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心房細動と心房粗動

執筆者:

L. Brent Mitchell

, MD, Libin Cardiovascular Institute of Alberta, University of Calgary

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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心房細動と心房粗動は、非常に速い電気刺激が発生することにより、心房(心臓の上側にある部屋)が急速に収縮すると同時に、一部の電気刺激が心室まで到達することで、ときに心室の収縮も正常より速くかつ非効率になる病態です。

  • これらの病気は、しばしば心房を拡張させる病態によって引き起こされます。

  • 症状は心室がどれくらい速く収縮するかに応じて、動悸、脱力感、めまい、ふらつき、息切れ、胸痛などがみられます。

  • 心電図検査で診断を確定します。

  • 治療では、心室の収縮を遅くする薬を投与するほか、ときに薬剤や電気ショック(カルディオバージョン)によって正常な心拍リズムを回復させます。

不整脈の概要も参照のこと。)

心房細動と心房粗動は、高齢者や心臓に病気がある人で多くみられます。心房細動の方が心房粗動より多くみられます。心房粗動がみられる人の多くは、心房細動も起きることがあります。心房細動と心房粗動は、発生と消失を繰り返す場合もあれば、持続的に起こる場合もあります。

心房細動

心房細動の発生中には、電気刺激が心房の1カ所(洞房結節— 正常な刺激伝導路)でなく、心房内や心房周囲の多数の領域で誘発されます。そうやって生じる電気的活動は調整がとれておらず無秩序であるため、心房の壁は収縮できずに振動します。心房が正常に収縮しないため、心室に血液を送る手助けができなくなります。心房が血液を心室に送る補助をしないと、心臓から送り出される血液の最大量が約10%低下します。このように最大拍出量がわずかに低下することは、通常は問題になりませんが、心疾患のある人では、特にそのような人が運動すると問題が生じます。

無秩序な電気刺激の一部だけが房室結節を通って心室まで伝わります。この結果、心室は不規則に拍動します。治療を受けていない心房細動では、ほとんどの場合、電気刺激は正常より速い頻度で心室に伝わります(正常時の心拍数がおよそ毎分60~100回であるのに対し、しばしば毎分140~160回に及びます)。運動中には心拍数はさらに上がります。

心房粗動

心房粗動では、心房細動の場合と異なり、心房での電気的活動は調和がとれています。そのため、心房は収縮しますが、非常に速いペースで拍動します(1分当たり250~350回)。そのペースが速すぎるため、一部の電気刺激が房室結節を介して心室まで伝わることができません。治療を受けない患者では、ほとんどの場合、心房の電気刺激は1回おきに心室に伝わるため、心室の拍動数はおよそ毎分150回になります。

心電図:波形の読み方

心電図には、1回の拍動中に心臓内を伝わる電気刺激が波形として描き出されます。心電図上の電流波形はいくつかの部分に分けられ、それぞれの部分にはアルファベットの名前が付けられています。

1回の拍動は、心臓のペースメーカー部分(洞結節ないし洞房結節)から電気刺激が発生することで始まります。この電気刺激が心臓の上側にある2つの部屋(心房)を興奮させます。P波は、この心房の興奮を表した波形です。

次に、電気刺激は心臓の下側にある2つの部屋(心室)へと伝わります。QRS波は、この心室の興奮を表した波形です。

その後、電気刺激は心室の周りを逆方向に広がっていきます。この電気的活動は再分極波と呼ばれ、心電図上ではT波で表されます。

心電図でよくみられる異常には多くの種類があります。例えば、過去の心臓発作(心筋梗塞)、心拍リズムの異常(不整脈)、心臓への血液と酸素の供給不足(虚血)、心筋の壁の肥厚(心肥大)などがあります。

心電図上で認められる特定の異常から、心臓の壁が弱くなった部分にこぶ状の突出(心房瘤または心室瘤)ができた可能性が疑われることもあります。心房瘤や心室瘤は、心臓発作が原因で発生する可能性があります。心拍リズムに異常(速すぎる、遅すぎる、不規則)がみられる場合には、その異常なリズムがどこから始まっているのかも心電図から判断できることがあります。そのような情報は、医師が原因を特定する手がかりになります。

心電図:波形の読み方

心房粗動

心房粗動は、心電図上でのこぎりの歯のように見える「粗動」波を特徴とする周期的なリズムです。

心房粗動

原因

心房細動や心房粗動は、ほかに心疾患がない場合でも起こります。それよりも、これらの不整脈は以下のような病気によって引き起こされることの方が多いです。

心臓弁膜症や高血圧があると、心房が大きくなるため、心房細動や心房粗動が起こりやすくなります。

合併症

主な合併症としては以下のものがあります。

  • 心房内の血栓

  • 心拍数の上昇による心拍出量の低下

心房細動や心房粗動では、心拍毎に心房内の血液が完全には心室に送られなくなります。時間が経過するにつれ、心房内に残った血液が停滞し、血栓が形成されることがあります。このような血栓は崩れることがあり、特に心房細動が自然にあるいは治療により改善されて拍動リズムが正常に戻った直後によく崩れます。そのような血栓の破片は左心室を通過し、血流に乗って体内を移動して、細い動脈に詰まる可能性があります(この現象を塞栓といいます)。血栓の欠片が脳の動脈に詰まると、脳卒中が起こります。まれに、脳卒中が心房細動や心房粗動の最初の徴候になることもあります。

心房細動や心房粗動により心拍が速くなりすぎると、心室が完全に血液で満たされるだけの時間が確保されなります。心室が完全には満たされないため、心臓から送り出される血液の量が減少します。この減少により血圧が低下し、心不全が起こる場合もあります。

知っていますか?

  • 心房内に血液が貯まって血栓ができる可能性があるため、心房細動は脳卒中の強い危険因子です。

症状

心房細動と心房粗動の症状は、主に心室が拍動する速さによって異なります。心室の拍動が正常かわずかに速い場合(およそ毎分120回未満)は、症状は現れないのが通常です。心室の拍動がそれより速くなると、動悸(心臓の拍動を不快に自覚する症状)や胸痛が起こります。

心房細動がある人では、脈が通常は速く、常に不規則です。心房粗動がある人では、脈が通常は速いですが、規則的な場合もあれば不規則な場合もあります。

心臓が血液を送り出すポンプ機能が低下することで、脱力感、気が遠くなる、息切れなどの症状が起こります。心室の拍動数が非常に速くなると、一部の人(特に高齢者と心疾患がある人)では心不全や胸痛が起こります。非常にまれですが、このような人はショック状態(重度の低血圧)に陥ることもあります。

診断

  • 心電図検査

心房細動と心房粗動の診断は、症状から疑われ、心電図検査で確定されます。

心臓の超音波検査(心エコー検査)を行います。これにより、心臓弁を評価し、心房内の血栓を探すことができます。

通常は血液検査も行って、甲状腺機能亢進症がないかどうかを調べます。

治療

  • 心拍数を低下させる

  • 抗凝固薬

  • 正常な心拍リズムを回復させる

  • アブレーション

心房細動または心房粗動に対する治療の目的は、心室が収縮する速さを制御すること、正常な心拍リズムを回復させること、そして不整脈の原因になっている病気を治すことです。通常は、血栓や塞栓の発生を予防する薬(抗凝固薬またはアスピリン)を投与します。

原因となっている病気の治療は重要ですが、それによって心房性不整脈が必ず軽減されるとはかぎりません。しかし、甲状腺機能亢進症の治療や心臓弁膜症または先天性心疾患に対する手術が不整脈の軽減につながる場合があります。

心拍数を低下させる

通常、心房細動や心房粗動に対する治療の第1段階は、心室の拍動を遅くして、心臓が全身に血液を送り出す効率を高めることです。通常は、薬によって心室の拍動を遅くすることができます。多くの場合、最初に使用する薬はジルチアゼムやベラパミルなどのカルシウム拮抗薬で、この種の薬には心室への電気刺激の伝導を遅らせる作用があります( 不整脈の治療に用いられる主な薬剤)。プロプラノロールやアテノロールなどのベータ遮断薬を使用する場合もあります。心不全の患者には、ジゴキシンを使用する場合もあります。

心拍リズムを回復させる

心房細動も心房粗動も自然に正常なリズムに戻ることがありますが、一部の人では、これらの不整脈を積極的に正常なリズムに戻す処置(カルディオバージョン)が必要になります。そのような状況としては、心房細動や心房粗動によって心不全や心臓の拍出量低下による他の症状が引き起こされている場合が挙げられます。

正常な心拍リズムを回復させる際には、それにより血栓が崩れて脳卒中を引き起こすリスクがあるため、その前に血栓に対する予防策を講じる必要があります。

心房細動や心房粗動が48間以上続いている場合は、正常な心拍リズムを回復させる治療を試みる前に、ワルファリンなどの抗凝固薬を3~4週間投与します。あるいは、ヘパリンのような作用時間の短い抗凝固薬を投与して、心エコー検査を行うこともあります。心エコー検査で心臓内に血栓が認められなければ、心拍リズムを回復させる治療を試みることができます。不整脈の持続時間が48時間未満であることが明らかな場合は、心拍リズムを回復させる治療の前に抗凝固薬を使用する必要はありません。しかし、ほとんどの場合は、心拍リズムを回復させる治療から少なくとも4週間にわたって抗凝固薬を使用する必要があります。

カルディオバージョンの方法には以下のものがあります。

  • 電気ショック(同期カルディオバージョン)

  • 薬剤

心臓に対する電気ショックは、最も有効なアプローチです。電気ショックは、心臓の電気的活動の中の特定の時点でのみ与えられるように同期されているため(同期カルディオバージョン)、心室細動を誘発することがありません。カルディオバージョンは75~90%の患者で有効です。

特定の抗不整脈薬(最も一般的にはアミオダロン、フレイカニド、プロカインアミド、プロパフェノン、ソタロール— 不整脈の治療に用いられる主な薬剤)も正常な心拍リズムを回復させます。しかし、これらの薬は50~60%の患者にしか有効でないうえ、しばしば副作用がみられます。

どのような方法を用いても、不整脈が長引くほど(特に6カ月以上になった場合)、心房が拡張するほど、また原因の心疾患が重症になるほど、正常なリズムに戻る可能性は低くなります。正常な心拍リズムの回復に成功した場合も、たとえ再発を予防する薬(多くは不整脈を正常なリズムに戻す際と同じもの)を服用していても、再発のリスクが高くなります。

アブレーション手技

まれに、心房細動に対する他の治療法がすべて無効に終わった場合には、アブレーション手技によって房室結節を破壊することがあります。アブレーションとは、心臓内に挿入したカテーテルの先端部で通常は加熱または冷却することによって、組織を死滅させる治療法です。この処置によって心房から心室への刺激の伝導を完全に遮断し、心室の拍動数を低下させます。ただし、その後は心室を拍動させるために、生涯にわたってペースメーカーを使用する必要があります。

別のタイプのアブレーションでは、肺静脈近くの心房の組織を破壊します(肺静脈隔離術)。肺静脈隔離術では房室結節が残りますが、成功率が比較的低く(60~80%)、重篤な合併症のリスクが無視できません(1~5%)。そのため、この処置は良好な反応が得られる可能性が高い患者(すなわち、心房細動が薬物治療に反応せず、ほかに重篤な心疾患がみられない若い患者)だけに用いられることが多くなっています。

心房粗動がある人では、粗動の原因になっている心房の回路をアブレーションによって遮断することで、正常な心拍リズムを永続的に回復させることができます。この処置は約90%の患者で成功します。

血栓の予防

心房細動または心房粗動を正常な心拍リズムに戻す場合には、血栓(とそれによる脳卒中)を予防する手段を講じる必要があります。ほとんどの患者では、通常は長期間の治療中にもこのような対策が必要になります。典型的には、ワルファリン、ダビガトラン、凝固第Xa因子阻害薬(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)などの抗凝固薬を投与します。抗凝固薬を投与できない場合はアスピリンを投与することがありますが、アスピリンはワルファリンほど有効ではありません。

心房細動を1回だけ起こし、正常な心拍リズムを(自然にまたは治療により)取り戻し、その他の点では健康な人には、抗凝固療法は4週間だけ必要になります。心房細動または心房粗動を数回起こした人や、治療にもかかわらず正常な心拍リズムが戻らない人は、血栓を予防するための薬を無期限に服用する必要があります。

脳卒中の危険因子が1つでもある場合は、ワルファリンかその他の抗凝固薬を使用します。そのような危険因子としては以下のものがあります。

  • 65歳以上

  • 高血圧

  • 糖尿病

  • 心不全

  • 脳卒中または一過性脳虚血発作の既往

  • 血管の病気

  • 女性であること

これらの危険因子がない一部の患者にはアスピリンが投与され、脳卒中予防のための治療が不要な場合もあります。

心房細動や心房粗動が正常なリズムに戻った後でも、通常は抗凝固薬の投与を受け続けることになり、しばしば生涯にわたる服用が必要になることもあります。患者が気づかないうちに不整脈が再発する可能性があるため、抗凝固薬の投与を続ける必要があります。それらの再発時には、危険な血栓が形成される可能性があります。

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