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慢性腎臓病(CKD)

(慢性腎不全、慢性腎機能障害)

執筆者:

Anna Malkina

, MD, University of California, San Francisco

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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慢性腎臓病では、血液をろ過して老廃物を除去する腎臓の能力が、数カ月から数年かけて徐々に低下します。

  • 主な原因は糖尿病と高血圧です。

  • 血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなります。

  • 症状としては、夜間の排尿、疲労、吐き気、かゆみ、筋肉のひきつりやけいれん、感覚の消失、錯乱、呼吸困難、皮膚の黄褐色への変色などがあります。

  • 診断は、血液検査と尿の検査の結果により下されます。

  • 治療では、食事に含まれる水分、ナトリウム、カリウムの摂取を制限するよう努めつつ、ほかの病態(糖尿病、高血圧、貧血、電解質平衡異常など)への対応として薬剤を使用し、必要に応じて透析や腎移植も行います。

腎不全の概要も参照のこと。)

様々な病気によって腎臓が回復不能な損傷を受けることもあります。急性腎障害の治療後に腎機能が回復せず、3カ月以上持続する場合は、慢性腎臓病となります。したがって、急性腎障害を引き起こす可能性のある要因は、いずれも慢性腎臓病の原因になる可能性があります。しかし、欧米諸国における慢性腎臓病の最も一般的な原因は以下のものです。

どちらの病態も腎臓の微細な血管に直接損傷を与えます。

慢性腎臓病の原因としては、このほかにも尿路閉塞、特定の腎臓の異常(多発性嚢胞腎糸球体腎炎など)、抗体によって腎臓の微細な血管(糸球体)や細い管(尿細管)に損傷が生じる自己免疫疾患(全身性エリテマトーデスなど)が挙げられます。

慢性腎臓病は体全体で多くの問題を引き起こす可能性があります。

  • 腎機能の低下が軽度または中等度の場合でも、腎臓で尿から水分を再吸収して尿の量や濃度を調節することができなくなります。

  • その後、体内で正常時にも作られる酸性物質を体外に排出する腎臓の能力が低下し、血液の酸性度が高くなり、アシドーシスと呼ばれる状態に陥ります。

  • さらに赤血球の生産量が減少し、貧血になります。

  • 血液中の老廃物の濃度が高くなると、脳、体幹、腕、脚の神経細胞が損傷を受けることがあります。尿酸値も上昇し、ときに痛風が引き起こされます。

  • 病気で異常をきたした腎臓からは、血圧を上げるホルモンが分泌されます。さらに、異常な腎臓では余分な塩分や水分を体外に排出できなくなり、体内に蓄積された塩分と水分によって、高血圧や心不全が起きる可能性があります。

  • 心臓の外側を覆っている膜(心膜)に炎症が生じることもあります(心膜炎)。

  • また中性脂肪(トリグリセリド)の血中濃度が上昇することも多く、高血圧と相まって動脈硬化のリスクがさらに高まります。

  • 慢性腎臓病に伴って発生する特定の状態が長期間続くと、骨組織の形成と維持に異常が生じるようになります(腎性骨異栄養症)。そのような状態としては、副甲状腺ホルモン濃度の上昇、血液中の カルシトリオール(活性型 ビタミンD)濃度の低下、カルシウムの吸収障害、血液中のリン濃度の上昇などが挙げられます。腎性骨異栄養症により、骨の痛みが生じ、骨折のリスクが上昇する可能性があります。

症状

通常、症状は非常に緩やかに現れます。腎不全が進展し、代謝の老廃物が血液中に蓄積するとともに、症状も進行します。

腎機能の低下が軽度から中等度の場合、夜間に何度も排尿が必要になる(夜間頻尿)などの軽い症状しか現れないこともあります。健康な状態では、夜間は腎臓が尿から水分を吸収して尿の量を減らし濃縮しますが、このような濃縮を腎臓ができなくなるため夜間頻尿が発生します。

腎機能が低下し、血液中に老廃物がさらに蓄積されると、疲労や全身的な脱力感を覚えるようになったり、注意力が低下したりします。食欲不振や息切れが起こることもあります。貧血もまた疲労や全身的な脱力感の一因となります。

また血液中に老廃物が蓄積すると、吐き気、嘔吐、不快な味がするなどの症状もみられるようになり、それにより低栄養や体重減少につながる場合もあります。慢性腎臓病の人は、あざができやすくなったり、切り傷などのけがを負ったときに出血が非常に長く続いたりする傾向があります。慢性腎臓病になると、感染に対する体の抵抗力も低下します。痛風によって、関節の痛みと腫れを伴う急性関節炎が起こる場合があります。

腎機能の著しい低下により、老廃物が血液中に高濃度で蓄積されます。筋肉や神経が損傷を受け、その結果、筋肉のひきつり、筋力低下、けいれん、痛みなどが起こることがあります。腕や脚にチクチクするような感覚が生じたり、一部の領域だけ感覚がなくなったりすることもあります。また、レストレスレッグス症候群が起こる場合もあります。脳症(脳の機能が障害された状態)を発症した場合には、錯乱、嗜眠(しみん)、けいれん発作などの症状がみられます。

心不全を併発した場合は、息切れがみられます。心膜炎を併発した場合は、胸痛や血圧低下がみられます。進行した慢性腎臓病の患者では、消化管潰瘍や消化管出血が多くみられます。また皮膚が黄褐色に変色することがあるほか、ときには汗に含まれる尿素の濃度が高くなりすぎて、尿素が結晶化して皮膚上に白い粉が発生することもあります。慢性腎臓病では、全身にかゆみが生じる場合もあります。また息が臭くなることもあります。

診断

  • 血液と尿の検査

  • 超音波検査

  • ときに生検

診断には血液と尿の検査が不可欠です。これらの検査により腎機能の低下を確認できます。

何らかの病気によって腎機能障害が起きている可能性がある場合は、適切な治療により急性腎障害が解消される可能性があることから、その病気を診断して治療を開始する必要があります。

慢性腎臓病で腎機能の低下がある程度のレベルに達すると、一般に、血液中の化学物質の濃度が異常になります。

  • 正常であれば腎臓で除去される老廃物である尿素とクレアチニンの濃度が上昇します。

  • 血液の酸性度がやや高くなります。

  • カリウムの血中濃度は、正常かわずか高い場合が多いですが、危険な水準まで上昇する可能性もあります。

  • カルシウムと カルシトリオールの血中濃度は低下します。

  • リンと副甲状腺ホルモンの血中濃度は上昇します。

  • 通常、ヘモグロビンの値は低くなります(いくらかの貧血があることを意味します)。

腎不全が進行した段階に達した場合や大量のカリウムを摂取した場合、または腎臓から体外へのカリウムの排出を妨げる薬剤を使用した場合などには、カリウム値は危険なレベルまで上昇することがあります。

尿の分析では、タンパク質や異常細胞などの様々な異常が検出できます。

超音波検査は、閉塞を否定したり、腎臓の大きさを調べたりする目的でしばしば行われます。瘢痕(はんこん)のある萎縮した腎臓が観察された場合は、腎機能の低下が慢性化している可能性が高いと考えられます。慢性腎臓病が進行した段階に達すると、原因の正確な特定が難しくなります。

腎臓から組織のサンプルを採取して観察する方法(腎生検)が最も正確な検査法ですが、超音波検査において腎臓が萎縮して瘢痕もあると判明した場合には、この検査法は推奨されません。

予後(経過の見通し)

慢性腎臓病は、ほとんどの場合、治療を行っても最終的には進行します。腎機能が低下するペースは、慢性腎臓病を引き起こしている病気やその病気のコントロールの良否によって多少異なります。例えば、糖尿病と高血圧は腎機能低下の進行を速め、特にコントロールが不良の場合は進行が加速されます。慢性腎臓病は、治療を行わなければ死に至ります。

腎機能の低下が重度(ときに末期腎不全または末期腎臓病とも呼ばれる状態)の場合の生存期間は、治療を受けないと通常は数カ月となりますが、透析による治療を受ければ、はるかに長くなります。ただし、末期腎不全になった人は、たとえ透析を受けていても、末期腎不全ではない同年代の人と比べて早く亡くなります。ほとんどの場合、死因は心臓または血管の病気か感染症です。

治療

  • 腎不全を悪化させる病気の治療

  • 食事療法および薬剤

  • 透析または腎移植

以下に挙げるような慢性腎臓病を引き起こしたり悪化させたりする病態や、全身的な健康状態に悪影響を及ぼす合併症が認められた場合は、速やかな治療が必要です。

糖尿病の人では、血糖値(グルコース濃度)と高血圧を良好にコントロールすれば、腎機能の低下をかなり遅らせることができます。慢性腎臓病患者の一部では、血圧低下に有用なアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬と呼ばれる薬剤により、腎機能の低下速度が遅くなる可能性があります。

腎不全の場合には、腎臓から排泄される薬剤の処方が控えられるか、処方されても用量が少なめに設定されます。ほかにも多くの薬剤が使用できなくなります。例えば、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、特定の利尿薬(スピロノラクトン、アミロライド[amiloride]、トリアムテレンなど)は、カリウム濃度を上昇させる作用があるため、カリウム値の高い重度の慢性腎臓病患者では使用中止が必要になる場合があります。

尿路閉塞に対しては、閉塞を解消ないし軽減するための治療を行います。細菌感染症の場合は抗菌薬で治療します。

慢性腎臓病の進行を遅らせるため、食事療法を実施する必要があり、薬剤を処方することが可能です。

タンパク質の摂取制限

毎日のタンパク質の摂取量を制限することで、腎機能の低下を若干遅らせることができます。ただし、タンパク質を減らした分を補うため、十分な量の炭水化物を摂取する必要があります。食事でのタンパク質摂取を大幅に制限する場合は、十分な量のアミノ酸を確実に摂取できるように、栄養士による監督を受けるのが懸命です。

アシドーシスのコントロール

軽度のアシドーシスは、果物と野菜の摂取量を増やし、タンパク質の摂取量を減らすことでコントロールできる場合もあります。ただし、中等度または重度のアシドーシスには、炭酸水素ナトリウムによる治療が必要です。

中性脂肪値を下げる

中性脂肪とコレステロールの血中濃度は、脂肪の摂取量を制限することで、ある程度コントロールすることができます。中性脂肪およびコレステロールの血中濃度を抑えるために、スタチン系薬剤、エゼチミブ、またはその併用が必要になる場合もあります。

ナトリウムとカリウムの摂取制限

通常は塩分(ナトリウム)の摂取制限が有益であり、心不全を併発している場合には特に重要です。

血液中のナトリウム濃度が過度に低下しないようにするために、水分摂取の制限が必要になる場合があります。代用塩などのカリウムを非常に多く含む食品は摂取を控える必要があり、またナツメヤシやイチジクの実をはじめとする多数の果物など、カリウムを比較的多く含む食品についても過剰に摂取しないよう注意する必要があります。(さらに詳しい情報については、米国腎臓財団[National Kidney Foundation]が発行している出版物「カリウムと慢性腎臓病の食事療法(Potassium and Your CKD Diet)」を参照のこと)。

血液中のカリウム濃度が高いと、不整脈や心停止のリスクが上昇します。カリウム濃度が高すぎる場合は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムなどの薬剤で解消できることもありますが、ときに緊急透析が必要になることもあります。

リン値のコントロール

血液中のリン濃度が高くなると、血管などの組織にカルシウムとリンの沈着物が形成される可能性があります。リンを多く含む食品(乳製品、レバー、豆類、ナッツ類、大半の清涼飲料水など)の摂取量を制限することで、血液中のリン濃度を低下させることができます。炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、セベラマー、ランタン、クエン酸第二鉄など、リンを吸着する薬剤を服用することでも、血液中のリン濃度を下げられる場合があります。一方、クエン酸カルシウムの摂取は避ける必要があります。クエン酸カルシウムは、多くのカルシウムサプリメントに含まれているほか、多くの食料品に食品添加物(一部ではE333と呼ばれています)として含まれています。上昇した副甲状腺ホルモン濃度を下げるために、しばしばビタミンDやその類似薬が経口で使用されることがあります。

合併症の治療

慢性腎臓病によって引き起こされた貧血は、以下の方法で治療します。

  • エリスロポエチンやダルベポエチンなどの薬剤

  • 輸血

また慢性腎臓病以外にも貧血の原因がないか、特に、葉酸、ビタミンB12ビタミン欠乏性貧血を参照)の摂取不足などを調べ、治療を行います。

エリスロポエチンまたはダルベポエチンを常用している人では、鉄が欠乏すると、これらの薬剤の効き目が弱くなるため、ほとんどの場合、鉄の欠乏を予防するために鉄を静脈内注射で投与する必要があります。エリスロポエチンとダルベポエチンは、脳卒中のリスクを増大させる可能性があるため、必要な場合にのみ使用すべきです。出血傾向は、血液製剤の輸注かデスモプレシンや エストロゲンなどの薬剤によって一時的に抑えることができます。このような治療は、外傷を負った後、また手術や抜歯を受ける前などに必要になります。

輸血は、重度の貧血で何らかの症状が認められ、かつエリスロポエチンやダルベポエチンが無効の場合に限り、行われます。

高血圧がある場合は、心機能と腎機能のさらなる低下を予防するため、降圧薬による治療が行われます。

利尿薬によって心不全の症状も軽減でき、腎機能が低下している場合でもその効果がありますが、重度の慢性腎臓病では、過剰な水分を取り除くために透析が必要になることがあります。

進行した慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病の治療で効果が得られなくなった場合は、長期の透析腎移植だけが選択肢となります。どちらの選択肢でも、症状を軽減させ、余命を延長させることができます。患者が一定の条件を満たす場合は、腎移植が優れた選択肢になります。透析を受けないことを選択した人には、終末期ケア(緩和ケアの一種で、ホスピスケアとも呼ばれる)が重要になります。

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