ方が通常と異なるため、診断を誤りやすくなります。例えば、胸骨の後ろに痛みが生じることが少ない一方、背中や肩に痛みが生じて、関節炎と間違われることもあります。また、胃の辺りで不快感、膨満、ガスの貯留などが起きることがあり、特に食後にみられやすい傾向があります(食後は消化を促進するために多くの血液が必要になるため)。このような不快感は消化不良や胃潰瘍と間違われることがあります。げっぷをすることで症状が軽くなったように感じられる場合もあります。また、混乱や認知症がみられる高齢者では、痛みがあってもそれを伝えることができません。

症状は女性ではかなり異なることがあります。女性の場合、背中や肩、腕、あごに灼熱感や圧痛が生じることが多くあります。

知っていますか?

  • 女性が経験する狭心症の不快感は男性のそれとは異なり、背中や肩、腕、あごの灼熱感や圧痛がより多くみられます。

典型的な狭心症は、運動によって引き起こされ、数分以上続くことはなく、安静にすることで治まります。なかには特定の運動量を超えると狭心症が起こることを予測できる人もいますが、それ以外の人では、発作は予期せず突然に起こります。狭心症は、しばしば食後に運動すると悪化します。通常は寒い天候も悪化の原因になります。風の強い日の散歩や暖かい部屋から寒い屋外への移動によって、狭心症が誘発されることもあります。精神的ストレスによって狭心症が起きたり悪化したりすることもあります。ときには、安静時の強い感情や睡眠時の悪夢も狭心症の原因になります。

無症候性心筋虚血

虚血がある人の全員が狭心症を発症するわけではありません。狭心症を伴わない虚血は、無症候性心筋虚血と呼ばれています。虚血が起きても症状が現れない理由は解明されておらず、その意義を疑う議論もあります。しかし、ほとんどの専門家は、無症候性心筋虚血も狭心症を伴う虚血と同じくらい深刻と考えています。

狭心症の診断

  • 心電図検査

狭心症の診断は、大部分が患者による症状の説明に基づいて下されます。身体診察や心電図検査では、発作と発作の間には、ときに狭心症の発作中でさえ、ほとんど異常が認められず、広範囲の冠動脈疾患がある患者ですら異常が認められない場合があります。発作中は、心拍数がわずかに増えて血圧が上がるため、聴診器で心拍の変化を確認できることがあります。心電図検査では、心臓の電気的活動の変化を検出できます。

症状が典型的な場合は、通常は容易に診断できます。痛みの種類、痛みのある部位、運動や食事、天気、その他の要因との関連性が診断の参考になります。冠動脈疾患の危険因子の存在も診断確定の参考になります。

心筋への血液供給量がどの程度不足しているか(虚血の程度)を調べ、冠動脈疾患の有無や、ある場合どの程度進行しているかを評価するために、他の検査が行われることもあります。

負荷試験

負荷試験(運動耐容能検査とも呼ばれる)は、冠動脈が部分的に閉塞している場合、心臓は安静時には十分な血液を供給できる一方、心臓の作業量が増えると十分な血液を供給できなくなるという考え方に基づいています。負荷試験では、運動(例えば、トレッドミルの上で歩く、エアロバイク[自転車エルゴメーター]をこぐなど)によって心臓に強い負荷をかけます。そのような運動ができない人には、心臓をより速く拍動させる刺激薬が投与されます。負荷をかけながら、虚血を示唆する異常がないか心電図によってモニタリングします。

負荷をかけた後に、虚血がないかを調べるために心エコー検査や核医学検査など、より正確で費用のかかる検査を行うことも多くあります。これらの検査は、冠動脈造影検査や冠動脈バイパス術(CABG)が必要かどうかを判断する上で役立ちます。

心エコー検査

心エコー検査では、超音波を利用して心臓の画像(心エコー図)を撮影します。この検査では、心臓の大きさ、心筋の動き、心臓弁を通過する血流、弁の機能を確認できます。心エコー検査は安静時と運動時に行います。虚血がある場合には、左心室のポンプ機能に異常がみられます。

冠動脈造影検査

冠動脈造影検査では、造影剤を注射した後に動脈のX線撮影を行います。冠動脈造影検査は最も正確に冠動脈疾患を診断できる検査で、診断が明確でない場合に行われます。一般的に冠動脈造影検査は、冠動脈バイパス術と経皮的冠動脈インターベンションのどちらが適切かを判断するために用いられます。動脈造影検査では動脈のけいれんも検出できます。動脈造影検査の実施中に動脈のけいれんが起こらない場合は、けいれんを引き起こす薬を検査中に使用することもあります。

少数の患者では、典型的な狭心症の症状がみられ、負荷試験で異常が認められたにもかかわらず、冠動脈造影検査で冠動脈疾患の存在を確認できない場合もあります。その中にはシンドロームXの人も含まれますが、ほとんどの場合、そうした症状の原因は心臓以外にあります。

連続的な心電図モニタリング

ホルター心電計による連続的な心電図モニタリングでは、症候性または無症候性の虚血や異型狭心症(典型的には安静時に発生します)を意味する異常を検出することができます。

心臓の画像検査

電子線CT検査では、冠動脈内のカルシウム沈着の量を測定できます。沈着しているカルシウムの量(カルシウムスコア)から、狭心症または心臓発作が起きる可能性を大まかに推定することができます。ただし、カルシウムの沈着は動脈がそれほど狭窄していない人にもみられる場合があるため、このスコアは経皮的冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス術の必要性を判断する上での信頼性は高くありません。また、電子線CT検査は多量の放射線を照射するという点からも、すべての人を対象にしたスクリーニングに推奨される方法ではありません。しかし、死亡や心臓発作のリスクが比較的高い人の評価には、この検査がしばしば有効となります。リスクがある人は、糖尿病や高血圧がある人、コレステロール値が高い人、負荷試験の結果が異常または不明確な人などです。

マルチスライスCTは、小型の検出器を多数搭載した高速のCTスキャナーを用いる検査で、冠動脈の狭窄を正確に検出できます。この検査法は、体への負担が少ないうえ、症状の原因の候補から冠動脈狭窄を除外するのに非常に高い精度を誇ります(特に負荷試験を実施できない人や負荷試験で診断が確定しなかった人において)。また、ステントやバイパスグラフトが閉塞していないかの確認や、心臓と冠静脈の構造を表した画像の表示、アテローム内のカルシウムの有無の評価などにも用いられます。ただし、この検査法は妊娠中の女性や、検査中に3~4回、15~20秒間呼吸を止めることができない人に行うことはできません。また、心拍数が高い人でもうまく検査を行えないため、心拍数が毎分65回を超える人には心拍数を低下させる薬を投与します。そのため、この薬の副作用や心拍数の低下に耐えられない人は、この検査を受けることができません。この検査でも多くの放射線が照射されます。

心臓MRI検査は、心臓と大動脈および肺動脈(心臓から出ている太い血管)の評価に役立ちます。この検査法は放射線への曝露がありません。冠動脈疾患のある人では、動脈の狭窄の評価、冠動脈内の血流量の測定、心臓への酸素供給が十分かどうかの確認にMRI検査が用いられます。またMRI検査は、ストレスが生じたときの心臓の壁の動きの異常(その部位への血流の不足を意味している場合があります)の評価や、心臓発作によって損傷を受けた心筋が回復するか否かの評価(心筋生存能の検査)にも用いられます。

予後(経過の見通し)

狭心症の経過の見通し(予後)を悪くする主な要因として、高齢、広範囲の冠動脈疾患、糖尿病、その他の危険因子(特に喫煙)、激痛などがありますが、最も重要な要因は、心臓が血液を送り出すポンプ機能(心室機能)の低下です。例えば、異常のある冠動脈の数が多いほど、あるいは冠動脈の閉塞が大きいほど予後は悪くなります。心臓のポンプ機能が正常な安定狭心症では、予後は驚くほど良好ですが、ポンプ機能が低下すると、予後は劇的に悪化します。シンドロームXの人の予後は、冠動脈疾患がない人と変わりません。

狭心症以外に危険因子がない人の死亡率は毎年約1.4%です。高血圧、心電図の異常、心臓発作の既往歴などの危険因子がある人、特に糖尿病患者では、死亡率がより高くなります。

狭心症の治療

  • 生活習慣の改善

  • 薬物療法

  • ときに、詰まった血管を開通させる治療(血行再建術)

治療はまず、冠動脈疾患の進行を遅らせるか、回復に向かわせるために、危険因子に対処することから始めます。高血圧や高コレステロール血症などの危険因子は、速やかに治療します。禁煙が不可欠です。脂肪と単糖類の炭水化物をあまり含まない多様な食事をとることが推奨されるほか、ほとんどの人には運動が勧められます。必要に応じて、体重の減量も推奨されます。

狭心症の治療法は、症状の安定度と重症度によってある程度決まります。症状が軽度から中等度で安定している場合は、危険因子を是正し、特定の薬を使用する治療が最も有効です。危険因子の是正や薬物療法でも症状が大きく改善しなかった場合は、心臓内の異常がある部分への血流を回復させる手術(血行再建術)が必要になる場合もあります。急速に症状が悪化している場合は、すぐに入院して、急性冠症候群の検査を受ける必要があります。

薬物療法

狭心症の治療には、いくつかの種類があります。以下の目的で様々な治療法が用いられます。

  • 狭心症発作を鎮める(硝酸薬)

  • 狭心症の再発を予防する(ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬、ときに新しい薬剤であるラノラジン[ranolazine])

  • 冠動脈閉塞を予防し解消する(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、スタチン、抗血小板薬)

硝酸薬

ニトログリセリンは、非常に短時間で作用を発揮する硝酸薬で、血管を拡張させる作用があります。ニトログリセリンの服用により、狭心症発作は通常1分半から3分で軽減され、その効果は30分間続きます。ニトログリセリンには、舌下投与(錠剤を舌の下に置いて口の中で溶かす投与方法)で使用する錠剤と、口から吸入するスプレー剤があります。錠剤は歯ぐきの横に挟んで使用することもあります。慢性の安定狭心症がある人は、ニトログリセリンの錠剤かスプレーを常に携帯しておくべきです。狭心症を誘発することが分かっている運動強度に達する前にニトログリセリンを服用するのが有効です。

長時間作用型の硝酸薬(イソソルビドなど)は、1日に1~4回服用します。硝酸薬の皮膚パッチ剤や外用剤も有効で、この場合は数時間以上にわたって薬が皮膚から吸収されます。長時間作用型の硝酸薬を定期的に服用していると、すぐに効果が低下する可能性があります。多くの専門家は、毎日8~12時間(狭心症の発作が夜に起こる場合を除いて通常は夜間)この種の薬を服用しない時間を設けるよう勧めています。そうすることにより、長期的な有効性を維持しやすくなります。ベータ遮断薬とは異なり、硝酸薬は心臓発作や突然死のリスクを低下させはしませんが、冠動脈疾患のある人では症状を大幅に軽減できます。

ベータ遮断薬

ベータ遮断薬は、 アドレナリン エピネフリンとも呼ばれます)や ノルアドレナリン ノルエピネフリンとも呼ばれます)などのホルモンが心臓などの臓器に及ぼす影響を抑制します。これらのホルモンは心臓を刺激して、拍動を速く強くさせ、ほとんどの細動脈を収縮させます(それにより血圧を上昇させます— アドレナリン遮断薬)。したがって、ベータ遮断薬は安静時の心拍数と血圧を低下させます。運動中には心拍数と血圧の上昇を抑え、酸素の必要量を減少させることで、狭心症のリスクを低下させます。またベータ遮断薬は、心臓発作や突然死のリスクを低下させる効果もあるため、冠動脈疾患の人の長期的な経過を改善します。

カルシウム拮抗薬

カルシウム拮抗薬には、血管が収縮して狭くなるのを予防する作用と、冠動脈のけいれんを止める作用があります。この種の薬は、安定狭心症だけでなく、異型狭心症の治療にも有効です。カルシウム拮抗薬はすべて血圧を低下させます。そのうちの一部、例えばベラパミルやジルチアゼムには、心拍数を低下させる作用もあります。血圧と心拍数を低下させることで、酸素の必要量が減少し、狭心症のリスクが低下します。この作用は多くの人、特にベータ遮断薬を服用できない人や、硝酸薬で十分な回復が得られない人で有用になります。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬は、狭心症を含めた冠動脈疾患の所見がみられる患者にしばしば投与されます。この種の薬は、狭心症自体に対する治療効果はありませんが、血圧(ひいては心臓が血液を送り出すための仕事量)を低下させ、心臓発作のリスクと冠動脈疾患による死亡リスクを低下させる効果があります。

スタチン

スタチン系薬剤は、LDLコレステロール(冠動脈疾患を引き起こすコレステロールの一種)の血中濃度を低下させる薬です。この種の薬は、心臓発作、脳卒中、突然死のリスクを低下させます。

抗血小板薬

アスピリン、チクロピジン、クロピドグレルなどの抗血小板薬は、血小板が凝集して血管壁に付着しないように血小板の性質を変化させます。血流中を循環する血小板は、血管が損傷すると血栓の形成を促進します(血栓症)。しかし、血小板が動脈壁内のアテローム上に集まると、その結果として生じる血栓が動脈を狭くしたり詰まらせたりして、心臓発作を引き起こす可能性があります。

アスピリンは血小板の性質を不可逆的に変化させ、冠動脈疾患による死亡のリスクを低下させます。冠動脈疾患がある人の大半には、心臓発作のリスクを低下させるために、アスピリンを毎日服用することが推奨されています。アスピリンの作用に加えて、プラスグレル、クロピドグレル、チカグレロルには血小板の性質をさらに変化させる効果があります。心臓発作の発生後または経皮的冠動脈インターベンションの実施後の一定期間は、心臓発作のリスクを低下させるため、アスピリンに加えてこれらの薬剤のいずれかが使用されることがあります。抗血小板薬は通常、狭心症の人に処方されますが、特別な理由がある場合は別です。例えば、出血性疾患のある人には処方されません。

冠動脈疾患の具体的な治療薬に関する詳細は、本マニュアルの別の箇所で説明されています( 冠動脈疾患の治療に用いられる薬剤*)。

血行再建術

予防薬を使用していても狭心症が持続する人には、冠動脈を拡張したり置き換え(迂回し)たりする処置が有益です。これらの処置は血行再建術と呼ばれ、具体的には以下のものがあります。

  • 経皮的冠動脈インターベンション(PCI、血管形成術とも呼ばれる)

  • 冠動脈バイパス術(CABG)

これらは体に負担をかけるものの有効な治療法ですが、当面の問題箇所を構造的に修復する手段にすぎず、基礎にある病気の進行を止めるものではありませんので、依然として危険因子の是正が必要です。

経皮的冠動脈インターベンション

経皮的冠動脈インターベンションは、体への負担が少ないため冠動脈バイパス術よりよく用いられる方法ですが、あらゆる状況に適しているわけではありません。経皮的冠動脈インターベンションは通常、1本または2本の動脈に閉塞がみられ、かつ閉塞した部分があまり長くない場合に選択されます。しかし、新しい技術の開発や経験の蓄積により、より多くの人に経皮的冠動脈インターベンションを選択できるようになってきています。

冠動脈バイパス術

冠動脈バイパス術は、狭心症と冠動脈疾患の患者に非常に有効です。この治療法により、運動耐容能(耐えられる運動の量)を高め、症状を緩和し、必要な薬の数や用量を減らすことが可能です。冠動脈バイパス術が有効になる可能性が最も高いのは、薬物療法で効果が得られない重度の狭心症があり、心機能が正常で、それまで心臓発作を起こしたことがなく、手術のリスクを高める病気(慢性閉塞性肺疾患など)がない人です。このような人では、緊急時以外の冠動脈バイパス術による死亡率は1%以下で、手術中の心臓障害(心臓発作など)の発生率は5%未満です。約85%の患者では、手術後に症状の完全に治癒か劇的な改善がみられます。

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